ある日、主人公になった俺 U


1 :匿名希望 :2007/04/10(火) 22:29:11 ID:onQHWiL3

これは物語である。そんなことは、最初からわかっている。
物語というのは何から出来ているものなのだろうか?

正義・悪・主人公・敵・味方・戦いなど、色々なことがわかっている。
しかし、これを実際に物語中の人物はまったく知ろうとしない。

誰が主人公で、誰が正義で、誰が悪か・・・・・。自分で、自覚することができない。
いや、気づかされることがない。もし、それがわかったとしたら・・・・・。

ここはその物語の、一つの世界。しかし、科学技術というほどの、高度なものは
開発されていない。陸地の約70%が森林の至って古風な世界だ。

この世界は「トランプス」という四大勢力によってもたらされている。
「クラブ」「ハート」「スペード」「ダイヤ」の、トランプの種類と同じ
勢力が存在するのだ。強さや階級は1〜13まであって、数が大きくなるほど強いのだ。

突如として闇の世界から降臨した帝王、ジョーカー。だが、31代目主人公と共に
消息不明となり、トランプス内は乱れつつあった。そこを狙うべくは、
主人公に次いでトランプスを滅ぼすために動く「アカツキ軍」であった・・・・。


登場人物


エクス・コールド

本作の主人公。腕っぷしの強い、牛飼い。熱血漢で、いかにも典型的な
主人公タイプだが、主人公としての力をおまけとしか見ていない。


アカツキ

永久の命を持つ初代主人公かつ、アカツキ軍のトップ。
32代目主人公、エクスを軍に入れ、本格的にトランプスの戦争に入ろうとする。


チーム「ナポリュート」

流厳が率いるアカツキ軍第二部隊の中の1チーム。リオーゼ、このみ、
の3人で構成されているが、中には、能力者がいるらしい・・・。


チーム「エントフィート」

シルヴァが率いるアカツキ軍第二部隊トップチーム。全部隊の中で、
もっともアカツキから信頼されている。兵士の数は、ナポリュートの何百倍。


2 :匿名希望 :2007/04/15(日) 21:43:27 ID:onQHWiL3

  〜 32代目主人公、エクス  その1 〜


 ここは、壮大に広がる農牧地帯。牧草地に牛などの動物が数多く放たれている。
小麦色で染められたその地帯の中に、ポツンポツンと数えられるくらいの
家や小屋が建てられ、その中で人々は平和に暮らしている。


領地的には、ここはスペードの領地である。しかし、スペードの本部がある
場所とは遠くかけ離れた、まさに田舎なのである。その田舎の牧草地の小屋の一つ、
今日もせっせと牛の乳搾りに励む青年がいた。

「モォ〜」

「・・・・・おい、牛野郎。何で俺様が乳搾りをする時は、
 出が悪くなるんだよ、おい?」

「モォー!」

「モォー、じゃねぇだろう!!おまえなんて、すぐにビフテキに
 してやんだからなっ、覚悟しとけよ・・・・!」

「モォー、モォー!!」

牛に翻弄されるは、本編の主人公、エクス・コールド。毎日、生きるために
牛の世話をする日々を送っているのだが。不機嫌そうに、エクスは
小屋の外に出る。

「くっそぉ。今日も満足に乳が搾れなかったぜ・・・・・。
 だいたい、何で俺があんな牛ごときに翻弄されなきゃいけねぇんだよ!!」

   ・・・・・・シュジ・・・・・オマ・・・・

「っ!!・・・・っち!また、耳鳴りかよぉ・・・・!!
 ここ最近、ワケのわからん耳鳴りが酷いぜ」

   ・・・・・メザ・・・・・ハ・・・シュジ・・・

「だぁあーーーっ!!うっせぇな!牛の乳は取れねぇし、
 耳鳴りはうざってぇし、何で最悪なことが重なるんだよぉ!!」

ここ数日の間、ずっとエクスの耳には何かが聞こえていた。その原因は
エクス本人もまるでわからない。ただ、日に日にエクスの機嫌が悪くなって
いくのは、確かであった。

「あ〜あぁ・・・・・。つっまんねぇな、毎日がよぉ・・・・・。
 目の前に広がるのは、いつも牛と牧草だけかよ。
 こーんなに青空はでっけぇのによぉ、いつも同じ場所で見るってのが、嫌だぜ」

  ・・・・・コウ・・・・・エハ・・・・・メロ・・・

「ここはドカンと一発、デケェ眠りに入って嫌なことも忘れるしかねぇな。
 おやすみ、愛しの牛達よ・・・・・・Zzz・・・・・Zzz・・・・・」

エクスは、牧草のど真ん中で一人、寝そべって居眠りを始める。
基本、エクスはマイペース人間であった。嫌なことがあれば、寝る。
そして、すぐに忘れる。自由な人間だったのだ。エクスは、眠りに入る。そう、夢の中に・・・。

  ・・・・・コノバ、コノシュンカンニテ、オオイナルトキのカゼハ
      ウンメイニヒキコマレタリ・・・・・・

「(!!?っち、またこの夢かよぉ・・・!!これで4日連続だぜ?
 どうせなら、ボインの姉ちゃんが出てくる夢を見せろっつうの!!)」

  ・・・・イマ、セイナルモノヘノケイヤクヲシルスコトヲ、
     ショウニンスル・・・・・・

「(・・・・しっかし、よく聞いてみりゃ、これって俺に言ってんのか?
 夢って、妄想の世界じゃねぇのか?何で、俺が俺自身に問われてんだよ)」

  ・・・・・・ナハ・・・ナントイウ?・・・・・・

「(な、名前、だと?そういや、ムカついてこの返事に答えたこと
 無かったけなぁ。・・・・ためにし、答えてみっか!
 俺の名は、エクス。エクス・コールドってんだぜ!!)」

  ・・・・・・セイナルセンシ、ソノナ、エクス・コールド。
     イマ、アナタヲコノセカイノ、シュジクトセン!・・・・・

「(っ!!!な、何だ!?お、俺の体が・・・・変化・・・・・。
 ち、違う!俺の体が、崩れて・・・・・いく・・・・・!!!)」

夢の中で、何かに問われるエクス。同じ夢を何日も見続けているエクスに
とっては、それは苦痛でしかなかった。しかし、その夢と真正面から対峙する
ことを選んだエクス。だが、返事に答えると、自分の体がじょじょに壊れていくではないか。
すると・・・・・。

「ぷはぁあああ!!!・・・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。
 っち、夢だってのに、こんなに汗かいちまったのかよ・・・・・・」

  ・・・・・・・・・・

「・・・?・・・・耳鳴りが、消えてやがる・・・・・・。
 っへ、こいつはラッキーだぜ。さぁ〜ってと、一眠りしたし、
 また牛と乳搾りで争ってくるかな」

悪夢から飛び起きるエクス。汗でびっしょりと濡れた体を乾かそうと、
服をはためかせる。耳鳴りが消えたことに気づくと、これを幸運に思い、
さっきまで悪夢に侵されていたのを忘れて、再び乳搾りに向かうのであった。

「よぉーし!!今度こそ、乳をたっぷりと出してもらうからな!
 覚悟しやがれよ、牛共ぉ!!」

「モォー!!モォー!!モォー!!」

「?・・・ど、どうしたってんだよ?そ、そんなに俺に乳を搾られるってのが
 嫌なのかよぉ。っけ、抵抗しても無駄だぜ!俺様の命が掛かってんだ、
 おまえらも死ぬ気で協力・・・・・・」

ドカァアアアアアアンーーー!!

それは、動物の感じた危険信号だった。牛達が一斉に騒ぎ出す。それを
疑問に思うエクス、そして次の瞬間。何かの爆発音が、大地を揺るがす。
急いで、小屋の外に出るエクス。すると、そこには・・・・。

「な、なんだ!?この、バカでけぇ爆発音は・・・・・・!!
 外で何か、起こってやがるのか!?」

ドカァアアアアアアン!!

「っく!!・・・・っ!!・・・・ぼ、牧草地が、燃えてる・・・・!!
 違う、攻撃されてやがるんだ!!何で、こんな田舎が攻撃さてんだよ!」

ドカァアアアアアアン!!

「ぐぅううう!!・・・・スペードの連中が、この土地を押収しに来たってのかよぉ!!
 ・・・・!?・・・あ、あの旗・・・・・あの旗は、見覚えがあるぜ・・・!
 ・・・・・・そうだ、あの旗は・・・・・・・アカツキ軍っ!!」

小屋を出たエクスに待ち受けていたのは、一面の火の海。何者かによって、
この土地が攻撃を受けているのだ。その軍隊の旗を見るエクス。そう、
その旗は「アカツキ軍」。反トランプス勢力の軍の攻撃であった。

「こ、ここにいたら、死んじまう!!牛共、おまえらもさっさと
 ここから脱出しやがれ!!」

「モォー、モォー!!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・。俺も、うかうかしてられねぇ!
 近くの森でも避難するしかねぇぜ!!」

牛を一通り逃がすと、エクス自身も牧草地から少し離れた森の中へと
避難する。一心不乱に全速力で走るエクス。背後では、砲撃の音が
絶え間なく響いている。

ドカァアアアアアンーー!!

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・!!ちっきしょう、何でこうなるんだよ!
 俺の牛達が、みんな消えちまったじゃねぇかよぉ・・・・!!」

   「・・・・Stop・・・・そこの君、止まってくれないか」

「っ!!・・・・あ、あぁ?だ、誰だよ、こんな時に!!
 今は止まってる暇は無ぇんだよ、早く逃げねぇと・・・・・!!」

「・・・・安心しろよ、Boy。ここには攻撃をするなと命じてある。
 そう、Beautifulにね。君を待っていたよ、32代目主人公・・・・・・」

「!?・・・・な、何者だよ・・・・おまえ・・・・」

砲撃の嵐の中から逃げてきたエクス。その目の前に現れたのは、
赤毛の男。陽気にエクスに話しかける。赤毛の男の話に、
足を止めるエクス。

「・・・・・Bad、悪いことをしたことは謝るよ。だけど、この土地が
 どうしても欲しくてね」

「お、俺の質問に答えろよ!!おまえ、一体何者だ!」

「・・・・・そうだね。君も、本当は何かを感じているんじゃないか?
 俺と君は、運命を正すべく正義の存在。自己紹介、させてもらおう。
 俺の名前はアカツキ。初代主人公とでも、言っておこうかな」
 


3 :匿名希望 :2007/04/24(火) 18:32:05 ID:onQHWiL3

  〜 32代目主人公、エクス  その2 〜


「ア、アカツキ・・・だと!?(ってことは、この赤髪ロンゲ野郎が・・・
 アカツキ軍の、トップだってのか?それに、主人公って・・・)」

「ようやく、君のPower・・・主人公としての力を感じ取れたよ。
 その様子だと、まだ君は自分が32代目主人公だと自覚してないようだね」

「?・・・しゅ、主人公・・・だと?・・・・お、俺が・・・・!?
 (き、聞いたことはあるぜ。この世界の何処かに、主人公っつう存在が
 いるってのは。でも、あれはおとぎ話の中のことじゃねぇのか・・・・!?)」

混乱するエクス。それを見て、ゆっくりとため息をつくアカツキ。
エクスは、突然のことに混乱を隠せなかった。主人公と言われたり、
アカツキが目の前にいたり、と。

「・・・・余計な話は好きじゃない。単刀直入に聞くよ。
 32代目、このアカツキに協力してくれないか・・・?」

「っ!!・・・・ど、どういうことだよ・・!」

「・・・・・君の力が必要なんだ。大国、トランプスを打ち破る手は、
 主人公の力が集結するしかない。協力するか、Yes or No・・・?」

「・・・・・・・だ、黙って聞いてりゃ・・・・ふざけやがって・・・・。
 んなことのために、俺の故郷を奪ったってのかよ!!」

「・・・・答えろ、32代目・・・・・」

「・・・・・・Yesか?Noか?だとぉ・・・・・・。
 答えは一つ、おまえの面をブッ飛ばしてやんだよぉ!!!」

「・・・・ふぅ。仕方ない、か。おもしろい・・・・。
 まさか、32代目とも戦うことになるとはな。強制的に、協力してもらおうか・・・」

目の前にいるのは、初代主人公アカツキ。そして、今、32代目の主人公になった
ばかりのエクス・コールド。こんな序盤で、主人公対主人公の組み合わせが実現されて
しまったのだ。アカツキはポケットからハンカチを取り出し、服についたほこりを払う。

「やれやれ、この辺は枯葉が舞って大変だね・・・。どれくらいの、葉のクズが俺の
 服についたのだろう?何十箇所かな、何百箇所なのかな・・・・
  Question・・・しても良いかな?」

「あぁ?てめぇ、何が言いてぇ・・・・」

「わからない、I don’t knowって奴だね。そう、わからないね・・・・・。
 けど、別にそんなのわからなくても別に問題じゃない。これから、
  何発殴られたのかもわからない君の悲惨な姿を思い浮かべたらね」

「な、何っ!!」

「・・・・さぁ、行くよ・・・・・ライト・ゴースト!!」

アカツキの身体から、白い人型の魔物が出てきた。当然、戦闘の経験が一切無いエクスは
防御することなど考えることができずに、「ライト・ゴースト」の拳のラッシュを
浴びせられて、吹き飛んでしまう。

「ぐわぁああ!!」

「痛かったかい?すまないことをしたね・・・・けど、このアカツキ・・・・・
 手加減って奴は大嫌いでね。手加減する奴も、手加減する自分も
 好きにはなれなくてね」

エクスは、吹き飛んで地面に叩きつけられると、口から血を出しながらも
必死に立ち上がろうとした。その姿を見て、少し微笑むアカツキ。
エクスは、拳を力強く握る。エクスは自分の身体の心配よりも、
負けたという「怒り」が強かった。

「っへ、・・・・・ク、クソったれがよぉ。この、エクス・コールド・・・・・
 殴られる、蹴られるのはしょっちゅうだぜ・・・・・だがよぉ、
 こんな馬鹿な俺でもよぉ・・・意味ある攻撃っつうのはわかんだよ・・・・」

「・・・・意味ある攻撃?だと」

「あぁ、俺の親父にゃぁ、よく殴られる・・・・だが、そいつには愛情っつう
 意味がある!だが、てめぇのパンチは意味がねぇ!ただ単に、
 無差別に攻撃を楽しむ拳をしていた!!」

「・・・・無差別、か。別に嫌いじゃない。無差別攻撃というのも・・・・な」

「てめぇにその力をゆるすわけにはいかねぇ・・・・今、てめぇをブっ飛ばすしかねぇ!
 俺が意味ある攻撃っつうもんをおしえてやるぜ!!おねんねしなっつう、
 安眠の意味をこめてな!」

エクスは無謀にも、アカツキに突っ込んだ。アカツキには「ライト・ゴースト」がある。
この時点で、生身の人間がアカツキに勝てるというのはほとんど無い。それでも、
エクスは突進した。

「32代目主人公は、実に愚かだと見た・・・・死にたいのか?」

「ッケ!俺のケツにキスしたら答えてやんよ!」

「・・・・・1週間ほど、眠っていてもらうしかないな。ライト・ゴースト、行くぞ」

ライト・ゴーストが、エクスに向かって攻撃をしようとするが・・・・。
何と、エクスには攻撃が当たらなかった。いや、当たらなかったというのは
表現が悪いであろう。「通り抜けた」いや、「透き通った」とも言えるであろう。

「な、何っ!ライト・ゴーストの拳が、すり抜けた・・・・!?」

「何処見てやがるっ!アカツキ!!」

「ま、まずい!防御を怠った!!」

「一発で、夢の世界へ送りこんでやんぜっ!!」

エクスはアカツキの顔面に一発、パンチすることに成功した。少し、
後ろに押されるアカツキ、だがこらえる。エクスも一旦、距離を置いて様子を見る。
と、いうよりもエクス自体も何が起こっているかわからなかった。

「・・・・・な、何で・・・・アカツキの攻撃が当たらなかったんだ?」

   ・・・・オマエノ・・・チカラ・・・・・

「うわっ!!ま、また耳鳴り・・・いや、違ぇ!!これは・・・・!」

  ・・・オマエノノウリョク、”同化”・・・・・・・。
    イマノオマエハ、葉ッパト同化シテイル・・・・・・

「葉っぱ?同化?・・・・・うーん、つまり・・・・む、無敵じゃん!
 攻撃当たらねぇんだから俺、最強じゃねぇか!さすが、主人公」

   ・・・・キヲツケロ・・・葉ッパノ同化ノジャクテン・・・・。
    火ガツケバ、タチマチ燃エ・・・風ガフケバ、フキトバサレル・・・・

「・・・・でも、攻撃は当たらねぇんだろ?・・・・んだけで、十分だぜっ!!」

エクスは自信に満ちた態度で、アカツキに突っ込む。アカツキは耳が良かった。だから、
そのエクスの「能力」についてすぐに理解できた。耳鳴りの忠告を気にせず、
遮二無二アカツキに突っ込むエクス。

「へへっ!!この俺様に突っ掛かってきたことを病院で後悔すんだな!アカツキ!!」

「・・・・そうか、葉っぱの弱点は風か。ライト・ゴースト!!風を作れっ!!」

ライト・ゴーストは真空にパンチをして、自ら風を作り出した。ただのパンチならば
葉っぱと同化したエクスが吹き飛ばされることでは無いのだが、ライト・ゴーストが
出す、拳のフルスウィングは大きな風を呼び起こしていた。

「(!?マ、マジかよ!!吹き飛ばされる・・・・!!)」

「枯葉となった葉っぱはね・・・・・握りつぶせば、粉々になるのだよ?32代目」

「何だとっ!」

吹き飛ばされ、無防備状態のエクスにアカツキがすかさず接近して、ライト・ゴーストの
ラッシュをエクスにくらわす。最初は葉っぱの効果で無傷なエクスだが、
弱点がはがされた。枯葉は触れれば崩れ落ちていく、つまりそれと同様に
彼の身体も穴だらけになっていく。

「お、おい!!俺の身体が・・・・俺の身体まで、粉々になってきてるぞ!!」

  ・・・・カイジョシロ!イマノママデハ危険ダ・・・・!・・・

「あ、あっぶねー・・・・。死ぬところだったじゃねぇか。案外、使えねぇな、
 この能力」

「See you・・・・!!」

「へ?」

ドガァッ!!

そして、エクスは気を失う。油断したエクスの完全敗北だった。それでも、アカツキの
顔面に一発くらわせることに成功したのだ。本当に油断し、敗北をしたのはある意味
アカツキだったのかもしれない。

「・・・・おもしろい人材だ。さすがは、主人公という所だな。さぁて・・・・
 32代目主人公・・・・これから君は、アカツキ軍の一員だよ」

そして、エクスはアカツキによって連れてかれる。これ立派な「誘拐」や「拉致」に匹敵
するだろう。しかし、エクスは逃げ出さないだろう。目標ができたのだ。「アカツキ」を
倒すという、大きな目標が・・・・。


4 :匿名希望 :2007/05/01(火) 21:46:48 ID:onQHWiL3

 〜 落ちこぼれチーム、ナポリュート 〜

ここは、アカツキ軍の第2部隊の36位チーム、「ナポリュート」の本拠地である。
いや、本拠地は到底いえないであろう。学校の教室程度の部屋の大きさ。
しかも、メンバーもたった3人という落ちこぼれのチームである。
その部屋の中では・・・・。

「このみ、その鏡はいつから使っている?」

「?、確か・・・4年前からだと思うよ、リオーゼ」

「よ、4年前っ!?う、美しくない・・・・4年という歳月を経て、カビ・細菌・
 害虫・手汗、色々なものが付着しているということではないかっ!
 不潔だぞ、このみ。僕が新しいのを買ってやるから、これは捨ててしまうぞ」

「だ、駄目だよ〜!これは、私のお気に入りなんだから!鏡といったら、
 これじゃなきゃ駄目なんだよぉ」

「まったく、美しく無いものを使っていると、自分の美意識まで欠けていってしまうぞ。
 そう、磨かれないダイヤのようにね」

そんな下らない会話をするチーム、「ナポリュート」のメンバー、
リオーゼ・トラフィクトと、コノミ・ナガイ。「美」をもっとも愛するリオーゼと、
普通の学生のような感じのこのみ。まるでわからない組み合わせである。
そんな所に、もう一人、部屋に来る。

バタンッ

「皆、そろってるのぉ。それでは、チーム、ナポリュートの会議を始めるぞい!」

「ほら、このみ。髪を整えるのは美ではあるが、時間が無い。早く、こちらに来い」

「でもさぁ〜、会議なんて言うけどいつも今日の目標だけだよぉ?」

「ホッホッホ、このみ。することと、しないことでは全然違うのじゃよ。まぁ、子供には
 わからんのかのぉ」

「子供って・・・・隊長と私って、10歳も離れてないよぉ?」

「僕も疑問に思っていたのですが、なぜそのように老人のような台詞を
 お使いになるのですか?美・・・・とは、ほど遠いですが、老い、
 修練された美というものは感じられますけど」

「ホッホッホ、わしは200歳じゃよ。見た目は二十歳そこそこに見えてものぉ」

これが、チーム「ナポリュート」の面々である。隊長と言われている男の名は
「西城・流厳」。どうやら、このチームのトップらしい。外見は若々しいのだが
なぜか年寄りの口調である。そして、3人集まった所で本題に入ろうとする流厳。

「それでのぉ、このナポリュートに新人が入ることが決定したのじゃ!」

「ッフ、まさか・・・・。隊長、お言葉ですが、このナポリュートは第2部隊の
 40チームある中で36位ですよ?そんな下位のチームに上の連中が
 新人を入れることなど・・・」

「で、でも!その新人が、ちょーーーーーー強かったら、私達、
 エントフィートを抜けるかもしれないよ!」

「そうじゃのぉ、エントフィートを抜けるかもしれんのぉ。そろそろ・・・・
 到着する予定なのじゃが」

「エントフィート」、アカツキ軍に入っている者でその名を知らない者はいない。
第2部隊の1位、そして、アカツキ軍全体でもつねに上位に位置するチームである。
ナポリュートにとっては遠く、手が届くはずがないチームなのだが・・・・。
すると、いきなり部屋のドアが開いたと思うと、何かが放り投げられた。

ドサッ

「痛っ!!おいコラ!!この俺様を放り投げるとはどーいうこった!!ってか、
 ここ何処だよ!誘拐か!?・・・・・・あぁ?何だよ、おめぇら」

「・・・・隊長、彼が・・・・新人、ですか?」

「うむ、確か名をエクス・コールドと申したな」

「・・・・・おい、エクス・コールドという青年。僕の名はリオーゼ・トラフィクトと
 言う。一つ、尋ねるが・・・・風呂は毎日入っているかい?」

「あぁ?風呂?・・・・1週間に4日は入ってるぜ!」

「隊長、僕は嫌いです。あいつが嫌いです。それでは、失礼致します・・・・」

「こ、これ!リオーゼ!!」

エクスが一週間のうちに4日しか風呂に入っていないという事実を聞いて、
即刻部屋から出るリオーゼ。やはり彼の「美」感覚がエクスを受け入れなかった
のだろう。何か、嫌なムードになる部屋の中。エクスは流厳に尋ねる。

「おい、何処だよここは!」

「・・・・何も説明を受けておらんのか?」

「あ?説明だと!?俺は無理やりここに連れてこられたんだよ!あのアカツキって
 野郎に!」

「ア、アカツキ自ら!?ほぉ、そいつはすごいのぉ。ここは第2部隊36番目。
 チーム名、ナポリュート。わしの名は、西城流厳。よろしくの、エクス・コールド君」

「わ、私の名前はコノミ・ナガイって言います!よろしくおねがいしますね、
 エクスさん!」

「あ、あぁ・・・・・っつーか、え〜と・・・・流厳って奴。おまえ、ロリコン?」

「・・・・ホッホッホッホ!そうさなぁ、確かにロリコンと思われても仕方ないかも
 しれないのぉ。とりあえず、わしはこのチームの隊長じゃ、隊長と呼んでくれぃ」

エクスはまるでわからなかった。どう見ても、この「コノミ・ナガイ」という女性は
子供である。いくらなんでも、戦場という大人の場に子供を投げ出すのは
酷いものである。するとこのみは何か言い出した。

「エクスさん」

「あぁ?何だよ」

「鉛筆はまた同じところに戻しておいて下さいね」

「は?鉛筆?・・・・・おっと!」

このみに不思議なことを言われて困惑するエクス。すると、エクスは少しバランスを
崩し、机にぶつかる。すると、鉛筆が机の上から落ちてしまう。しぶしぶ、
めんどくさそうに鉛筆を拾うエクス。

「何でぇ、落ちたのは鉛筆かよ・・・・・・はっ!!・・・・お、おい!!
 どういうことだよ、こりゃぁ!!何で、このガキ・・・・!!」

「ホッホッホ、ガキではないぞ、このみじゃぞ。彼女は数秒程度なら未来予知が
 できるのじゃ。だから、我々の大事なメンバーなのじゃ」

「ふ〜ん。もう二つほど、質問がある。まず、てめぇの喋り方とさっき出て行った
 男のことだ。説明たのむぜ」

「まず、わしの喋り方は・・・・まぁ、癖と思ってくれてかまわん。そして、
 さきほど出ていった男の名はリオーゼ・トラフィクト。奴は何より美を
 大切にするからのぉ。どうやら、嫌われてしまったようじゃのぉ、エクス君は」

「そんで、俺はいつアカツキに会えるんだ?」

「エク兄ちゃん!アカツキはね、軍のトップだよ?プライベートなんかで会えるわけ
 無いよぉ。だから、エク兄ちゃんがアカツキに会えるのは・・・・う〜ん・・・・
 私達のチームが第2部隊の中で1位になった時ぐらいかなぁ」

「誰がエク兄ちゃんだっ!!っけ、なら早ぇーとこ、1位になって、
 あいつにリベンジしてやんぜ。まっ!よろしくたのむぜ、これから!」

「ど、何処に行くんじゃ!?」

「あのスカした野郎のとこだよ!」

そう言うと、エクスは部屋から出て行ってしまう。どうやら、エクスは軍に入ること
自体には抵抗は無いらしい。エクスが言う「スカした野郎」とはリオーゼのことだろう。
エクスが数分探していると、一人でいるリオーゼを発見する。

「おっ!いるじゃねぇか。おい、てめーは確か・・・・リローゼだっけか?」

「・・・・リオーゼ・トラフィクトだ、今後2度と僕の名前を語るな」

「あぁ!?てめぇーよぉ、そんなに俺のとこが嫌れぇか!」

「・・・・・・よく答えを導き出せたな。褒めてやろう、うん、大嫌いだ」

「あぁ、そうかい、そうかい!俺もてめぇーみたいな汚ねぇ野郎は嫌いだぜ!」

「き、汚い!?バ、バカな!?こ、このリオーゼ・トラフィクトが汚い?
 あ、ありあえない・・・。世の美を集結させ、その集大成こそ我が、
 リオーゼ・トラフィクトなのに・・・・ぼ、僕が・・・・汚いだと・・・・!?」

「(な、なんか・・・・マジで錯乱しちまったなぁ・・・・)」

「汚い」という言葉に異様に反応するリオーゼ。それを見て、焦るエクス。確かに、
リオーゼが「美」に対する異常なほどの執着心があるのは聞いていた。
それを知って、わざとエクスが汚いといったのだが、これほどまでとは予想外だった。

「じょ、冗談だよ・・・・んな、困惑してんじゃねーよ」

「ッ!!・・・・冗談・・・・う、美しくない・・・・真に美しくない。
 僕というか弱く、美しい蝶に冗談などという泥を付着させるとは・・・・
 その行為、万死に値する。美の裁きのもとに・・・成敗する、エクス・コールド!!」

「(何が、美の裁きだよ・・・)へいへい、成敗されちゃったよ。んじゃーな、
 あいさつに来ただけだし・・・・」

「・・・・逃げるのか?ケダモノ・・・・」

「何っ!!こいつ、いつのまに俺の目の前に・・・・!!」

一瞬にして、距離をつめるリオーゼ。両手に一本ずつ剣を持っている。恐らく、
リオーゼは「二刀流」なのだろう。二つの剣をエクスの喉もとに突き出して、
脅しをかけようとするリオーゼ。

「・・・・・あやまれ、そうすればゆるしてやる」

「・・・・・・な、なぁ・・・・リオーゼ・・・・・随分と・・・・風が強ぇな・・・」

「それが・・・・・どうした?」

「・・・・っへ、ゆるしてやるだって?・・・・てめぇのケツに、
 俺の指突っ込んだら、ゆるされてやんよ!」

「き、汚いっ!!こいつ!!生かしておけぬ!!」

「さぁて・・・・俺が斬れるかな・・・・?」

「(何っ!?・・・き、斬れない!?透き通る・・・!!)」

リオーゼはエクスに向かって剣を斬り払った。しかし、無常にもリオーゼの剣はエクスに
当たることは無かった。戸惑うリオーゼをよそに、余裕の表情を浮かべるエクス。
そして、拳をリオーゼに向かって突き出そうとする。

「俺様の美学ってのをおしえてやるよっ!!」

「(ま、まずい!一撃・・・モロにくらう!!)」

ヒュゥゥ・・・

「ん?風?・・・・・どぁああああああ!!!風に流されるぅうう!!!
 (ヤベぇえっ!!風と同化したから、ちょっとの風にも敏感に反応しちまう!)」

「?・・・・僕の前から消えた?・・・・ど、何処にいった!エクス・コールド!!
 決着はまだついていないぞ!勝負しろ!エクス・コールド!!」

一瞬にして消えてしまったエクスを必死に探そうとするリオーゼ。しかし、
風に流されてしまったエクスは木の上でとまっていた。何とか風の同化を解いて、
木につかまることに成功したようだ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・やっぱし、この能力、あんまし使えねー・・・・」


5 :匿名希望 :2007/05/08(火) 20:50:39 ID:onQHWiL3

 〜 奇襲、彩色使いの盗賊団 その1 〜

アカツキによって、アカツキ軍の第2部隊「ナポリュート」に無理やり配属となった
エクス。個性が豊かすぎる3人のメンバーと、これからエクスは付き合っていかなければ
いけないのだ。エクスの目指すのは、「アカツキ」。果たして、エクスはアカツキまで
到達することができるのだろうか・・・・?


新鮮な何色とも例えぬ輝く光が、第2部隊36位、崖っぷち直前のチーム、
「ナポリュート」の部屋を照らす。すでに部屋にはリオーゼ・このみ・流厳が、
「朝の会議」と呼ばれるものに備えて準備していた。すると、部屋のドアから
寝ぼけた顔の男が入ってくる。

「眠ぃ〜・・・・・・おい〜す」

「おはよう!エク兄ちゃん」

「うむ、おはようじゃ。エクス・コールドよ」

「・・・・・・」

「おい、コラ!リオーゼっ!何でてめぇだけ、俺様にあいさつしねぇんだ!」

「・・・・君が嫌いだからだ。おわかりかい?」

「・・・っけ、テメェに好きになられてもこまるってんだよ!」

エクスとリオーゼのあまりにも反対すぎる性格。確かに、エクスにしても、
リオーゼにしても、その性格には一癖も二癖もある。その二人が面と面を
向き合っているのだから、よほど仲が良くなるか、よほど仲が悪くなるしかないのだ。

「これで全員揃ったようじゃの。それでは、朝の会議を始めるぞい」

「朝の会議ぃ?何だそりゃ、このみ?」

「う〜ん、他のチームもやってるから真似してるだけ、かなぁ?」

「あぁ〜?真似してるだけだぁ?くっだらねぇ〜、俺様はパスすんぜ。じゃぁな」

「ホッホッホ、ちょっと持ちなされ。今日の朝の会議はちと、マジがあるぞい?」

「?・・・・隊長、何か我々のチームに上層部から任務が降りてきたのですか?」

「うむ、率直に言えばそうじゃな。リオーゼ」

不思議に思うリオーゼとこのみ。「ナポリュート」などのほぼ最下位チームは、
上層部からもほとんど見捨てられているのだ。たまに来る仕事と言えば、雑用だけ。
戦闘に関することなどまるで行ったことがないのだ。そんな「ナポリュート」に
任務がきたのだ。

「どうやら、アカツキ軍進行の道に厄介があるそうでな。その厄介なものの駆除に、
 我らと他2、3チームに任務が任された」

「厄介なもの・・・・とは何ですか?隊長」

「詳細はよくしらんが、盗賊団らしい。それも中々の強敵らしくてな」

「おぉおお!きた、きた、きた、きたぁ!!やっとらしくねってきたじゃねぇえか、
 その任務に成功すりゃぁ、ランクもアップすんだろ?」

「そうじゃ。この任務に成功すれば、わしらのチームの名も他の部隊・・・いや、
 上層部の目にも止まるかもしれん。これは成り上がるチャンスじゃ!これを逃したら、
 一生任務は降りてこないと思うのじゃな・・・・・いいな?・・・・
 おまえら・・・・!」

「はいっ!!」

声を張り上げる3人。戦闘に関してはほとんど初めてとなる「ナポリュート」。
エクスにとっては、いきなりの任務となるのだが、興奮気味のこのみと共に、
おおはしゃぎする。しかし、リオーゼは違った。流厳に近づき、小さな声でささやく。

「・・・・隊長、真相・・・・お聞かせねがいますか?」

「・・・・・やはり、気づくか・・・・リオーゼ。どうやら、上層部は我々を
 モルモットに使うようじゃのぉ・・・・」

「モルモット・・・・ですか?」

「うむ。その盗賊団の頭となる人物が・・・・・どうやら、31第目主人公と何らかの
 関わりがあるらしいのじゃ・・・・その強さを、我々が体でためてくるというわけ
 なのじゃろう」

「・・・・美しくないですね、真に・・・・・隊長、けれど、欠片も美が無いわけでは
 ありません。その上層部の奴らに・・・・・・・ありったけの美学・・・・・
 たたきこんでやりますよ」

「ホッホ、たのむぞぃ、リオーゼ」

密かに闘争心を燃やすリオーゼ。やはり、「ナポリュート」は実験台となっていた。
その「盗賊団」の強さを測るための。そう、「盗賊団」。その頭は、
31代目主人公と知り合いであった。31代目主人公、今では行方不明の彼に・・・。

「隊長ーーーっ!!」

「?なんじゃ、このみ?」

「おやつは、どれくらい持っていっていいですか!?」

「お、おやつ・・・じゃと?」

「ハッハハハッハ!お子ちゃまだなぁ、このみはぁ。おやつってのはぁ、
 多めに持っていくのが常識なんだよ」

「そ、そうなの?エク兄ちゃん!」

「当たり前だろっ!ほれ、俺様の好物のチョコレートキャラメルを分けてやるよ」

「わーいっ!ありがとう!」

どう考えても、エクスとこのみは「任務」を「ピクニック」や「遠足」と勘違いして
いるようだ。このみはまだ、年齢が年齢だけにも、エクスについては何も言葉が
出てこない流厳であった。どうすればいいか、わからず、慌てふためく流厳。

「こ、こら、おまえら・・・・・わしらは楽しい遠足に行くんじゃないんじゃぞ?」

「な、何ーーーっ!!ってことは、おやつは禁止かよぉ・・・・・このみぃ・・・・・
 俺もう行きたくねぇ!」

「よしよし」

「(ふぅ・・・・リオーゼ以上に、一癖もありそうな奴じゃの・・・エクスは・・・)」

年下のこのみに慰められるエクス。これも悪ふざけだと思ってあきらめている流厳。
その影には、悪ふざけであってほしいと願う心もあったが。すると、
その現場にリオーゼが現れる。エクスの姿を見て、見下した表情をする。

「・・・そうだ、隊長。僕に提案があります。エクスはここで留守番をして
 もらいましょう。彼の力量を拝見しましたのですが、僕には到底
 及ばなかったですし・・・」

「はぁ!?な、何言ってやがるっ!あの一騎打ちは、俺様の勝ちだろうが!
 あのままいけば、俺の右ストレートが・・・・」

「な、何っ!?君は戦闘の途中で、僕が成せる美の威圧感に太刀打ちできず、
 逃げ帰ったハズだろう!!」

「ん、んなハズねぇだろっ!!おまえの美には、背筋が凍ることしかねぇよ!」

「っぐ!エ、エクス・コールドぉお・・・・貴様は、いちいち僕に・・・・!!」

「こっちの台詞なんだよぉ、リオーゼぇ・・・!!」

「こらっ!!何をしとるんじゃ、もう出発するぞぃっ!!」

リオーゼと口喧嘩しながらも、共に協力するチームと合流するためにナポリュートの
部屋から出発する4人。彼らは再び、部屋に訪れることができるのだろうか・・・。
エクス達「ナポリュート」は、初の任務に挑む・・・!

そのころ、例の盗賊団は、アカツキ軍が何らかの攻撃を仕掛けてくるという情報を
掴んでいた。しかし、これといった対策はしようとしなかった。それほど、
自分の力に自信があるのだろう。一人の頭とも思える男が、
情報員の部下から話を聞く。

「つまり、アカツキ軍の進行先に我々の団がちょうど潜伏しているのです。
 素通りすることは不可能と思われます。どうします?頭・・・・・」

「・・・・アカツキか・・・・っへ、楽しそーじゃねーのか・・・・・!!
 久々に・・・・・死ぬほどの爽快感を求められそうだぜぇ・・・!」


6 :匿名希望 :2007/05/14(月) 20:15:43 ID:onQHWiL3

 〜 奇襲、彩色使いの盗賊団 その2 〜

初の任務を行うこととなったチーム「ナポリュート」。今、彼らは道のない密林を
ひたすら突き進んでいた。空は不穏な雲が立ち込めている。まるで、何かが起こる
前兆のような・・・。彼らは今、25、6kmを平気で歩いているが・・・・。

「・・・・このみ、疲れていないか?足が痛くなったらいつでも僕に言いたまえ」

「ありがとう、リオーゼ。でも、私、頑張るからっ!ナポリュートの一員として」

「ッフ、さすがだな」

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・リオーゼぇ・・・俺にも救いの手を〜・・・」

「・・・・そうだな、エクス。足が痛くなったら、いつでも僕に言ってくれ。
 即効で、君の足に蹴りを入れてあげるよ」

「こ、この野郎っ!」

「エクス、リオーゼ!静かにするんじゃ!そろそろ作戦行動予定地に到着するぞぃ」

流厳に言われて、静まるエクスとリオーゼ。どうやら、待機地に着いたらしい。
そこは、例の「盗賊団」から数百mほど離れた林のポイントで、ちょうど「盗賊団」の
様子が観察できた。息を潜めて作戦の決行を待つ4人。

「おい、ってか隊長さんよぉ。作戦の詳しい内容まだ聞いてないぜぇ?」

「?エクス、わしが先ほど説明したじゃろうが」

「・・・・疲れてて聞いてなかったんだよ」

「ふぅ、しかたない。わし等は、最後に行動を開始する。他のチームが行動、
 つまり攻撃開始をしてから、頃合を見て攻撃に参加するのじゃ」

「それってよぉ・・・・何か、俺達ってそーとー、卑怯じゃねぇか?」

「作戦というのはこういうものなんじゃ。それに、わし等だって重要な役割じゃ。
 後から出て来れば、相手の不意を突くことができるし、味方にも多少の活気を
 呼び戻せる」

「ふ、ふ〜ん・・・・」

あらためて作戦の内容を聞かされて、何か釈然と来ないエクス。しかし、これも
作戦なのだ。共に共同で戦うことにはなんら関係ない。そんな中、リオーゼはふと
疑問に思っていた。それは流厳もうすうす感ずいていたことであった。

「・・・・隊長、おかしくありませんか?・・・・」

「?何だよ、リオーゼ。ビビッて逃げ出したくなったのかよ?」

「・・・・・君には聞いていない。どう思いますか、隊長?」

「いつまでたっても、味方のチームが攻撃を開始しない・・・と、言いたいのじゃろ?
 リオーゼ。確かにおかしいのぉ」

「も、もしかして!味方のチームさん達が一斉に逃げ出しちゃったとか!
 そういうことって・・・・ないよね?」

「その可能性は無いとは思えなくとも無いがな、このみ。しかし、他に複数のチームが
 先行攻撃に加わっている。一度に複数のチームが裏切ったとは思えない・・・・」

「あぁ?じゃぁ、どーゆーことだよ、リオーゼ。てめぇーの考えってもんを言えよ」

「いちいち勘に触る奴だな、君は。まぁ、良い・・・・僕の考えですと、元から
 複数のチームは存在していなかった・・・・。それか、
 すでに奴らに襲われているか・・・・!」

リオーゼの考えが正しいのか、間違っているかは時間が経てばわかることだ。しかし、
どちらにしろ、エクス達のチームが危険にさらされているということだけは
変わりないのだ。突然、流厳が動き出す。

「マズい!エクス、リオーゼ、このみっ!!逃げるぞぃ!」

「ど、どうしたのですか、隊長!?」

「すでにわし等は囲まれている!」

「な、何だと!マジかよぉ!ってか、何でオメーにわかるんだよ!」

「血の匂いじゃ・・・・・血の匂いがわしらを囲んでいるっ!」

「ッ!・・・・エク兄ちゃん!2秒後、エク兄ちゃんの頭めがけて矢が飛んでくる!」

「何っ!!」

エクスは、このみの「未来予知」によって予測された矢の攻撃を知り、とっさに
その場から回避する。そして、2秒後、予想通り、エクスに向けて矢が発射されるので
あった。何とか命を取り留めたエクス。

「あ、あっぶねぇ〜!!助かったぜ、このみ」

「・・・ま、まだっ!・・・・2秒後・・・・・11、15・・・・わからない!
 とにかく、大量の矢が降ってくる!」

「各自、避難じゃっ!!」

2秒後、大量の矢がチーム「ナポリュート」を襲う。その矢の嵐は、一言で
例えると「雨」。最も凶悪な雨。そこには、血という雫しか飛び散ることはない。
そして、その矢の雨が止まると、息を潜めていたナポリュートのメンバーは動き出す。

「た、隊長ぉ・・・・・私のせいで・・・・・こんな・・・・」

「っへ・・・・大丈夫じゃ・・・・・これぐらい・・・・」

どうやら、流厳はこのみを守るためにこのみの上から覆いかぶさったらしい。背中に
数発の矢をくらっていた。近くには、リオーゼとエクスが無事でいた。リオーゼは
戦闘の経験からなる技で回避し、エクスは「主人公」としての力で。

「おいおい、どうすんだよ、隊長さんよぉ!今度また、あの矢の嵐が来たら・・・・
 このチーム全滅しちまうぞ?」

「っく・・・・恥ずかしながら、僕もエクスと同じ意見です。このままでは、我々は
 美とは遠い死を迎えてしまします・・・・・!」

「・・・・わかった、この事態を切り抜けるには奴らのトップを崩しかない・・・・!
 リオーゼ、わしと共に矢を撃っている根源を見つけ出し、そこで奴らの気を
 引くのじゃ。そしてエクス・・・・・おまえが、そのトップを討つ・・・・!!」

「!?・・・・お、俺が・・・?・・・・・俺が、奴らの頭をブッ倒すってのか・・・」

「は、反対です!美しくない・・・・真に美しくない!!こんな汚い奴に、僕達の
 命運を握らせるなんて、考えられません!考えなおしてください!隊長。
 美のある決断を!!」

流厳の考えにリオーゼは反対だった。確かに、流厳はダメージを負っているため、
頭を倒すという重要な役には回れない。しかし、実力的にまだほとんど未知数の
エクスに賭ける流厳にリオーゼは賛成できなかった。必死な顔で、流厳に訴え、
説得をする。

「へ・・・・へへへ・・・良い判断だぜ、隊長!!この俺様、エクス・コールドに
 まかせておけよっ!」

「貴様は黙っていろっ!!おまえのような奴に、この任務、そしてこのチームの
 生か死かなんて任せられるか!」

「だから何だよっ!!俺は任務も遂行するし、チームも死なせねぇえ!」

「何処にそんな根拠があるっ!」

「主人公だからだっ!」

エクスの発言に驚くリオーゼ。それは、流厳も、このみも同じだった、エクスは
主人公である。しかし、それはアカツキや本人ぐらいしかしらない。数秒して、
驚いた顔からじょじょに人を見下したような笑い方になるリオーゼ。

「ハ・・・ハハハッハ・・・主人公、か・・・そうか、ならば僕は神だっ!
 冗談すら美に欠ける柔な男めっ!」

「エ、エク兄ちゃん、さすがに主人公はないよぉ。主人公がこんな軍に入ってる
 わけないしさぁ・・・・」

「こ、このみまで、何言ってんだよ。俺は主人公なんだっ!俺が行けば、絶対に
 おまえらは助かるっ!!・・・・・・たのむ・・・・・俺を信じてくれっ!隊長!!」

「・・・・・・そう・・・・か・・・・」

「隊長!もう時間がありません。早急に決断を、美に恥じない、覚悟をっ!」

「隊長っ!!俺しか・・・・こいつら・・・・救えねぇえんだ!」

必死に訴えるリオーゼとエクス。共に、チームを救うという意思は変わりないのだ。
けれど、少し方向が違うだけ。その微妙な方向の違いが、大きな渦を生んでいるのだ。
険しい表情の流厳。そして、重い口が開く。

「・・・・・エクス・・・・・いけるか?」

「ッ!!・・・・・ったりめーよ!そんじゃぁ、いっちょその頭って奴を
 ブン殴ってくるぜ、援護よろしくたのむぜ!!」

エクスは勢いよく飛び出していく。その決断に驚きを隠せないリオーゼ。最終的に、
流厳が選んだのは「エクス」。リオーゼではなく、エクスを選んだ。リオーゼはただ、
不満がいっぱいでしかたなかった。

「た、隊長!なぜあんな奴を・・・・・」

「・・・・・ホッホ、主人公・・・・だってのぉ・・・・。わくわくせんか?もし、
 奴が本当に主人公だったら・・・・」

「・・・・バカなっ!あんな美意識の欠けた奴が、主人公なわけなど・・・・!」

「とりあえず、お話はここまでじゃ。次の矢が飛んでくるまで残り数十秒程度じゃろ。
 このみは軍に戻って事態を報告するのじゃ。戦闘に関してはリオーゼは右から、
 わしは左から攻める。いいな?」

「っく・・・・了解しました、隊長。このみ、なるべく草むらなどが多い地形を
 選んで戻るんだぞ」

「わかった、リオーゼ!」

「それじゃぁ、わしらも行動を開始するかのぉ!!」

やや微妙な心境なりオーゼだが、しかたなく攻撃を開始する。そのころ、先に先行した
エクスは盗賊に見つからないように頭の居場所を見つけようとしていた。確かに、
見る限りではじょじょに盗賊の団員がリオーゼや流厳によって、集結されつつ
あったため、減っていた。

「あんな威勢の良いこと言っちまったのはいいが、何処にいるんだよ?
 敵の大将は・・・・・」

「・・・・・ボウヤ、見ねぇ顔だなぁ?」

「ッ!!(こ、こいつ!・・・・わかる、なぜだか知らねぇが、こいつが大将だって、
 わかる!)」

「おいおい、ビビっちまって、言葉も出ねぇってか?まー、そうだよなぁ。テメェーの
 目の前にいんのは、この伊集院・薫様だからなぁ」


7 :匿名希望 :2007/05/20(日) 10:46:02 ID:onQHWiL3

 〜 奇襲、彩色使いの盗賊団 その3 〜

エクスの目の前に現れた青年。白い短髪で、エクスよりも若干年上だとわかった。
けれども、力量的にはなぜか、「伊集院・薫」の方が上だということが悟れた。
彼がどういう武器を使ってくるかは未知数。しかし、エクスは逃げるわけには
いかなかった。

「(伊集院・薫・・・・・!こいつさえ、倒せば・・・・チームを救える・・・・)」

「?・・・・まさかよぉ、てめぇーよぉ・・・・俺様を知らねぇのか?」

「おまえなんか知るかよっ!」

「ったく、最近のガキはなっちゃいねぇーな・・・・。
 この彩色使いの伊集院・薫を知らねぇとはな。こいつはぁ・・・・・
 体でおしえてやんねぇとなぁ・・・・!!」

不気味に笑う伊集院。彼は別名「彩色使いの伊集院」と呼ばれている。トランプスの
上位ナンバーにランクするほどの実力を持っていると噂されているほどである。
けれど、彼は信念のままに生き、誰の命令にも、下にも就こうとはしないのだ。

「ここは・・・・森林かぁ・・・・・緑かよ、あんま好きじゃねぇな。緑の攻撃色は」

「(?何言ってやがんだ、こいつ・・・・)」

「まぁ、いいぜ・・・・・・緑の攻撃色、支配っ!!」

「うわぁあ!!(な、なんだ!?つるが俺を襲ってくる・・・・!?)」

伊集院が言葉を発した後、周りの木々のつるが、エクスを襲った。必死に逃げ回る
エクス。その様子を微笑を浮かべて、観察する伊集院。その時、エクスは肌で感じる、
敵は能力者だと。実際、彼は能力者であり、地形の色事に別々の技を繰り出せるのだ。
しかし、エクスは戦闘に至ってはど素人であった。だから、伊集院の能力に対して、どうすることもできなかった。

「ま、まじかよぉお!え、枝や・・・つるが・・・襲ってくるっ!!」

「っへ・・・・・マジだぜ?ボウヤ・・・・・。捕まらねぇ方がいいぜ?・・・・・
 体引き裂かれるか・・・・・押し潰されちまうぜ・・・?」

「(っく!!・・・・本気で・・・・・死んじまうじゃねぇか・・・・・これが・・・・
 戦いって奴かよ・・・・・くそっ!!・・・・何で俺が、こんなところで死ななきゃ
 いけねぇんだっ!!)」

「必死なとこ悪ぃけどよぉ・・・・御宅、たばこって奴を吸ったことあるか?」

「は・・・・話かけんなぁああ!!こっちは、命がけで走ってるとこなんだよぉお!!」

「そいつぁ、悪ぃな・・・・なら、勝手に話させてもらうぜ。俺様の子分がよぉ、
 俺にたばこを薦めてきたんだよ。無論、断ったぜ?・・・・・たばこって奴ぁ、
 吸ってる奴、吸ってる奴の周りまで害が及ぶからなぁ」

突然、「たばこ」について伊集院が話し出す。そして、懐からたばこを取り出すと火を
つけて煙が出ているたばこをじっと眺める。そんな中でも、息を切らしながら、
全力で襲い掛かるつるや枝から逃げ回っているエクス。

「すげぇよな・・・・たった一本が全員に害をくわえるんだぜ?・・・・・
 人間に例えれば・・・・そいつ、神だぜ?・・・・・一人殺すよりぁ・・・
 10人殺す方が・・・・名誉だってなぁ・・・!!」

「・・・へ、へへ・・・・・・ったりめぇだろっ!!悪人って奴を・・・・
 一人倒すより、100人倒す方が、名誉ってもんだろうがっ!!」

「・・・・水さしてくれんじゃねーか・・・・ボウヤ・・・せっかく俺様が
 良い気持ちで話てんのによぉ・・・・」

伊集院が突然、表情を冷酷な面に変える。たばこをそこら辺に捨てて、ゆっくりと
走っているエクスに向かって歩み寄る。それと同時に、えだやつるのエクスを襲う
スピードや数もケタ違いに増えた。

「(まずいっ!何か知らねーけど、えだやつるがさっきよりも増えてやがる!!)」

「気分、悪い・・・・おまえ・・・・・死んでくれね?」

「ッ!!やべぇえ!(枝に足が捕まった!?)」

「・・・・・ゲット・・・・!!」

足が枝に捕まってしまい、そのまま無数の枝やつるがエクスにとりついてくる。
しだいに、エクスの体が枝達によって覆いかぶさっていく。このままでは、
伊集院が言う「押し潰す」というのが実行されてしまうだろう。

「っぐ!!(や・・・・やべぇ・・・・・体が・・・・・潰される・・・・!!)」

「久々に楽しかったぜ?案外、変な奴だったけどな・・・・・あばよ」

「うぐっ!!(か・・・・体がぁ・・・・・!!!)」

そして、エクスが見えないほど枝やつるがエクスをしめつける。中にいるエクスは
生きているかどうかも不明である。伊集院はエクスの声が聞こえないのを確認して、
後ろを向いて去ろうとする。エクスの声は、しない。

「俺様、案外ビビリ屋だから・・・・・グチャグチャになった死体なんて
 見たくねーんよ」

伊集院は笑みを浮かべる。これが、「彩色使い伊集院・薫」の強さ、盗賊団の頭の
強さなのだ。彼によって、32代目主人公、エクス・コールドは死んでしまった
のだろうか。だが、それは運命がゆるさなかった。

「・・・・・震えるほど・・・・・・業火だぜぇ・・・・・!!」

「ッ!!おいおい・・・・・俺様の攻撃色に・・・・・耐えたってのかよ・・・!?」

「・・・・助かったぜ、伊集院・薫。たばこのおかげで・・・
 炎と同化できたんだからよぉ!!」

エクスを取り囲む枝やつるは、たばこの炎と同化したエクスの熱によって
溶かされている。これで、伊集院の緑の攻撃色、「支配」はまるで無意味に
なってしまったのだ。エクスの周りだけでもかなりの熱気がこみあげてきているのだ。

「自己紹介・・・・忘れてたぜ、伊集院・薫・・・。俺様はぁ・・・32代目主人公、
 エクス・コールドだっ!!」

「な、なんだとっ!・・・・こいつ・・・・主人公!?・・・っち・・・
 なんでこうも俺様は・・・・主人公って奴と縁が切れねぇんだ・・・!」

「チビるほど・・・・・ビビらせてやるぜぇ?・・・・伊集院・薫・・・・!!」

「っく!」

形成は完全に逆転。ここは緑しかない。だから、どうやっても伊集院に勝ち目は
ないのだ。歯を強くかみ締め、くやしさをあらわにする伊集院。確かに、彼の性格
からしてこういう展開は一番嫌いなのかもしれない。

「・・・へ、へへ・・・・・死ぬくれぇなら・・・・逃げ出す方がマシだぜ・・・・。
 でも・・・・・今度あったら・・・・・覚悟しとけよ・・・・
 エクス・コールド・・・・!!」

「こっちの台詞だ、伊集院・薫!」

そう言うと、伊集院はその場から逃げてしまった。それと同時に、伊集院の盗賊団も
その場から去っていくこととなる。とりあえず、エクスはチーム「ナポリュート」の
命を救ったということになったのだ。

「ふぅ〜。何とか終わったかよぉ・・・・って、熱ぃい!!・・・・
 な、なんだこりゃぁあ!!同化ってのには、なんでこうも弱点が一つや二つ
 あるんだよっ!」

エクスの体も炎の同化によって、熱の影響を受けていた。正常に動いていられるのは
せいぜい3、4分程度だろう。それ以降は、倒れるか、自身が溶けるかだろう。
エクスは急いで、チームのメンバーを探す。

「おーいっ!!隊長っ!と、リオーゼ・・・・・おーい!誰かいるかぁあ!!」

「っく・・・・・エクス・・・・コールド・・・・」

「ん?・・・・ッ!!リオーゼ、大丈夫かよ!」

「っち、おまえに助けられるとは・・・・醜態だ・・・・・」

「何でテメェが、こんなに傷ついてるんだよ」

「・・・・くそ・・・・奴らめ・・・・・なぜ、あんな輝かしいダイヤモンドを
 首に・・・!思わず、目が見とれてしまった・・・!!」

「・・・・・へいへい、ただバカやったってことな。ほれ、捕まれ。リオーゼ」

エクスがリオーゼに手を差し伸べる。リオーゼは少し戸惑いの顔で、エクスを見る。
そして、すぐにエクスから目をそむける。なにか恥ずかしそうな、くやしそうな顔を
しながら。エクスはそんなリオーゼを見て、疑問に思う。

「どうしたんだよ?捕まれよ、リオーゼ」

「・・・・・僕は・・・・・う、美しくないっ!!・・・・・僕は、間違えた
 答えを導きだした・・君が・・・・君が美しかった!!・・・・・・もし、
 僕の言うとおり、僕が奴らの頭を倒す担当をしていたら・・・・
 僕達は全滅していた・・・・」

「なんでぇ、そんなことかよ・・・」

「だから、だから僕は自身がゆるせない!!・・・・・こんな君を、
 美化にしてしまう僕が・・・!」

「ったくよぉ、リオーゼ・・・・・全員、助かった!・・・・
 そういう結果がありゃぁ・・・・十分・・・・・
 美しいと思うぜ、リオーゼ?」

「・・・・・・・エクス・・・・・君、案外良い奴なんだな・・・・・・・
 でも、嫌いだ」

「っく!どうして、てめぇはぁあ!!」

こうして、エクスとリオーゼはいつもの関係に戻るのであった。その後、このみに
よって呼び寄せられたアカツキ軍の救助部隊が到着し、傷ついた流厳も保護された。
よって、チームナポリュートは「成功」という結果を収めたのであった。


それから、数日後。チーム「ナポリュート」のメンバーは傷の治療のために、自分達の
部屋で休息をとっていた。比較的、無傷のエクスとこのみは看病にあたっていた。
それに、エクスは楽しみでしかたなかったのだ。

「おい!隊長っ!!いつだよ、いつその、連絡が来るんだよっ!」

「これこれ、慌てるでない、エクス。恐らく、今日中には届くじゃろう」

「あんな難しい任務を成功させたんだっ!一気に順位も跳ね上がってるだろっ!!
 もしかしたら、1位になってるかも!」

「フン、本当に君は単細胞だな、エクス。せいぜい・・・・良くて20位代、
 悪くて30位くらいだろう」

「えーっ!!リオーゼ、もっと夢見ようよぉ。私達、こんなに頑張ったんだから、
 すっごーいランクアップしてるよぉ!」

「こ、このみ・・・・・もっと、美しく物事を考えろ・・・」

すると、部屋のポストらしきところに、何やら手紙が届く音がした。その音を察して、
流厳は自らポストに赴き、手を伸ばす。案の定、「結果報告書」であった。
流厳は冷静に手紙の内容を見る。

「き、来たのか!?・・・・俺達、何位になったんだよ!!じらすなよ、隊長!!」

「・・・・・・エクス、自分で見た方がわかるじゃろ」

「わ、わかった!!へへ、さぁ〜て、何位かな!!・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・?・・・・・どうしたの、エク兄ちゃん。私達、何位になってるの?」

「早く言いたまえ、エクス・コールド。まったく、美に欠ける男だな」

「ふ・・・・・ふざけんなよっ!!何だ、これ!どういうことだよ!!・・・・・
 俺達が・・・・・40位・・・・・最下位だと!!?」


8 :匿名希望 :2007/05/26(土) 12:58:36 ID:onQHWiL3

 〜 第2部隊トップ、エントフィート 〜

それは、衝撃だった。チーム全員が、落胆した。チーム「ナポリュート」。前回、
40チーム中、36位。そして、現在。40チーム中、40位。最下位に転落したのだ。エクスは手に持った紙を持って、震えた。

「ふ・・・・ふざけんなよっ!!俺達は、あんなに・・・・あんなに命を賭けて
 頑張ったのに・・・さ、最下位・・・・だとぉ?・・・・・・・
 冗談じゃねぇよ!!!」

「っく!・・・・僕も、納得がいきません。我々は作戦を成功させた。事実、
 盗賊団はアカツキ軍、侵攻の道から撤退したはずです!・・・・隊長・・・・
 これは、いったい・・!?」

「わからん。わしにも、何が起こっているのか不明じゃ。ただ・・・・・わしらは、
 降格したのじゃ・・・・・昇格でも、ランクアップでもなく・・・・降格したのじゃ」

「そ、そんなぁ・・・・・エク兄ちゃんも・・・リオーゼも・・・・隊長も・・・・
 みんな・・・・あれほど頑張ったのに・・・・・こんなの・・・・・ないよ・・・!」

落胆するチーム「ナポリュート」。ショックで、泣き出しそうなこのみ。すでに
あきらめた表情の流厳。珍しく怒りの表情になるリオーゼ。そして、何処からみても
怒り爆発なエクス。手に持った紙を握り締めて、エクスは決意する。

「・・・・・納得いかねぇ!!俺様が・・・・聞きにいってくる!!」

「こ、これっ!!エクス!待つんじゃ!」

エクスは勢いよく、扉から外に出て行った。納得できなかった。ただ、真実を
聞きたかった。エクスが向かったのは、アカツキ軍の総管理室。ここには、
いち早く最新の順位が掲載され、多くの部隊のチームが、集まっていた。
受付係りの女性に、エクスはかみついた。

「おいコラっ!!何でだよっ!!」

「!?・・・・ど、どうかなさいましたか?」

「何で俺達のチームが格下げになってんだ!!」

「?・・・・すみませんが、所属部隊と、チーム名を」

「第2部隊の、ナポリュートだっ!!」

「ナポリュート・・・・・・・・・あぁ、このチームですか。当然です。
 あなた達は作戦に失敗したのですから」

「はぁ!?作戦は成功したはずだろっ!」

「あなた達は、我々の救助部隊を呼びました。つまり、自分達の部隊が壊滅に
 追いやられそうだから、任務失敗を悟り、我々に救助を求めた・・・・。
 そうではありませんか?」

エクスは驚いた。その受付係りの女性の対応に、怒りも反発する意思も生み出せ
なかった。ただ、ぶつけようのない絶望感だけがエクスをとりかこんだ。だから、
エクスは逃げた。怒りという感情に、逃げ出すしかなかった。涙目のエクスが叫ぶ。

「納得できるかよぉお!!アカツキに・・・・アカツキに会わせろっ!!俺達は、
 任務に成功してた!!別に救助はいらなかったんだ!!」

「しかし、事実、救助を呼びました。任務は失敗。チーム、ナポリュートは最下位に
 降格です」

「俺達は血をみたんだぞっ!!おまえに・・・・おまえに何がわかるっ!!」

「おいコラ、はやくどけよ!」

「ッ!?」

すると、エクスの後ろには何処の部隊、何処のチームかもわからない数人の男性が
エクスの後ろに並んでいた。男達のリーダーが、今にも泣きそうなエクスに、
質問をする。

「さっきからうっせーなぁ・・・・おまえ、何処のチームだよ」

「っく!!ナポリュートだっ!!」

「ナポリュート?・・・・・ップ!ハハッハハッハハハハハハッハッハッハ!!」

「?・・・・な、何がおかしい・・・・!」

「あの落ちこぼれチームかよっ!こりゃぁ、お笑いだぜ!ついに、最下位か!
 おめでとう、全部隊、全チームで一番使えねぇチームがようやく最下位か。
 こりゃぁ、今夜は宴だぜ!」

「く・・・・くっ・・・・・・俺達が・・・・・何をしたっていうんだ・・・・・・
 命令通り・・・・したってのに・・・・・・なに・・・・・笑ってやがる・・・・・
 てめぇに・・・・・・・笑う権利はあるのかよぉおおお!!!」

エクスが笑っている男に殴りかかろうとした。エクスはもう、どうしようもなかった。
悲しくて、ムカついて、絶望して、切なく、怒って・・・。すべてが、エクスを
孤独にした。エクスは一人になったと思った。その時、誰かが叫ぶ。

  「エ、エントフィートが来るぞぉお!!道を開けろぉおお!!」

「ッ!?(エ、エント・・・・フィート・・・・?)」

「じょ、冗談だろ!?おい、ガキ!てめぇも早くどかねぇと、大変な目にあうぞ!」

しかし、エクスには聞こえていなかった。そのうち、男性達は何処かへと去ってしまい、その場にはエクスだけが残った。すると、扉から、何十人もの集団が入ってくる。
その集団のリーダーとも思える銀色の髪の、赤い目の男が、ボーっと突っ立っている
エクスの前で止まる。

「(こ・・・・こいつが・・・・・・エントフィート・・・・!
 第2部隊・・・・・・トップのチーム!!)」

「・・・・・・邪魔だ、小僧・・・・」

「(ッ!!・・・な、なんだ・・・・こいつの目・・・・・赤い・・・・
 殺戮の眼をしてやがる)」

知らないうちに、エクスは道を開けていた。本能が、危険と感じて、エクスの身を
守ったのであろう。エクスの横を通り過ぎるエントフィート。しかし、エクスはすぐに
自身に目覚めた。そして、また、赤い目の男の前に出る。

「お、おい!!おまえ、エントフィートの隊長なんだろ!?」

「・・・・・・・消えろ、目障りだ・・・・・」

「おしえろっ!!・・・・どうすりゃぁ・・・・・どうすれば、
 あんたらを超えられる!!」

「・・・・・ッフ・・・・・俺達を・・・・超える、か。おもしろい小僧だ・・・。
 チームと名を言え」

「ナポリュート、エクス・コールドだっ!」

「・・・・ナポリュート・・・・・か」

その男の反応は、さきほど会った者達とは違う反応だった。バカにしている素振りは
見せず、逆に何か警戒心を高めているような感じがした。赤い目の男は、エクスの目を
見て、話す。

「エクス・コールド・・・・新人か。・・・・・我々を追い越すには・・・・・・
 任務をこなせば良いだけだろう・・・・」

「だから、おまえらを追い越すくらいの任務が欲しいってんだ!!」

「・・・・・・・・ためして、みるか・・・」

「?」

赤い目の男は、エクスに一枚の紙を渡した。それは、作戦の内容が書かれた紙であった。
本来、作戦というのはその部隊のチームが決めるのではなく、上層部が決めること
なのだ。最下位となったナポリュートには、滅多に作戦が降りてこないのだ。

「・・・・難易度D・・・・トランプス狩りだ・・・・・・本来は、我々の任務だが、
 おまえに託してやろう・・・・」

「トランプス・・・・狩り・・・・って!トランプスの幹部を倒すのか!?」

「・・・・・ダイヤの6が一人で行動しているという情報が入った・・・・・・。
 精々、頑張ることだな・・・・・・」

「・・・・ま、待てよっ!・・・・名前は・・・・おまえの名前は何て言うんだっ!」

「・・・・・・・シルヴァ・・・・・」

そう言うと、シルヴァとその集団は奥にある部屋へと入ってしまった。呆然とする
エクス。結果的には、順位1位のエントフィートからお情けをもらってしまったのだ。
最下位と最高位との差。経済的にも余裕があるのだろう。けれども、エントフィートの
隊員は快く思っていなかった。

「シルヴァ様っ!あんな最下位のチームに、我々に与えられた作戦を・・・・」

「・・・・・・・ナポリュート・・・・・流厳のチームか・・・・・・・。
 厄介だ・・・・・・こういう噂を聞いたことがあるか・・・・?」

「?・・・・噂、ですか?」

「・・・・・32代目の主人公が、アカツキ軍にいると・・・・」

「!?、しゅ、主人公が・・・・・バ、バカな!トランプスも、まだ31代目の主人公が
 突然、行方不明になり、混乱しているというのに・・・・我々の軍が・・・・
 32代目を・・・」

「・・・・・可能性とすれば、最近入ってきた奴だ・・・・・・
 もしかしたら、な・・・・」

シルヴァは主人公がアカツキ軍にいるという噂を知っていた。いや、噂ではないのだ。
けれども、誰もエクスが主人公だとは思っていないのだ。そのころ、エクスは急いで
ナポリュートの部屋に戻り、事情を話していた。

「・・・・フム、そういうことか・・・・・・」

「っく、変な言いがかりをつけて、僕達を孤立させるつもりか・・・・・美しくないな」

「ったく、本当に汚ねぇ奴らだぜ!!・・・・・ん、あ、そうだ。
 作戦をもらってきたぜ」

「ッ!?・・・・エ、エクス・・・・なぜ、おまえがその作戦用紙を
 持っているのじゃ!!」

「そ、そうだっ!突然なる美っ!・・・・僕にも、美しいか、汚いか判別できないが。
 僕らは作戦に失敗し、最下位だ!・・・・・最悪で、1年は作戦が降りてこない!
 なのに、たった1日で・・・・もう作戦が・・・?」

「も、もらったんだよ・・・・・エントフィートのシルヴァって奴から・・・・」

その言葉を聞いて、表情が引きつる流厳とリオーゼ。しかし、このみに至っては、普通に
エクスと共に喜んでいた。

「やったぁ!これで、また昇格のチャンスが掴めたね!エク兄ちゃん!」

「おうっ!今度こそ、順位を上げてやるぜっ!・・・・って、どうしたんだよ、
 隊長、リオーゼ」

「・・・・・・隊長・・・・・奴は・・・・何を考えているんですかね・・・・?」

「うむ・・・・・・裏がありそうじゃのぉ・・・・」

二人はシルヴァをよく知っていそうであった。エクスとこのみは、二人を不思議そうに
見る。しかし、とにかく再びチーム「ナポリュート」は昇格のチャンスを掴んだのだ。
最下位では、未来は見えない。果たして、エクスはナポリュートを1位へと導くことが
できるだろうか・・・?


9 :匿名希望 :2007/06/03(日) 20:37:35 ID:onQHWiL3

 〜 A heavy shiver その1 〜

作戦内容、「ダイヤの6を倒せ」。それが、ナポリュートを救うわずかな光だった。
最下位のナポリュートにはもう後が無い。それだから、答えもシンプルに出すことが
できた。現在、アカツキ軍はスペードの領地にいる。だから、ダイヤの領地に赴かなくてはいけないのだ。そのため、荷造りをする4人。

「荷物はなるべく少なめにするんじゃぞ。今回の任務には、我々しかいない。
 助けを求める相手も、共に戦う相手もいない。我々は孤独な中で・・・・・・」

「へっへー!リオーゼ、鏡が欲しかったら取ってみろぉ!」

「ガキか、おまえはっ!さっさと返せ!君の汚い油が、僕の清潔かつ鮮麗された鏡に
 付着してしまうではないかっ!」

「う〜ん、と。ポテトチップスと、チョコレートと、キャラメルはひつじゅ・・・・
 ひちゅじゅ・・・・・・ひ・・・・ひちゅ・・・・・」

「・・・・このみ、それを美的感覚で言うと、必需品だ」

「そうだっ!必需品で、後はキャンデーと、グミがサブメインで・・・・・」

「こ、こらぁ!!おまえら、ワシの話を聞かんかっ!」

まるでまとまりのない4人。エクスはリオーゼの鏡を取ってリオーゼをいじめ、
リオーゼはそのエクスを必死においかける。このみはのん気に、荷物にいらない
お菓子類を詰め込む。果たして、こんなので、4人はトランプスに挑むことが
できるのだろうか・・・?

「このみ、旅の途中でチョコレート分けてくれよっ!」

「うん、エク兄ちゃん!夜は皆でトランプしようね!」

「・・・・ふぅ・・・・・隊長、このみは子供だから良いとして・・・・・・
 このバカは何とかなりませんかね?」

「う、うむ・・・・。やる時は、やってくれる奴だとは思うがのぉ・・・・」

あきらめた顔でエクスを見るリオーゼ、同様に困った表情の流厳。とりあえず、前回の
件で、エクスに対する評価はまぁまぁ上がったものの、やはりまだ普段の生活では
そんなエクスが信じられなかった。そして、だいたいの荷造りが完成したころ。

「よし、各自それぞれ荷物の用意はできたな?それでは、ダイヤの領地に向けて
 出発するぞい!」

「よっしゃっ!!トランプスでも何でもかかってこいだぜっ!」

「まったく・・・・・無知なバカは、考えが単純で苦労しないな・・・・・」

「あぁん!?リオーゼ、何か言ったか!」

「さぁ、行くぞ。このみ、バカ」

「おいコラっ!最後だけ、人間の扱いがされてなかったぞ!おい、リオーゼっ!」

しばし、口喧嘩をしながらもナポリュートはダイヤの領地に向けて出発する。そのころ、
ダイヤの領地、そしてダイヤの本拠地である城の中心。そこには、ダイヤのキング、
「カエサル」がいる。彼は若干13歳にして、キングの地位に就く。

「・・・・・おい、大臣。あれ、どうなってんの?」

「・・・あれ、と申し上げますと?」

「あれだよ、あれ。え〜と・・・・・そうだ、31代目と、ジョーカーの件。
 アレキサンダーとかダビデも僕に探索しろって言ってきたから・・・・
 調べたんでしょ?」

「はい。しかし、調べたとはとても言い難いものでございます。31代目、つまり時人と
 ジョーカーは数年前に突然と姿を消したまま・・・・未だにそれ以上は
 掴めておりません。ただ、すでに32代目主人公が存在している模様でございます」

「・・・・それって、時人?」

「いいえ、今回は今聖人でございます。どうなさいますか?どちらに重点を置いて、
 調べさせましょうか?」

「・・・・・どーっちでもいいよ。どっちにしろ・・・・みーんな、死んじゃうんだし」

不気味な笑みを浮かべるダイヤのキング、カエサル。彼には慢心がある、しかし、
それは自身の強さを分析した結果を踏まえて述べている。彼は強い。だからこそ、
余裕が出てくるのだ。刻一刻と、トランプスの魔の手がエクスにも
忍びつつあったのだ・・・・。


ここはダイヤの領地。チーム「ナポリュート」は無事、ダイヤの領地に行き着く
ことに成功した。しかし、すでに空は真っ暗。もう歩くことが困難になっていた。
4人の体力的にも。しかたなく、何処かに泊まるお金も無いので、野宿すること
となった4人。

「えぇ〜!野宿なのぉ、隊長ぉー」

「すまんな、このみ。女の子のこのみにはつらいかもしれんが、我慢してくれ。これも、
 ナポリュートのためじゃ」

「ううん!別に良いよ。私も、ナポリュートの一員だもんっ!」

「このみ、美しいぞ。何処かの単細胞と違ってな」

「聞こえてるぞっ!リオーゼ!」

野宿が決定する、ナポリュート。すぐそこには、明かりが点々と咲き乱れる、建物が
立ち並んでいる。しかし、その光に当たることはできなかったのだ。しかたなく、
その場で夕飯の支度をする4人。どうやら、定番のカレーを作るようだ。

「このみ、にんじんはなるべく小さめに切れよ。一本しかないんだ。
 量でごまかすしかない」

「了解っ!リオーゼ」

「く、くそぉ・・・・なんで俺様が皮むきなんだよぉ・・・・
 こういうチマチマしたのが一番苦手だぜぇ」

「・・・そういえば隊長。前から疑問に思っていたのですが、隊長はどうやって
 戦っているのですか?」

「うむ?・・・・ホッホ、それは秘密じゃ。楽しみにとっておくのじゃな」

笑顔で答えながら、野菜を洗う流厳。ナポリュートは主に任務をしたことがない。
だから、前回の作戦がほとんど初めてだった。しかも、リオーゼと流厳は離れていた
ため、流厳の戦っている姿を確認することはなかったのだ。そんな中、
何とかカレーは完成する。

「で、できたぁ〜!特性、ナポリュート風コエリタカレーッ!」

「?・・・・コエ・・・リリ・・・?・・・・何だ、それは?このみ」

「こがこのみで、エがエク兄ちゃんで、リがリオーゼで、タが隊長っ!」

「う、うむ。なかなか・・・良いネーミングセンスじゃの、このみ」

微妙な反応をとる隊長とリオーゼ。エクスに関しては、目の前にあるカレーに目が
釘付けで、それどころではなかった。それを察してか、流厳はカレーをさっさと皆に
配り、早く食べれるようにした。

「それでは、頂くとしようかのぉ」

「よっしゃっ!!それじゃぁ、いったっだきま〜・・・・・」

ガシャンッ!!!

突然、皿の割れる音がする。誰かが、カレーごと皿を落としてしまったらしい。
率直に言えば、このみである。しかし、その落とし方が尋常ではなかった。このみの
体全体が、地面に吸い寄せられてるかのごとく、倒れているのだ。

「こ、このみ!?・・・どうした?極度の疲労から、体が耐え切れなくなり、
 倒れたのか!?っく、迅速な美しい判断をしなければっ!」

「・・・・ち・・・・が・・・・・」

「ッ!・・・リオーゼ、静かにするんじゃ。このみが何か言っておる!」

「・・・・・お・・・・もい・・・・体・・・が・・・・・おも・・・・く・・・・・」

「か、体が重いって・・・!?・・・・そ、そういうや・・・・俺様も・・・・
 手・・・手が・・・・頭が・・・・お、重くなってきてやがるっ!!」

「・・・・マズイ・・・・・これは、大変なことになったぞぃ!ワシらから
 仕掛けるハズが・・・すでに、ダイヤの6から攻撃を開始しておるっ!」

「で、出遅れたというわけですか!?・・・・ッ!?・・・・な、何だ?・・・・
 僕も・・・・体が・・・・重くなってきた・・・!!」

突然なる攻撃。それは、ふいを突かれた。これは、思っても見ない最悪の展開だった。
まず、冷静な判断力が欠け、しまいには自分から墓穴を掘ってしまう。ナポリュートに
とって、危機が訪れようとしていた。そんな姿を木の上から余裕の表情で眺める、一人の男が・・・・。

「クククッ・・・・・ダイヤの6、レザート。参りますよ・・・・」


10 :匿名希望 :2007/06/10(日) 12:03:30 ID:onQHWiL3

 〜 A heavy shiver その2 〜

突然の事態。チーム「ナポリュート」は、困惑した。けれど、無理もなかった。
「襲う」側が、「襲われる」側に変わってしまったからだ。倒れているこのみを
心配しながらも、回りを警戒する3人。

「しゅ、襲撃されてるってのかよぉ!?それって、ヤバイんじゃねぇか!」

「エクス、落ち着けっ!元々、醜態なのに、もっと自分を汚したいのか!」

「っく!てめぇは、いちいち・・・・!!」

「静まるんじゃっ!エクス、リオーゼ。漫才をしている場合じゃないぞぃ。
 リオーゼは、後方をたのむ、エクスはこのみを見るのじゃ」

「・・・・・りょ、了解・・・・って・・・・言てぇんだけどよぉ・・・・
 隊長・・・・」

「?」

エクスが、言葉を苦しそうに語る。その普通ではないエクスの状態に、リオーゼと
流厳はエクスの方を向く。エクスは、震えるひざを抑えて、必死に立っていた。
どうやら、立っているのが精一杯らしい。

「?・・・・ど、どうしたのじゃ。エクス」

「か・・・・・体が・・・・・・重ぇえ・・・・・!!」

「(!?このみと同じ症状が、エクスにも起きている。これが、トランプスの幹部らが
 使う能力と呼ばれるもの・・・・・・エクスが欠ける、残りは僕と隊長だけ・・・・。
 勝てるのか?二人だけで・・・・・あのトランプスに・・・・!?)」

「エ、エクスまでもが・・・・・リオーゼ、心をかき乱してはいかんぞ。
 こういう状況でこそ、冷静を保つのじゃ。相手に、こちらが少しでも
 混乱している素振りを悟られてはいかん!」

流厳は、リオーゼに向かって忠告する。しかし、それは無意味なものであることが
リオーゼにはわかっていた。自分達を狙っているトランプスはこちらの状況を把握
しきっている。動揺していることも、焦っていることもすべて見透かされていることを。

「いいか、リオーゼ。恐怖、混乱をかき消すには、別の疑問を立てることじゃ。
 恐怖を疑問に変えるのじゃ。まず、なぜエクスやこのみが重いと言って、倒れて
 しまっているか?そのことについて考えるのじゃ」

「お・・・俺様はまだ・・・・・倒れてねぇ・・・・!!」

「わかりました、隊長。しかし、実際。僕もじょじょに体が
 重くなってきています・・・!このままでは、チームが全滅してしまいます!」

「(それが問題なのじゃ。ワシも体が重くなってきている。なにがワシらの体を
 重くさせているのじゃ?この重さはまぎれもなく、トランプスの能力に
 よる攻撃・・・!!ならば、何が重さの用量を左右しているのじゃ・・・・!?)」

「ッ!!隊長、何かが来ます!」

しかし、その「答え」はあっけなくあばかれることとなる。突然、チーム
「ナポリュート」の前に一人の男が現れる。それは、まぎれもなく、
トランプスの幹部、ダイヤの6だろう。少し、微笑を浮かべて4人を見る。

「初めまして。俺はダイヤの6、レザート。君達は・・・・俺を狙っている
 所見ると、アカツキ軍といった所かな・・・?」

「ふむ・・・・我々の目の前に現れて、大丈夫なのかのぉ?レザートとやら」

「フッフッフ、君達がすでに普段の5分の1の動きしかできないことは
 確認済みだからね。今なら安心して前に出れるし、話せるし・・・・殺せるからね」

「(ダ、ダイヤの6!・・・・言い換えれば、殺し専門のプロ集団。そのナンバー6が、
 今、僕らの目の前にいる・・・・なぜだ、なぜ隊長は平然でいられるんだ?)」

「まぁ、もう言っても良いと思うけど、俺の能力の名はヘビー・ワード。その名の通り、
 言葉を発すれば、その1文字につき体が重くなっていくのさ。けど、二人が限定でね。
 そこの女と男を先に能力にかけて、次に君達に能力をかけたってわけさ」

トランプスの6、レザートはいとも簡単に、自分について語ってしまう。しかし、
これにはちゃんとした「勝利」への断定があるからこそ、できることなのだろう。
それがわかっていたから、隊長とリオーゼは何も言えなかった。しかし、
エクスは違った。

「お、おい・・・・・!じゃ、じゃぁ・・・・何で・・・・俺様と・・・・
 このみの・・・・この重さは・・・・解除・・・・されねぇんだ・・・・!!」

「半径1、5キロ以内なら、重さをかけた相手には持続性が残るのさ。残念だったね、
 坊や」

「くそ・・・・・どうすりゃぁ良いんだ・・・・!・・・・
 おい、どうすんだよ、リオーゼ!!」

「・・・・・・・」

「おい!何シカトしてんだよ!」

「(こいつ本物のバカかっ!?さっき、トランプスが言語喋ったら重くなると
 言っているのに!・・・・・待てよ、喋れない?・・・・・まずい、
 喋れないとなると、隊長との攻撃の作戦の打ち合わせのしようが無いっ!)」

リオーゼはその「ヘビー・ワード」の真の恐ろしさに気づく。意思疎通ができない。
これが、最大の落とし穴であった。リオーゼは流厳の目を見る。同時に、流厳も
リオーゼの目を見る。しかし、二人は戦闘を滅多に行わなかったために、
何も通じ合うことができなかった。

「ッフッフッフ・・・・あいにく、この能力で人を殺めることはできません・・・・。
 だから、とどめを刺すのには・・・・・このムチで・・・・
 やると決め手います・・・」

「(ッチ、戦闘の障害を計算する・・・・スピード、普段の4分の1。パワー、
 普段の2分の1。地形については問題なし。後は奴のムチのクセ、軌道性を
 読み取れば・・・・・まだ、美的勝利学を失ったわけではないっ!)」

「(リオーゼは恐らく、戦闘をすることを考えておる。ワシも同感じゃ。リオーゼ
 ほどの戦闘センスを持っておれば、おのずと連携のタイミングは導き
 だされるじゃろう。じゃが・・・・問題はそこではないのじゃ・・・・・)」

リオーゼは背中に装備してある2刀の剣を取り出す。それと同時に、流厳も腰に
つけている剣を取り出す。その様子を見て、あいかわらずの余裕の表情でムチを
あらためて構えるレザート。そして、初のトランプスとの戦いが始まるのである。
しかも、エクス抜きで。

「やる気のようですね・・・・・それでは、ダイヤ6、レザート。参ります」

「(来るっ!隊長は僕の行動に合わせてくれるはずだっ!僕は右から回り込む、
 隊長は左からお願いします!)」

「(リオーゼが右から回り込んでおる、ワシは左に行けばいいのじゃな!ムチの
 変則的な動きに惑わされるでないぞ、リオーゼ!)」

「ほぉ・・・・中々の戦士と見ました・・・・」

戦闘に関してある程度の経験がある二人。見事に、言葉を交わさずに連携プレーに挑む
ことに成功する。しかし、レザートにとっては想定内のことであった。ムチを
変幻自在に操り、二人を近づけさせない。

「ッフッフッフ。このムチ、ただのムチとは違いますよ・・・・剣などでは切れず、
 されどこのムチには人間を真っ二つにするほどの刃がある・・・・
 ビビってくれてかまいませんよ?」

「(くそっ!想像以上にムチという武器に対抗できない!このレザートという男の
 腕が上なのか、ムチのその特殊な変幻性にあるのか・・・・いや、両方だろう。
 その両方が噛み合って、僕らをまるで近づけさせないっ!)」

「(なかなかやりおる、この男・・・・このムチの攻撃にパターンが決まっておらん!
 いや決まっておるのかもしれんが、ワシには検討がつかん!何百通りもあるの
 じゃからな。これではただ体力を消耗・・・・・いかんっ!!!そうか、
 これを奴は狙っておったのか!!)」

突然、流厳は一旦、ムチの攻撃から退く。その行動に、リオーゼは疑問を持った。
いくらムチの攻撃に翻弄されてはいても、じょじょに感覚はつかめつつあったからだ。
流厳は必死に手招きでリオーゼに退くようにジェスチャーした。

「(リオーゼ!!いかん、この場はいったん距離をとるのじゃ!リオーゼ!)」

「(なぜだ、なぜ隊長はいきなり奴のムチの攻撃から退けたのだ?せっかく、
 コツという美センスが目覚めてきたというのに)」

「(違うのじゃ!確かにワシもムチの変幻自在性を理解できてきたと思った・・・・
 しかし、これは罠なのじゃ!ワザとなのじゃ!奴の狙いは・・・・・!!)」

「(あと少し、あと少しこのムチに対抗できれば・・・・!!)」

「フッフッフ・・・・賢い奴と、愚か者が一人・・・・ですか」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・(あと・・・・あとすこ・・・・・ッ!?
 ・・・・か・・・・体が・・・・・・重く・・・・・・なったっ!!?)」

「待っていましたよ、そのタイミング。あなたが体力を消耗して、息遣い・・・・
 そう、”は”と”あ”という言語を使うのをね・・・・!」

リオーゼはその場に倒れてしまう。口を手で押さえても、すぐに体力が回復するわけ
ではない。だから当然、リオーゼの体は時の流れとともに、重くなっていく。
息遣いのせいで。流厳はそれを理解したからこそ、さがったのだ。

「(いかん・・・・・いかんぞ・・・・・トランプスを相手に、ワシ一人に
 なってしもうた!)」

「ッフッフッフ。あなた達・・・・・トランプスの幹部・・・・甘く見てませんか?
 死なないとでも思っているのですか?・・・・まぁ、確かに死ぬことはないで
 しょうけどね。けれど、惨殺することはあるんですよね」

「(ワシの検討違いじゃった!作戦を受け取り、少し心がはしゃいでいたのが
 この結果じゃ。甘く見ておった・・・・・ワシらは・・・・・全滅・・・
 いや・・・殺されるっ!)」


11 :匿名希望 :2007/06/20(水) 14:29:59 ID:onQHWiL3

 〜 A heavy shiver その3 〜

トランプス、ダイヤの6に、チーム「ナポリュート」はほとんど壊滅。
エクス・リオーゼ・このみが倒れ、残るは隊長の流厳のみ。しかし、主人公でもない
流厳が果たして、自分の実力と運でトランプスの6に勝てるのであろうか。

「さぁて、残るはあと一人・・・・隊長角と見ました。それでも、
 俺に勝てる見込み・・・・一ケタでしょうけどね」

「(・・・・・ワシ一人で戦うしかない・・・・・ワシの力で・・・・
 ワシの能力で・・・!・・・・・皆を守るのじゃ!!)」

流厳は思う。そう、「能力」を使わないと負けると。流厳がなぜ、能力を持って
いるかはわからない。しかし、今はそれに賭けるしかないのだ。流厳のもつ謎の
能力がすべての鍵を握ることとなるのだ。流厳は、剣を捨てて、地面にある
石コロを拾う。

「おやおや・・・・剣を捨てて、地べたに転がっている石を投げてつけて
 俺を殺すつもりですか!?・・・・ハハ・・・・ハハハッハハハ!
 こりゃぁ、まいった」

「(・・・・・この流厳、外見は二十歳でも、200歳という経験がある。
 ただの石コロではないことを・・・・・この若造に見せ付けてやらんとなぁ!)」

流厳はそう思うと、おもむろに手に持っている石を無謀にもレザートに向けて
投げつける。コントロールは冴えていた。しかし、それは無駄だということは
わかっていた。レザートは微妙に体を動かして避けようとした。

「何か狙っているのですか・・・?いや、そんなハズはない。ハッタリ・・・・ですか」

「(ホッホ・・・・・伊達に歳をくっておるわけではない。
 ワシの能力は・・・・膨張っ!)」

「なにっ!!」

バァアアアンッ!!

突然、石が爆発した。いや、爆発したとは言わず、破裂したと言った方が正しいだろう。
ちょうど、レザートの真横で。石の破片がレザートの体に突き刺さる。その場に座りこむ
レザート。

「っぐ!!・・・・・石が・・・・いきなり・・・・破裂した!?・・・・・
 こいつ・・・・・・・能力を持っている!?」

「(ワシはワシの体に触れたものなら、何でも1つ膨張させることができる!
 これを気に、 活路が開ければ!)」

流厳の能力に戸惑うレザート。当然であろう。ただの一般人が「能力」など身に
着けているわけがないのだから。しかし、そこはトランプスの幹部。すぐに冷静に
事態を見る。その間に、流厳は今度は地面に落とした剣を拾う。

「何っ!!今度は剣を投げつけるつもりか!?・・・・奴の能力はまだよくわからない。
 ただ、投げた物が破裂したということはそれとなくわかるっ!ならば、もし剣が
 こちらにむかって爆発したら・・・・・その破片は・・・・・・まずい!」

「(これで・・・・・決めるぞぃ!!)」

「だがっ!!頭の回転が違いますよ、このレザートはねっ!動くなっ!動いたら、
 この男の首をはねますよ!」

「(っく!!リオーゼを人質にとられた・・・・!?)」

あと一歩。あと一歩のところをレザートの残虐さ、卑怯さが上手をいった。
ゆっくりとリオーゼに向かって歩み寄るレザート。一気に形成は逆転されてしまった。
ようやく光が見えたと思った矢先の出来事だった。

「ハハ・・・・・ハハハッハッハ!いや、褒めるべきでしょうね。このダイヤの6に
 ここまでのことをやらせるのですから。・・・・・だから、その失態をモミ消す
 ためにも・・・・・確実に殺す・・・・!!」

「(最悪の事態じゃ・・・・・どうする・・・・・ワシは・・・・隊長として・・・・
 どう判断すればいいのじゃ・・・・!?)」

「た・・・・・隊長・・・・・・僕に・・・・・かまわず・・・・・・!」

リオーゼは死ぬことを恐れないであろう。例え、流厳がリオーゼを犠牲にしても、
リオーゼが恨まないことなど誰もがわかっていた。しかし、それだからこそ、よけいに
犠牲にできなかった。焦る流厳。そのころ、エクスは重いからだを引きずって、
このみの所に来ていた。

「こ・・・・このみ・・・・・意識・・・あるか?」

「・・・・あ、あるよ・・・・エク・・・兄ちゃん・・・・・」

「未来・・・・読んでくれ・・・・・あと何秒後に、風が吹くか・・・・!」

「か、風?・・・・・」

「あぁ・・・・・あのクソったれ野郎に・・・・向かって吹く風をよぉ・・・・!!」

密かに闘志を燃やすエクス。すでに、エクスとこのみの「ヘビー・ワード」の能力は
解けているため、いくら言葉を喋ったところで重くはならない。けれど、重さは
持続している。エクスもこのみも、本当は喋るのが精一杯なのだ。

「・・・・来るっ!・・・・あと、3秒後っ!」

「サンキュー!!このみ・・・・・っへ・・・・あのツラ・・・・
 ぶっ飛ばしてくるぜ!」

エクスは狙っていた。そう、エクスの持っている主人公としての能力を使おうと
したのだ。そして、流厳とレザートの戦いに戻る。流厳は窮地にたたされていた。
レザートの卑怯な手に成す術がなかった。拳を握り締めて、自分の無様さを
怒るリオーゼ。

「さぁ・・・・・その剣を捨てるのです。さもなくば・・・・
 この者の命・・・・・俺がもらい受けますよ・・・!!」

「(・・・・・駄目じゃ!ワシにはできん!・・・・・くそぉ・・・・何と・・・・
 何と愚かなのじゃ・・・・ワシは・・・・・!)」

「た・・・・隊長・・・・・・!」

「フフ・・・ハハハッハッハッハ!やはり、トランプスは無敵ということだっ!」

流厳は、おとなしく剣を地面に捨てる。これが正しい判断なのか、間違った
判断なのか。答えを知る者はいない。これは、その者の感覚による問題だからだ。
誰も、流厳をとがめることはできない。

「さぁて・・・・無防備になったあなたから・・・・始末しましょうか!・・・・ん?」

ヒュゥウ・・・

「エクス・コールド、遅れて参上だぜぇえ!!」

「何っ!!こいつ、いつのまに!!」

「(エ、エクス!?なぜ、おまえがここにいるのじゃ?)」

「主人公様の一撃・・・・・ぶっ飛べよぉお!!」

「ぐぁああああ!!」

突然現れたエクス。エクスは「風」と同化し、風に乗ってレザートのところまで
来たのだ。そして、力一杯、レザートの頬をグーで殴り飛ばす。
地面に倒れるレザート。それと同時に、同化が解け、重さが体にかかり、
ふせぎこむエクス。

「た・・・・隊長ぉおお!!・・・・・さ、最後のチャンスだ・・・・
 仕留めろぉおお!!」

「わかった!エクス・・・・おまえの魂、しかと受け取った!」

「っぐ!!こんな、バカな・・・!!・・・・させない、やらせるものか・・・!!」

「・・・・・・あばよ、レザート・・・・ッ!」

流厳は即座に、地面に捨てた剣を広い、レザートに向けて投げた。ムチを持って
対抗しようとするレザートだが、ムチの射程範囲以内で剣が膨張し、破裂したため、
すべての破片を防ぐことができないレザートは、蜂の巣となった。

「・・・・・お、重りが・・・・解けた?・・・・・や、やった?・・・・・
 やったぜ!!隊長、あんた以外とスゲー奴なんだなっ!!」

「・・・・ふぅ〜・・・・まったく、自命が2年縮まったわい」

「・・・・・勝った・・・・のか?・・・・あのトランプスに・・・・僕達が・・・・」

「隊長!リオーゼ!エク兄ちゃん!大丈夫!?」

「このみ、おまえこそ無事だったかのぉ?・・・・・大丈夫・・・・・
 終わった、終わったぞぃ。任務・・・・成功じゃ」

こうして、チーム「ナポリュート」はトランプスのダイヤ6を倒すことに成功する。
難易度はDなので、それほど難しいものではないハズなのだがそれでもこれほど
苦戦したのだ。果たして、ナポリュートは上位に食い込める日が
来るのであるのか・・・・。


そして、ダイヤの領地から戻ってきた4人は、自分達のチームで休息をとっていた。
あまりケガはしていないものの、その疲労は大きかった。ベットや床に寝転ぶ4人。

「そういや、このみ。聞いてくれよ、隊長がよぉ、あいつを仕留める時に、
 喋り方が普通に戻ったんだぜ!?・・・・確か、”あばよ、レザート”・・・・
 だっけなぁ!!」

「そうなのぉ!聞きたかったなぁ〜、隊長の若い言葉ぁ」

「こ、これこれ。茶化すでない」

「それより隊長。たしか、自分に触れた物を一つだけ膨張させる能力でしたっけ?
 なぜ我々に言ってくださらなかったのですか。力は美でありますが、
 隠すのは汚いです」

「ほっほ。すまないことをしたのぉ。ただ、戦闘に関することが少なかったんで、
 言わなくても良いと思っての。それはそうとして、エクス。なぜおまえは、
 あの重くなった体で、レザートの真横まで移動できたのじゃ?」

「ん?あぁ、風と同化したからだよ」

「?・・・・同化?同化とはなんじゃ?エクス」

「えーと、だからよぉ・・・・・ん?・・・・おっ!!結果報告書が来たぜ!!」

4人が話している間に、前の作戦結果の手紙が来た。最下位の彼らには、すでに
下がるということはないが、それでもどれだけ上がっているか緊張した。報告書の
内容をじっくりと読む流厳。

「ど、どうなんだよ!?隊長!!」

「ま、前よりどれくらい上がってる!?・・・・も、もしかして・・・・
 下がってるとか・・・・・・ないよね?」

「このみ、僕達は最下位だ。下がることは無い」

「そっかー!なら、安心だね!」

「い、いや、このみ。それは美しくないぞ」

「・・・・・・喜べっ!!ナポリュートは31位じゃ!!9つも上がったぞぃ!!」

「マジかよぉお!!・・・・・?・・・・って、マ、マジかよ・・・・・
 たった9位かよぉ!!」

エクスはショックを受けているが、これは異例の事態でもあるのだ。難易度Dの
レベルで9つも順位が上がるというのは。これも、アカツキがエクスに目を
かけているということかもしれない。

「わがまま言うな、エクス。31位になったのだから、喜ぶのが基本だぞ。まったく、
 汚物の考えることは、結局、汚い結論しか出せないのだな」

「あぁ〜!?てめぇ、全然役に立たなかったくせに何ホザいてやがる!」

「っぐ!・・・そ、それは・・・・・」

「ったくよぉ、何が美だよ。敵に利用されるのが、おまえの美学かよって問題だぜ」

「エ、エク兄ちゃん・・・・・リオーゼが・・・・・」

「ん?・・・・・どわぁあ!!な、泣いてやがる!!何考えてんだ、おまえ!」

「う、うるさいっ!僕は失態を犯した!2度もだ!僕は美のハズだ・・・・
 美の集大成なハズなのに・・・・・・・」

「気持ち悪ぃんだよ!てめぇ、それでも男かよ!!」

「こらこら、静かにせぇ、エクス。とにかく、ワシらは昇格したのじゃ!
 狙うは・・・・第2部隊のトップじゃ!!」

こうして、チーム「ナポリュート」の2回目の作戦は「成功」という形で幕を閉じた。
なぜ流厳が能力を持っているのか?その謎は、後にわかってくるであろう。しかし、
そんな喜びとは裏腹に、「影」は迫ってきていた・・・・・。

「・・・・・見つけたぜ・・・・・・アカツキ・・・・・!」


12 :匿名希望 :2007/06/30(土) 12:39:08 ID:onQHWiL3

 〜 雨の中で・・・ その1 〜

その日は雨だった。季節とか、梅雨には関係無く、ただどしゃ降りの雨が地面を
濡らし、空を黒く染め、辺りに雑音を響かせていた。その黒い日に、混じって、
黒い男がひっそりと忍び寄る。復讐、憎悪、恨み、悪意・・・・
そして、愛を持った黒い男が・・・・。


チーム「ナポリュート」は第2部隊40位中31位。最下位からの返り咲きであった。
しかし、この日は雨。雨を障害とするチームは数多い。だから、こういう日に任務を
こなそうとするチームは少なかった。無論、チーム「ナポリュート」も。

「・・・・・・だぁあああ!!やってらんねぇ!何でだよ!?何で俺様が
 こんな縫い物をしなくちゃならねぇんだよ!」

「エクス、我慢しとくれ。ワシらには金が無いのじゃ。こういうアルバイトをして
 明日の食料を獲得しなければならんのじゃ」

「エクス。めんどくさないのなら、君の縫い物を僕にかしてくれ。やっておいてやるよ」

「おっ!さすが、リオーゼ。心の友だぜぇ!」

「ただし、おまえに一切エサは与えん」

「エ、エサだとぉお!!こ、このぉ・・・・・!!」

「エク兄ちゃん!ほらこれ、返しぬいができてないよ!」

チーム「ナポリュート」は任務成功させた報奨金によって、ある程度の金はあるのだが、
その金はケガの治療、生活費、武器の調達など色々なことに使ってしまうので、
食料はどうしても後回しになってしまうのだ。

「ふ〜む。それにしても、ひどい雨じゃのぉ・・・。ほとんどのチームが、
 自室で待機しているじゃろうなぁ」

「あ〜め、あ〜め、降れ〜、降れ〜、母さんが〜♪」

「?・・・・何を歌っているんだ、このみ?」

「うん?カエルの歌っ!リオーゼも一緒に歌おう♪」

「い、いや・・・・僕は遠慮しとくよ」

ピー、ピー、ピー!!

「ん?隊長ぉ、滅多にならねぇ電話って奴が、久々に悲鳴あげてるぜ?」

「む、どれどれ」

ナポリュートに唯一ある一つの電話。その受話器をとる流厳。大抵、電話が掛かって
くる時は何か臨時の指令が上層部からある時なのだ。普段の生活で電話を使うこと
など、ほとんど無いのだ。

「・・・・・わかりました、すぐに向かいます」

「・・・どうしのですか?隊長」

「ふむ、どうやら軍の内部で事件があったようじゃ。臨時の会議が開かれるらしい。
 それほど時間はかからないとは思うが、少し行ってくるぞぃ」

「隊長。ほらぁ、傘っ!」

「うむ、ありがとう、このみ。では、行ってくるぞい」

そう言うと、流厳は、雨が激しい中、一人で軍の会議室へと向かう。しかたなく、
エクスも縫い物の仕事を再開する。会議室に向かった流厳は、服がビショ濡れに
なりながらも、部屋へとたどり着いた。部屋の中には、すでに他の部隊のチームの
隊長達が集まっていた。

「えー、それでは、緊急会議を行います。皆様をここにお呼びしたのは、
 とある事件が起こったからです。まぁ、簡単に言うと・・・・・第2部隊の
 24位チームが壊滅。全員、殺されました。今日の朝方に」

「(何っ!?ワシらの部隊で、殺人事件が起きたじゃと!)」

「犯人はわかっております。・・・・・・アカツキ軍ではこう呼ばれている男です。
 鬼人・・・・・そう、ゼンです。雨と共に、暗い空と共に我々を襲撃しにきました。
 恐らく、今も近くで息を潜めているでしょう。各部隊のトップチームが対処に
 あたるように。その他のチームは部屋から出ないように、それでは」

「(こ、これはイカんぞ・・・・早く3人に伝えなければっ!)」

アカツキ軍の隊員で、「ゼン」という男の名を知らない者はいない。彼はことごとく、
アカツキ軍を邪魔しているのだ。なぜゼンがアカツキ軍を邪魔するのかは、
「アカツキ」本人しか知らないようだ。

「(ゼン・・・・・確か、前に襲撃した時には第3部隊の6チームが壊滅した。
 何のためにワシらを襲おうとしているのじゃ?・・・・とにかく、
 早く帰らなければっ!)」

流厳は、急いで会議室から出て、ナポリュートの部屋へ戻ろうとする。そのころ、
エクス達はめんどくさそうにも、頑張って縫い物をしていた。外は雨が降っている
ため、部屋の中は蒸していた。

「なぁ〜、もうヤメようぜぇ?このみぃ。リオーゼでも仲間外しにして、
 トランプでもしよおぜぇ」

「このみ。バカの言うことを聞くと、バカになってしまうぞ。聞き流すんだ」

「おいコラっ!何処にバカがいるんだよ、何処にっ!!」

    キャァアアアアアアアア!!

「ッ!!・・・・おい、リオーゼ!!今の悲鳴、聞いたか!?」

「確認しなくても、聞こえているに決まっている!エクス、確かめに行くぞ。
 このみ、おまえはここから動くんじゃないぞ?」

「う、うん!了解しましたっ!」

「ッフ・・・・美しいぞ、このみ。・・・・行くぞっ!バカ!」

「っど・・・・何処まで性根が腐ってやがる・・・!!」

悲鳴を聞いて、部屋から飛び出すエクスとリオーゼ。そして、一人、部屋に残される
このみ。エクスとリオーゼはまだ「ゼン」について知らない。二人は悲鳴の聞こえた
方向へと走る。外は雨が降っていたため、走るたびにドロが巻き上がる。

「ったくよぉ!何処らへんで、聞こえたんだ!?あの悲鳴・・・・」

「この雨の中で悲鳴が聞こえるんだ・・・・相当なことがあったに違いない!
 早急なる、美的救出をしなければ・・・・・!」

「って言ってもよぉ・・・・」

「ッ!!・・・・この匂い・・・・雨なのに・・・・これほどの匂いは・・・・
 エクスっ!!あそこだっ!あそこから、血の匂いがする!」

「ち、ち、ち、血だってぇ!?だって、あそこって・・・・確か、
 19位のチームの部屋だぜ!?」

「とにかく行くぞっ!」

エクスとリオーゼは走る。そして、第2部隊19位のチームの部屋へと入る。案の定、
鍵はこわされていた。急いでドアを開けると、そこには大量の死体、そして
大量の血が飛び散っていた。まさに、地獄の絵図であった。

「う、う、うわぁああああああ!!な、何だよこれっ!これ・・・・
 これって・・・・人間ができることなのかよぉお!!」

「っく!・・・・・静まれ、エクスっ!生きている者がいないか、探すんだっ!」

しかし、無意味だった。顔面がグシャグシャになっているもの。腹を突き破られ
ている者、頭を引き千切られている者。エクスは、あまりの残酷な死体に、
触れることすらできなかった。ただ、震えることしかできなかった。リオーゼも
額に汗をためて、必死に冷静さを保つ。

「くそっ!・・・・・駄目だ、全員即死だ・・・・・」

「リオーゼっ!!はやく・・・・早く逃げねぇとヤべぇよ!!
 俺達まで殺されちまうよ!」

「エクス!落ち着け。犯人はもうここには戻ってこない!これほど派手に殺したのだ。
 叫び声や血の匂いも雨に関係なく効果した!この現場が発見されるのも時間の
 問題だと奴も悟っているはずだ。それよりも・・・・・」

「そ・・・それよりも・・・・・?」

「・・・・このみが危ない・・・・!!」

「ッ!!・・・・ヤ、ヤバイ・・・・・リオーゼ!走るぞ!!全速力でだ!」

「わかってる!遅れるなよ、エクスっ!」

二人は急いで、ナポリュートの部屋へと戻ろうとする。さきほどよりも雨は増していた。
地面がぬかるんでいて、走りぬくいのも事実だった。しかし、そんなのを気に
するわけにはいかなかった。

「たのむ・・・・無事でいくれたまえ、このみ・・・・・!!」

「ッ!?・・・・リオーゼ、ちょっと待て!!」

「何だっ!!今は、そんな場合・・・・」

「・・・・・・あいつ・・・・・誰だ・・・・・・?」

「?」

  カラカラカラカラ・・・・・

突然、エクスは止まる。リオーゼもそれに反応して、止まる。エクスは真横に誰かが
いるのを発見した。そこには、車椅子に乗っている一人の男性がいた。しかし、
武器は何も持っていない。
顔もよく見えなかった。

「・・・・車椅子に乗ってやがる・・・・・怪しくないか?リオーゼ・・・」

「・・・奴は武器を持っていない。それに、車椅子にのっていたら、
 色々と不便だろう!それより、早くッ!・・・・・・・・
 ・・・・・・エクス・・・・・構えろ・・・・」

「?・・・・ど、どうしたんだよ、リオーゼ・・・・」

「あいつ・・・・あの野郎・・・・・服に血がビッシリついていやがるっ!!」

「な、何だとっ!じゃ、じゃぁ・・・・あの車椅子の男が・・・・殺人犯!?」

車椅子の男の服には、おびただしいほどの血のあとがついていた。珍しく感情的になる
リオーゼ。そして、武器を構える二人。ゆっくりと車椅子の男は二人に近づいてくる。
雨に車椅子の車輪をとらえられながらも。

   カラカラカラカラ・・・・

「・・・・・やれやれ・・・・・まったく、面倒なもんだぜ・・・・
 車椅子ってのは・・・・。本当に面倒くさいぜ・・・・・・・
 また二人分の血・・・・・服についたのを洗濯しなきゃ
 ならねぇんだからなぁ・・・・」

「(っく!!・・・・・こいつ、殺る気満々というわけか・・・・僕の美学・・・・
 こいつに存分に味合わせてやるっ!)」

「(ま、まじかよぉ!!・・・・・こ、こんな奴に・・・・・俺・・・・
 勝てるのかよぉ・・・・・?)」


13 :匿名希望 :2007/07/10(火) 21:08:20 ID:onQHWiL3

 〜 雨の中で・・・ その2 〜

男の目には、あらゆる黒い感情が埋め込まれていた。恐ろしいほどの執念を感じ、
そして、何かに対する復讐心を感じた。男は、車椅子をゆっくりとエクスとリオーゼに
向けて進ませる。

「聞いたことがある・・・・アカツキ軍のタブーとなっている言葉だ。おまえは
 知らないだろうがな・・・・エクス」

「こ、こんな時に何だよっ!」

「・・・・・ゼン・・・・・たった一人で、アカツキ軍に挑み、鬼人の如く
 戦う・・・・。戦う理由はわからない。だが、奴と会って生き残ったのは・・・・・
 第2部隊のトップ、エントフィートのシルヴァだけだ・・・・!」

「そ、それがコイツだってのか!?・・・・ってか、来るぞっ!リオーゼ!」

「ゼン」についてあらためて聞かせられるエクス。ゼンの襲撃に耐えたのは、
エントフィートの隊長、シルヴァだけ。それほど、ゼンは強かった。そして、
アカツキ軍では恐れられている存在であった。リオーゼは2刀の剣を、エクスは
一本の剣を持って構える。

「こ、こんな所で殺されてたまるかっ!・・・・リオーゼ、おまえが先行しろっ!
 俺が援護する!」

「バカかっ!弓や鉄砲など貴様はもっていないだろう!二人で
 突っ込むしかあるまいっ!」

「そ、そんなことしたら死んじゃうじゃんかよぉお!!」

「っく!・・・・おまえ、主人公なんだろ!?」

「ッ!!」

「・・・・・この僕に、貴様の主人公としての美・・・・見せてみろっ!」

そう言うと、リオーゼはゼンに向かって突っ込む。一瞬、唖然とするエクス。
リオーゼが自分を主人公だと言った。主人公だと認めたと思ったのだ。真相は
わからないが、今のエクスにとっては、それだけで十分だった。

「へ、へへ・・・・・主人公様に遅れんじゃねぇぞ!!リオーゼっ!」

「ッフ!・・・・単純な奴だ・・・!」

「・・・・・しかたねぇ。そっちがその気なら・・・・俺も容赦する
 ワケにはいかねぇ・・・さぁ、来い・・・・・俺の影よっ!」

ゼンは武器を持っていない。いや、武器など持たなくて十分なのだ。その答えは
すぐに出た。突然、ゼンの背後に黒い2mばかりの巨人があらわれた。その巨人の
出現に、勇みよく走った足を止める二人。

「お、おい!リオーゼっ!な、何だよ、あの男の背後にいる黒い巨人はよぉ!!」

「わからないっ!とにかく、油断するな、エクスっ!」

「・・・・・行け・・・・・俺の影っ!」

「く、来るぞっ!リオーゼ!!」

ゼンの持つ黒い巨人が、一気にエクスとリオーゼとの間合いを詰める。その異常な
光景に、しばし戸惑う二人。しかし、すぐに気をとりなおして、黒い巨人に応戦する
リオーゼとエクス。

「な、何だよこの化け物はっ!・・・・つ、強ぇしよぉ!!」

「(くそっ!エクスの言うとおり、この化け物のパワー・スピード・反応速度、
 すべてが我々の格段に上だっ!恐らく、この化け物はゼンによって
 操られている・・・・・ゼンは今車椅子に乗って、戦闘不能状態・・・・
 本体を直接叩ければ・・・・!!)」

ガキィイン!!

「ッ!?ヤ、ヤベぇ!!・・・・剣を・・・・ぶっ飛ばされた!!」

「!?、エクスっ!!逃げ・・・・」

「ぐわぁああああ!!」

一瞬の油断。エクスは、黒い巨人によって、剣を吹き飛ばされ、腹に一撃、思い切り
パンチをくらってしまったのだ。数メートル吹き飛ぶエクス。急いで、吹き飛んだ
エクスのもとへ駆け寄るリオーゼ。

「エクスっ!大丈夫か!?」

「ぐ・・・・・が・・・・・・リ、リオー・・・ゼ・・・・
 死ぬほど・・・痛ぇよ・・・・・」

「ふぅ、それぐらい喋れれば安心だ。とにかく今は、あの黒い巨人をどうにか
 せねばならない。道は二つある。黒い巨人を倒すか、本体のゼンを倒すか・・・・・
 さぁ、どっちだ?美のある選択をしろ」

「・・・・・地平線の果てまで・・・・・ゼンを殴り飛ばしてやんぜ・・・・!!」

「よし、決まりだな。僕が囮になってあの怪物の相手をする。頃合を見て、
 ゼンに襲撃をかけろ!わかったな?」

リオーゼは、倒れているエクスを起こしながら説明する。しかし、エクスは何か
不満そうな顔をしていた。近くに落ちているドロが付着した自分の剣を拾うと、
リオーゼの顔を笑みを浮かべながら見る。

「・・・・・じょ、冗談だろっ!・・・・あの化け物になめられっぱなしで
 終われるかよぉ・・・!この俺様があの化け物の相手をするっ!
 てめぇーが、ゼンを仕留めろっ!」

「!?・・・・・この単細胞め、僕が珍しく気を使ってやってるというのに・・・」

「・・・・何か文句あんかよ?リオーゼ・・・・」

「・・・・・・っフ・・・・・上等っ!」

エクスとリオーゼの目に火が入る。初めて、息が合ったともいえなくはなかった。
それほど、今の二人は結束力が固かった。エクスは剣を持って黒い巨人に突撃する。
リオーゼは後ろからその戦闘の様子を探る。

「(く、くそっ!!一瞬・・・一瞬でも気を抜いたら、マジで死んじまう!!
 主人公とか・・・・もうそんなもん関係無しに、ぶっ殺される!・・・・・・
 けど・・・・あのクソったれに・・・・・この化け物を何とかするって
 約束したんだっ!)」

「(いかんっ!エクス、早くチャンスを作ってくれ!巨人の全体の攻撃態勢が
 じょじょに上がっている!恐らく、ゼンは勝負を終わらそうとしている!
 はやく・・・・はやくするんだ!エクスっ!)」

「・・・・・・・ッチ、時間が無ぇってのに・・・・しかたねぇ。
 影よ、少し本気だしな」

「なっ!!こ・・・・拳のラッシュのスピードが・・・・・
 は、半端じゃねぇえ・・・!!」

「ま、まずい!!エクス!もう、いい!離れろっ!!」

突然、黒い巨人のパンチをするラッシュの速さが増した。それと同時に、パワーも
増して、すべてを防ぎきることはエクスにとって不可能であった。そして、
さきほどと同じように剣を吹き飛ばされるエクス。

「(やべぇっ!また、剣を吹き飛ばされたっ!)」

「・・・・・・・・散れ、小僧」

「っぐ!!・・・・・泥かぶってでも・・・・・勝ってやらぁあああ!!」

「こ、こいつ!・・・・・・俺の影に・・・・・しがみついてきやがった・・・・!?」

剣を吹き飛ばされたエクスは、瞬時に黒い巨人にしがみついた。一瞬、動揺するゼン。
それが、巨人の動きを鈍らせた。その一瞬を見逃すはずがないリオーゼ。
一気にゼンとの距離を詰めようとする。

「リ・・・リオーゼっ!!!突っ込めぇええ!!」

「少しだけ・・・・おまえに美が見えたぞ、エクスっ!」

「・・・・・やれやれ・・・・・・ここで足使っちまうわけには
 いかねぇんだけどなぁ・・・。もう腐っちまって、今度立ったらグシャグシャに
 潰れちまうってのによぉ・・・・・・。まぁ・・・・・・・やるしかねぇか」

「ッ!?(ゼンが・・・・立つ!)」

ゼンが車椅子に隠してあった大きな剣を取り出して、ゆっくりと立ち上がる。
そのノッソリとした動きから、到底戦える状態ではないと思えた。しかし、
リオーゼは油断しなかった。全速力で、ゼンに斬りつけようとした。

「即効、仕留めますっ!!」

「・・・・・まだまだ遅ぇな、小僧」

「何っ!!」

ゼンは風だった。風の如く、リオーゼとすれ違い、そしてリオーゼにかまいたちの様に、
斬りつける。雨が降り、水溜りになった地面から、切られて倒れていくリオーゼの姿と、
リオーゼの噴出する血が水溜りに吹きかかる。

「ぐっ!・・・・・・(こいつ・・・・・剣の腕も・・・・・
 超・・・・一流・・・だ・・・)」

「・・・・・頬が切れてやがる・・・・・2刀流か・・・・・良い腕をしている。
 だが、俺に挑んだのは100年早かったな・・・・」

「(ま、まずい・・・・・・殺・・・・さ・・・れる・・・・・!)」

「・・・・?・・・・・何っ!・・・・もう一人の小僧がいない!?」

ポチャン・・・

「100年早ぇだとぉ!?3秒の間違いだろうがぁあ!!」

「何っ!こいつ、いつのまに俺の後ろに!」

エクスはいつのまにか、巨人の猛攻をかいくぐりゼンのすぐ横まで来ていた。
いや、そんなことあるはずがない。エクス程度の剣の腕で、巨人の攻撃から逃れる
ことなど不可能なのだ。しかし、エクスはそれをやってのけた。

「っへ!雨との同化能力って奴はぁ、水が溜まっているところを自由自在に
 移動できるってなぁ!歯ぁ・・・・・食いしばれっ!ゼン!!」

「(っく、防御が間に合わない!?いや・・・・・俺の影をなめるなっ!)」

「な、何!?もう・・・目の前に巨人が・・・・!!」

エクスは降っている雨と同化し、水溜りを自由自在に行き来できるという能力を使った。
そして、ゼンの真横まで来て、一発、パンチをあびせようとしたが、ゼンの異常な
ほどの反応速度により、黒い巨人が瞬時にエクスの目の前まで移動してきたのだ。

「・・・・・・残念だったな、小僧」

「(く、くそったれがぁあ!!)ぐわぁあああああ!!」

黒い巨人のパンチをモロに受けるエクス。しかし、巨人も急いで移動して、攻撃した
ため、エクスを死に追いやるほどのダメージは与えられなかった。けれど、十分で
あった。エクスとリオーゼは完敗。完全に敗北を喫したのである。

「・・・・・・証拠を残すわけにはいかねぇ・・・・・・殺す」

「(エ、エクス・・・・・だ、駄目・・・・・だった・・・・のか・・・・・・・。
 僕の・・・・人生・・・・・ここで・・・・・・終わる・・・・のか・・・・)」

「・・・・・テメェの人生を呪うんだな、小僧・・・・!」

「(・・・・・さよ・・・なら・・・・・皆・・・)」

   「そこまでだっ!!」

突然、人の声が聞こえる。その声が、エクスとリオーゼを助けてくれる希望の光と
なるのだろうか。それとも、二人をさらに窮地にたたすものとなるのか。答えは
すぐにわかった。林の影から、一人の男が出てくる。赤い目の、一人の男が・・・。

「・・・・・・第2部隊エントフィート、隊長、シルヴァ・・・・
 ターゲットを発見しました・・・・・・直ちに駆除を開始します・・・・・」

「・・・・っち・・・・またてめぇか・・・・・」


14 :匿名希望 :2007/07/16(月) 19:01:10 ID:onQHWiL3

 〜 雨の中で・・・ その3 〜

エクスとリオーゼの絶対絶命のピンチに現れたのは、第2部隊第1位チーム「エントフィート」の
隊長、シルヴァ。まだ雨が絶え間なく降り注いでいる。ぬかるんだ地面をゆっくりと
歩くシルヴァ。ゼンは再び車椅子に座り、様子を伺う。

「・・・・・エクス・・・・リオーゼ・・・・。共に、流厳のチームか・・・・。
 上位チーム以外は待機していろとの命令だ・・・・・・貴様らは命令違反だ」

「こ・・・・この・・・・バカ野郎が・・・・今は・・・そんな・・・・・・
 時じゃ・・・ねぇだろ・・・・!」

「・・・・・・処罰は後だ。・・・・・・・まずは厄介者の除去だ」

「・・・・・ッチ、テメェとだけは・・・・2度と会いたくなかったんだがな・・・」

こうして、シルヴァ対ゼンの勝負が始まろうとしていた。そのころ、チーム「ナポリュート」
の部屋では、ようやく隊長の流厳が、部屋に戻ってきていた。そこには、心配そうな顔で
震えているこのみの姿しかなかった。

「こ、このみ。他の二人はどうしたのじゃ!?」

「そ、それが・・・・悲鳴が聞こえて・・・・外に出ちゃって・・・・。
 それっきり・・・・・帰ってこなくて・・・・・」

「ま、まさか・・・・例の殺人犯に遭遇しとるなんてことは・・・・ないじゃろうな・・・」

「た、隊長!何が・・・・何が起こってるの?」

「・・・・もしかしたら、二人は・・・・殺人犯に襲われているかもしれん・・・・。
 たのむ、無事でいてくれよ・・・・エクス、リオーゼ」

隊長の願いも空しく、すでにエクスとリオーゼは殺人犯、ゼンの手によってやられていた。
今はシルヴァに賭けるしかなかった。実際、二人がシルヴァが戦っている姿を見るのは
初めてであった。

「・・・・・・・雨が刻々と散りまみれる今宵・・・・・血を欲する男は、何故我らを狙う?」

「・・・・・アカツキの野郎にちょっと挨拶してぇだけさ・・・・・。
 ちょっとした挨拶をよぉ・・・・・・」

「・・・・・・・・もう良い、十分だ。・・・・・今からおまえを殺す。何か文句はあるか?」

「いや」

「・・・・そうか、ならば・・・・・惨殺実行あるのみだ・・・・・」

シルヴァは冷たい、赤い目でゼンを睨み付ける。そして、両目をつぶり、右手をおでこ部分に
当てる。何をしているのかエクスとリオーゼにはまるでわからなかった。しかし、ゼンは
警戒していた。そう、ゼンは知っているのだ。シルヴァの攻撃を。

「・・・・・俺の能力・・・・・・レッド・タイム・・・・・!」

「(!?・・・・シルヴァにも、能力があるのか?隊長にしろ、シルヴァにしろ・・・・
 何か二人に関係があるのか・・・・?)」

「お、おい・・・・リオーゼ!・・・・・周りを見ろッ!!」

「ん?・・・・・こ、これはっ!!・・・・・空が・・・・いや、すべてが赤く染まっている!?」

それは何とも異様な光景であった。地面、木々、空、すべて、すべてが真っ赤に染まっている
のであった。恐らく、これがシルヴァの能力、「レッド・タイム」の能力なのだろう。
だが、未だに能力の力は未知数である。

「・・・・・俺の能力・・・・レッド・タイムは・・・・半径1km以内をすべてを
 赤く染め・・・・・俺の支配下にする・・・・・そう、支配・・・・・すべてを支配できる。
 たった15秒・・・・・だが、15秒の間に・・・・・自然の摂理・・・・すべてを
 コントロールできる・・・・!」

「な、何だって!?ってことはよぉ、リオーゼ!・・・・火山とか、地震とか、雷とか、
 台風とか・・・・この真っ赤に染まってる区域なら・・・・いくらでも操作できるってのか!?」

「・・・・し、信じられない・・・・だが、奴はそう言っている!・・・・・
 神・・・・・神に限りなく近く、極めて遠い能力だと言える!」

圧倒的な能力、「レッド・タイム」。それは、神にも勝るとも劣るとも言えないほどの
強力な能力である。しかし、それはシルヴァだから、操れるのである。他の人間だったら、
1秒すら操れないだろう。突然、地中からマグマが何箇所も噴き出てくる。

ゴォォォオオオオ!!

「こ、これは・・・・・マグマ!?・・・・マグマが・・・何箇所も地中から噴き出ている!」

「あ、熱っち!!こいつも・・・・シルヴァが操ってるてのか!?」

カツン、カツンッ・・・

「・・・・・生き物を灰にもせず、チリにもせず、カスにもしない・・・・・・・
 業火の如く、地中のマグマ・・・・・・・ゼン、覚悟しろ・・・・・」

「・・・・・・・どっちが覚悟するか・・・・・・いずれわかるけどな」

「・・・・・減らず口を叩く・・・・・・死んでから、後悔すれば良い・・・・・」

シルヴァは、いくつも噴火しているマグマを操り、生き物を動かしているかの如く、
ゼンに襲わせた。数にして約7つ。7つのマグマの群れが、ゼンに襲い掛かる。そして、
一瞬にして、ゼンのいた場所は跡形も無くなる。

「す、すげぇ!!・・・・ゼンが・・・・跡形もなく、消えちまった・・・!」

「・・・・・・・ッチ・・・・やはり、強者・・・・・」

「?・・・・(何を言っているのだ?シルヴァは。もうゼンは、美の制裁にして、死んだ
 というのに・・・・・まさか、まだゼンは・・・・・!)」

「・・・・・てめぇのために、足をここまでとっといたんでな」

「・・・・・・・流石、だな。腐った足で、よくここまで移動した・・・・敬意を表す」

いつのまにか、ゼンはシルヴァの前まで移動していた。車椅子を捨てて。ゼンは、腐りかけた
足で精一杯の力を出し、シルヴァのもとまで移動したのだ。ゼンは、大きな剣をシルヴァに
構える。

「・・・・・・あらためて言わせてもらうぜ・・・・・覚悟しな・・・・!」

「・・・・・残り5秒程度か・・・・・・しかたない、惨殺できるか不明だが・・・・・
 使ってみない手はない・・・・・」

「!?(な、何だ?・・・・・風が・・・・・増してきた・・・!?)」

「リ、リオーゼ!!な、なんか・・・・ありえないほど・・・・風がいきなり強くなってるぞ!」

「・・・・・エクスっ!近くにあるものに掴まれっ!」

「な、何が起こるってんだよ!?」

「・・・・・・・台風が来るっ!」

風が暴風の如く吹き荒れる。さきほどまで降っていた雨は、まるで小石になったように、硬く、
エクス達に衝突した。その中で、特にゼンのところがもっとも風力が強かった。体をふんばる
腐った足からは、血が噴き出る。

「・・・・っち!・・・・・・くだらねぇ手を使いやがって・・・・!」

「・・・・・・吹き飛べ、ゼン」

「・・・・そっちがな。射程距離・・・・・入った!」

「(っ!!こいつ、いつのまにか、わずかに前進していた!?・・・・いかん・・・・・
 俺の目の前に・・・・黒い影が・・・・!!)」

「・・・・・てめぇにも、黒い地獄ってのを見せてやる・・・・!」

ドカァアア!!

「っぐぁ!(だが、奴は攻撃した!・・・・意識を影を操ることに使い、脚の意識を欠けさせた!
 つまり・・・・・・奴は吹き飛ぶ!)」

「(っち・・・・・相打ちかよ・・・気にいらねぇぜ・・・・・!)」

結果、両方吹き飛ぶこととなった。シルヴァは、ゼンの「影」によって殴られ、吹き飛ぶ。
そして、ゼンは影の攻撃に意識を使い、風にふんばる足に神経を集中させなかったため、
そのまま何処かへと吹き飛ぶ。こうして、「レッド・タイム」の能力は解ける。

「!?・・・・な、何だ!?また、もとの色に戻った・・・・・さっきまで、真っ赤
 だったのに、すべて元に戻った」

「・・・・レッド・タイムの能力が切れたのだろう。それにしても、ゼンの奴・・・・
 何処かへと飛ばされたのか・・・・・・」

「・・・・・おい、ナポリュート・・・・・」

「ッ!・・・シ、シルヴァ・・・・て、てめぇ!俺らを救ったからって良い気になってんじゃ
 ねぇぞ!」

「・・・・・・ゼンは何処かに吹き飛んだ。だが、俺も奴の拳をもらった・・・・・。
 いい気になっているのは貴様らだろう・・・・・・」

「な、なんだとっ!!」

「・・・・俺が来なければ貴様らは即死していた。一人は状況も把握せず、闇雲にその場その場で
 やり過ごそうとする野犬。一人は分析しすぎて、自分の戦闘スタイルにも障害を負わせてしまう
 自滅野郎。・・・・・死んで当然だった。死ぬのが、当たり前の状況だった」

エクスとリオーゼに突きつけられた「欠点」。それは、正確に的を射ていた。シルヴァは、
たった数分の間に、それを観察していた。動揺している二人を置いて、シルヴァはそっと
その場から去ろうとする。

「シ、シルヴァ・・・・・・(くそ、言い返せねぇ・・・・俺にも・・・・・
 ムカツクけど・・・・奴の言うとおりだって、わかる・・・!)」

「・・・・・エクス・コールド・・・・・やはり貴様は・・・・ただ吠えるだけの犬だったか・・」

「ッ!!・・・・い、言いやがったな・・・・・絶対・・・・・絶対に、てめぇを
 追い抜いてやるっ!シルヴァ!!首洗って待っとけよっ!」

「・・・・・・フン・・・・・・・期待して待とう・・・・」

シルヴァは立ち去る。結果的には、「エントフィート」がゼンの襲撃を防ぐのに、成功。
ゼンを抹殺することはできなかったものの、その名に相応しい功績を残した。エクスとリオーゼは、
ただ、シルヴァの実力に、歯をくいしばるしかなかった。そして、雨は降り続ける。


15 :匿名希望 :2007/07/22(日) 18:05:20 ID:onQHWiL3

 〜 過去を生きる者達 〜

戦いに敗れたエクスとリオーゼは、救助隊によってナポリュートの部屋へと無事に帰された。
心配して、二人に駆け寄る流厳とこのみ。二人は比較的軽傷だったが、2、3日休んで
体調を整えることとなった。

「ほら、エク兄ちゃん!あ〜ん!」

「あ〜ん・・・・・どわっち!!熱ぃ!フー、フーしてから食べさせてくれ!このみ」

「フー、フー?エク兄ちゃん、子供なんだからぁ」

「・・・まったく、自分よりも年下のこのみにそのような態度・・・・男として、
 チリほどにも美の要素が見つからない・・・・・最低というやつだな、エクス」

「大丈夫だって、リオーゼ!後で、リオーゼにもフー、フーしてあげるから!」

「い、いや。そういう理由で言ったわけじゃないんだが・・・・」

このみにおかゆを作って、食べさせてもらっているエクス。自分の手で、食べているリオーゼ。
普段どおりだが、リオーゼだけはなぜか様子がいつもと違った。なにか、元気が無かったのだ。
すると、流厳が何処からか、帰ってきた。

「エクス、リオーゼ。安静にしとるか?」

「ん?おっす、隊長。この通り、ベットでお寝んねしてるぜ」

「すみません、隊長。迷惑をかけて・・・・・。それより、何処に行っていたのですか?」

「うむ、それなんじゃが・・・・・。おまえらに報告しなければならんことが、二つある。
 まず一つ目・・・・・ワシらの順位は、今日から26位じゃ」

「に、26位!?な、何でだよ、隊長!もしかして、俺とリオーゼが頑張ったから、
 アカツキがご褒美に・・・!?」

「・・・・違う。ゼンが第2部隊の5チームを壊滅させたのじゃ・・・。おまえらが見たのは
 そのうちの一つだったのじゃ。その他にも、奴は4つのチームをすでに壊滅させていたのじゃ」

流厳は重い口調で語る。その事実に、エクスとリオーゼ、このみの表情は静まる。
犠牲によって、自分達は利益を獲得したのだ。犠牲の上に成り立つ昇格など、笑顔で
喜べるわけがないのだ。

「・・・・そしてもう一つ、新たにチームナポリュートに任務が下された。
 二人の容態が回復しだい、すぐに実行に移るぞぃ!」

「・・・わかりました、隊長。死んでいった同胞のためにも、今の僕達がある。
 任務・・・・絶対に成功させましょう・・・・・・そう、絶対に・・・・」

「(?・・・・リオーゼ・・・・どうかしたのじゃ?・・・・・)」

リオーゼはやはり、おかしかった。その異変に、すぐさま気づく流厳。何やら、只ならぬ
気配を出しつつあった。そのころ、チーム「エントフィート」は、ゼンとの戦闘の報告を
し終わり、帰ろうとしていた。

「シルヴァ隊長、やりましたね。殺せはしなかったものの、シルヴァ隊長のアカツキ軍
 内部での権力は、どの部隊のトップチームも敵わないものとなりますね」

「・・・・・・ゼンに・・・・・おまえ、戦って・・・・生き延びれるか・・・?」

「はい?じょ、冗談言わないでくださいよ。奴はシルヴァ隊長でなきゃ、20人がかりで
 仕留める奴ですよ?」

「・・・・・・・ッフ・・・・・そうか、20人か・・・・・」

「・・・・シルヴァ隊長、まさか・・・・ゼンとたった二人で戦って、生き延びた奴の
 ことを気にかけているのですか?」

「・・・・・・・そう、偶然では生き残れない・・・・・・だが、偶然が必然ならば・・・・
 死ぬことはない・・・・・・そう・・・・・・主人公ならばな・・・・・」

静かに微笑むシルヴァ。そして、シルヴァは薄々感づきつつあった。エクスの正体に
ついて。その時、肝心のアカツキはとある高層ビルを訪ねていた。どうやら、そこの
社長に用があるらしい。アカツキは、社長と話をする。

「・・・・初めまして、君があの有名なアカツキ軍の長、アカツキさんですか・・・。
 確か、初代主人公だとか・・・・」

「光栄ですね、知っていただけて。今日は少し、お話があって参りました」

「・・・・・わかりますよ、協定を結びたいのでしょう?この世界でもっとも稼いでいる
 会社・・・・・岩木財閥の社長、この岩木・半蔵と手を結び・・・・トランプスを共に
 倒そうとしているのですね?」

「・・・・真にその通りです。無論、そちらがトランプスと手を組んでいるのも知っています。
 しかし、貴方もおわかりのはずです・・・・・トランプスの時代は終わった。未来に必要なのは、
 絶対的存在、たった一人の絶対者なのだと・・・・」

アカツキは、来るべき戦い。そう、トランプスとの全面戦争のために、岩木財閥の社長、
岩木・半蔵と会談していた。岩木・半蔵、彼は博打を得意とし、今まで負けたことは無し。
彼の弟ですら、博打に容赦しないほどの冷酷な男である。

「・・・・・ジョーカー・・・・この名、アカツキさんならご存知でしょう?」

「知っております。恐らく、奴がこの世界にまだ存在しているのなら・・・・世界は、
 奴の物になっていましたから」

「まぁ、そうですね。今は、31代目の主人公が倒したとか、ジョーカーが別の惑星を
 征服しに行ったとか色んな噂がありますが・・・・・僕はね、彼に服従しました」

「・・・・服従・・・ですか」

「僕にも彼がこの世の帝王になることはわかっていた。ビジョンが見えたのですよ。
 しかし、彼はこの世から消えた・・・・・。だから、僕はまた、この世界を引っ張る
 カリスマを探している・・・・・・あなたに、それだけの重荷が背負えますか?アカツキさん」

「・・・・・伊達に200年も生きてませんから。このアカツキに・・・・・
 不足しているものなど、無いと思われます」

「・・・・・・おもしろい、その自信・・・・・賭けてみましょう。よろしく、アカツキ」

「・・・・・こちらこそ、岩木社長」

こうして、静かに、内密に、ひっそりとアカツキ軍と岩木財閥の間で協定が結ばれた。
これはまた、決戦が近いということもあらわしていた。アカツキは確実に戦力を拡大して
いった。


そのころ、吹き飛んだゼンは何処に行ったのか?ゼンは、林の草の上に大の字で倒れていた。
身動きが取れなかった。足はもう使いものにならなくなり、車椅子もないのだ。しかし、
ゼンはそんなこと気にしていなかった。ただ、空を見上げていた。すると、何者かが
ゼンの前にあらわれる。

「・・・・・・・また・・・・・てめぇか」

「久しぶりね、ゼン。あなたがこんな姿で、醜態をさらしているなんて・・・・・
 ちょっと失望したわ」

「・・・・・・・死にたくねぇなら、消えろ。ネズミの餌にしちまうぞ・・・・・」

「・・・・まだジョーカー様の仲間になろうとは思わないの?ゼン」

そこに現れたのは、ジョーカーの側近、「蒼」だった。ジョーカーとは、この世界とは別に
暗黒領域と呼ばれる場所に封印されたのだが、ここ数年前に地上に復活し、この世界を
正しき終焉へと導こうとしたのだ。その言葉を聴いて、笑みを浮かべるゼン。

「・・・・っへ・・・・・ジョーカー、か・・・・・懐かしい名前だぜ。
 てめぇ・・・・・もう何年も行方不明になってる奴に・・・・まだ従っているのか?」

「当たり前よ。あなたは知らないでしょうけど、ジョーカー様には作戦があるの。
 きっとジョーカー様はそれを成功させて、再びここに戻ってくるわ。だから、私は
 ジョーカー様を待ち続けるの」

「・・・・・・勝手にしな・・・・・てめぇの人生だ・・・・・俺は口だししねぇよ・・・・。
 ただ・・・・・・今日は見逃せ・・・・・・今・・・・ただ空を見ていたい・・・・・」

「・・・・ルー・・・・でしょ?あなたが永遠に愛した女性、そして、永遠の親友に
 殺された女性・・・・・・だから、復讐の旅をしている・・・」

「ッ!!」

ゼンは驚いた。「蒼」は知っていた。ゼンの過去について。蒼の言うとおり、ゼンはルーという
最愛の女性を、親友のアカツキに惨殺された。そして、ゼンは知らぬまま、彼女の血を飲み、
不老不死となった。ゼンは睨み付けるような視線で、蒼を見る。

「・・・・・ジョーカー様はすべて知っていたわ。私にお話になってくださった」

「バ、バカな・・・・・・なぜ・・・・奴が・・・・」

「・・・それと、ジョーカー様はこうおっしゃっていてわ」

そして、蒼の回想になる。それは、暗い洞窟の中で、ジョーカーと話している時の場面である。
ジョーカーが「ゼン」を仲間にしろと蒼に命令している所であった。反対するわけではないが、
蒼はどうも、その命令が不思議でならなかった。

「失言をおゆるし下さい。なぜ、ゼンにそれほど気を使うのですか?確かに、奴は
 経験が豊富で、闇の力を得ています・・・・しかし、だからといって・・・・・」

「・・・・・っフ、奴はな・・・・・愛人を殺されたらしい・・・・友人にな・・・・。
 まぁ、エゴの集結体である人間らしい汚れに満ちた行動だがな・・・・」

「・・・・そ、それが・・・・・どういうことですか?」

「・・・・・俺の親父はクズだった。母を奴隷としか見ず、自分の欲望と利益のためにしか
 使わなかった・・・・・母は、訓練でボロボロになった俺に水を渡そうとして
 親父に殺された・・・・・・・」

「・・・・そ、それは・・・・」

「・・・・・似ている、な。・・・・その時俺は、すべてを超越した絶対者になることを
 誓った。・・・・・親父は即効、処刑した・・・・我が手でな・・・・・・。
 奴はそれができずにいる・・・・・・手助け、だな・・・・用は・・・・・・復讐に
 手を貸そうというだけのことだ・・・・・」

こうして、蒼の回想は終わる。それを聞いたゼンはただ唖然としていた。ジョーカーは
ただ単に自分の利益ためだけに「ゼン」を仲間にしようとしたのではなかったのだ。
ちゃんとした、理由があったのだ。

「・・・・ジョーカー様は、悪じゃない。ジョーカー様は決して、自分だけの利益のために
 何かを支配するということはしなかった・・・・けど、それまでの過程が殺戮に満ちていたから、
 ジョーカー様は、自分を悪と認めるしかなかった・・・・」

「・・・・・・・・俺は悪だ・・・・人を殺す奴は悪だ・・・・・・・・。
 そういう世界に生まれたんだ・・・・・・・・俺達はな・・・・・」

「・・・・・さよなら、ゼン。ジョーカー様は再び戻ってくる。それまで、覚悟しておく
 ことね」

そう言って、蒼はその場から去る。ジョーカーは、「地球」という星で、東城・怜、第31代目
主人公によって倒された。このことを、蒼は知らない。だが、蒼は待ち続ける。ジョーカーを
信じて・・・・・。ゼンは、再び空を見上げる。

「・・・・・なぁ・・・・・ルー・・・・・・・一回・・・・一回だけ・・・・・
 ゆるしてくれねぇか?・・・・・・・・少し・・・・・・・・泣かせてくれ・・・・・」


16 :匿名希望 :2007/07/29(日) 19:22:44 ID:onQHWiL3

 〜 Beautiful Love その1 〜

「愛」とは何だろう。好意と好意が摩擦をして、両思いになり、そしてその感情が一定まで
高まると結婚という頂点に達する。「愛」とは何だろう。相手を思うことか、想うことか。
答えは用意されていない。「愛」とは何だろう。誰かが人とすれ違う時に、愛は生まれるのかも
しれない・・・・・。


チーム「ナポリュート」に衝撃が走った。そこには一枚の手紙があるだけだった。その手紙の
内容に3人は唖然とした。そう、3人。一人足りないのだ。このことが、手紙の内容の
重要な鍵を握ることとなる。

「ど、どういうことだよ、これ・・・・・お、おい!隊長!何でだよ!何やってんだよ、
 あのバカ野郎っ!」

「な・・・・なんで・・・・?・・・・・このみが・・・・・ちゃんと看病してあげなかった
 から・・・・?」

「エクス、このみ。とにかく、今すぐに出発するぞい!今ならまだ追いつくかもしれん!
 泣いてる暇はないぞい、このみ。リオーゼに会ってから、泣くのじゃ!」

手紙   〜内容〜
   
     前略、チームに多大な迷惑をお掛けすることはお詫びいたします。これより、
    リオーゼ・トラフィクトは任務である、クラブの8、メロスを一人で倒しに行きます。
     どうか、後を追おいにならないで下さい。それでは、ナポリュートに美が
     ありますことを。       
                    リオーゼ・トラフィクトより

エクス達はわからなかった。なぜ、リオーゼは一人で任務を行おうとしているのが。
その答えは、リオーゼのみが知る。慌てて、「クラブ」の領地へと旅をする支度を
整える3人。このみは泣き、エクスはただ怒り、流厳は困惑した。

「くそ、くそ、くそっ!あのバカ・・・・!・・・・・一人で8に挑んだら・・・・
 死んじまうじゃねぇか・・・!!」

「リオーゼはワシらが到着する前に、任務を完了させようとしている。しかし、一人では
 8クラスに勝てるわけがないのじゃ・・・・・エクス、このみ、準備はできたか!?」

「で、できたよ!隊長」

「こっちもできたぜ、隊長!とにかく、突っ走るぞ!このみが走れなくなったら、
 俺がおぶる!何としてでも、あいつに追いつくんだっ!」

「うむ、わかっておる。それでは行くぞぃ!!」

急いで部屋から出る3人。全速力で、「クラブ」の領地、リオーゼの所へと向かう。果たして、
3人はリオーゼに追いつくことができるのだろうか。そして、なぜリオーゼは一人で
戦うことを決意したのか・・・・・・。


そのころ、リオーゼは「クラブ」の領地の、「レールズシティ」に着いていた。ここで、
クラブ8、メロスが頻繁に出没しているとの情報があるのだ。リオーゼは布キレを被り、
顔を隠しながら、街中を歩くことにした。

「(ここがレールズシティ・・・・・クラブの8、メロスが居るという・・・・・。
 奴にもアカツキ軍から刺客が来ると、情報が入っているはずだ。ここはうかつに、
 聞き込み調査などできないな・・・・・資料などを集めるしかないか)」

リオーゼは一人、孤独にクラブの8、メロスを倒そうと頑張っていた。道端に落ちている
新聞紙や、店で立ち読みができる雑誌などを手掛かりに、この「レールズシティ」での
「メロス」の出没時期を探っていた。

「(駄目だ・・・・なぜか、奴の記事だけがまるで見当たらない・・・・・。
 いや、違う・・・・・この街全体が・・・・奴を隠しているような気がする・・・・。
 何か怪しいな・・・・・)」

「おいコラ、姉ちゃん!財布拾ってやったのに、お礼は無しかよ!」

「だ、だから、私の輝く笑顔で・・・・・」

「なめてんのか、このクソアマっ!」

日中から、街のど真ん中で、モメゴトが起こる。一人の女性が、数人の男性にからまれている。
しかし、周りの人間は皆、見てみぬフリをする。その状況を見て、リオーゼにはよけい、
正義という情が増した。

「この女・・・・・今からワビ入れても遅ぇぞ!」

「キャ、キャアアア!」

「・・・・・野人め・・・・・レディに手を出すとは・・・・・美の欠片も無いな」

「な、何!こいつ・・・・!」

男が、女性に向かって殴りかかろうとした時、リオーゼはすぐさま割って入り、
男の拳を簡単に受け止める。そして、リオーゼは冷たい目線で、男を睨み付けながら
言う。

「・・・・・美しくなりたいなら、言ってくれ・・・・・・死に際ぐらいは、
 僕の剣技のフルコースで・・・・・・美を飾ってやろう・・・・・」

「こ、こいつ!イッちまってる!に、逃げるぞ!」

男達は、リオーゼの2刀の剣を確認すると、一目散に逃げてしまう。そして、さきほどまで
人が集まって観ていたこの場所も、普段通りの道端に戻ってしまう。リオーゼは、すぐさま
情報収集に戻ろうとした。その時、誰かに手を掴まれた。

「ん?」

「あ、あの・・・・お名前は?」

「・・・・・美のセンスを持った紳士は、ここでは名は語らない。語る言葉は一つ、
 さよならだ」

「お・な・ま・え・は!?」

「っぐ!・・・し、しつこいな、君は。僕はリオーゼ・トラフィクト。それでは、
 用事があるので、ここらで・・・・・」

「リオーゼ様っ!!私、あなたと結婚します!」

「な、何!?」

突然の事態に、動揺を隠せないリオーゼ。最初の「様」だけでも痛いのに、最後には
「結婚」するとも言いだしたのだ。しかも、公衆の面前で。リオーゼはその恥ずかしさに
耐えきれなくなり、女性を連れ出して、人の居ないところに着く。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・。ここには人はいないな・・・・」

「リオーゼ様、いきなり人のいないところで、私を襲おうなんて・・・・大胆だわぁ」

「ち、違う!!顔を赤く染めるんじゃない!僕は君の名前も、年齢も、何もかもしらない!
 ほっておいてくれ、僕にはやらなければいけないことがあるんだ」

「私の名前はエル。年齢は18歳、ピチピチの若い娘ですよ〜♪どう?食べたくなった?」

「た、食べるなんて・・・・う、美しくない・・・・。とにかく、ここでさよならだ。
 君はおもしろい奴だ、はい、これですべて終わりだ。さらばだ、エル」

「本当に、ここで私と別れちゃって良いのかなぁ〜?」

エルは不気味な笑顔でリオーゼに問う。エルという女性は、短髪で、外見的には普通の
女の子。しかし、瞳の奥に異常なほどの輝きを見せる女性でもあった。リオーゼは
その質問に恐る恐る答える。

「ど、どういうことだ?エル」

「夜になると、最近噂の爆弾魔がやってきて、夜道を一人で歩く人をドッカ〜ンって、
 殺しちゃうんだぞ〜。怖いんだぞ〜!ね、家に来たくなったでしょ!?」

「・・・・・君の家に、その爆弾魔の資料はあるのかい?」

「モッチロン!リオーゼ様が望む物なら、エル、何だって用意しちゃう・・・・」

「よし、分かった。すぐに君の家に行こう」

「ま、待って、リオーゼ様っ!そっちは道が違・・・・!」

こうして、リオーゼは突然現れた謎の女性「エル」の家へと訪問することになる。家に着くと、
リオーゼはそのあまりにも普通な家の外見と中身に、驚いた。どうやらエルはこの家に
一人で住んでいるらしい。

「・・・・この家に一人で住んでいるのか?」

「うん!一人で住むにはちょうどピッタシなの。でもぉ〜、もしリオーゼ様がぁ〜、一緒に
 住むって言うならぁ〜、エルも〜、頑張っちゃおうかなぁ〜、なんて、もう!
 エルったら、恥ずかしいっ!」

「さて、資料は何処にあるのやら・・・・」

「リ、リオーゼ様っ!その私の話をスルーする姿もかっこいいわぁ・・・・・!」

エルの話を聞くたびに、背筋が凍るのを実感するリオーゼ、必死に会話を途切らさすのに
神経を集中させていた。しばらくして、エルは爆弾魔の資料、というよりは、ここ最近の
新聞の記事を持ってきた。

「でかしたぞ、エル!これだ、これが見たかったんだ。一瞬、君に美が見えたぞ」

「ほ、本当っ!?うれしい!じゃ、じゃぁ・・・・ご褒美にぃ〜・・・・・
 エ、エルの・・・・ほっぺにぃ・・・・キ、キ、キ・・・・・」

「キック?やめた方が良い。女性は顔が大事だ。蹴るなんてことはできないな」

「も、もう!リオーゼ様、わかってるくせに!」

「それより・・・・・この記事を見る限り、ただの爆弾魔じゃないな・・・・・。
 人間・・・・爆弾・・・?・・・・どういうことだ?」

「・・・・・その爆弾魔、人を時限爆弾に変えちゃうの。でもね!私のそばにリオーゼ様が
 いるとぉ、私も一人の女として生まれ変わっちゃうの!」

「それは、凄いな。・・・・・人を爆弾に変える・・・・なんて凶悪な能力なんだ、
 クラブの8、メロスめ・・・・・。何か、爆弾になった者に目印は無いのか?」

「え〜と、確か、おでこに渦巻きのサインができるんだって。で、でもぉ〜。
 私がおでこに欲しいのは〜、リオーゼ様のキスマーク・・・キャッ!もう、エルったら!」

もう返す返事すら浮かばないリオーゼ。ただ、記事を漠然と読む。今回は有利に立っていた。
なぜなら、相手の能力はすでに解読済みなのだ。だから、今から対策が練れる。
リオーゼは、密かに勝てると確信した。

「さて、情報はこれぐらいでいいかな・・・。美のある協力、感謝致します。エル、じゃぁ」

「って!ちょ、ちょっと待って!リオーゼ様ぁ。夜道は危険ですぅ!今晩ぐらいは
 泊まってってくれてぇも〜」

「(はぁ〜・・・・一番厄介なのはこの娘なのかもしれないなぁ。だが、確かに
 まだ何も作戦を考えていないのに、奴に襲われたら笑い事にもならん・・・・・。
 最善たる美的選択をするしかないか・・・・・・・)」

「ねっ!どうする!?リオーゼ様っ!」

「わかった、わかったよ。今晩だけ、泊めさせていただく」

「やった〜!!リオーゼ様、ベットの上ではぁ、やさしくしてね?」

「な、な、何をっ!!ふ、不潔だ!や、やめるんだ!想像することもやめたまえ!」

「もぉ〜、リオーゼ様ったら。恥ずかしがり屋なんだからぁ」

こうして、リオーゼの今までにない生活が、いや一晩が始まることとなる。果たして、
エクス達はリオーゼに追いつくことができるのだろう。いや、追いつかないでほしいだろう。
リオーゼにとっても、エクス達にとっても。


17 :匿名希望 :2007/08/05(日) 19:12:58 ID:onQHWiL3

 〜 Beautiful Love その2 〜

エルという女性の家に泊まることとなったリオーゼ。リオーゼが新聞の記事をさらに
細かく読んでいる間、エルは二人分の夕飯を作っていた。リオーゼは早くこの家から出たかった。
エルの性格にも問題があるのだが、自分がいるせいでエルに危害が加わるかもしれないからだ。

「でっきたー!!リオーゼ様ぁ、できたよ。エル特性、ラブラブオムライス!」

「・・・・ラ、ラブラブ?」

「だってぇ〜、今夜は私とリオーゼ様の運命の出会いの日だからぁ〜。食べ物にも
 私達のこのラブラブっぷりをを分けようと思って」

「何処の誰が、誰とラブラブしているのか、美しさの集大成、この僕にはまるで
 わからないが、頂くとしよう」

「あ〜ん、リオーゼ様ぁ。知らんぷりはよくないぃ〜」

リオーゼは、エルの話に付き合うのに疲れていた。だから、冷たく流すようになった。
テーブルにつき、オムライスを食べようとするリオーゼ。エルも、リオーゼの
目の前に座る。

「いったっだっきま〜す♪」

「いただきます」

「・・・・・・・・・ど、どう?私の料理・・・・・・ま、まずい・・・・かな?」

リオーゼはスプーンをすくって、一口食べる。心配そうに見つめるエル。リオーゼは
ただ、無表情でかみ続ける。そして、口の中のものを飲み込むと、一呼吸して、
エルの顔を見る。

「・・・・おいしい!君の料理、洗練された宝石並の美しさを感じ取れるよ」

「ほ、本当っ!?よ、良かったらぁ〜、エルの料理、毎日食べさせてあげちゃおうかな〜って」

「いや、それは遠慮しておく」

「リ、リオーゼ様ぁ〜」

エルの作ったオムライスは絶品だった。これは、誰が口にしてもおいしいと答えるであろう。
リオーゼは驚きながら、その旨さを堪能した。そのリオーゼのうれしそうな顔を見て、
喜ぶエル。

「・・・・?どうした?君は食べないのかい、エル」

「うぅん!私、リオーゼ様がうれしそうに私の料理食べてくれるの見てるだけで、
 お腹いっぱいだから♪」

「・・・・そ、その・・・・リオーゼ様というのはやめてくれないか?リオーゼでいい」

「わかった、リオーゼ!・・・・っていうことはぁ、もしかしてぇ、今度はあなたって
 呼んでくれなんて言っちゃったりして・・・・もう、エルったら!」

「・・・・・さてと、残りのオムライスも頂くとするか」

完全無視を貫くリオーゼ。それを気づかないで、顔を赤く染め、一人で興奮するエル。
とりあえず、そんなドタバタの中でも、夕食が終わり、一段落がつき、テーブルで
一休みする二人。

「そういえば、リオーゼって何でこの街に来たの?もしかしてぇ、私っていう女性に
 運命を感じて、遠い所からはるばる・・・・」

「えーと、僕がこの街に来たのは任務だ」

「に、任務?って・・・何?」

「・・・・ここですべて真実をさらすが、僕はアカツキ軍第2部隊、チームナポリュート所属の
 軍人だ。今この街で多発している爆弾魔、いやクラブ8、メロスを倒すためにここに
 来た」

「か・・・かっこいい〜!!リオーゼ、戦う男なのね!・・・?・・・・で、でもぉ、
 何で仲間がいないの?チームって言ってたよね?」

その質問に、顔をゆがませるリオーゼ。そう、これこそがリオーゼが一人で任務をこなそうと
している理由なのだ。リオーゼは誰にも口にしなかった。しかし、なぜかエルになら
言える気がした。

「・・・・今から、数秒後、まるで美の無い僕が呆然と、愚痴をこぼす・・・・。
 それでも、聞けるか?エル」

「うん!何でも言って、リオーゼ」

「・・・・ここ最近、2つ、3つ任務があった。新人も入ってきて、チームに活気が
 戻りつつある重要な時期だった。僕がしっかりとしなければいけなかった・・・・・。
 だけど、僕は任務の度に失態をおかし、チームに迷惑をかけたんだ」

「・・・リ、リオーゼ・・・・」

「誰も僕を責めなかった。隊長も、生意気な新人も、年下の仲間も・・・・・
 誰も、誰も僕を責めなかった・・・・それが、僕にはつらかった!・・・・・
 僕がちゃんとやらなきゃいけないのに、僕が支えられている・・・・それが、絶えられなかった!」

「・・・・・・」

「だから僕は、本当の僕を取り戻すためにも、一人でこの任務に挑むことにした。
 これは試練なんだ。この任務に失敗するようじゃ、今後、僕は仲間の命を危険にさらす
 ことになる。だけど、成功すれば・・・・!・・・・・まぁ、これが理由さ」

リオーゼはすべてを白状する。リオーゼは一人、悩んでいたのだ。エクスが入ってきてからの
3つの任務、リオーゼは自分の失態のせいで、仲間を危険にさらしたと思っていた。
その話を聞いたエルはリオーゼの目をじっと見る。

「・・・・すまないな、こんな美のない外道な話に付き合ってもらって・・・・・」

「・・・・・リオーゼ・・・・私、リオーゼのことぶっちゃうよ?」

「?」

「駄目だよ、リオーゼ!そんなのじゃ!」

「・・・・わかっているよ。落ち込んでばかりいられないというのは分かっている・・・」

「違うよっ!何で落ち込んでいるのを、仲間に言おうとしないの!?」

「え?」

エルはまったく別の方向から、リオーゼの悩める理由を見ていた。その以外な発言に
驚きを隠せないリオーゼ。今までにないほど真剣な眼差しで、エルはリオーゼを
見つめる。

「良い?リオーゼ。私達ね、人間なんだよ?そりゃぁ、落ち込んじゃうよ。けどね、
 それを自分の中にしまっちゃうのは一番いけないんだよ?」

「し、しかし・・・・」

「信じてみよう、人を。リオーゼ、私を信じてくれたんだよね?だったら、大丈夫。
 私、リオーゼの気持ち、聞いたから。リオーゼの気持ち、受け取ったから・・・・。
 一人じゃない。私があなたの目の前にいるの。ね、もう怖くない。もう、大丈夫でしょ?」

「・・・・エ、エル・・・・・」

「だから、それ以上落ち込んだら、ぶっちゃうよ?」

リオーゼはただ驚いた。自分はナポリュートを信じていなかった。そう、
皆が自分を必要としているということを、信じなかった。それをエルに指摘され、
自分を今一度、反省する。リオーゼはそっと後ろを向く。

「ど、どうしたの?リオーゼ」

「・・・・・・すまん、男として、女性の前では美に欠ける行為だが・・・・・・
 涙が・・・・・・・出てきてしまってね・・・・・・・・見ないでくれ・・・・・」

「・・・・泣き止むまで、待っててあげる。リオーゼがまた強くなるまで、背中、
 見ていてあげる」

「・・・・・・・・すまない・・・・・エル・・・」

リオーゼの立っている床に、水滴が落ちる。エルは、ただやさしい顔で、そんなリオーゼの
背中を見つめ続ける。リオーゼはまた一つ、強くなったのだ。しかし、やはりエル。
いつのまにか寝てしまったようだ。そして朝が来て、エルは目を覚ます。

「・・・うぅん・・・・・・あ、あれ?・・・・私、寝ちゃったの!?・・・・
 フ、布団がかけてある・・・・リ、リオーゼ!!」

「・・・・まったく、女性が一人暮らしをするというのは美を意識していないな。
 インスタント食品ばかりでは、体に害だぞ?エル」

「リ、リオ〜ゼぇ・・・!」

リオーゼは寝なかった。そして、泣いている自分に背を向け、成長する自分を実感した。
リオーゼは立ち上がる。彼は失態などおかしていなかった。ただ、道を歩んでいた
だけだった。しかし、そんな平穏に日々は、長くは続かなかった。

「ッ!!エル、危ないっ!!」

「え!?」

ガシャン!!

突然、窓ガラスが割れて、何かが部屋の中に投げ込まれた。リオーゼは外を見回す。
どうやら犯人はもういないらしい。そして、投げつけらた物を拾って、確認する。
恐怖で身を震わすエルのそばによりながら、投げつけられた物を調べる。

「これは・・・・・手紙?」

「な、何て書いてあるの?」

「ち、違う・・・・・これは手紙じゃない!よ、予告状だ・・・・・爆弾魔からの、
 爆発の予告状だっ!」


18 :匿名希望 :2007/08/12(日) 19:40:02 ID:onQHWiL3

 〜 Beautiful Love その3 〜

突然、エルの家へと投げ込まれた手紙。それはクラブの8、メロスからの予告状で
あった。リオーゼは焦った。それには二つの意味があった。
自分がアカツキ軍だとバレていること。先制攻撃を逃したこと。

予告状  〜 内容 〜

   今から約2時間後、人間を爆発させる。
  
                メロスより

率直な内容であった。だが、その短い文章に、リオーゼは凍りついた。しばらく
予告状を見た後、急いでエルのおでこを見る。その突然の行動に驚くエル。
しかたないであろう。

「な、何!?リオーゼ。も、もしかして・・・・キのつくものがしたいとか!?」

「・・・・良かった、君のおでこに印は無い。僕も今日、鏡で自分の美を確かめた時、
 おでこに印は無かった。やはり、奴は一般人を無差別に時限爆弾にしている・・・・!」

「ど、どうするの、リオーゼ」

「印のついている者を探し出す!奴は人が大勢死ぬのを好む、最悪な殺人鬼だ。
 恐らく、人ごみの中の誰かに印をつけたはずだ・・・・・何としてでも、見つけ出す!」

リオーゼはすぐさまエルの家から飛び出ようとした。もうタイムリミットは「2時間」と
決められている以上、ゆっくりしている暇などないのだ。ドアを思い切り開け、
外に足を踏み出すリオーゼ。すると、何者かがリオーゼの服を掴む。

「ッ!・・・・・エ、エル・・・・・」

「私も行く・・・・!」

「駄目だ、君には感謝している。君には色々なことを助けてもらった。本当に、心から
 感謝している。だから、ここにいてくれ。僕と一緒では、命の危険なんだ」

「・・・・行く・・・・!」

「・・・・エ、エル・・・・・・」

エルはどんなことをしてでも、リオーゼの服を掴むのをやめないだろう。それは、
リオーゼがよく知っていた。エルは、今にも泣きそうな顔をして、必死にリオーゼに
訴えかけようとする。

「・・・・わかったよ、負けだ。まったく・・・・君には勝てないな」

「ほ、本当!?」

「その変わり、僕から決して離れるな。わかったな?」

「うんっ!!」

「よし、では行くぞっ!」

こうして、リオーゼとエルによる時限爆弾を仕掛けられた人を探すこととなった。
この街は、いつもにぎやかで、大通りには日頃から人がたくさんいた。その人の群れの中に、
きっと爆弾を仕掛けられた人はいると、リオーゼは確信を持った。

「っく・・・・ここが大通りか・・・・!人の多さが半端じゃない・・・・
 この中から、印を持つ者を探すのか・・・・!」

「と、とにかく、頑張って探そう!リオーゼ」

「あぁ!」

リオーゼはエルに離れるなと命令した。しかし、それはすぐに破れた。いや、そう
しなければ「印」を持つものなど見つけられるわけがないのだ。おでこが見れなければ、
尋ねるしか方法もない。

「す、すみません!おでこを見せてくれませんか?美のある協力を!」

「な、何だよテメェ!!」

「(印が無いっ!・・・・くそ、こんなことをイチイチやっていたら、あっとういう間に
 2時間など過ぎてしまう・・・・。男か女か、若者か老人か、それすらも
 手掛かりがわからないっ!)」

「ご、ごめんなさいっ!おでこを拝見させて下さい」

「ちょ、ちょっと何すんのよ、あんた!」

「(だ、駄目・・・・・全然、見つからない。このままじゃ、爆発しちゃう・・・・!
 こんな人ごみの中で、爆弾が爆発したら・・・・・とんでもないことになっちゃう・・!)」

二人とも苦戦していた。まるで検討がつかないのだ。誰に「印」がついているのか。
ただ、わかっているのは「人間」に印がついているということだけ。それ以外は、
何の手掛かりもないのだ。

「エルっ!そっちはどうだ!?何か、見つかったか?」

「全然見つからないよぉ!ど、どうしよう!リオーゼ」

「っく!・・・・・もう残り1時間を切った・・・・!このまま・・・・終わるのか・・!?」

「・・・・・あきらめちゃ駄目っ!リオーゼ。そんなんじゃ、私のお婿さんは
 つとまらないよ?」

「・・・・・・・そうだな、おまえに相応しい婿になるためにも、今一度、
 挑まなければなっ!探索を再開するぞ、そっちはたのむ、エルっ!」

「え、ちょ、ちょ、ちょっとリオーゼ!・・・・相応しい・・・婿になるって・・・・
 も、もしかしてぇ・・・・!!」

再びリオーゼは「印」探しを再開する。一人、赤面になりながらも、探すことに集中する
エル。けれども、何十分経とうと、「印」を見つけることはできなかった。すると、
エルは何かに気づく。

「?・・・・・ッ!!こ、これって・・・・・・リ、リオー・・・・・・・・・。
 ど、どうしよう・・・・・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。(あきらめるものかっ!ここであきらめたら、僕はまた
 昨日までの僕に戻ってしまう!僕は美しくなる!もっとも美しい自分を探すためにも!)」

「・・・・リ、リオーゼっ!!」

「?・・・どうした?エル」

「わ、わかったの・・・・・こっち、・・・・来てっ!」

「!?・・・・時限爆弾がわかったのか!?」

エルはリオーゼの手を取って、何処かへとつれていこうとする。エルは気づいた。とても
重要なことに。エルは急いである場所へと向かう。そこに行かなくてはならないのだ。
必ず、絶対にだ。走っている途中に、エルはリオーゼに話しかける。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・ね、ねぇ・・・・・リオーゼ・・・・?」

「なんだ?エル」

「・・・・・私、両親に捨てられたの・・・・・・」

「・・・・・・・そう・・・・なのか・・・・・」

「・・・・・・ずっと・・・・絵本ばっか見てた・・・・・お姫様の・・・・・・。
 きっと不幸な女の子には・・・・・王子様が来てくれるって・・・・・・・・・・・。
 リオーゼが・・・・・来て・・・・・・・うれしかった・・・・・・・王子様・・・・・
 いたんだね・・・・・・・絵本・・・・・・嘘・・・・ついてなかったんだね・・・・・」

「・・・・・・君が今から何処に行こうか、僕にはわからない。だけど、僕はついていこう。
 ・・・・・君の明日、君の人生という道も・・・・・・ついていきたい・・・・・・。
 王子様では無いかもしれんが・・・・・・君は守れる自信はあるよ・・・・・・」

「リ、リオーゼ・・・・・・・ありが・・・・とう・・・・」

そして、エルは人がいないような所に着くと、ようやく走るのをやめる。二人とも、
息を切らしてその場に立ち続ける。リオーゼは辺りを見回した。けれど、そこには
人の気配すらなかった。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・ここに・・・・・時限爆弾・・・・・いや、
 犯人がいるのかい?・・・・・エル・・・・・」

「・・・・・・・・リ、リオーゼ・・・・・・来ないで・・・・・」

「?」

突然、エルはリオーゼから距離をとる。その様子をリオーゼは不可解に思った。
当然であろう、エルは涙を流しながら、何か助けを求めるような顔をして、
リオーゼを見ているのであるから。

「・・・・ど、どうしたんだ?エル・・・・・ここに・・・・何かあるんじゃないのか?」

「リオーゼ・・・・・・好き・・・・・大好き・・・・・。でも、嫌いになって・・・・・・。
 私の中に・・・・爆弾・・・・あるから・・・・・・・」

「ッ!!」

震える声で、エルはリオーゼに言う。エルは自分に「時限爆弾」が仕掛けられていると
告白する。その事態を飲み込めず、驚くしかないリオーゼ、必死にその理由を
聞こうとする。

「そ、そんなバカなっ!今日の朝、君のおでこを見たっ!確かに、印はなかった!」

「・・・・・・手紙には・・・・・・おでこに印があるなんて・・・・・書いて・・・・
 なかった・・・。・・・・私の・・・・・腕に・・・・・・書いて・・・あったの・・・・
 さっき・・・・気づいて・・・・・・」

「バ、バカな・・・・・そんな・・・・・あ、後、1分・・・・・まだ、まだ間に合う!
 僕がどうにかしてみせる!僕を信じてくれ、エル!」

「・・・・・無理だよ・・・・リオーゼ・・・・」

エルはもう助からないということを悟っていた。しかし、リオーゼはあきらめなかった。
必死に何とかしようと、無いことを考えていた。エルはリオーゼと距離を置く。リオーゼは
顔をくしゃくしゃにして、エルを見る。

「リ、リオーゼ・・・・・・私・・・・・怖いよ・・・・・・私・・・・・・
 どうすれば・・・・いいんだろう・・・」

「エ、エルっ!あきらめちゃ駄目だっ!エルは僕のお嫁さんになるのだろう!?
 僕と・・・・・僕と一緒に・・・・・・美しい人生を送るのだろう!?」

リオーゼが叫ぶ。しかし、エルには涙を流して、それに反応するしかなかった。エルは
空を見上げる。そして、一度、深呼吸すると、リオーゼの姿を見て、そっと微笑む。
けれどまだ、おびえた表情に戻る。

「・・・・・・リオーゼ・・・・・・死にたく・・・ないよ・・・・・」

ドガァアアアアアアアアン!!

「・・・・エ、エルゥーーーー!!!」

エルは爆発した。ただ、いとも簡単に、爆発した。もう、さきほどまでエルがいた場所には
何もいない。エルの生きた証拠さえ、残っていない。リオーゼはその場にひざをつき、
そして、頭を抱え込んでうずくまる。

「あ・・・・あ・・・・・あぁあ・・・・・・あぁああああああ!!!」

「ハッハッハハッハハッハハハッハ!とてもキレイな花火だったなぁ!もう一回みたいなぁ!
 そうだ、もう一人爆弾に変えちゃえばいいんだ〜!さすが、メロス!頭良いなぁ〜。
 ハハハハッハハ!」

「・・・・・・・・・・・・・・」

そこに現れたのは、メロスだった。エルを殺した張本人。ゆっくりと、無防備のまま
リオーゼに近づく。メロスはわかっていた、リオーゼが立ち上がれないことを。
だから、余裕の表情でリオーゼに近づけた。

「今の花火は君の彼女かい?ハッハハッハハ!内臓も肝臓も心臓も、ドバァーってなって、
 チリにもならなくなっちゃった!最高の死に様だねぇ」

「・・・・・・・・・・」

「んぅ?どうしたの?何か俺にしないの?君の彼女を殺したんだよ、ただそうやって
 うずくま・・・・・・ッ!」

「・・・・・して・・・・・・・やる・・・・・」

突然、リオーゼが立ち上がる。その異様な殺気を感じ、距離をとるメロス。メロスの
額からは汗が流れ出ていた。それほど、今のリオーゼの怒り、殺意を感じ取れていた。
リオーゼは何かつぶやく。

「(な、何だ!?こいつの異様なまでの殺気は!?・・・・・・この男・・・・・
 本当に・・・・人間か・・・・!?)」

「・・・・・・殺・・・・して・・・・やる・・・・・・・
 全部・・・・・・全部・・・・・・・・・粉々にしてやる・・・・・ッ!!!」


19 :匿名希望 :2007/08/19(日) 19:44:25 ID:onQHWiL3

 〜 Beautiful Love その4 〜

ただ一言、リオーゼはキレていた。その怒りは尋常ではなかった。身も心も震え、
体中が熱くなる。そう、それは今にも暴走しそうな体を抑えようとするために、熱く
なるのだ。エルのことを思い出し、一歩、一歩、メロスに近づくリオーゼ。

「ころ・・・・・す・・・・・・・殺・・・・・・す・・・・・」

「(たかがアカツキ軍程度の人間なのに、この威圧感!・・・・・厄介なことに
 なった。だが、俺はトランプスの幹部!クラブの8だ。こんなところでやられる
 わけにはいかない)」

「・・・・・・・潰して・・・・・・やる・・・・・」

「甘いなぁ、アカツキ軍っ!この俺はクラブの8、メロス様だっ!来いっ!俺の
 武器よぉ!!」

ガサッ!!

「ッ!!」

すると突然、もの影から誰かが飛び出してきた。驚くリオーゼ。そして、不気味に微笑む
メロス。突然あらわれた女性はリオーゼに向かってまっしぐらに走ってきた。
リオーゼはどうすることもできず、ただ驚いて突っ立っていた。

「(突然が人が現れた!?・・・・・女性、か?・・・・・僕に向かって走ってくる?)」

「ご・・・ごめんなさいっ!息子の・・・・息子のためなんです!!」

「!?」

「ッハハハッハハ!残り3秒・・・・2・・・・・1・・・・・ドッカーン・・・・」

ドガァアアアアアン!!!

女性はいきなり爆発した。リオーゼとほとんど近い距離で。当然、吹き飛ぶリオーゼ。
煙があたりに充満する。その様子を笑顔で見るメロス。これがメロスの「武器」だった。
史上最悪の「武器」だった。

「ハハハハハッハハッハ!どうだぃ?これが俺様の武器・・・・特攻型人間爆弾・・・・
 俺様の能力、ボンブ・マーダーの十八番だぜぇ!」

「・・・・・っぐ・・・・・(い、いかん・・・・・ダメージが・・・・大きい・・・・!)」

「ちぇ〜、まだ生きてるのかよぉ。けど、超痛そうだから良いやぁ」

「に、人間を・・・・武器に・・・使って・・・・・僕に攻撃させた?・・・・・」

「ん〜、まぁ率直に言えばそうだけどよぉ。もっと残酷に言っちまえば、この街にゃぁ、
 家族世帯が多いわけ。だから、その子供に爆弾しかけるって脅せば、親どもが勝手に
 爆弾になってくれるんだよぉ!ハハハッハハッハ!俺って頭いいでしょ?」

リオーゼは傷いていた。頭から出血しており、体にも深い傷を負っている。しかし、
ヨレヨレになりながらも、少しずつメロスに近づく。それは完全なる怒りの力によって。
リオーゼはメロスの話を聞いて、怒りが爆発した。

「こ・・・・この・・・・・・・!!!!」

「この町はすでに俺の支配下なんだよぉ!!あのクソ女以外はなぁ!
 ッチ、あの女の家族だけはぁ、自殺しやがって・・・・・。
 でも関係ねぇ!!もう、その女もいねぇ!この町全体が、俺の武器だぜぇ!!」

「(エ、エルのことを言っているのか?・・・・そうか、エルの両親は・・・・・・)」

「ま、どーでもいいことよ。それより周り・・・・見てみろよ」

「ッ!?・・・・いつのまに・・・・・こんなにもたくさんの人がっ!」

ザワザワッ・・・

リオーゼが知らない間に、大量の爆弾となった街の人々に囲まれていた。これがメロスの
真の恐ろしさだった。リオーゼはもう我慢ができなかった。怒りで頭がどうにか
なりそうだった。すると、その集団の中から数人ばかりがリオーゼに向かって突進してきた。

ガシッ!!

「ぐっ!?」

「すみません!娘を、娘を助けるためなんです!」

「ゆるしてください・・・・彼女を守りたいんだ・・・・!」

「(こ、この人達は・・・・!!)」

「おい、そこの二人・・・・そのアカツキ軍野郎をちゃんと捕獲しておけよ。
 今からおまえらの時限爆弾を作動させるからよぉ」

町民の爆弾となった二人が、リオーゼを抱きついて捕らえる。リオーゼは唇を震わせる。
そして、死んでいったエルのことを考え、目頭を熱くさせる。リオーゼの視線は、
メロスしか見れなかった。

「こ、この・・・・クサレ外道がぁ!!・・・・貴様・・・・貴様・・・・・ッ!!
 同じ空の下で生まれた種族・・・・いや兄弟を!・・・・・・なぜそこまで利用できる!!」

「ハハッハハッハッハ!すべての生き物は俺の爆弾なんだよ!すべて俺に利用されれば
 いいのさ!強い奴が弱い奴を支配するってのは、当たり前だろうがぁ!」

「っく!・・・・・その悪・・・・・僕は・・・・・・僕は地獄に落ちるとしても、
 ゆるすわけにはいかないっ!!例え、神を裏切ろうと、人の道を外そうとも、
 貴様を殺すことだけには、この断固たる意思は貫き通すっ!!」

「勝手にホザけよ!真の強者は、俺だ!メロスだっ!」

リオーゼは怒りをあらわにする。ゆるすわけにはいかなかった、エルだけでなく、
この街に生きている人々をも死に追いやるメロスをゆるすわけにはいかなかった。
リオーゼは自分に取り付いている二人に話しかける。

「・・・・・君達、僕の話を聞いてくれ・・・・・・」

「す、すいません!あなたの話は聞けません!あなたは・・・・・私達と一緒に・・・・
 爆発して・・・・・死ぬんです・・・・本当に・・・・すみません・・・・・・」

「・・・・・・好きな、女の子がいた・・・・・・ハッキリ言って・・・・
 最初は迷惑だと思ったよ・・・・・けど・・・・・彼女は、いつのまにか
 僕の大事な・・・・・・・・だ、大事な・・・・・・・・」

「すみません・・・・・奴には・・・・メロスには勝てないんです・・・誰も・・決して・・・!」

「・・・・・今、彼女を思い出す度・・・・・体が震え、目頭が熱くなる・・・・・・。
 あの笑顔と、無邪気さを思い出す度・・・・・・・僕は、死にそうになる・・・・・・・。
 もう・・・・・やらせない・・・・・彼女を守れなかった自分を・・・・・成長させたい・・・。
 君達を・・・・・・守らせてくれ・・・・!・・・・僕を・・・・信じてくれ・・・!!」

「・・・・し、しかし!・・・・奴は、肉弾戦でも強いんです!」

「・・・・・・・美しく舞って見せる、一瞬の雷鳴の如く・・・・!
 準備は・・・・・いいかい?」

「・・・・・・・・・・お願いです・・・・・我々を・・・・・助けて下さい・・・・ッ!!」

そして、道は開かれた。リオーゼを捕らえていた二人は、リオーゼを離す。リオーゼは
背中にしょっている2刀の剣を一瞬で取り、メロスに向かって突っ込む。メロスも
それに反応する。肉弾戦でも強い。トランプスの幹部なら、わかる。しかし、リオーゼは走る。

「このクソッタレ野郎どもがぁ!!このアカツキ軍野郎をブッ倒したら、次はてめぇら・・・・」

「・・・・・悪人の背中というものは・・・・・まるで大きくないですね」

「なっ!!(バ、バカな!俺様の目で見切れなかった!?バカな!奴は・・・・奴は
 たかがアカツキ軍の兵士にすぎないのに!・・・・・このクラブの8が!?)」

「光栄に思いなさい・・・・・・このリオーゼ・トラフィクトによって、美しく
 生涯を散らすことに。・・・失望しなさい・・・・・地獄しか行き先が決まっていない、
 あなたの人生に・・・・!!」

「お、俺様は・・・・クラブの8、メロス様だぁああああ!!」

リオーゼは、一瞬にして、メロスの背後に回りこみ、そして一瞬にしてメロスの首を
切断した。リオーゼの体はさきほどの爆発によってボロボロになっていた。立っているのが
精一杯だった。その体で走ったのだ。成すことをやりとげたリオーゼは倒れる。

「(・・・・・フゥ・・・・・・・疲れた、なぁ・・・・・・・・。
 エル・・・・・・見ていてくれたかい?・・・・・・・僕は・・・・美しかったかい?・・・
 ッフ・・・・冗談だよ・・・・君と僕で・・・・・美しいんだ・・・・なぁ、エル・・・)」

リオーゼは、大の字に倒れ、空を見上げる。そこには何が見えるのだろうか。周りはただ、
喜んでいる観衆の声が聞こえる。しだいに、リオーゼの目からは涙が出ていた。
リオーゼは透き通った空を、涙でたまった目で見つめる。

    リオーゼ・・・・・・さようなら・・・・・・・・・

「・・・・・・・さようなら、エル・・・・・・・そして、さらばだ・・・・・・
 あの美しく、にぎやかだった・・・・・・あの夜のひと時・・・・・・・」

聞こえてくるはずもないエルの一言。リオーゼはそれに反応する。リオーゼだけには
聞こえていた。それは、ただの空耳かもしれない。リオーゼは強くなる。これからも。
彼の「美」が、彼を成長させるのだから・・・・・・。


20 :匿名希望 :2007/08/26(日) 20:33:47 ID:onQHWiL3

 〜 出会うべき、倒すべき者 〜

クラブの8、メロスを倒すことに成功したリオーゼ。街の人々から、あつい感謝の礼を
一人ずつ受ける。リオーゼがケガをしているのを察して、街の人々は治療を薦めるが、
リオーゼは断った。「待っている人」がいるのだと。そして、すぐにその人は来た。

「あっ!!いた、いたぜ!隊長、このみ!リオーゼの野郎がいた!」

「リ、リオ〜ゼぇえ!私・・・・私・・・・いっぱい心配したんだからぁあ!」

「ふぅ、まったく・・・・・って、リオーゼ!どうしたんじゃ、そのケガは」

メロスとの戦いから数時間後、エクス達がようやく到着する。道をあける街の人々。
その3人を見て、笑顔になるリオーゼ。いきなり抱きつくこのみ。心配そうに見る流厳。
慌てた様子のエクス。

「ま、ま、まさかよぉ・・・・て、てめぇ・・・・一人でトランプスの幹部、
 倒したのか!?」

「・・・・いいや、違う、エクス。一人じゃ倒せなかった・・・。
 皆の力で倒したんだ・・・・・。隊長、僕は、甘えていました・・・。
 気落ちしていて、少しでも自分に都合の良いことが起きればと、甘いことを考えていました。
 ・・・・僕は今、自分を真に美しいと思います。本当の自分なのですから」

「・・・・うむ、リオーゼ。おまえ自身の闇、おまえが振り切ってよく成長した。
 おまえの美、確かにワシは見たぞぃ」

「とにかくリオーゼ凄いよぉ!一人で任務を成功させちゃうんだもん!リオーゼ、
 えらい、えらい」

「こ、こら・・・・このみ、年上の頭をなでるものじゃない」

そしてまたいつもの雰囲気に戻ろうとしていた。リオーゼは立ち上がろうとする。
自分の居場所、自分の帰るべきところに戻ろうとしていたのだ。しかし、一人では
立てなかった。すると、誰かが手を差し伸べる。

「ん!・・・つ、掴まれよ・・・」

「エクス・・・・・ッフ、君に手を貸してもらうのは、2度目だな」

「・・・・つ、掴まるなら早く掴まれよ!こっちだって、手伸ばしてんのキツイん
 だからなっ!」

「ッフ・・・・エクス、君の手には掴まれないな」

「は!?」

「まったく、君みたいな汚い奴の手など触れるわけが無いだろう?どれだけの細菌と
 あかと、汚れと、微生物が付着していると思うんだ・・・・手をどけたまえ。
 あらためて、隊長、このみ・・・・手をかしていただけませんか?」

「っぐ!こ、この野郎っ!!人がたまに親切してやらぁ、いい気になりやがって!」

やはりいつも通りの関係に戻るリオーゼ。やはり、この二人の関係だけは一向に成長を
とげることはないようだ。しばし、笑顔が絶えない4人。そのうち、気を使って、街の人々は
帰っていく。それと共に、チーム「ナポリュート」も帰還することとなる。

「え〜!なんで。リオーゼ、今まで何やっていたかおしえてよぉ〜!」

「すまんな、このみ。これだけは・・・・・僕の心に閉まっておきたいんだ」

「っけ!何が心に閉まっておきたいだよ。ったく、嫌だ、嫌だ。こーゆうギザってぇ野郎は、
 すぐかっこつけたがってよぉ・・・」

「・・・・・馬鹿に返す言葉は無い」

「な、なんだとぉー!」

「これこれ、喧嘩は帰ってからにするんじゃな」

帰宅途中。リオーゼは隊長の背に乗せてもらい、帰路していた。結局は、任務成功と
なったのだ。無事に、クラブ8、メロスを倒して作戦完了。結果的には誰が見ても、
文句はいえなかった。

「じゃが、リオーゼのおかげで作戦は成功した!ワシらはまた昇格できるんじゃ。
 今回はまぁ、リオーゼに感謝じゃな」

「い、いえ、隊長・・・・・。ん?隊長、あれは・・・・」

「どうしたのじゃ?リオーゼ。・・・あ、あれは・・・・・」

前方に、大きな馬車がこちらに向かってくるのを発見した。4人は、なぜこんなところに
あれほど大きな馬車が動いているのか、不思議でならなかった。立ち止まる4人。
そして、じっと馬車を眺める。

「あぁん?なんだありゃ。でっけぇ馬車だな・・・・・。隊長、何かわかるか?」

「いや、まるで検討がつかん。いったい何じゃ・・・あの馬車は・・・・・」

じょじょに迫ってくる大きな馬車。目をこらして、馬車の容姿をじっくりと観察する4人。
すると、隊長は何かが見えた。その見えた何かに、冷や汗を垂らす。いや、震えることしか
できなかった。

「そ、そんな・・・・バカな・・・こ、こんな・・・・ことが・・・!!」

「?、どうしたんですか、隊長。あの馬車に見覚えがあるのですか?」

「・・・み、見えたのじゃ。・・・・馬車の・・・マークが・・・」

「あぁ?マーク?んなもんで、何だかわかるのかよ」

「・・・・・・クラブの・・・・13、キングの称号を象ったマークじゃ!!」

「ッ!!!」

4人は驚いた。いや、それは誰もが驚くしかないだろう。何と、目の前から接近してくる
馬車には「クラブのキング」が乗っているのだ。伝説的存在が、彼らの目の前に。
緊張と緊迫、興奮と恐怖で、4人は固まる。震える唇で、喋りだすエクス。

「ク、クラブの・・・・キ、キング?・・・・マジ、かよ・・・・そ、それって・・・
 す、凄ぇことじゃねぇのか!!?」

「エ、エク兄ちゃん・・・・私、ど、どう、反応すればいいか・・・わからないよ・・・!!」

「・・・・バ、バカなっ。キングクラス?今だかつて、アカツキ軍で、アカツキしか
 見たことが無いという・・・・・ほとんど伝説的存在の、キングクラスが・・・・・
 僕達の、目の前に・・・!?」

13、キング。この世界ではほとんど神。止まらない汗と、鼓舞する体を抑え、
4人は必死にその場に保とうとする。キングの一人が、今、エクス達の目の前に
来ているのだ。そしてついに、キングは4人のすぐそばまで・・・。

「い、いかん!!逃げるのじゃ、3人とも!キングと今出会っては、勝負にすら
 ならん。ただ無駄死にをするだけじゃ!」

「し、しかし隊長!・・・も、もう・・・・・間に合いません・・・!!」

「・・・・ば、馬車が・・・・・止まりやがったっ・・・・・!!」

馬車が止まる。そして、中から誰かが出てくる。毛皮のコートで身をつつんだ、20代から
30代くらいの男性。クラブのキング、カール。4人はどうしようもなく、動けず、
喋れず、逃げれずにいた。カールがゆっくりと近づいてくる。

「・・・・・奇遇だな。こんな所でアカツキ軍の兵に会えるとはな。色々、聞き出し
 ことがあるんだ。協力してくれないか?」

「・・・・・・・・エ、エクスっ!リオーゼ!このみ!走れ、走るんじゃ!!
 ワシがこの場を何とかする、おまえらだけは逃げるんじゃ!」

「・・・・はっ!・・・エ、エクス!早く逃げるぞ!!」

「・・・・・わ、わかってらぁ!リオーゼ、俺の背中に乗れっ!このみ、死ぬ気で
 走るぞ!!」

「う、うん!!」

流厳は背中に乗っているリオーゼをエクスにたくし、3人を逃がそうとする。しかし、
それをすんなりとゆるすカールではなかった。カールは何かしようとしていた。
それを察知した流厳。

「一匹たりとも逃がすものか・・・・」

「そうはさせんっ!!」

「ッ!・・・・・石が、破裂した?・・・・・そうか、貴様、能力者か。
 ならば貴様だけで良い。生贄に自ら推薦してくれているのだしな」

「(・・・・やれやれ・・・・・・生きて帰ってこれるかのぉ・・・・・)」

流厳は石を膨張させて、カールに向かって投げた。その間にエクス達は全速力で走って
いた。何も見えず、何も聞こえず、ただ、ただ全速力で走った。死に物狂いで。
体が熱かった。走ったからではない、カールを見たからだ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

「エ、エクス。もういい、止まれ。・・・・・エクス、止まるんだっ!」

「あ、あぁ?・・・。な、何が・・・・どうなったんだよ・・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・エ、エク兄ちゃん、リオーゼ・・・・た、隊長は?」

「・・・・わからん。だが、クラブのキング・・・・確か、カール!・・・・
 奴とまともに戦って・・・・・・・・勝てる・・・・わけが・・・・・」

「い、言うなっ!!リオーゼ!・・・・生きてるに決まってんだろぉ!
 隊長は能力持ってんだぜ?キング・・・・キングだからって・・・・負けるワケ・・・」

「・・・・・とりあえず、アカツキ軍の本部まで帰ろう。そこで隊長を救助してもらう!」

そしてまた、終わりの無い疾走を続ける3人。それから1時間ほどで、アカツキ軍の本部へと
合流ができた。そこで初めにあったのは、何とシルヴァだった。シルヴァは見張りを
していたのだ。

「・・・・ナポリュート・・・・・どうした?そんなに急いで・・・・流厳はどうした?」

「シ、シルヴァ!!隊長が、隊長がクラブのキングに襲われてるんだっ!!
 早く、助けにいってくれぇ!!」

「何っ!!クラブの、キングだと?・・・・・俺だけの指示でどうかなる問題じゃない。
 アカツキ軍全体の問題だ・・・。とにかく、おまえらは早く治療してもらえ。
 その件は俺が何とかする」

「・・・・た、たのむ、シルヴァ!!隊長・・・・救ってくれぇえ!!」

「・・・・・・・・早く行け・・・・!」

シルヴァが何処かへと向かう。エクス達は不安ならがも、ケガを負っているリオーゼの
治療が優先だということをわかっていたため、治療室に向かうになった。隊長があの後
どうなったかはわからない。ただ、3人は「キング」と出会ったのだ・・・・・。


それから数日後。3人はどうすることもなく、自室で待機していた。誰も、何も口に
しようとしなかった。流厳がどうなったのか、それだけが3人の頭を支配していたのだ。
すると、誰かが部屋に入ってくる。

「・・・・・・邪魔をするぞ・・・・・」

「ッ!・・・・シ、シルヴァ・・・・・た、隊長はどうなったんだ!」

「・・・・・まず、報告からする。クラブの8、メロスを倒すことに成功。任務成功により、
 チームナポルートは今日から19位。だが、この順位にはもう一つの理由も入っている・・・・。
 キングとの遭遇、だな」

「だ、だから・・・・・隊長はどうなったんだよ!!」

「・・・・・・・とりあえず、命は取り留めている。しかし、ここ数十日は会うことは
 できないだろう。キングに関しての証言など、色々なことが行われるからな・・・・・。
 だから、おまえらのチームには臨時要員が来る。それだけだ、さらばだ」

そう言うと、シルヴァは立ち去る。彼は、報告を言いに来ただけで、本当にそれ以上は
何も言わなかった。それを聞いて、安心する3人。流厳は生きていたのだ。あのキングと
一対一となって。戦ったかどうかは不明だが。

「マ、マジかよ・・・・生きてるのかよぉ・・・・!・・・・ったく、心配させやがって」

「ふぅ、これで肩の荷が降りたな。隊長はとりあえず無事だったらしいな・・・・。
 それにしても、臨時要員?・・・・・・誰が来るんだ・・・・?」

「で、でもぉ!私達、19位だよっ!つい前までは40位だったのに、19位まで
 来たんだよっ!」

「おぉ、このみっ!!臨時要員が誰だがしらねぇが・・・・・このまま、
 1位になるまで突っ走るぜぇえ!!」

チーム「ナポリュート」。現在、第2部隊19位。前まで40位だったのが嘘のようである
かのような飛躍ぶりである。そして、新たな仲間とも思える「臨時要員」。これが果たして、
ナポリュートにとって、吉とでるか凶とでるか。


21 :匿名希望 :2007/09/02(日) 19:55:14 ID:onQHWiL3

 〜 嵐を呼ぶ?新メンバー、マリア 〜

クラブのキング、カールと遭遇したナポリュート。流厳が犠牲となり、その場を回避する3人。
しかし、流厳は生きていた。けれども、ケガは酷く、ナポリュートに臨時要員が来ることと
なったのだが・・・・。


その日の朝、チームナポリュートは色んな意味で盛り上がっていた。いや、正確に言うと
盛り上がっているのはエクスだけかもしれない。新メンバーのことで、3人が話し合って
いるのだ。

「なぁ!リオーゼ、このみ!女の子かなぁ、かわいい女の子が来るのかなぁ!!」

「・・・・情報によると女性らしいが、特にそれ以上の情報は来ない。まぁ、エクス、
 僕の予想を言ってやろう。今、僕達に欠けているのは隊長だ。だから、40〜60くらいの
 年配の隊長が来るのではないか、と勝手に美的予想をしているのだが・・・・」

「んなわけぇだろ!きっと、すっげー美人なメンバーが来るに決まってんだろっ!」

「・・・・もう、エク兄ちゃんに、頭なでなでしてやらないんだもん!」

「こ、このみぃ〜。おまえは特別なんだってばぁ〜・・・」

「む、誰か来るぞ」

異様に張り切るエクスに、あきれるリオーゼと、少し怒り気味のこのみ。いったい新メンバーは
誰なのか。それだけが3人の心中の的だった。その時、誰かがナポリュートの部屋の
ドアを開ける。そこに入ってきたのは・・・・・・。

ギィイイ・・・

「・・・・・・・栄養・・・・・・補給したい・・・・・」

「へ?・・・・(こ、この女の子が新メンバー?・・・・・か、かわいい・・・・・)」

「君がナポリュートの臨時要員かい?早速だが、君についていくつか聞きたいことがある。
 なにせ、君の情報がまるでないからね」

「・・・・・マーには今、栄養が十分取れてない・・・・マーに食料を分けろ・・・・」

「・・・ふぅ、このみ。しかたない、この臨時要員に何か食料を出してくれ」

「りょ、了解っ!」

臨時要員の女性は、だいたい二十歳ぐらいでエクスやリオーゼと年齢はかわりないと思えた。
白銀の長髪に、大きな瞳。容姿だけ見ると、普通にかわいいと思える女性である。
そんな女性をほっておくエクスではなかった。

「な、なぁ!俺、エクス・コールドって言うんだよ!君の名前は?」

「・・・・・・マリア・・・・・・呼び捨てでかまわん・・・・」

「マリアかっ!これから、よろしくな!」

「・・・・・?・・・・」

突然、マリアは止まってしまう。エクスは、握手を求めた。マリアはそれを不思議そうに
眺めていた。エクスはなぜ、握手を返さないのかがわからなかった。ただ、マリアの不思議そうな
顔を見ていた。

「あ、握手だぜ?・・・・」

「・・・・・あ・・・・・くしゅ?・・・・・・・・・・・ガブッ」

「だぁあああああ!!手、手、手を噛まれたぁああ!マリアっ!離せぇえええ!」

「ム・・・・・何か・・・・・・食料・・・・・・・くれるんじゃないのか・・・?」

「(な、な、何だこの女!?いきなり俺の手を噛みやがった?)」

突然、握手を求めたエクスの手を噛むマリア。エクスは驚きながら、赤くはれた手を
なでる。すると、ナポリュートに何か手紙が届く。それを確認し、手紙の内容を
読むリオーゼ。

「・・・・エクス、どうやら彼女は生まれてから数十年は狼に育てられたらしいな。
 人間としての教育を受け始めたのが最近らしい。今、手紙がきた」

「それを先に言えよっ!!ってか・・・狼に育てられたって・・・・・狼女かよ・・・・」

「はい、マリアちゃん。このみ特性、コーンスープッ!」

「・・・・・・・感謝するぞ・・・・・・・こ、この・・・・み・・・・」

差し出されたコーンスープに目を光らせるマリア。すると、マリアは横にあったスプーンを
使わずに、口だけでスープを飲み始めた。その姿に驚愕する3人。確かに、数十年前まで
狼に育てられていたのだからしかたない。

「ッ!?・・・・て、手を使わずに・・・・・口だけでスープを飲んでいる!?・・・・
 う、美しくない・・・・・エクス、後は君にまかせた・・・・」

「へぇ!?ちょ、ちょっと待てよ!い、いくらかわいいからってよぉ、狼女は・・・・・」

「エク兄ちゃん!頑張って、マリアちゃんを一人前の女性に育ててね?」

「こ、このみぃ〜!おまえだけが頼りなんだってばぁ〜!」

しかし、二人は無情にも何処かへと行ってしまう。取り残されたエクスとマリア。マリアは
相変わらず、口だけでスープを飲んでいる。エクスはどうしようもなく、動けずにいた。
だが、何もしないわけにもいかず、しかたなくマリアに注意する。

「マ、マリア。いいか?そういうスープを飲むのには、このスプーンってのを使うんだ」

「・・・・・・・口の方が・・・・・・楽・・・・」

「ら、楽ってなぁ。んー、でも確かに俺もガキのころは
 残ったスープをヘラでナメてたからなぁ・・・・」

「・・・・・一緒に・・・・食べる・・・」

「・・・・あぁ、ためしに・・・・・・って!違う、違うんだよっ!危うく人の道を
 はずすところだったじゃねぇか。ほら、スプーンを持ってみろよ」

「・・・・・・ガブッ」

「だぁあああ!!また噛みやがったっ!スプーンは食べれねぇっつーの!ついでに俺の
 手も噛むなっ!」

スプーンを食べ物だと思い、エクスの手ごと食べるマリア。再び、手が真っ赤にはれ上がる。
マリアはとりあえず、差し出されたものは何でも食べるという習性があるらしい。
用心を深めるエクス。

「ったく、しかたねぇな。・・・・・・ほれ、マリア。口の周り汚れてんぞ?
 ちょっとこっち向けよ」

「?」

「・・・・手、噛むなよ・・・・・」

エクスは近くにあったティッシュで、口の周りが汚れているマリアの口を丁寧に拭いた。
これしかエクスにできることは無いと確信したのだ。いや、これぐらいしかしたくないと
思ったのかもしれない。

「・・・・・・エ、・・・エ・・・・・エク・・・・・」

「エクス。エクス・コールドだ。覚えてくれよ?」

「・・・・・・エクス・・・・・・・感謝するぞ・・・・」

「ハ、ハハハハ・・・・どうしたしまして」

そして、満腹となったマリアはぐっすりと眠ってしまう。その間に、リオーゼとこのみが
戻ってくる。二人を何か訴えたような視線で見つめるエクス。それを必死に見てみぬフリを
する二人。

「リオーゼ、このみっ!何なんだ、この子はっ!?・・・・・なんで、軍人なんてやってんだ?
 すぐ噛むからか?」

「・・・・・エクス、その件でだが。その子が臨時の隊長になるわけにもいかない。
 だから、美のある考えのすえ、とりあえず僕が臨時で隊長をすることになった」

「ちょ、ちょっと待てよっ!何でテメェ何だよ!おめーにもなれるんだったら、
 当然、俺様にも隊長になるチャンスはあるんじゃねぇのか?」

「君程度が隊長になれるわけがないだろ?まったく、単細胞め・・・・」

「な、何だとぉおお!!」

「・・・・・うぅん・・・・・・・マーの・・・・・・イノシシ・・・・・・食べちゃ・・・・
 ダメ・・・・・・」

「(あぁ?マリアの寝言か・・・?)」

「・・・・?・・・・エ、エクスっ!!し、下を見ろっ!!」

「何だよ、リオーゼ。・・・・ん?・・・・・って、なんじゃこりゃぁああ!!」

ゴゴゴッ・・・・・!!

突然、地面から何かが這い出てきた。恐怖にかられる3人。それもしかたないだろう。
床からは無数の手が出てきているのだから。これはトランプスの襲撃なのだろうか?
アカツキ軍への直接攻撃なのだろうか。

「な、なんじゃこれぇええ!・・・・リオーゼ!なんか地面から、いっぱい人の手が
 飛び出してくてるぞっ!!」

「・・・・は、這い上がってくる・・・・!!・・・・このみ、外に逃げるんだっ!」

「で、でもぉ・・・もう・・・・逃げられないよぉ・・・!」

「・・・ウォー、ウォー」

「うわぁああ!!リオーゼ、このみっ!!こいつら・・・・・ゾ、ゾンビだっ!!」

地面から這い出てきたのは、大量のゾンビだった。あまりの事態に失神しそうになる
エクス。このみは涙を目にいっぱい浮かべて震えていた。リオーゼもどうすればいいか
わからずにたじろいでいた。

「エ、エクスっ!とりあえず、マリアを起こして逃げるぞ!」

「わ、わかった!おい、マリアっ!逃げるぞ」

「・・・・・うぅん?・・・・・?・・・・・・ゾンちゃん・・・・・・・」

「(!?・・・・・ゾンビの動きが・・・・・止まった・・・?)」

さきほどまで勢い良く動いていたゾンビ達の動きが一瞬にして止まった。マリアが
起きるのと同時に。その様子を見て、リオーゼは直感する。エクスとこのみは
何がおきたかわからず、唖然とする。

「・・・・・悪かったな・・・・・・・マーのゾンちゃんが迷惑かけて・・・・・・。
 ゾンちゃん・・・・・帰っていいぞ・・・・・」

「ウォー、ウォー・・・・」

「マ、マジかよぉ・・・・ゾンビ達が・・・・・地中に帰ってく・・・・」

マリアがゾンビ達に命令すると、とたんにゾンビ達は地中へと戻っていってしまった。
マリアは眠い目をこすって、エクス達の驚愕した顔をのぞく。エクスはゆっくりと
マリアに近づく。

「マ、マリア?・・・・おまえが・・・・・あのゾンビを操ってたのか?」

「・・・・・ゾンちゃんか?・・・・・そうだぞ・・・・・エクスにも今度・・・・
 一緒に遊ばせてやるか?・・・・・・・とても良い奴らだぞ・・・・」

「(お、俺に死ねって言ってんのか・・・・?)
 え、遠慮するよ・・・・・・・おい、リオーゼ・・・・これって・・」

「あぁ、どうやら能力らしいな。およそ見る限り、大量のゾンビを操ることらしいな。
 これは・・・・・即戦力が入ったな」

「・・・・そ、そんなんで良いのかぁ・・・・?」

新たなメンバー、マリア。彼女は狼に育てられ、そしてゾンビを操るという能力を持った
不思議な女性。果たして、チームナポリュートは彼女をどう受け止めていくの
だろうか・・・・・。


22 :匿名 :2007/09/09(日) 20:14:05 ID:onQHWiL3

〜 逃げろ、ウォーライズを目指して その1 〜

世界は動きつつあった。ついに、アカツキ軍がトランプスへの総攻撃を開始しようと
しているのだ。それは、この物語の終焉を意味する。決戦の刻は、ゆっくりと
音を立てて近づく。最終戦争は、近い・・・・・。


いつもと変わらない朝。しかしそんな中、チームナポリュートだけはいつもと
雰囲気が違った。何か疲れたような顔をしてグッタリとしているエクス。そんなエクスの
肩をもんであげるこのみ。リオーゼはそんなこともかまわず、何かの資料を見る。すると、
誰かが部屋に入ってきた。

「うぅ〜ん・・・・・・・・おはようだぞ、エクス・・・・・こ、この・・・・み・・・。
 リオー・・・・ゼ・・・・・」

「おい〜す、マリア。よく眠れたかよ?」

「・・・・うむ・・・・・昨日、エクスがマーの枕になってくれたおかげで・・・・
 ぐっすり眠れたぞ・・・・」

「ハ、ハハ・・・・そのせいで睡眠時間14分だってのによぉ・・・・」

「よし、全員揃ったな。それでは、朝の会議は始めるぞ。皆、聞け」

新たに臨時の隊長となったリオーゼ。夜から朝までずっとマリアの面倒を見ていたエクスは
影の功労者であろう。マリアはそんなエクスを不思議そうな眼差しで見つめる。
そして、リオーゼは3人に話し始める。

「僕達、ナポリュートに特令が下った。この手紙をウォーライズという都市に届けると
 いった、一見簡単な任務だ。だが、油断はしないように・・・」

「リ、リオーゼっ!特令ってことはぁ、私達、上層部の人達から信頼されてるって
 ことかなぁ?」

「あぁ、そうだな。車も配給されているし、僕達のチームも目にかけられているようだ。
 それに、この任務は特令・・・・・・成功すれば、かなりのところまで行けるかもしれない」

「マ、マジかよぉ、リオーゼっ!!ってか今回の任務、楽すぎだろぉ〜!
 車に乗って、そよ風をあびながらその都市に行けばいいだけなんだろ!?」

「・・・・だから、そうやって油断するなと言っただろ。まったく、貴様という奴は・・・」

「・・・・・・エクス・・・・・・車って・・・・何だ?・・・・・・
 おいしいのか・・・・?」

「い、いや、食べ物じゃない。う〜ん・・・・便利な乗り物って考えてくれ、マリア」

やはり問題はマリアであろう。まず、マリアは一般常識を知らない。このことが、
ナポリュートの任務に損傷をきたす恐れがあるのだ。それを密かに心配するリオーゼ。
しかし、そうも言っていられず、車に乗る準備をする4人。

「僕が運転する。エクス、君は助手席に乗れ」

「おいおい、俺様がそばにいねぇ〜と心配だってかぁ?」

「・・・・・それほど僕の剣技を体で受けたいか、エクス?」

「じょ、冗談だよっ!」

「エ、エク兄ちゃ〜ん!・・・・マ、マリアちゃんが・・・・・」

「ん?どうしたんだよ、マリア?」

「・・・・・マーは・・・・・・エクスの隣じゃなきゃ・・・・・・嫌だ・・・・・・・」

「・・・・しかたない、エクス。君は後部座席に乗ってくれ。じゃぁ、このみが
 助手席に来てくれ」

こうして、少しトラブルがあったものの、無事に車を発進させることに成功するナポリュート。
ここから「ウォーライズ」という都市はけっこうな距離があり、長旅となりそうであった。
しかし、車という点から、いつもの歩行よりはマシだった。

「わーっ!リオーゼ、見て見てっ!野生の鳥がいるよ!」

「こ、このみ・・・・野生の鳥は、何処でも見られるぞ・・・・」

「エクス・・・・・・この車という機械・・・・・・・狭いぞ・・・・・・」

「我慢してくれよ、マリア。自然で育ったおまえには少し窮屈かもしんねぇけど、
 こういうのは慣れだ、慣れ」

「・・・・・・・そうだな・・・・・ゾンちゃんにも乗せてやるか・・・・・・」

「わぁああ!!や、やめろっ!!マリアっ!」

違う意味でにぎやかになる車内。しかし、いつも戦いという任務ばかりの中で、こういう
手紙を届けるといった戦いに関係していない任務は息抜きになった。特に、まだ若いこのみには
休暇というものも必要なのだ。

「そういえば、美の如くすっかり忘れていたが、マリア、君の年齢はどれくらい何だ?」

「・・・・・・・わからん・・・・・・・・エクス・・・・・おまえが決めろ・・・・」

「マ、マリア。おまえの年齢を俺が決められるわけないだろ・・・・」

「じゃ、じゃぁ、私と一緒の年にしちゃえば!?そうすれば、色々とお話しやすいしぃ」

「このみ、どう見てもマリアの方が年上だ・・・」

「な、何でぇ!?何処がマリアちゃんと私の違いなの・・・?」

「そ、その・・・・・・・背とか・・・・・顔つきとか・・・・・む、む・・・・・」

「おいおい、リオーゼ!むって何だよ!もしかして、その続きはな行の4番目じゃねぇのか?」

「うるさいぞっ!エクス!くそ・・・・なんでこの僕が、こんな美しくないことを・・・」

安らぎの時間。この会話だけ見ると、4人は普通の若者であろう。しかし、彼らは
軍人であるのだ。戦うことを中心とした組織に入っている。彼らの青春は戦いによって
終わるのだ。車に乗って、数十時間。日も落ちて、近くでテントを張ることになった。

「あぁー!疲れた。ひさびさに外に出れたね、マリアちゃん!」

「・・・・・・・空気・・・・・おいしい・・・・・・・ここ・・・・好きだ・・・・・」

「このみ、マリアっ!テントを張るぞ。二人ずつテントで寝るから、僕とエクス。
 このみとマリアだ」

「・・・・なぁ、リオーゼ。別に俺、おまえの愛を受け止めることなんてできねぇよ?」

「っく!こ、この単細胞がぁあ!女性には女性の事情があるだろう!僕だって、君みたいな
 汚い奴と寝るなんて、泣きそうにつらいんだっ!」

「わ、わかってるよ!!勘違いすんな!」

「・・・・・マーは・・・・・・エクスと一緒・・・・・・」

「マ、マリア〜・・・。寝る時だけは、このみと一緒に寝てくれ、な?」

「・・・・・・じゃぁ・・・・後でいっぱい遊ぶんだぞ・・・・・エクス・・・」

「わ、わかったよ」

エクスに懐いてしまったマリア。しかたなく、世話するエクス。まぁ、良い関係といえば
良い関係なのだろう。夕食はいたって単純だった。缶詰の食べ物を食べることになった。
前みたいに火をたいて、カレーつくりなどできないのだ。

「あ〜あ。旅してんのに缶詰かよ・・・・・お菓子持ってくれば良かったな、このみ」

「そうだね、エク兄ちゃん。ねぇ、リオーゼ、チョコレートの缶詰って無いの?」

「あるわけないだろ、このみ。・・・・・って、おい!エクス!マリアが・・・!」

「え?・・・・わぁあ!!マリア、缶詰の缶ごと食うんじゃないっ!」

「・・・は・・・・は・・・歯が・・・・・痛いぞ・・・・・・エクス・・・・・・」

「当たり前だろ!ほれ、俺が缶きりでフタ開けてやるから!」

「・・・・・まったく、隊長ならば、こういった状況をどう解釈するのだろうか?」

何とか、夕食を済ませ、テントの中で就寝となる4人。エクスやリオーゼは疲れていた。
エクスはマリアの面倒で、リオーゼは臨時の隊長となった用事で。元気なのはこのみと
マリアだけだった。そのマリアとこのみのテントの中では・・・・。

「女の子二人っきりって何か、ワクワクするね♪マリアちゃん」

「・・・・・・なぜだ・・・・・?」

「だって、趣味の話とか、恋の話とか色々できるからぁ」

「・・・・・こ・・・・い・・・?」

「マリアちゃんって、好きな人とかいないの?生まれてきてから、今まで・・・」

「・・・・・マーは狼の皆と育った・・・・・同じ種族の人間とはあまり関わっていない・・・・。
 だけど・・・・・・・・エクスは好きだ・・・・・・あいつは良い奴だぞ・・・・・」

「キャー!!マリアちゃん、エク兄ちゃんのこと好きなんだっ!」

「・・・・・このみは・・・・・どうなんだ・・・・・?」

「わ、私はぁ・・・・・・・・ひ・み・つ!」

まるで修学旅行の女子の会話のような二人。どうしてもこの二人は軍人であるということの認識が
足りていなかった。しかし、別の二人はどうなのだろうか?一方のテント、エクスと
リオーゼのテントの中では・・・・。

「・・・・おい、もっと端に寄れるだろ?体が密着してんぞ、リオーゼ」

「君こそもっと、端に寄れるだろ。君にとりついているノミが僕にうつったらどうするんだ・・・」

「て、てめぇよぉ!!隊長になったからって、良い気になって・・・・・・!!」

「・・・・・・やはり・・・・そうなのだろうか・・・・・エクス・・・・」

「?」

リオーゼは突然、真剣な顔になる。エクスもそれを察する。さきほどまでのフザけている
顔とはまるで別人なのだ。リオーゼはどうやら何かを秘密にしていたらしい。
エクスはそれを悟った。

「・・・・僕は本当に隊長として皆を統率できているのだろうか?・・・・
 もしかして、僕は皆をまとめることなど・・・・・」

「・・・・っけ!てめぇーの美って奴はぁ、不安になるためにあんのかよぉ!・・・・・
 いいんじゃねぇのか・・・・・・別に俺は・・・・・・良かったと思うぜ・・・・」

「・・・・っフ、君にも僕の美学がわかりかけてきたかな。それと、話は変わるが、エクス。
 これは二人には秘密なのだが、スペードの11、12が僕達を追跡しているという
 情報があるんだ」

「じゅ、11と、12!?二人が同時で、俺達を狙ってるのか?」

「あぁ。本部を発つ前に、聞かされた。・・・・・一刻をあらそうぞ、エクス。
 11と12を相手にして、例え奇跡が起ころうと、勝ち目はない・・・・!
 エクス・・・・僕らは失敗してはいけない・・・・・二人で・・・・栄光を勝ち取るぞ・・・!」

「・・・・・栄光、かぁ・・・・・・胸が・・・・震えるぜ・・・・!」

満開の星空、そのテントの中で、チームナポリュートの栄光の夢を誓い合う二人の若者。
彼らは戦って、戦って、勝利をもぎとろうとしている。これが彼らの青春。これが彼らの
生きるべき、進むべき運命なのだ。


23 :匿名 :2007/09/16(日) 20:10:05 ID:onQHWiL3

〜 逃げろ、ウォーライズを目指して その2 〜

テントの中で一晩過ごしたナポリュート。早朝早くから、旅の続きが開始することとなる。
慌しく、荷物の準備やテントの片付けを行う4人。4人とも眠そうな顔をおさえて、
必死に目を開けようとする。

「ん?このみ、なんか俺の顔についてんのか?・・・・わ、笑うなよ・・・・
 気になるじゃねぇか」

「フッフッフッフ・・・・エク兄ちゃん、やっぱしエク兄ちゃんも男の子だねっ!」

「へ?」

「・・・・・・エクス・・・・・・マーはまだ眠たい・・・・・」

「マ、マリア。寝るんなら、車の中で寝ろ」

「・・・・・・・ひざ枕・・・・・・して、くれるか・・・?」

「へいへい、やってやるよ。だから、今は片付けをしっかりやれよ?」

「・・・・・・・約束だぞ・・・・エクス・・・・」

そう言うと、マリアは自分の食べたものやテントを必死に片付ける。それを見て、とりあえず
安心する。そして、一通り片付けがすんだところで、車に乗り込む4人。恐らく、何もなければ
今日中に無事に着くだろう。そう、何もなければ・・・・。

「マリア、君はエクスと一緒にいたいのだろ?後部座席へ、どうぞ」

「ム・・・・・・・・感謝する・・・・・リオーゼ・・・・・」

「どういたしまして。と、言うことだ。席は昨日と変わりなくだ。さぁ、皆早く
 車に乗り込んでくれ、出発するぞ!」

こうして、「ウォーライズ」という都市を目指す旅が再び始まった。予想通り、マリアは
エクスのひざで爆睡した。それを見ていたこのみもじょじょに眠気がおそってきた。
やはり疲れがたまっているのだろう。

「・・・・・このみ、運転は僕がしている。外の見張りもエクスがしている。
 今は寝ていいぞ?」

「・・・う、ううん!私、頑張るっ!隊長がいない分、しっかりやらなきゃ」

「・・・・・・あいかわらず、美しいな、このみ」

「・・・・・ズヒィ・・・・・・・ズヒィ・・・・・・Zzz・・・・・」

「マリア・・・・俺のひざで寝るのはかまわねぇんだけどよぉ、ヨダレだけはしないでくれ!
 お、俺のズボンがビチョビチョになるんだよぉお・・・・・・」

「・・・・うぅん・・・・・・エクス・・・・・・・離れちゃ・・・・・イヤだぞ・・・・・」

「(はぁ〜。マリアが狼娘じゃなかったらなぁ、俺もかなり本気だったのによぉ・・・)」

しぶしぶマリアが狼に育てられたということを後悔するエクス。そして数時間後。
何事も無く、ナポリュートの車は進む。いつのまにか、このみも寝てしまっている。
リオーゼは窓を開け、外の風景を見ながら、車を運転していた。

「いい風だ・・・・自然が作り出した力・・・・・
 これが僕の求める、本当の美なのかもしれない」

・・・・ピッ・・・

「・・・・・ん?・・・・・なんだ?・・・・手に赤いものがついている・・・・?」

「?・・・よぉ、リオーゼ。どうしたんだよ?」

「・・・・・こ、これは・・・・バカなっ!!エクスっ!今すぐ、窓を閉めろっ!!」

「ど、どうしたってんだよ!」

「こ、攻撃されたっ!腕から血が出ている!!・・・・まずいぞ、エクス・・・・・
 すでに僕達は、トランプス・・・・いや、スペードの11と12から襲撃を受けていたっ!!」

「な、何だとっ!!」

突然の出来事。すでに、ナポリュートはトランプスによって襲撃されていた。まだ
スペードの11か、12かは不明だがとにかくこの車を攻撃するということは、
トランプスに間違いないのだ。すると、このみがパッと目を覚ます。

「エ、エク兄ちゃん、マリアちゃん!しゃがんで!!3秒後、何かがとんでくる!」

「な、何かが飛んでくる!?マリア、伏せろっ!」

「?」

バリィイイン!!

このみの5秒間の予知能力。後部座席の後方の窓ガラスを割って、何かが飛んできた。
それは、エクスとマリアの目の前の椅子に突き刺さったようだ。その正体を確認しようと
するエクス。そして、その正体に唖然とする・・・・。

「こ、こいつはぁ・・・・・ウ、ウニ!?」

「エクス!バカなことを言うな。ウニがこんな道端にあるはずが無いだろう!・・・・
 って・・・・・ほ、本当に・・・・・ウニだ・・・・・・」

「・・・・ウニ?・・・・・ツンツンしてるぞ・・・・・エクス・・・・・・噛んでもいいか?」

「マ、マリア。絶対に噛むなよ。噛んだ瞬間、即死だからな。このみっ!サイドミラーで、
 後ろに誰かいるか見えるか!?」

「え、え〜と!・・・・・・い、いる!バイクに乗っている二人組みがいる!!」

「っく!!マズイ・・・・・エクス、やはり、情報は正しかったようだ!」

「マ、マジかよリオーゼ・・・・本当に、スペードの11と12!?」

ナポリュートの車を追って、後方から二つのバイクがあらわれる。ヘルメットはしていないが、
遠くて、あまり顔がよく見えなかった。この「ウニ」にしても、リオーゼのケガにしても、
バイクに乗っている二人のうちの、どちらか一人の仕業だろう・・・。

「見つけたな、キャリー・クインシー。僕が仕留めてしまうけど、異議はないかい?」

「そうね、クロフォード。攻撃を開始した後に言うのは、矛盾という言葉がもっとも
 ふさわしく使われるわ。けど、ジャッククラスのあなたに優先するのが、クイーンの
 私の義務かもしれないわ。お先に、どうぞ」

「長きに渡る説明、ありがとう、キャリー・クインシー。僕の能力・・・・・
 ブルー・エアで始末しよう・・・・・。加速するよ、キャリー・クインシー」

「そうね、クロフォード。了解したわ」

スペードの11、クロフォード。12、キャリー・クインシー。情報は正しかった。
やはりスペードの11と12がエクス達を狙っていた。そして、クロフォードの「ブルー・エア」
という能力の正体とは・・・・?

「っく!・・・・目的地のウォーライズまで後少しだというのに・・・!
 このみ、例の手紙はしっかり持っているな!?」

「う、うん!ちゃんと持ってるよ」

「エクス!背後の二人組のバイクをよく見張っているんだぞ!」

「・・・・・リ、リオーゼ・・・・・・ちょっと・・・・・質問・・・・していいか・・・?」

「なんだ!こんな時にっ!!」

エクスは外の風景を見て、驚愕していた。リオーゼは前方を見ていて、あまり回りの
光景を見れていなかった。エクスの質問は、リオーゼにとってはどうでもいいものと
考えていた。しかし、それはかなり重要なものであることを、数秒後にしる。

「・・・・・ここ・・・・・う、海じゃ・・・・ねぇよな・・・?」

「海!?バカなことを言っていないで、ちゃんと後ろを見ていろっ!」

「・・・・・お魚・・・・・エクス・・・・・・取って・・・・マー・・・・欲しいぞ・・・」

「・・・・リ、リオーゼっ!外を見ろっ!」

「っく!さっきから何を!!・・・・・・・・バ、バカ・・・な・・・・・。
 魚達が・・・・・空中を・・・・・泳いでいる!?」

それは衝撃の光景だった。大量の魚達が空中を泳いでいるのだ。それも、エクス達の
近くを。これはまぎれもない、クロフォードの「ブルー・エア」による能力だろう。
さきほどのウニも、これで証明がつく。

「僕のブルー・エア・・・・・恐怖して、身を震わせて悶絶するのは、まだまだ早いよ・・・」


24 :匿名 :2007/09/23(日) 20:07:59 ID:onQHWiL3

〜 逃げろ、ウォーライズを目指して その3 〜

急襲。トランプス13階級のスペードの11と12がエクス達を狙ってバイクを走らせている。
焦るエクス達。いつもは無謀なエクスとて、ただ黙って冷や汗を流すしかなかった。
ある意味、以前のキングとの出会いよりも現実味があったのだ。

「リオーゼっ!飛ばせ、車を全力でぶっ飛ばせっ!追いつかれちまうぞ!」

「わかってる!それより・・・・窓の外を泳いでいる魚をどうにかしなければっ!」

「・・・・?・・・・何でだよ、案外こーいう景色見てると、心が和むぜ?なぁ、マリア」

「・・・・・♪・・・・・・魚・・・・・・おいしいぞ・・・・・」

「マリア、あんまし生魚は食うんじゃねぇぞ?」

「こ、このバカがっ!後ろを見てみろっ!」

「へ?・・・・・って!!サ、サメがいるじゃねぇか!」

リオーゼが恐怖すること、それはサメだった。後方にサメの群れがいるのだ。気楽に
後方のガラスから魚をとって食べているマリア。サメの存在を知って、顔が
真っ青になるエクス。

ガジッ!!ガジガジッ!!

「ま、まずい!サメが・・・・・車をかじってるぞ!どうすんだよ、リオーゼ!」

「貴様自身の美学を見出してみろっ!僕はそれに賭ける!」

「・・・・・エクス・・・・・・サメさん・・・・・・取っていい・・・・?」

「手をだした瞬間、食われちまうぞ、やめとけ!それより・・・・・このサメ・・・
 ほっといたら、ヤバイ・・・!!」

サメは直接、エクス達は襲わなかったものの、車そのものを攻撃してきていた。車の
部品をところかまわず噛み砕く。そのうち、ガソリンやエンジンなどを壊されて、
車は動けなくなってしまうだろう。エクスのとる道は一つしかなかった。

「・・・・こうなったら、同化するしかねぇ!は、排気ガスと・・・同化・・・・
 するしかねぇのか?・・・・・も、もう何でもいいぜ!排気ガスと同化だっ!!」

「リ、リオーゼ!4秒後にサメが左から突っ込んでくる!右にハンドルを切って!」

「了解したっ!!」

このみの予知能力によって、幾度と無く危険を回避することに成功する。リオーゼも
運転しているのが精一杯だった。前方は、このみの予知能力とエクスにまかせる
しかなかったのだ。

「へ、へへ・・・・・排気ガスの能力・・・・・排気ガスを小さく球体にし、固めて・・・・
 狙いを定めて・・・・・撃つっ!!」

「グギャァアアアア!!」

エクスの排気ガスと同化しての能力。それは、排気ガスを鉄砲の弾のようにして、撃つと
いうものだった。その球はサメに見事に命中する。これは大きな意味を持っていた。
遠距離攻撃ができる。これは、接近戦しかできないエクスとリオーゼにとってとても大切だった。

「よっしゃ!この排気ガス鉄砲で、遠くからでもサメ野郎を攻撃できるぜ!
 後ろは俺様に任しときな、リオーゼっ!」

「初めからそのつもりだっ!一瞬でも気を抜くんじゃないぞ、エクスっ!」

「・・・・エクス・・・・・・サメさん・・・・・・・食べたい・・・・・」

「生きてたら、フンドシ巻いて、大海原で取ってきてやるよっ!!」

「エ、エク兄ちゃん・・・・・ちょっと、無理があるような・・・・」

サメの襲撃を回避するエクス達。しかし、それを快く思っていない者達が二人ほどいた。
クロフォードとキャリー・クインシーである。不愉快そうな顔をして、エクス達の乗った
車を見るクロフォード。

「・・・・不可解なことだぞ、銃声は聞こえない。少なくとも、僕の健全な耳に聞こえなかった。
 けど、僕のサメが何か飛び道具によって倒されている。不可解さと共に、腹立たしさが
 起きるよ、キャリー・クインシー」

「そうね、クロフォード。けど、重要なのは過去ではなく、未来なのよ、クロフォード。
 彼らに起こる試練。その試練は私達が用意したもの。私達が彼らに仕掛けた未来。
 果たして、彼らは未来を掴めるかしら・・・?」

不適に微笑するキャリー・クインシー。彼らがエクス達に与えた「試練」とはいったい
何なのだろうか。一方、エクス達は順調にサメなど、突撃してくる魚達を回避していく。
このまま、「ウォーライズ」までいけそうだったが・・・・。

「よっしゃ!この程度なら、楽勝に目的地まで行けるぜ!問題はねぇよな、リオーゼ!」

「・・・・・・ある」

「な、何だよ・・・・・調子上がらねぇ奴だなぁ。こういう時は冗談でも、ねぇ、っていうのが
 常識だぜ?」

「違うっ!・・・・・目の前を見てみろ、エクスっ!」

「あぁん?・・・・・・お、おいおい・・・・・冗談・・・・言えねぇじゃねぇか・・・・」

「リ、リオーゼ、エク兄ちゃん・・・・・ど、どうするの!?橋が壊れてるよ!」

最悪の状況だった。向こう側にたどり着くにはこの一本橋を渡るしかない。しかし、
その橋が途中で壊れていた。このままでは、落ちてしまうことなど目に見えていた。
これが、スペードの11と12が用意した「試練」だった。

「ど、どうすんだよ!リオーゼ!橋は一本しか無ぇんだぜ!?しかも、橋の下は
 底の見えない崖だっ!・・・・・Uターンするしかねぇよ!」

「・・・・・いいや!エクス、物事はつねに冷静になって考えろ。今のおまえは恐怖に
 かられている。そういう時は問題を考えろ、気持ちを恐怖から疑問に変えるんだ」

「・・・・きょ、恐怖を・・・・疑問に・・・・?」

「そうだ、例えば・・・・橋が壊れている所から・・・・向こう岸まで何メートルだとかな・・・」

「ま、まさか・・・・・向こう側まで、飛ぶつもりかよ!?」

リオーゼの賭け。それは、普段のリオーゼなら絶対ともいえるほど考えない決断であろう。
しかし、今のリオーゼは違った。ただ、信じていた。自分を、本当の自分を。
リオーゼは、輝く。

「・・・・細かい数字であらわすことはできないが、ギリギリの所ではあるハズだ・・・。
 車の速度、そして、この車に掛かっている4人分の重さ、走りやすいための地形・・・・。
 すべて計算している・・・・計算して、ギリギリだっ!・・・・・賭けれるか?皆・・・・」

「・・・・・わ、私!リオーゼに賭ける!リオーゼはこの時のために、いつも戦闘でも
 計算してたんだもんねっ!・・・・・・美しく、私達を救って、リオーゼ・・・!」

「・・・・・・・頑張るのだぞ・・・・・・・リオーゼ・・・・・・」

「・・・・・あぁ?てめぇに、俺様の命を賭けるだぁ?ハッ!笑わせてくれるぜ・・・!
 この車に乗った時から、とっくのとうにてめぇーに命、預けてんだよっ!さっさと、
 飛ばしな、リオーゼっ!」

「・・・・・すまない、皆・・・・・美のある判断、感謝する・・・・・・
 そして、美を輝かせる僕に、勇気をくれ・・・・・!!」

車は加速する。その様子を見て、次のエクス達の行動を悟るクロフォードとキャリー・
クインシー。そして、余裕の表情を浮かべるのであった。二人は分かっていたのだ。
その結末が。

「見てくれよ、キャリー・クインシー。あの車で、橋から向こう側まで飛ぶつもり
 らしいね。僕には理解が無限大の如くできやしないよ。だって、微妙に届かないように
 したんだからね、キャリー・クインシー」

「そうね、クロフォード。けど、彼らの無駄な努力を観察するのは、私達の人生の
 欲求を満たすのには十分よ。しっかりとこの目で見ておきましょう」

そのころ、エクス達は緊張の一瞬を迎えようとしていた。リオーゼにすべてを賭ける3人。
失敗したら、ただ、「死」という終わりだけが待っている。だが、届けば、「生」という
道が渡れるのだ。

「っち!あいつらぁ・・・・俺達が飛び越えるのを失敗すると思って、魚達を一斉に
 退かせやがった!・・・・・・な、なめやがって・・・・!」

「・・・・・行くぞ・・・・エクス、このみ、マリア・・・・・・何処かに掴まれっ!!」

「リオーゼっ!ぶっ飛ばせぇえ!!」

「リオーゼ、頑張ってっ!」

「・・・・・・・頑張れ・・・・・」

「と、飛ぶぞっ!!」

そして、車は壊れた橋の途中から、向こう側まで飛ぶ。空中に浮かぶ一台の車。
本当に、11と12が言った通り、計算されて届かない距離なのか?それとも、4人の
勇気が、そのわずかな差を縮めるか?すべては、一瞬に託された・・・・。


25 :匿名 :2007/09/30(日) 20:29:54 ID:onQHWiL3

〜 逃げろ、ウォーライズを目指して その4 〜

飛翔。願う、エクス・リオーゼ・このみ・マリア。4人の命がかかっている。車が向こう側まで
飛べなければ、さけることのできない「死」。しかし、到達できれば・・・・。そのわずかな
願いをこめて、4人を乗せた車は飛ぶ、が・・・・・。

「・・・・だ、駄目だっ!わずかに届かない!」

「ぜ、前輪が・・・わずかに触れるだけかよぉ!?ヤ、ヤバイ・・・・し、死ぬ・・・?」

「あ・・・あぁ・・・・お、落ちちゃう・・・・・・!」

前輪がかすめる。ただ、それだけだった。ただ一言、「届かなかった」。それだけが、
単純な答えだった。届かない現実に、絶望し、車ごと下へ落下することになるエクス達。
彼らの運命は、ここで終わる。だが・・・。

ゴゴゴッ・・・・!

「・・・・・ゾンちゃん・・・・・・頑張って・・・・・・」

「?・・・・な、何っ!リオーゼ!!ま、前を見ろっ!」

「ん?・・・・こ、これは・・・・大量のゾンビが・・・・車を持ち上げている!?」

それは、「奇跡」だった。マリアの能力、大量のゾンビを操る能力によって、一命を
とりとめたエクス達。前輪がわずかに届いた時点で、ゾンビ達が向こう岸から
出現し、車をキャッチしていたのだ。歓喜に揺れる車内。

「た・・・助かった?・・・・エ、エクス・・・このみ・・・マリア・・・け、ケガは・・・
 無いな?・・・・・僕達は・・・・助かったんだ・・・・!」

「やったー!やったね、リオーゼ、エク兄ちゃん、マリアちゃん!!」

「凄ぇ、凄ぇぜ、マリアっ!おまえが仲間で良かったよ!!」

「・・・・・エクス・・・・・・う、うれしい・・・・・か・・・?」

「あぁ!!すっげーうれしいよ!最高だぜ、マリア!」

「・・・・・・エクスが・・・・・うれしいなら・・・・・マーも・・・・うれしいぞ・・・」

マリアのおかげで向こう側に移ることに成功したエクス達。だが、その光景を見て、
怒りを隠せない人物が一人。クロフォードだった。歯ぎしりをし、両手を力いっぱい握り締め、
振るわせる。

「・・・・バ、バカな。僕達の完璧な作戦が、あんな歩兵達によって破錠した?こんな
 ことが、僕の生きる人生に泥を塗ることになるのか?僕の栄光輝く、バラの道に、
 こんな失態・・・・考えられない・・・・!」

「そうね、クロフォード。だけど、あなたの本気をまだ見せてもらってないわ。
 あなたのブルー・エアはまだ本領を発揮できるはずなのでしょう?そうよね?
 そうじゃなければ、あなたはクズよ」

「・・・・わかってるよ、キャリー・クインシー。僕の失態は、僕がモミ消せば
 いいだけのことだろ?抹消でしょ、要は。見せてあげればいいんでしょ、ブルー・エアの
 本気というものを」

怒りをあらわにするクロフォード。遠くから、車の様子をじっと見つめる。そのころ、
車内は別の意味でわいていた。そう、たどり着くのだ。彼らの行かなければいけない場所、
その場所が、近づいてきたのだ。

「み、見えた・・・・皆っ!見えたぞ!僕の美眼でもハッキリ見えるっ!ウォーライズ・・・
 ウォーライズが見えたっ!」

「いける・・・・いけるぜっ!このまま突っ切るしかねぇよ!奴らももう、追ってこれねぇ!
 俺達は・・・・・あいつらを負かしたんだっ!」

「やったね!エク兄ちゃん!・・・・・・ッ!・・・・4秒後、左前方に・・・・・
 タ、タコ・・・・の・・・・足・・・?」

「な、何を言っているんだ?このみ。タコなど美しくな・・・・」

ドコォオオオオンッ!!

「っぐ!!こ、これは・・・!!」

驚愕。それは、巨大なタコの足だった。巨大なタコの足が、何本も地中から伸びてきている
のだ。恐らく、クロフォードの最後の悪あがき。しかし、これがもっとも厄介な
こととなるのだ。

「っく!巨大なタコの足が・・・・何本も地中から出てくる!」

「え、え〜と!3秒後、右前方に出てきて、4秒後、左に・・・・だ、駄目っ!多すぎて、
 未来予知がまわらないよぉ!」

「さ、最後の抵抗しようってのかよぉ!・・・・あいつら・・・!」

「・・・・?・・・・・エクス・・・・・・バイクさん・・・・・・またいるぞ・・・・・」

「な、何!?・・・バ、バカな。何であの二人、いつのまに俺達の後ろをつけてきてるんだよ!」

さらなる追い討ち、いつのまにか壊れた橋を渡って、エクス達の車の後を追いかけてきている
11と12。どちらかの能力で、壊れた橋を渡ったのだろう。バイクに乗って、巨大な
タコ足に襲われている車を見る。

「・・・・もう僕は油断しない。確実に絞め殺して見せるよ、キャリー・クインシー」

「そうね、クロフォード。けど、強者と呼ばれる者はいついかなる時も油断はしない
 ものなのよ、まだまだね、あなたは」

「反論はしないよ、僕は実際に失態を犯したからね。だからね、僕の行動でその言動を
 言い返してみるよ。キャリー・クインシー」

「そうね、クロフォード。楽しみだわ」

軽く会話をする二人。エクス達は、何本ものタコ足を前に、どうもできずにいるというのに。
リオーゼは動体視力は良かった。けれど、このみの予知能力が無ければどうにもできない。
いや、今では予知能力があっても、どうにもできないという状況だった。

「タ、タコの足が多すぎる!これでは・・・・・いつか衝突して、捕まってしまう!
 このみ、無駄でも良いんだ。美の如く、できるだけ指示してくれ!」

「う、うん!わかった、リオーゼ!次、2秒後、ななめ右前方に・・・・・」

「・・・・・・・タコさん・・・・・・タコさん・・・・・・・」

「ッ!マリアっ!!後ろのガラスに手を伸ばしちゃ駄目だっ!」

一瞬、一瞬だった。タコの足が、一瞬のすきをついて、車を攻撃する。攻撃場所は、
後方部分。ちょうど、エクスがマリアを引き戻そうとした時だった。エクスは顔を
出してしまっていた。それと同時、タコの足が後方のガラスを砕き壊す。

ガシャァァァン!!

「う、うわぁあああああ!!目、目がぁあああ!・・・・目が、見えねぇええ!!」

「!?エ、エクス!どうした!?・・・・ッ!・・・・目から血が出ている・・・・
 何が起こった!?」

「・・・・・マ、マーを・・・・戻そうとして・・・・・・そしたら・・・・・・
 わ、割れた・・・・・ガラスが・・・・・・エクスの・・・・目、目に・・・・・・」

「こ、こんな時に・・・!・・・・このみ、少しハンドルを握っていてくれ!」

「えぇ!?む、無理だよリオーゼ!」

しかし、リオーゼは勝手にハンドルをこのみに任せ、後方のエクスの様子を見る。マリアは
震えていた。自分がエクスを傷つけてしまったのだ。そう、考えていた。ゆっくりと、
静かにリオーゼはエクスの容態を見ようとする。

「エクス、目を見せてみろ・・・」

「い、痛ぇえ!!・・・・目、目が・・・・見えなくなっちまった!!」

「どれ・・・・・・・・・・眼球は無事だ。すぐに治る。だが、今はまだ目は使い物に
 ならないか・・・!!・・・・・どうすれば・・・・良いんだ・・・・・!」

「・・・・・エ、エクス・・・・・マー・・・・・・どうすれば良い・・・・・?
 マー・・・・・エクスに・・・・・キズしか・・・・・・つけれないのか・・・・・?
 イヤだ・・・・・・エクス・・・・・キズつくの・・・マー・・・・イヤだ・・・・!」

「・・・・・・・っへ、安心しろよ、マリア・・・・。まだ、希望はあるぜ・・・・。
 さ、最後の賭けだ・・・・・・・このみ、マリア・・・・
 聞いてくれ・・・・・・これから俺の一人舞台・・・・・・・脚本、言うぜ・・・?」

「?、エ、エク兄ちゃん・・・・何か、作戦があるの?」

血で真っ赤になった右目を押さえるエクス。大量の出血のせいで、左目もよく
見えていなかった。そして、エクスは語る。最後の賭けについて。両目も見えていない、
エクスが・・・・・。

「・・・・率直に言うぜ・・・・・スペードの11と12・・・・・奴らを直接、攻撃する!」

「!?・・・・エ、エクス、貴様、何か策はあるのだろうな?」

「・・・・マリアが、ゾンビで奴らを奇襲して、散開させる。そんで、奴らの
 動いた位置の詳細を、このみが未来予知で俺におしえる・・・・最後に、俺がこの排気ガス鉄砲で、
 トドメを刺すっ!・・・・・ブルっちまうぜ・・・・・あまりの完璧さによぉ・・・!」

「・・・・・わかった!エク兄ちゃん、私、協力する!」

「・・・・・エクス・・・・・マー・・・・・ずっと・・・・一緒にいたい・・・・・
 やってあげたら・・・・・・成功したら・・・・・ずっと・・・・一緒にいてくれるか・・・?」

「おう、気の済むまで一緒にいてやんぜぇ」

「・・・・・ちょっと・・・・・・噛んでも・・・・・いいか・・・?」

「っへ、好きなほど噛めよ。リオーゼ、ちょっくら・・・・・・男、見せてくらぁ」

「エ、エクス・・・・貴様・・・・・両目が見えないというのに・・・・!」

エクスは賭けるしかなかった。すべて、二人の誘導によってエクスは動く。二人のうち
どちらかが失敗したらすべてが終わる。崩壊する。だが、エクスは賭けた。この道しかない、
この瞬間しかないと、悟った。そして今、主人公が大勝負に出る・・・・!


26 :匿名 :2007/10/07(日) 20:08:34 ID:onQHWiL3

〜 逃げろ、ウォーライズを目指して その5 〜

奇跡への可能性。それに等しかった、今の状況は。両目が使いものにならない状態の
エクスが最後の希望。だがリオーゼ、このみ、マリアはそんなエクスでも信じることができた。
彼らは「仲間」だから。

「こ、このみ・・・・俺を・・・・車の上に立たせてくれ・・・・」

「え!?エ、エク兄ちゃん、車の上に立つの?」

「そっちの方が・・・・こちよりか、ずっと狙いやすいんでね」

「・・・・わ、わかった!エク兄ちゃん、掴まって!」

エクスは、このみの手を借りて車の上に立つことにする。ハッキリ言って、それは
死ぬことを望む者としか思えない行動だった。外には大量の巨大タコアシ。狙われたら、
一発で終わりなのだ。

「(くそがぁ・・・・・目、目が・・・・・痛んできやがった・・・・!)」

「エ、エク兄ちゃん!やっぱり、車の上は危険だよ。タコの足が・・・・!」

「・・・・・あの美野郎を・・・・信じてるよ・・・・・じゃなきゃぁ、立てねぇさ・・・。
 リ、リオーゼっ!!数十秒・・・・いや、数秒だけでいい!俺に・・・・・
 ナポリュートに、道を示せっ!!」

「・・・・この僕に言っているのか?エクス!数秒だと?・・・やってやる・・・・・
 貴様に美は預けた、エクスっ!とびっきりに輝いてこい!」

「・・・・イカしてるぜ、リオーゼ・・・・・!」

エクスとこのみは車の上に立つ。その光景を目の当たりにして、驚きを隠せないクロフォードと
キャリー・クインシー。その姿を見て、何となく、自分達を直接狙っているという
ことを悟ることができたのだ。

「み、見てくれよ、キャリー・クインシー。奴ら、車の上に乗って何かしようと
 しているようだね。疑問だけど、不可解だけど、僕達を狙おうとしているのかな?
 僕らは、逃げなければいけないのかな?」

「そうね、クロフォード。けど、私はあなたのブルー・エアの能力を信じてるわ。
 いや、信じさせて。あなたがスペードのジャックであることを、私に信じさせてちょうだい」

「・・・・わかっているよ、キャリー・クインシー。どんな疑問も、謎も、答えは
 一つしかないのさ。その答えを信頼に結びつけてあげるよ」

タコの足の攻撃がより増す。しかし、リオーゼは一生懸命、自分の動体視力だけで
避ける。まさに、外の光景は地獄そのものだった。目の前にはいくつもの巨大なタコが
襲い掛かる。常人ならば、失神しているか、気が狂ってしまうだろう。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

「エ、エク兄ちゃん?・・・・・だ、駄目っ!気を失っちゃ駄目っ!」

「・・・あ、あぁ・・・・大丈夫だ・・・・・。(血、血が・・・・無ぇ・・・・・・
 気が・・・・ブっ飛んじまいそうだぜ・・・・・・)」

「・・・・・エクス・・・・・・マー・・・・・・攻撃するぞ・・・・・」

「・・・たのむぜ、マリア。とっておきのゾンビ達を、あいつらにお見舞いしてやれっ!!」

「・・・・わかった・・・・・!・・・・・ゾンちゃん・・・・・獲物は・・・・
 あの二人だ・・・・・・・!」

マリアの能力、ゾンビを操る能力によってクロフォードとキャリー・クインシーの
バイクで走っている地面から何匹ものゾンビが這い上がってくる。それに驚き、
困惑する二人。

ゴゴゴッ・・・・!

「キャ、キャリー・クインシー!こ、これは・・・・死人?死人達の祟りか・・・!?
 散開しなければ、危うくなるぞ、キャリー・クインシー!」

「そ、そうね、クロフォード。あなたは右、私は左よ。それにしても・・・・
 もしかして、これは・・・・・能力?そんなハズが、能力はトランプスの幹部以外が
 持っているわけ・・・・・ま、まさか・・・・・しゅ、主人公だとでも言うの・・・?」

右と左に散開するクロフォードと、キャリー・クインシー。ここまでは、エクスの
狙い通りだった。ゾンビで、二人の位置を誘導する。そして、最後、このみが
エクスにその詳細を指示をする。

「エ、エク兄ちゃん!良いね!行くよ!?」

「あ、あぁ・・・!」

「・・・・エ、エク兄ちゃん・・・・・?」

「な、なんだ・・・?」

「右の人と左の人、どっちを未来予知すればいいのぉ!?」

「・・・・し、しまった・・・・!」

軽率なミス。エクスは、このタコの足を操っている能力者の方を攻撃しなければいけないのだ。
しかし、それを知るすべをエクス達は知らなかった。一気に窮地に立たされるエクス達。
けれども、エクスはあきらめなかった。

「・・・・・右だ・・・・右で行くぜっ!・・・・このみ、未来予知しろっ!」

「・・・・わ、わかった!右斜め前方、約68度っ!エク兄ちゃん、撃ってっ!」

「・・・・・・・必ず・・・・・・当てる・・・・・!!!」

エクスは両目が見えない状態で、排気ガス弾を発射する。その軌道は、きれいに
クロフォードのバイクへと続いていた。そして、何の迷いも無く、バイクのタイヤ
部分に当たる。

ドコンッ!!

「!?・・・・ま、まずい!キャリー・クインシー!タイヤを何かによって撃たれた!
 追撃ができない」

「・・・・・・もう、無理ね。能力を解きなさい、クロフォード」

「ッ!・・・・ま、まだ僕の信念は、無限に降り注ぐ太陽の光の如く・・・」

「クロフォード。私達はトランプスの大幹部よ。敗者が勝者の道を阻むものではない。
 それぐらい、強者ならば心得ているはずよ?」

「・・・・・わかったよ、キャリー・クインシー・・・・」

そして、クロフォードはようやくあきらめる。バイクを止め、逃げていく一台の車を
じっと見つめる。そのころ、二人の追撃を逃れたナポリュートはそのエクスの無謀な作戦の
成功に驚きを隠せない様子であった。

「タ、タコの足が消えた・・・・・エ、エクス!貴様、やったのか!?」

「リオーゼっ!エク兄ちゃん、やったよ!トランプスの11と12に攻撃成功したよっ!」

「・・・・・エクス・・・・・・よくやったぞ・・・・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・・・・ったくよぉ・・・・・誰も俺を
 車の上から降ろしてくれねぇんだな・・・・・・・」

密かにショックを受けるエクスとほっていおいて、勝手に盛り上がる車内。そして、チーム
ナポリュートは、見事に任務を成功させたのだ。車はウォーライズにつく。そこで、
車を止めるリオーゼ。

「き、来た・・・・・・ついに到着したんだ・・・・・ウォーライズに・・・・・
 僕達は・・・・美だ・・・・・真な、美だ・・・・!」

「やったねっ!リオーゼ。ん?・・・・リオーゼ、誰かくるよ」

「?」

「・・・・アカツキ軍第2部隊所属、ナポリュート様でしょうか?用件は承知しております、
 手紙をこちらに」

リオーゼに話しかけてきたのは黒い服の男。リオーゼは簡単に手紙を男に渡した。
11と12はウォーライズの中までは追ってこなかった。だから、ここまで奴らの罠が
はってあるとは思わなかったからだ。

「・・・・・確かに、受け取りました。お疲れでしょう、ホテルを用意しております、
 そこでお休みになってください」

「ご好意感謝いたします。そ、それと・・・・ケガをしている者がいるのですか・・・・」

「・・・・わかりました、ホテルの方に医者を呼び寄せておきます」

こうして、ウォーライズに着くことに成功したナポリュートはホテルに泊まり、休みを
とることとなった。エクスは、目のケガでほとんどグッタリした状態だった。
部屋は二つ、二人、二人の部屋割りだった。

「エクスのケガが心配だ、僕がエクスと同じ部屋に入る。このみとマリアで
 部屋に入ってくれ」

「わ、わかった。リオーゼ」

「・・・・・・エクス・・・・・・マーが傷つけた・・・・・マーの・・・・せいだ・・・・・。
 マーが・・・・・エクスを見る・・・・・マーが・・・・・エクスを助ける・・・・!」

「・・・・・・・・わかったよ。マリア、エクスをたのんだ」

こうして、部屋ごとに分かれる4人。後に、医者が来て、エクスを治療する。傷ついた
右目。それと、少し頭にキズを負っていた。しかし、どれもそれほど重症ではなく、
その場の処置で何とかできた。しばらく安静と言われ、ベットに横になるエクス。

「・・・・・・大丈夫か?・・・・・・エクス・・・・・・」

「へへ・・・・さっき医者が来て、大丈夫だって言ってただろ?もう、余裕だぜ」

「・・・・良かった・・・・・・エクスが・・・・・無事で・・・・・・」

「それより、マリア。おまえのお陰で本当に助かったぜ、今回の任務。おまえがいなかったら、
 何度死んでいたことか・・・・」

「・・・・・エクスの・・・・・役に立ったのなら・・・・・マーは・・・・うれしいぞ・・・」

「っへ、そうかい。どうだ?かっこよかったか?俺」

「・・・・・?・・・・・なんで・・・・・そんなことを聞くんだ?」

疑問そうにエクスの顔を見るマリア。エクスは半分冗談のつもりで言ったのだが、マリアは
それを不可解に思ってしまったらしく、今さら冗談とはいえない雰囲気になってしまった
エクス。

「そ、そうだなぁ・・・・・ホレちまったかよ?とか、そーゆうこと・・・・男なら、
 考えちまうからさ・・・・・」

「・・・・・エクス・・・・・マーと・・・・・子作りしたいのか・・・・?」

「だぁあああああ!!!ち、違うっ!こ、こ、こ、こ・・・・子作りって・・・おまえ・・・!!」

「・・・・・・狼の友達は・・・・もう子作りをしていたぞ・・・・・・・
 エクス・・・・・マーと・・・・・・子作りするか・・・・?」

「し、しない!しないっ!!」

「・・・・・やっぱり・・・・・人間はよくわからないぞ・・・・・狼は・・・・・
 普通に子作りしていたのに・・・・・・・」

「お、狼はな・・・・人間のことをもっと勉強するんだな、マリア・・・・」

狼の交尾を身近に拝見していたため、マリアにとっては「子作り」など日常的なもの
だと思っていたらしい。そのころ、例の手紙は無事に、届け先の人物に届けられていた。
そう、その人物こそ、「岩木・半蔵」である。

「フフフ・・・・・ついに、始まるのですか。トランプスとの最終戦争を・・・!」


27 :匿名 :2007/10/14(日) 20:15:02 ID:onQHWiL3

〜 たった一人の主人公 〜

エクスとマリアが騒がしい会話をしている中、リオーゼとこのみはベットに大の字で
倒れ寝ていた。ようやく訪れた安らぎのひと時。しかも、普段は絶対に触れないベットで。
しかし、そんな中でもリオーゼは難しい顔をしていた・・・・。

「・・・・なぁ、このみ・・・・・覚えているか?」

「ん?何、リオーゼ」

「・・・・・あいつ・・・・エクスが・・・・自分を主人公だと言ったのを・・・」

「あぁ、覚えてるよ!あの時は状況も凄かったからねぇ。エク兄ちゃんも凄いこと
 言ってたもんね」

「・・・・・不可解なんだ。奴がこのチーム入ってきてから、任務が降りてくるようになり、
 しかも失敗は未だほとんど無い。それに・・・・奴は何かしらの能力を持っている。
 そして、今日の出来事で僕は何か確信したよ・・・・」

「今日の・・・・出来事・・・?」

「不可能だ。目が傷ついて、フラフラな状態なのに、このみの支持を正確に聞き取り、
 その通りに命中させた。それに、右か、左か・・・・撃つ方を選択肢された時、
 エクスは見事、本体を撃つことに成功した・・・・・・・」

リオーゼの疑問、それはエクスだった。リオーゼはエクスが「主人公」であることに
勘づいてきているのだ。それ以前に、エクスは自分を主人公だと言っているのだが、
リオーゼはどうしても信じられなかったのだ。

「・・・・これほどの偶然、必然でなければありえない・・・・・そう、答えは一つ。
 エクスは・・・・・・主・・・・」

「リオーゼっ!・・・・エク兄ちゃんが、何であろうと、私達・・・・
 何も変わらないよね?・・・・・私達、ずっと仲間だよね?」

「・・・・・・あぁ、そうだな。僕達はずっと・・・・仲間だな・・・・・。
 (確かに、エクスの正体が何者であろうと、関係ないのかもしれない・・・・・。
 ただ、あいつの破天荒ブリを見るのも・・・・・いいのかもしれない・・・・)」

リオーゼは、その疑問をそっと心にしまうことにした。とりあえず、エクスが主人公だと
知っているのは、アカツキと伊集院のみ。それ以外は、誰も知らないのだ。誰も
信じないのだ。

部屋で休んでいる4人は、体の回復を見計らって外に出て食事をとることにした。
任務に成功しているので、それほど「金」には不自由がしていなかったナポリュート。
とあるイタリア風のレストランに入る。

「ふぅ、ようやく食事にありつけるというわけか。このみ、マリア。何でも好きなものを
 たのみたまえ。美のある食事を体験しておくのだ」

「じゃ、じゃぁ、私、イタリア風スパゲッティー!!」

「・・・・・・エクス・・・・・・字・・・・・・読めない・・・・・」

「ん?あ、そうか、そうか。じゃぁ、一緒のたのむか?マリア」

「・・・・・・・うん・・・・・!」

「じゃぁ、リオーゼ。俺とマリアはこのランチセットでいいや」

4人共、自分の食べるものを決め、店員にたのむ。すると、リオーゼは懐から一枚の
手紙を取り出した。さっきとは違って真剣な顔になるリオーゼ。どうやら、その紙は
作戦のことらしい。

「さて、と。さきほど結果報告書が届いた。我々、ナポリュートは任務に成功し、
 19位から13位に昇格だ。それと・・・・・もう一つ、重要なことが書かれている」

「?なんだよ、リオーゼ。早く言っちまえよ」

「・・・・ここからは極秘情報だ。アカツキ軍がトランプスとの最終戦争に向けて
 優秀なチームを選抜している。その候補の中にナポリュートの名がある・・・・・!」

「マ、マジかよ!ってか、選抜されたからって・・・・何が凄いんだ?」

「ハッキリ言うと、ここで選ばれなかったチームは捨て駒と考えて良い。上の者に指示されて
 死んでいくだけの歩兵だ。その命令できる立場に、僕達が選ばれそうなんだ」

「じゃ、じゃぁ、リオーゼ!どうやったら、選ばれるの!?」

「・・・・・・条件が載っている・・・・・・+S・・・・・そう、最高難易度、
 +Sレベルの難易度の任務をこなすこと・・・・・それが、条件らしい」

リオーゼの口から語られる喜びと絶望。ナポリュートの成長は、第3者から見ても、
輝かしいものに見えた。上層部はそれに賭けて、ナポリュートを選んだのであろう。
しかし、条件は最高難易度、+Sの任務。

「ぷ、ぷ、+Sって・・・・・あ、ありえねぇだろ・・・・・マ、マジでやんのか?」

「僕だけの意向で決められる問題じゃない。これは、チーム全体の問題なんだ。
 確かに、リスクは大きい。しかし、僕は・・・・・・誰も、死なれたくない。
 最終戦争・・・・大勢の死者が出るだろう・・・。それを僕達が回避するためには、
 ここで選抜されるしかないんだ・・・・!」

「リ、リオーゼ・・・・・」

「すぐに結論を出せとは言わないよ。美のある決断を僕は待っている。気持ちが整ったら
 僕に言ってくれ」

リオーゼは真剣だった。確かに、ここで選抜されれば、戦争の指示する側に回れる。
死ぬ確立が激減するのだ。しかし、+Sの任務もまた、死ぬ確立は高いのだ。聞いてすぐに
答えを出せる質問ではなかった。そんな間に、料理が届く。

「・・・・・・エクス・・・・・・料理・・・・・来たぞ・・・・・」

「あ、あぁ・・・。ちょ、ちょっと・・・・・席はずすわ・・・・」

「エクス・・・・。(あの野人的なエクスも、流石に悩むか。確かに、自分の生か死か、
 問われているようなものだしな・・・)」

「・・・・・マー・・・・・・エクスの後・・・・・追う・・・・・!」

「・・・・そうしてくれ、マリア。あのバカが一人だと、面倒なことになりそうだしな」

エクスはレストランから出てしまう。それを追うマリア。エクスは食事を喉に通すことが
できないほど悩んでいた。それは経験からである。エクスは何度も死に直面してきた。
だから、「死」に対して、敏感になってしまったのだ。

「(+S・・・・確か、レザートの野郎はDレベル・・・・・普通に考えて、勝機なんて
 考えられねぇじゃねぇか・・・・。けど、勝てれば・・・・・くそっ!俺様は
 主人公なんだろ!?・・・ビビることなんて・・・・ビビることなんて・・・・!!)」

「・・・・・・・・エクス・・・・・」

「?・・・・おぉ、マリアじゃねぇか。どうしたんだよ?・・・・?・・・・・
 マリア、手に何持ってんだ?」

マリアは両手に何かを持っていた。何か黒い物体を。エクスはそれが最初、わからなかった。
しかし、すぐにわかった。それは「狼」の死骸だった。この都市に迷い込んだ狼が、
車にひかれて死んでしまったのだろう。

「・・・・・・狼・・・・・・同じ・・・・仲間だ・・・・・死んでる・・・・・・」

「狼?・・・く、車にでもひかれたのか!?」

「・・・・・・・エクス・・・・・狼は・・・・・何で・・・・・バカなんだ・・・・?
 なんで・・・・・マーは・・・・・バカなんだ・・・・?」

「マ、マリア?」

「・・・・なんで・・・・・そんな・・・・バカな生き物を・・・・・・・
 助けられないんだ・・・・・?・・・・・・・マーは・・・・・助けられる・・・のに・・・」

「マ、マリア・・・・・(泣いて、いるのか・・・・)」

マリアの目から大粒の涙があふれ出ていた。マリアにとって、「狼」は家族同然。その
狼があまりにもあっけなく、惨めに、悲惨に、無駄死にしている姿を見て、どうしようもない
劣等感に襲われたのだ。

「ひっく・・・・・く、くやしい・・・・・・くやしいぞ・・・・エクス・・・・・・。
 皆・・・・・皆ぁ・・・・・・・この世界で・・・・・育った・・・・・・・
 あ、赤ちゃん・・・・・・なのに・・・・・・・」

「ッ!!」

エクスは無表情で、驚愕した。それは、自分の求めていた答えを、ズバリ、マリアが
言い当てたからだ。エクスはしばらく黙り、死んだ狼を見つめる。そして、エクスの
目に、光が灯る。

「・・・・・・・・・・・・・マリア、俺、決めたよ」

「?・・・・・どうした?・・・・・エクス・・・・・・」

「俺、クズだった。選抜されて、おめぇーらを守り抜きたいって思ってた。クズだったよ。
 マリア、俺、主人公なんだ。皆・・・・皆を守らなくちゃいけねぇんだ。俺が、
 安全地帯にいてどうすんだよ・・・・・・マリア、ありがとうな」

「・・・・・・?・・・・・・・」

「俺、バカになる。いや、バカになれるよ。ただ・・・・バカみてぇに、人を守ってくよ。
 俺には力がある、主人公としての力が!・・・・弱い者を守る、力がある!それは、
 最小限に死人を抑えるとか、そんなんじゃなくて・・・・全員、助けられるような、すっげー
 力が俺にはあるっ!!」

エクスは自分が何のために主人公であるか、何のために必要とされているのか、答えを
導き出せたようだった。エクスは決意する、自分のために、人々のために、今の自分に
何ができるかを・・・・。


そして、その後。エクスとマリアは死んだ狼を、この都市唯一と言っていいほどの
わずかな自然、大きな一本の木の下に埋めて墓を作ることにした。わずかながらの
礼儀なのだろう。

「・・・・よしっ!これで良いだろ。ま、まぁ・・・そんな立派な墓じゃねぇけど、
 満足してくれるだろうよ。な、マリア」

「・・・・・エクス・・・・・・マー・・・・・大好き・・・・・エクスのこと・・・・・」

「・・・・ありがとよ・・・。な、なぁ・・・・マリア・・・・お、俺よぉ・・・・・。
 時々よぉ・・・・な、何つーか・・・・すっげー、悲しくなんだよ・・・・・。
 主人公って・・・・憧れがよぉ・・・・・軍人なんて・・・・やってて・・・・・・
 バカだよなぁって・・・・皆・・・・そんな俺を・・・・憧れるわけねぇよなぁって・・・・」

「・・・・エクス・・・・・・泣いているのか・・・・?」

エクスの涙。初めてのことだった。マリアは、泣いているエクスを見て、何を考えている
のだろうか。ただ、じっとエクスを見つめる。

「へ、へへ・・・・マリアの涙、もらい泣きしちまったようだぜ・・・・・・。
 けど、けどよぉ・・・・・俺・・・・・本当の主人公になりてぇんだ・・・・!!」

「・・・・・エクス・・・・」

「・・・・・す、すまねぇな・・・・こんなくっだらねー話、聞かせちまって・・・」

「・・・・・・マーの胸で泣け・・・・・エクスの気持ち・・・・・いっぱい・・・・
 受け取ってやるぞ・・・・・・」

「う、う、・・・・・うわぁあああ!!」

エクスは泣いた。普段、弱みを見せないエクスが初めて本心を明かす。エクスは心細かった。
誰からも主人公として必要とされてないのでは、と。エクスは悩んでいた、苦しんでいたのであった。
エクスはマリアの胸で泣く。エクスは、主人公としてまた一歩、成長するのである。


28 :匿名 :2007/10/21(日) 20:22:51 ID:onQHWiL3

〜 夢を追う者、現実を歩く者 〜

エクスは戻ってきた。リオーゼの前に。リオーゼは今だにレストランのテーブルにこのみと
共にいた。エクスとマリアは、再びテーブルに座る。リオーゼはエクスの目から悟れた。
何か答えを導きだせだのだと。

「エクス、戻ってきたようだな。さぁ、おまえの美の導き出した答えを聞かせてもらおうか」

「・・・・・俺、やる。その+Sの作戦、やってやるぜっ!」

「・・・そうか、エクス。僕と同じ意見だ。この+Sレベルの任務を成功させ、
 僕らは生き延びるんだっ!華麗に、美の如くなっ!」

「・・・・・・違う、違うんだ。リオーゼ・・・・・・・俺、その、選抜に受かる
 ためじゃねぇ。だから、作戦を成功させても、選抜は断るっ!」

「な、何!?」

その答えに、驚きを隠せないリオーゼとこのみ。エクスは+Sレベルの任務を受ける
ことに関してはやる気でいる、しかし、トランプスでの最終戦争での上層部入りの選抜は
断ると言っているのだ。

「エ、エク兄ちゃん!何言っているの!?そ、それじゃぁ、その任務を受ける意味が・・・」

「意味が無いってか?違ぇぜ、このみ。その任務を成功させることによって、
 この任務を受ける奴らの犠牲者・・・そいつらを、救える!!」

「・・・・っく!き、貴様っ!何様のつもりだっ!エクス、貴様、神にでもなったつもりか!?
 貴様みたいな野蛮人に、人々を救うとか、そんな偉いことができると思っているのか!」

「できるとか、できねぇとか、そんなくだらねぇこと言ってんじゃねぇんだっ!
 しなきゃいけないことなんだっ!俺が、人を見殺しにしてちゃいけないんだ!」

「貴様っ!僕達のチームが犠牲になっても良いというのか!?」

「違うっ!俺達のチームも守り、アカツキ軍の仲間も守り抜くんだっ!」

エクスの発言。それは、不可能であった。エクス自身、それはわかっていた。しかし、
これは自分を奮い立たすために、そして、自分の強い意志で決めたことなのだから、
言わなければいけないのだと思った。リオーゼは怒った顔で、エクスを睨む。

「・・・・・見損なった・・・・エクス・コールドっ!・・・・・・・
 やはり貴様は・・・・・ただの醜態か・・・・・・・・!」

「ま、待って!リオーゼっ!」

このみがリオーゼを引きとめようとするが、リオーゼは無言でその場から去る。
このみは怒ったような顔をして、エクスを見る。エクスはただ、真剣な顔でじっと
リオーゼの面影を見る。

「エ、エク兄ちゃん!無理だよ、皆を救うなんて。リオーゼじゃなくても、誰でも
 怒っちゃうよ、そんなこと言われたら!」

「・・・・・・わかってる、わかってんだよ、このみ。全員救うなんて・・・・無理だ。
 戦争すりゃ、誰かが死ぬさ。いっぱい、死んじまうよ・・・・。けど、こうでも
 言わねぇと・・・・・俺の心に火が灯らねぇんだ・・・・!」

「エ、エク兄ちゃん・・・・・」

「マリア、ちょっと、リオーゼの奴の所、迎えに行ってくれないか?今の俺が追いかけた
 ところで、火に油を注ぐだけだ」

「・・・・・わかったぞ・・・・・・エクス・・・・・」

そう言うと、マリアはリオーゼの後を追って走る。エクスは依然、真剣な表情で
何かを見つめる。エクスは吹っ切れたようだった。これが、自分の成すべき道なのだと。
エクスは理解したのかもしれない。

「・・・・・・今のエク兄ちゃん・・・・・・ちょっと怖い・・・・・」

「そうか、このみ・・・・」

「・・・・・・ちょっと、だけどね・・・・」

「・・・・このみ」

「?」

「・・・・・チョコレート・パフェ!作戦の成功を祝って、内緒で食べちまうか!」

「・・・・・・・うん!!」

いつものエクスに戻る。それを見て、うれしくなるこのみ。エクスも好きでこういうことを
言っているわけではないのだ。ただ、エクスは人一倍「責任」を感じていた。「主人公」という
重みについて・・・・。

そのころ、エクスの無茶苦茶な態度に腹を立てたリオーゼは、怒りをあらわにしながら
夜道を歩いていた。リオーゼは正しかった。一般的に言うには、生きるためには。
しかし、それをエクスに否定されたのだ。

「(くそっ!エクスめ・・・・!全員を救うだと?寝ぼけたことを・・・・!
 ゆるせない・・・・エクス、あいつだけは・・・・絶対にゆるせない・・・・・!!
 そう、親友だと思っているからこそ・・・・よけいにゆるせないんだ!)」

リオーゼが気持ちをあきらかにする。リオーゼは確かに、外見では冷酷をつらぬいて
きているが、仲間に対する信頼などは他の者の比ではなかった。リオーゼこそが、
もっとも仲間との信頼関係を重要に思っているのだ。

「(エクスも、このみも、マリアも・・・・皆、皆・・・・・守りたい・・・!
 けど、それで精一杯、いや、それでも危険なんだ!・・・・・それなのに、奴は
 軽々しく大勢の者の命を守ると言った!・・・・その命の尊さを理解しない奴の心情が、
 僕はゆるせないんだ!)」

「・・・・・・リオーゼ・・・・・・」

「?・・・・マ、マリアか・・・・どうした?僕の後を追いかけてくれたのか?」

「・・・・・うん・・・・・・戻るぞ・・・・・リオーゼ・・・・」

「(今、素直に戻ったら、エクスは成長しない。僕もまた、成長することはできないだろう。
 それは美しくない。本当の美は、自分で自分の欠点を見つめるしかないんだ。それが
 できない今は・・・・)」

「・・・・どうした・・・?リオーゼ・・・・・」

リオーゼはただチームのことを考えていた。臨時の隊長という地位についてからは、
よけいに。だから、チームの者達も、リオーゼのことは心の中では信頼しきっている。
それが、リオーゼという男なのだ。

「・・・・・すまない、僕はまだ戻れない。君だけ、先に戻っていてくれ」

「・・・・・・リオーゼ・・・・・何・・・・・見てる・・・・?」

「?・・・・何を、見てる?どういうことだ、マリア」

「・・・・何で、夢・・・・・見ないんだ?・・・・・・リオーゼ・・・・・
 現実しか・・・・・見ようとしない・・・・・なんで、夢・・・・・見ない・・・?」

「ゆ、夢?(僕の欠点を指摘しているのか?夢なんかで・・・・何も解決できるわけがない。
 ・・・・夢は・・・・幻想を生み、妄想を抱き、最悪の結果しか生み出せない・・・・。
 そうじゃないのか?・・・・・・夢は・・・・・希望を・・・・・生むのか・・・?)」

「ッ!・・・・・・リオーゼ・・・・・・誰か・・・・・いる・・・・」

その気配を先に感じたのはマリアだった。怒りで、自我を忘れかけているリオーゼには
素早く気配に気づくことができなかったのだ。リオーゼは上を見上げる。そこにいたのは、
月光の輝きに照らされた、ビルの上に立つ一人の女性。

「(こ、こいつは・・・・女!?こいつ、只ならぬ気配・・・・・)」

「・・・・あなた、アカツキ軍でしょ?丁度いいわ、言いたいことがあったの」

「質問を返すようで、美が無いが、質問をさせてもらう。君は、何者だ?」

「・・・・・そうね、ここで私がいうのが礼儀でしょうね。私の名前は蒼。
 ジョーカー軍の兵士よ」

「ッ!!(ジョ、ジョーカー!・・・・聞いたことがある、大昔にトランプスと戦い、
 破れ、暗黒界に落ちた。しかし数年前、再びジョーカーが復活し・・・・その後が
 よくわからない。ただ、人々は言う・・・・・生きていれば、必ずジョーカーがこの世界を
 支配していた、と・・・・)」

「・・・・・リオーゼ・・・・・・あの人・・・・・好きじゃない・・・・・・」

何か蒼を見て、震えるマリア。マリアにも野性的勘で、自分より強い者というものが理解
できていた。だから、本能的にマリアの体が震えだしたのだ。自分よりも強い、と。
リオーゼは蒼に問う。

「・・・・ならば、用件を言いたまえ!」

「・・・・・最近、私達の基地をあなた達の軍が、必死になって調査しようとしているの。
 狙いはわかっているわ、ジョーカー様の持っていた資料などが目的なんでしょ・・・・。
 だから、忠告するわ。もし、私達の基地を襲うという任務が来ても・・・・やらないことね」

「・・・なぜだ?」

「・・・・なぜって、死ぬからじゃない。私は、ジョーカー様の帰る場所を守っているの。
 そこを血で汚したくないの。だから、あなたからアカツキ軍にこの話を広めてちょうだい」

「・・・・・そうか、そうだな。しかし、僕なら、君の血を芸術的に撒き散らすことが
 できるけどね」

「・・・・・あら、かわいい坊やだこと」

お互いに挑発し合う二人。ジョーカーの資料、それは暗黒界での技術が記されている。
暗黒界は未知数の領域。それは、誰もが知りたい事柄だったのだ。アカツキ軍、トランプスさえ。
リオーゼは蒼に話しかける。

「蒼とやら、恐らく、僕達はまた出会うことになるだろうな」

「何でかしら?」

「・・・・・僕らは歩いているからだ。後ろに下がっていない、どんなにツラくても、
 前へ進むことは止めていないからだ。その道の途中に・・・・恐らく、君に出会うだろう。
 だが、僕達は・・・・乗り越える。・・・・・僕達は、歩くことを恐れないからだっ!」

「・・・・・勇ましいことね、じゃぁ・・・・・邪魔者は・・・ここで始末して
 しまった方が早いってことね・・・・それじゃぁ・・・・いただきます・・・・」

「(ま、まずいっ!)マリアっ!離れるんだ!」

「?・・・・・ど、どうしたんだ・・・・・リオーゼ・・・・」

蒼が攻撃態勢に入る。蒼が只者では無いと始めに悟ったリオーゼの心に、油断という気持ちは
チリもなかった。だからこそ、マリアを逃がそうとした。犠牲になるのは自分だけで
十分だと思ったからだ。

「さぁ、お遊戯の時間よ?・・・・・ヒュゥウウ・・・・疾風の波動・・・・!」

「(な、なんだっ!?蒼の周りに、風が一点に集まっている・・・!?」

ドガァアアアアン!

その時、奇跡は起きる。突如、爆発音が聞こえたのだ。それは、あきらかに戦おうとしている
二人を意識して爆発させたものであった。その爆発に攻撃の手を止める二人。そして、
煙の中から一人の男が現れる・・・・。

「ひさしぶりだなぁ、女ぁ。テメェーとの決着、まだつけてねぇよなぁ・・・・。
 壊してやるよ・・・・・おまえのすべてをよぉ・・・!!」」

「・・・・伊集院・薫。生きていたのね」


29 :匿名 :2007/10/28(日) 20:15:38 ID:onQHWiL3

〜 遙かなる未来の祈り 〜

突如として現れた男、それは「伊集院・薫」であった。彼は、「蒼」と何らかの関わり
があったようだった。伊集院の蒼を見る目は、怒りに満ちていた。それに、彼の言動を聞く限り、
一度、戦っただようだ。

「女ぁ・・・・今度はもう、助けは来ねぇぜ?・・・・お祈りでもしてんだな・・・!」

「坊や、本当の恐怖・・・・・感じさせてあげるわ」

二人が戦闘態勢を取るのを見て、これは好機だと思うリオーゼ。このままここにいても、
戦闘に巻き込まれるだけだと判断し、マリアを連れて逃げなければ
ならないと直感した。

「マリア、今がチャンスだ!逃げるぞ!・・・・さぁ、早く手をとれ!」

「・・・・・・・・ガブッ」

「うわぁあああ!!マ、マリア!噛むんじゃない!」

手が赤く腫れるリオーゼ。しかたなく、おんぶでマリアを連れていくことに。
必死の逃走で、何とか蒼と伊集院から逃れることに成功したリオーゼとマリア。
しかし、リオーゼは戻ることにためらいを持っていた。重い足取りでレストランに戻る。

「ム・・・・・・エクス・・・・・・お菓子・・・・・・・食べたな・・・・・」

「お、おいおい!戻ってきていきなり何言いだすんだよ!な〜んにも食ってないよな?
 このみ」

「う、うん!私達、チュコレートパフェなんて全然食べてないよ!」

「・・・・じゃぁ・・・・・・・エクスのほっぺについてる・・・・・・
 黒い物は・・・・・・・なんだ?・・・・・・・・・ペロッ」

「うわぁあああ!!マリア、人のほっぺをなめるなぁああ!」

久しぶりに和気藹々とするナポリュート。しかし、その様子をどうしようもなく見ている
リオーゼ。彼はまだ悩んでいた。エクスの発言に。それに気づいたエクスは、リオーゼに
話しかける。

「?よぉ、リオーゼ。おめーも、コーヒーかなんか頼むか?」

「・・・・・エクス、一つ聞きたいことがある・・・・」

「なんだよ・・・・?」

「・・・・・・おまえにとって、主人公とは・・・・・何だ?」

「・・・・・へへ、バ〜カっ!かっこつけて、人を助けるもんに決まってんだろっ!」

「(・・・・・・エクス、おまえは・・・・・・やはり・・・・・・・・)
 ッフ・・・・・・相変わらず、美しくないな・・・・エクス」

微笑を浮かべるリオーゼ。リオーゼの中では何かが解決したようだった。今のエクスを見て。
そして、リオーゼも暖かい輪の中に入る。リオーゼは話さなかった。「蒼」のことについて。
それは、隊長としての気づかいなのかもしれない・・・・。


そして、「ウォーライズ」を発つことになったナポリュート。再び、ボロボロになった
車に乗り込んで、アカツキ軍の本部へと帰宅しようと、車を走らせていた。疲れはほとんどとれ、
体力も全員回復していた。

「ふぅ〜。長かった旅も、これで一段落かぁ。色々あったぜ〜」

「・・・・・・エクス・・・・・・・あれは・・・・・どうなったんだ・・・・?」

「?・・・あれって、何だよ。マリア?」

「・・・・エクスと・・・・・マーの・・・・子作りだ」

「な、何ぃい!!エ、エクスっ!貴様、マリアにそんな卑猥なことをっ!う、美しくない・・・。
 貴様、どれだけ自分の存在価値を暴落させれば気が済むっ!」

「エ、エク兄ちゃん!そ、それは・・・・いくらなんでも順番ってものがぁ・・・」

「ち、違うっ!!断じて俺は、子作りなんてしねぇええ!!」

騒然となる車内。一人、焦るエクス。何か軽蔑するような目でエクスを見るリオーゼとこのみ。
ただ、何が起こっているのかわからずポカーンとしているマリア。いつものナポリュートに
戻ったのだ。そう、すべてが戻ったのだ。そして、アカツキ軍本部に戻ってきた4人。

「や、やっと・・・・我が家に戻ってこれたぜぇ。そういやぁ、隊長どうなったんかなぁ」

「とりあえず、あと少しで戦線復帰はできるらしい。しかし、そこで一つ疑問に
 思うのだが・・・・。マリア、君はどうなるんだ?」

「・・・・・?・・・・・・・マーか・・・・?」

「あぁ。とりあえず君は臨時要員だ。隊長が帰ってくれば、君はこのチームから抜ける
 ことになるハズだが、そういう連絡が一切来ていない。このまま何も言われなければ、
 君はナポリュートの一員となるのかな・・・・」

「ほ、本当!?良かったね!マリアちゃん。女の子が一人で寂しかったんだぁ!」

「マジかよ、やったなっ!マリア!」

「・・・・・・・マ、マーは・・・・そ、その・・・・・え、えと・・・・・」

マリアは臨時要員。しかし、マリアによっての作戦成功の功績は確かだ。これは上層部も
認めざるをえない。マリアは顔を赤く染めて、モジモジしだす。どうやら、マリアは
恥ずかしがっているらしい。

「キャー!マリアちゃん、顔を真っ赤にして、かっわいいー!やっぱりマリアちゃんも
 うれしいんだね!」

「こ、このみ。前も言ったが、君の方が年下だ・・・。
 まぁ、とにかく・・・・これからも美のあるが如く、よろしくだ、マリア」

「・・・・・・・・・・エ、エクスは・・・・・・マーがいて・・・・・・・
 う、うれしい・・・・・か・・・・?」

「当ったり前だぜっ!これからも頑張ろうぜ、マリア!」

エクスの一言を聞いて安心するマリア。すると、リオーゼは真剣な顔になる。手には
一枚の紙があった。どうやら作戦の内容が記されている紙らしい。そう、+Sレベルの
任務の作戦内容である。

「さて、ここからは本題に入るぞ。+Sランクの作戦の中身だ。僕達はとある洞穴に
 向い、そこを守っている者を倒す、というものだ」

「へぇ、随分わかりやすい任務だな。その守っている奴ってのは一人かよ?」

「あぁ。エクスとこのみには言っていなかったが、僕はそいつに会った。女性だ。
 しかし、強い。恐らく、その洞穴というのが鍵だろう。限られた広さ、そして薄暗い
 周り。それをフルに活用して襲ってくるのだろうな」

「で、でも。+Sなんだからぁ、誰も成功したことが無いんでしょ?リオーゼ」

「・・・・・少し、小耳に挟んだのだが・・・・・。成功ではなく、実行したチームが
 いないらしいんだ」

「はぁ?どういうことだよ、リオーゼ」

「ジョーカー・・・・この名、知っているな?奴は行方不明になっていると噂になっているが、
 その洞窟が奴の基地だった。もしかしたら、奴が洞窟にいるかもしれないという心配から、
 誰もが恐れて、この任務をやらないんだ」

「ジョーカー」。この名は、この世界に住んでいるほとんどの者が知っている。だからこそ、
その噂は人々の恐怖を駆り立てているのだ。その話を聞いて、微妙な表情をする
エクスとこのみ。

「ジョーカー、ねぇ・・・・ま、よく知らねーけど、+Sランクの任務、絶対に
 成功させようぜっ!」

「そうだね、エク兄ちゃん!マリアちゃんも、頑張ろうねっ!」

「・・・・・う、うん・・・・・・」

「(僕の予想、恐らくジョーカーはいない。しかし、それでもあの蒼という女性が気になる。
 ジョーカーが仲間にした者だ、決して並大抵の強さじゃないハズなんだ・・・・)」

一人、この任務について深く考えるリオーゼ。これが隊長としての考えなのだろう。
あらゆる最悪の事態を想定する。それができなければ、隊長としてはやっていられないだろう。
そしてその夜、エクスは一人、星空を見ながら横になっていた。

「(・・・・・・・・+Sランクの任務、かぁ・・・・・・俺は、上を求めて、
 何がしてぇんだろ?・・・・・シルヴァに勝って、アカツキぶった押して・・・・・
 何を・・・・・手に入れるんだろ・・・・?)」

「・・・・・・・エクス・・・・・」

「ん?なんだ、マリアじゃねぇか。どうした?寝れないのか」

「・・・・・・エクス・・・・・・マーのこと・・・・・・嫌いか・・・・?」

少ししょんぼりしたような表情のマリアがエクスに話す。マリアも一人の女性、
ただ、生まれ、育ったのが狼の中というだけの女性なのだ。これが悲劇であるのか、ないのかは、
誰も決めることはできない。

「ど、どうしたんだよ、マリア。んなハズねぇだろ?何かあったのか?」

「・・・・・じゃぁ・・・・・・好きか?・・・・・・マーのこと・・・・」

「う、う〜ん。好きと嫌いとか、そういうことじゃなくてだなぁ・・・」

「・・・・・・マーは好きたぞ・・・・・エクスのこと・・・・・・」

「ハ、ハハ・・・・・そりゃぁ、うれしいこったぁ・・・」

「マーは・・・・・・・エ、エクスと一緒に・・・・・・く、暮らしたい・・・・。
 一緒に寝て・・・・・・・一緒に食事して・・・・・・・・一緒に・・・・笑いたい・・・・。
 エ、エクスは・・・・・マ、マーだけの・・・・・オスに・・・・なって・・・ほしい・・・」

「・・・・オ、オスかぃ。・・・・・・マリア、すまねぇな・・・・そりゃぁ、できねぇよ」

「・・・・・そ、そうか・・・・・・」

「・・・・・・俺、バカだからよっ!そこでじっと暮らすってのはできねぇんだよ。
 旅、しようぜ!二人で。俺、バカだし、金もねぇけど、マリアの世話できんの・・・・
 俺ぐらいだしなっ!」

「・・・・・エ、エクス・・・・・・大好き・・・・・・・・ッ!」

マリアは涙した。エクスの到着点、そこにたどり着いた先の答えを今、エクスは見つけた。
恐らく、その終着点についているころには「主人公」の力は消えているだろう。けれど、
エクスは戦うであろう。人々のために。それが、彼の意味する「旅」なのだから・・・。


30 :匿名 :2007/11/04(日) 20:14:55 ID:onQHWiL3

〜 暗き地中の、攻防戦 その1 〜

闇。それは、誰もが備えてある悪の心。どれだけ正義を信じ、平和を願っている者でも、
「闇」という存在だけは消せない。闇があるからこそ、光がある。表裏一体となるのだ。
時に闇は、他の闇さえも食らうことがあるのだ・・・・。


+Sランクの任務のために、出発しようとするナポリュート。メンバーの表情には
余裕がなかった。しかたないだろう、難易度は最高値。しかし、そんなことを嘆いていられず、
着々と準備を完了させるナポリュート。

「よし、皆、準備はいいな?」

「完璧だよ、リオーゼ!」

「・・・・・・良いぞ・・・・・リオーゼ・・・・」

「俺も問題ないぜ。そういやリオーゼ、その洞窟ってのは何処にあんだ・・・?」

「・・・ここから極めて近いハズ。それより皆、ここで改めて言っておく。僕達は+Sランクの
 任務に今から挑む。この中の誰かが死ぬかもしれない。しかし、どんなことがあっても
 任務を中断させては駄目だ。残酷かもしれんが、これが僕達の置かれている状況なんだ」

「・・・・・わかってんぜ、リオーゼ。任務を成功させることが最優先、だろ?
 やってやるぜ・・・・皆、行こうぜっ!」

そして、洞窟へと出発するナポリュート。距離はさほど遠くなかった。しかし、普段よりも
彼らは疲れていた。その緊張と、焦りからいつもの倍は疲れていたのだ。そして、到着する。
洞穴の目の前まで・・・・。

「ついに・・・・・僕達は、この洞窟の目の前まで来たか・・・・・」

「・・・・・いよいよだぜ・・・・リオーゼ、このみ、マリア・・・・この先に・・・
 俺達の未来がある・・・・!」

「・・・・・皆、これ持つんだ」

「・・・?何これ、リオーゼ」

リオーゼは4人に一つずつ「トランシーバー」を渡した。それは、この任務に成功に大きく
関わってくるものだろう。洞窟を目の前にして、4人は今、緊張の絶頂までいた。
ここからは、命の保障がないのだ。

「それは、トランシーバーだ。これで僕達は連絡を取り合うんだ。見ての通り、
 洞窟は穴だらけだ。4人が一箇所の穴から入っても、まとめて攻撃されて全滅するのが
 落ちだ。だから、別々に入る・・・・!」

「じゃ、じゃぁ・・・・4人全員、別々で行動するの?リオーゼ」

「あぁ、すまないが、そうするしかない。しかし、僕達一人、一人が強者だと僕は思っている。
 簡単にヤラれるようなヤワな奴は、このチームにいないよ」

「っへ、言うじゃねーか。リオーゼ」

「もし、襲われたら、まず逃げること。そして、連絡を取る。そこで奴を追い詰めるんだ。
 説明はこれで終わりだ。問題はないな?」

洞窟は数年前とは違い、穴だらけになっていた。恐らく、トランプスが幾度となく襲撃を
試みたのだろう。しかし、蒼によって阻止されたのだ。4人は、各自入る穴の前に
立つ。

「・・・・行こうぜ、皆ぁ・・!!」

エクスの一言に、皆が一斉に洞穴の中に入る。洞穴の中は確かに暗かったが、特にライトは
必要なかった。薄暗くもあったが、見えるものは見えたのだ。4人は、トランシーバーを
手に持ち、洞穴を突き進む。

「ピー、ガガ・・・・・・こちら、リオーゼ。皆、無事だな?応答してくれ」

「ピーガガガ・・・・・こちらエクス、ピンピンしてんぜ!」

「ビィガガ・・・・こちら、このみ。今のところは大丈夫だよ」

「ビィー、ガガガ・・・・・・マーだ・・・・・・大丈夫だぞ・・・・・」

お互い声を掛け合う4人。蒼は伊集院と戦っていたハズだった。けれども、洞窟に戻って
きているということは、それとなく察することが出来た。薄暗く、今にも何かでそうな
不気味な道を、ただ歩き進める4人。

「(ここで僕が願うことは一つ。このみの前だけには蒼が現れないで欲しい。
 ハッキリ言って、このみを一人にするのは愚かだったと今、思う・・・・・・・。
 美しい判断をしかねたか・・・・!)」

「(オイオイ、いかにも不気味じゃねぇかよぉ、この洞穴。お化けが出ても
 おかしくねぇぜ。何でこんな所、一人で歩かなきゃいけねぇんだよ・・・・・。
 それにこの洞窟・・・・・・何か・・・・・嫌な感じするんだよな・・・・・・)」

「(おねがいだから、私の所だけは来ないでください。私のところに来たら、
 逃げることしかできないよぉ。それに、暗いのとか・・・・・・怖いよぉ・・・・・)」

「(・・・・・・・暗いとこ・・・・・・・眠たい・・・・・・)」

4人とも、洞穴を歩くことに恐怖を感じていた。トランシーバーを持つ手が震える。
恐らく、蒼は4人の誰かをすでに監視していると思われる。ただ、その時を待っている
だけなのだろう。そんな中、エクスは・・・・。

「おっかねぇよぉ〜、ったくよぉ・・・・・・・って、痛っ!!」

急に、エクスは倒れる。それは、蒼に攻撃されたというわけではない。何かにぶつかって
しまったらしい。エクスは、おでこを手でこすりながら、不機嫌そうな顔をして、
前を見る。

「な、何だよ、ここがこの洞窟の終わりかよ!?・・・・・・・ん?よく見たら・・・・
 なんかいっぱい足跡がある・・・・・戦った形跡かな?・・・・・・・」

エクスは31代目主人公が到達した「終着点」に今、存在しているのだ。そう、
ここは31代目主人公がジョーカーと合間見えたところなのだ。そこに今、32代目主人公、
エクスが立っているのだ。何とも不思議な絵図だった。

「ピーガガ・・・・おい!リオーゼ、何か知らねーけど、洞窟の果てに着いちまったぞ。
 どーすりゃ、いいんだ?」

「ピーガガガ・・・・・こちら、リオーゼ。しかたない、もう一度戻って、何処か
 違う道を探してくれ」

「ビーガガ・・・・へいへい、了解しましたよ」

しかたなく戻ることとなるエクス。確かに、エクスがたどった道は一本道ではなく、
道が何本も分かれていたのだ。だから、別の道にいこうと思えば、いくらでもいけたのである。
洞穴に入ってから10分。いっこうに蒼の動きは無かった。

「ピーガガ・・・・・こちら、リオーゼ。皆、無事か?応答してくれ」

「ビーガガガ・・・・・こちら、エクス。なぁ〜、リオーゼ。もう、いないんじゃねぇーの?
 さすがに歩くのも疲れてきたぜぇ・・・・」

「ピー、ガガ・・・・・マーは・・・・・無事だ・・・・・・お腹・・・・・空いた・・・・」

「ピーガガ・・・・こちら、このみ。いちよう、無事だよ。でも、私もお腹空いて
 きちゃったぁ・・・」

とりあえず無事を確認する4人。それにしても、一向に蒼は気配を表さなかった。どうしてかは
まるでわからない。もしかすると、本当にいないだけなのかもしれない。そう4人は
思いはじめていた。

「はぁ。足、疲れちゃったなぁ・・・・・。ちょっと座っても良いかなぁ?・・・・。
 バ、バレないよね。ちょっとぐらいなら・・・」

「えぇ、バレないわよ。お譲ちゃん。あなたが死んだことさえもね・・・・!」

「ッ!!!」

「ヒュュウゥ・・・・・真空の波動、エア・ウェーブっ!!」

「(1秒後、斜め右上っ!)」

ドガァアアアアアアン!!

蒼の「波動」と呼ばれる攻撃。それは、洞穴全体に響き渡った。その爆発音のような大きな
音に反応するエクス達。そして、トランシーバーを持って、一斉に走り出す。どうやら、
全員何が起こったか理解できたようだ。

「ビーガガ・・・こちら、リオーゼっ!!皆、応答しろ!誰かが襲われているっ!」

「ピー、ガガ・・・・・こ、こちらエクスっ!俺は大丈夫だぜ!?マリアとこのみは!」

「ピーガガ・・・・マ、マーは・・・・・無事だぞ・・・・・」

「まずい・・・・このみを狙われたっ!最悪の事態が起きてしまった。いや、これは
 必然されたことかもしれない・・・・・!」

「ビーガガ・・・・・リオーゼっ!!このみは何処ら辺にいるんだっ!」

「ピーガガ・・・・わからないっ!このみから一番近い穴に入ったのはマリアとエクスだっ!
 音が鳴ったところに走るんだ!このみが危ないっ!」

「クソッタレがぁ!!たのむ、無事でいてくれよ、このみっ!!」

急いでこのみのもとへ走る3人。このみが何処にいるかなどまるでわからない。ただ、
唯一の連絡手段はトランシーバー。これが、このみを助ける唯一の手段なのだ。果たして、
このみは蒼の攻撃から逃れることができるのだろうか・・・・?


31 :匿名 :2007/11/11(日) 20:17:31 ID:onQHWiL3

〜 暗き地中の、攻防戦 その2 〜

このみが襲われた場所は不明。しかし、初めに入った穴の位置からして、エクスとマリア
がもっとも近いと思われた。全速力で、このみのもとへ走る3人。このみからの
通信は未だに来ない・・・・。

「ち、ちくしょう!洞穴全体がだんだん暗くなってきやがる!外が夜になってるのが
 影響してんのか!?」

「ピーガガ・・・・・エクスっ!マリアっ!どれくらいでこのみが居ると思われる位置に
 辿り着けそうだっ!?」

「ピーガガ・・・・・2、3、いや4!4分ぐらいで辿り着けそうだ!マリアは!?」

「ピーガガ・・・・マーも同じくらいだ・・・・・・」

暗くなりつつある洞穴をただ永遠と走り続ける3人。しかし、ふとリオーゼの脳裏に
何か良からぬ予感がする。それは、経験上での直感だった。走りながら、その疑問を
考えるリオーゼ。

「(待てよ・・・・・不可解なことがある。奴はなぜ、わざわざ大きな音を出して、
 このみを襲ったんだ?この薄暗さだ、暗殺するのは恰好なはずなのに・・・・。
 奴は、美意識を欠くが如く、僕達にもわかるように爆発音を出して、このみを襲った・・・)」

リオーゼの疑問。これが、後のナポリュートの生死を左右するかもしれないという
ことをリオーゼは理解していた。だからこそ、深く考え、正しい道を切り開こうとしていた。
しだいに、冷や汗が流れ出てくるリオーゼ。

「(つまり、大きな音を出して、僕達にわざわざこのみを救出させるように仕向けた・・・?
 奴の狙いは・・・・・・そうかっ!!わかったぞ!まずい、エクスとマリアがすでに
 向かってしまっている!)」

リオーゼは、自分の判断に賭けた。いや、これが正解だと導けたのだ。すぐに、
片手に持っているトランシーバーを持って、走りながらエクスとマリアにその真実を
伝えようとする。

「ピーガガ・・・・・エクスっ!マリアっ!止まれ、止まるんだっ!!奴の狙いは、
 僕達だっ!このみを使って、僕達をおびきだそうとしているんだ!」

「・・・・・・・・・」

「!?・・・・応答しろっ!エクス、マリアっ!・・・・・・くそっ!電波が届かない!?
 こんな時に・・・・・・直接、伝えるしかない・・・・・・・・間に合うかっ!」

さっきよりも、さらに加速して走るリオーゼ。エクスとマリアにトランシーバーの
電波が届かない。最悪の事態だった。そのころ、二人はあと少しというところで、
爆発音のした所に到着しそうだった。

「ピーガガ・・・・おい、リオーゼっ!聞こえてんのかっ!!・・・・・
 な、何だよ。何で返事をしやがらねぇんだ、あいつ・・・・」

「ビーガガ・・・・・エクス・・・・・もうすぐ・・・・・着くぞ・・・・・」

「ビー、ガガ・・・・わかった!俺もすぐにそこに着けるハズだ!」

エクスとマリアはほとんど等しい距離にいた。しかし、じょじょに視界は見えなくなって
きていた。見えるのは、自分の直前の足元と、柱だけ。ぶつからない程度に走ることしか
できないのだ。

「確か、ここら辺だよな。爆発音がした所って・・・・。おーい、このみーっ!!
 いるかぁー!!・・・・くそっ、マジで視界が見えねぇ」

「エクス・・・・・」

「うわぁあああああ!!・・・・・って、ビビらせんなよ、マリアっ!」

「・・・クンクン・・・・・・このみの・・・・・匂い・・・・・する・・・・・・」

「わ、わかるのか!?マリア。よし、ならマリアの鼻が頼りだぜ。それでこのみを
 探し出すしかねぇ!」

「(・・・・・フフ、もう我慢の限界かしらねぇ・・・・・)」

ひっそりと、不気味に笑う蒼。やはり、蒼の狙いは複数に集まった時だった。このみはすでに逃がして
しまったようだった。だが、エクスとマリアは合流した。確かに、これほどのチャンスは
無いかもしれない。そして、攻撃態勢をとる蒼・・・・・。

「(さぁ・・・・・・真っ青な肌に、真紅の血液をブチ撒けてちょうだい・・・・!)」

     「エクスーーーっ!!!マリアーーーーッ!!!逃げろーーーっ!!!」

「!?な、何だ!?リオーゼの声?・・・・に、逃げろ・・・・だって・・・・?」

「(ッチ!!邪魔が入った!・・・・・この声・・・・・この前出会った、あの男・・・・!)」


「ま、間に合ったか!?僕の声は、エクスとマリアに確かに届いたのだろうか!?
 いや、必ず届いているはずだ。この洞窟は密閉されている。僕の声は、相当離れていない
 限り、響くハズだっ!」

若干、距離はあるもののリオーゼはエクスとマリアに声を届かせることに成功する。
その言葉に反応して、戦闘の体勢をとる二人。しかし、それは自分を危険にさらす
結果になってしまったのだ。

「(やっぱり、始末するべきは・・・・あの男だったのね・・・・・殺してやるわ、
 あなたから・・・・!!)」

「ッ!!・・・・・風が・・・・・動いた・・・・!エクスっ!・・・・・
 上を・・・・・・・誰かが・・・・・移動した・・・・!」

「な、何だって!?上を誰かが移動したって・・・・も、もしかして、俺達・・・・
 狙われてたのか?・・・・・待てよ、だとすると・・・・・奴が移動した先ってのは・・・
 リ、リオーゼ・・・・・・・・・マズい!リオーゼが危ないっ!!」

蒼はリオーゼに向かって一直線に向かって走る。その走る速さは豹の如く、そして
呼吸をしている如く、無音である。リオーゼは、蒼が自分のところに来ていることを
まるで知らない・・・・。

「くそっ!トランシーバーがまだ回復しない。これでは、エクス達の状況がわからない。
 けれど、爆発音がしない。二人同時に殺すのには、しかたなくも爆発音がでるくらいの
 攻撃をするハズだ・・・・・ならば、まだ二人は攻撃されていない・・・・?」

「良い勘をしているわね・・・・・けど、肉片になっちゃ・・・・意味ないけど・・・・」

「(な、何っ!!すでに、僕のところまで移動してきていただと・・・!?)」

「ヒュゥウウウ・・・・・空気の波動、ストレートバイブ・ウェーブっ!!」

「(マ、マズい!防御を怠った・・・!!)」

ドガァアアアアアン!!

再び、凄まじい爆発音が洞窟内に響き渡る。騒然となるエクスとマリア。彼らは知って
いたからだ、誰が攻撃されたかを。リオーゼがどうなったかはわからない。しかし、
エクスはいつのまにか走っていた。

「こ、この爆発音・・・・・ヤバイ・・・・・マリアっ!!このみの探索を続けていてくれ!
 俺はリオーゼを助けに行ってくる!」

「わ、わかった・・・・エクス・・・・・」

「(無事でいてくれよ!リオーゼっ!)」

エクスは走る。これは、ハッキリ言って、類を見ない作戦であった。これほどまでに、
4人のチームワークが引き裂かれ、混乱し、傷ついたのは、この作戦が初めてだった。
あらためて、+Sランクの意味を実感するのであった。そのころ、リオーゼは・・・・。

「・・・・・う、うぐっ!・・・・・・(足の・・・・骨を・・・・持っていかれた・・・・。
 わき腹からは・・・・出血・・・・・・・持って・・・・後・・・・1時間、か・・・・)」

「フフフ・・・・・・綺麗よ、あなた。最高に・・・・・興奮してくるわ、久しぶりに。
 あなたの内臓をもっと見せてちょうだい・・・・あなたの腸の長さも見せてちょうだい・・・・。
 あなたのすべてを・・・・・・・見せて・・・・・・ちょうだい・・・・・」

「(・・・・ま、まずい・・・・・・な・・・・・・・)」

ボロボロになったリオーゼ。すでに、一人で動くことは不可能だった。ただ、蒼に
無残に殺されるだけの人形となってしまっていたのだ。そんなピンチの中、マリアは必死に
このみを探していた。

「クンクン・・・・・・クンクン・・・・・・・・ッ!!・・・・・このみ・・・いた・・・・」

「う、うぅん・・・・・・あ、あれ?・・・・マ、マリアちゃん、どうしたの?」

「・・・・・このみ・・・・・襲われた・・・・・・」

「・・・・そ、そうだった!私、襲われたけど、何とか回避できて・・・・その後、
 柱に頭をぶつけて・・・・・意識を失っちゃって・・・・・・エ、エク兄ちゃんと、
 リオーゼは!?」

「・・・・・・このみ・・・・・・・二人のところに・・・・・急ぐぞ・・・・・・」

「・・・・・・・・・うんっ!わかった!!」

このみはすべてを理解した。このみは蒼の攻撃を回避した後、気を失っていた。だからこそ、
殺されなかったのかもしれない。このみとマリアは、急いでエクスとリオーゼのもとへ
向かう。そのころ、リオーゼは・・・・。

「最後の言葉なんて必要ないわ・・・・そうでしょ?最後の言葉は、あなたの悲鳴なんだから・・・。
 終わりよ・・・・・・ヒュゥウウウ・・・・・」

「(う、動けない、か・・・・・皆・・・・・無事に・・・・逃げて・・・・くれよ・・・・)」

「疾風の波動っ!エア・・・・・・・」

・・・ヒュゥウウ・・・・・・

「やらせるかよ、バカ野郎がっ!!」

「なっ!!(な、何で!?いつのまに、伏兵が・・・・・!!)」

ドガッ!!

リオーゼを攻撃しようとした蒼の真横に、エクスがすでに接近していた。そして、蒼に向かって
蹴りを一発、お見舞いするエクス。暗闇の中へと吹き飛ぶ蒼。エクスは、リオーゼ救出に
間に合ったのだ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・風との同化ってのは・・・・一番、お気に入りだぜぇ・・・。
 でも、すぐ解かねぇと、吹き飛ばされちまうけど・・・・」

「エ、エク・・・・ス・・・・・」

「リオーゼっ!お、おまえ・・・・そのケガ、大丈夫かよ!?掴まれ」

「・・・・・エ、エクス・・・・・聞け・・・・・」

エクスは、ボロボロになったリオーゼを支える。それとなく、エクスにも分かっていた。
この次にリオーゼが言う言葉に。けれど、信じたくなかった。今の自分達を裏切りたく
なかった。

「な、何だよ・・・・・」

「・・・・・作戦は・・・・・・失敗だ・・・・・・」

「!?」

「・・・・・僕達は・・・・甘く・・・・・みすぎていた・・・・・このままでは・・・・・
 全滅・・・・する・・・・・逃げる・・・・逃げるぞ・・・・・エクス・・・・!」

「・・・ち・・・・・・ち・・・・・ちくしょうぉお・・・・・・!!」

エクスは目に涙を浮かべた。初めての失敗。しかし、それでも従うしかないとはわかっていた
エクス。それだから余計、悲しかった、くやしかった。エクスはリオーゼを支えながら、
一生懸命、暗闇の先へと逃げる。エクスはただ、泣くしかなかった・・・・。


32 :匿名 :2007/11/18(日) 20:14:23 ID:onQHWiL3

〜 暗き地中の、攻防戦 その3 〜

失敗。ただ、それだけが真実として残った。エクスは重症を負ったリオーゼを支えながら、
声にならない悲鳴をあげていた。後ろからはいつ、蒼が来るかまるでわからない。
けれども、今は逃げるしかなかった。すると、前から二人の気配がする。

「あっ!エク兄ちゃーん!リオーゼっ!大丈夫っ!?」

「こ、このみっ!大丈夫だったかよ!?」

「大丈夫だよ、エク兄ちゃん!そ、それより・・・・リオーゼっ!大丈夫!?血が
 いっぱい出てるよ・・・」

「だ、大丈夫・・・・だ・・・・・・それより・・・・・エクス・・・・・」

「そ、そうだ!このみ、マリア!もう時間がねぇ!後ろから奴が追ってくる!
 逃げるんだ・・・・・走れ、走るぞっ!!」

「え、えぇ!?」

エクスは動揺するこのみを無理やり走らせた。その理由を、マリアは何となく理解できていた。
必死に走っているエクス、そして血まみれのリオーゼを見て、未だに状況が把握できない
このみ。

「エ、エク兄ちゃん!な、何が・・・・何が起こったの!?」

「・・・・・失敗だ・・・・・強すぎる・・・・!・・・リオーゼも、こんなんになっちまった。
 これ以上ここにいたら、惨殺されちまうっ!」

「そ、そんなぁ!・・・・失敗・・・・なんて・・・・・」

「それより、もっと早く走るんだっ!このみ。奴に追いつかれたら、俺達のすべてが終わるっ!
 皆・・・・皆、殺されちまうっ!!」

暗い洞穴を永遠と走る4人。ハッキリ言うと、蒼が今、追いついていないわけがなかった。
エクスが一撃攻撃したとはいえ、たった一撃。しかも、拳。ダメージには程遠いのだ。
しかし、4人は走る。全速力で走る。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・ちくしょうめ・・・!!
 ・・・・出口が何処か・・・まるでわからねぇえ!!」

「・・・・・駄目だ・・・・何かによって・・・・・マーの鼻・・・・・邪魔されてる・・・・」

「エ、エク兄ちゃん・・・・こ、怖いよ・・・・私、怖いよぉ!後ろから、誰かが
 襲ってきそうで怖いよぉ!!」

「(く、くそったれが!俺も・・・・・俺も怖ぇえよ!走ってなきゃ、足が震えて立つこと
 すらできねぇよ!この真っ暗な洞窟で・・・・・知らない間に・・・・・惨殺される・・・!
 ふ、震えが・・・・・・と、止まらねぇ・・・・!!)」

「(い、いかん・・・・永遠と続く道、そしてこの暗闇で、メンバーのほとんどが
 恐怖している。このままでは・・・・・全員、死ぬ・・・・・・美とは正反対の、
 醜態としての死を歩むことになる・・・・・!)」

全員が恐怖した。全員が、「死」という魔物に心臓を支配された。暗闇、そして、いつ
襲われるかわからないという恐怖、それがあまりにも重く、そして、死にそうなぐらい、
つらかった。すると、このみが突然、倒れる。

バタッ!

「ッ!?・・・・こ、このみ!大丈夫か!?」

「・・・・エ、エク兄ちゃん・・・・・あ、足が・・・・・震えて・・・・・・
 た、立て・・・・・ないよ・・・・・・・。怖いよ・・・・全部、真っ暗・・・・・・。
 殺されちゃう・・・・・・私、暗い中で、殺されちゃう・・・・・!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・こ、このみ・・・・」

「ッ!!(さっきまで気づかなかったが・・・・エクスは震えている・・・・・。
 誰もが恐怖しているのか・・・・。いつ、暗闇の中から襲われるかという恐怖・・・・。
 そして、誰にも気づいてもらえないという、心理的恐怖・・・・・最悪だ・・・・・)」

4人は、立ち止まってしまった、あまりの恐怖に。尋常ではなかった。この状況を、
蒼はどう見ているのだろうか。冷や汗でビッショリになる4人。すでに、殺されるのを
覚悟したかのように。すると・・・。

「・・・・エ、エクス・・・・・・この・・・・・・泣き虫小僧が・・・・!」

「な、何だと!リオーゼっ!!」

「・・・・・行け、走れ!・・・・僕はここに残る。ここに残って、奴と戦う・・・・。
 おまえらだけでも、逃げるんだ!・・・・・エクス、貴様、泣き虫小僧じゃないのか?
 震えるだけの、柔な男じゃないのか?だったら、走れっ!死ぬまで、走るんだっ!」

「リ、リオーゼ・・・・・てめぇ・・・・・」

エクスは、リオーゼも恐怖でいっぱいであることは容易にわかった。だからこそ、目が覚めた。
恐怖を乗り越えて、本当の自分を探し出したリオーゼの姿に、じょじょにエクスも
自分を取り戻しつつあった。

「・・・・・へ、へへ・・・・・そうか、てめぇ、俺のために死んでくれんのか・・・・・」

「あ、あぁ・・・。そうだ、だから、早く行けっ!・・・・」

「・・・・・バーカっ!だったら、もう一回、太陽の下で俺様にコキ使われて死にやがれっ!
 それまで・・・・・死なせるかよぉおお!!」

「エ、エクス・・・貴様っ!・・・・・」

エクスは、再びリオーゼの肩を持って、走り出す。それを見て、マリアもこのみに手を
差し出す。未だに、顔がこわばっているこのみ。けれども、マリアは表情一つ変えず、
このみに手を差し出す。

「・・・・・・このみ・・・・・・・走ろう・・・・・・」

「マ、マリアちゃんは・・・・怖くないの・・・・?」

「・・・・・エクスがいる・・・・・・・マーは・・・・・・エクスを信じてる・・・・・」

「・・・・・マリアちゃん・・・・・・・・私、頑張るっ!」

「良し、このみ、マリアっ!もう一回、突っ走るぞ!限界まで、飛ばせっ!もう奴は
 そこまで来てるはずだ!」

そして、もう一度走り出す4人。もう暗闇は怖くない。恐怖に負けない。ただ、走る
ことだけに、未来を探し出すことに、意識を集中させているのだ。しかし、それだけでは
どうにもできないこともあった・・・・・。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・(な、何だ?俺、走ってんだよな?・・・・・
 何だこれ・・・・走ってんのに・・・・・追い詰められている気がする・・・・・)」

「エクス・・・・・・き、聞いて・・・・・・・」

「?、ど、どうした?マリア」

「・・・・・視線・・・・・感じる・・・・・・マー達・・・・・危険だ・・・・・・!」

「ッ!!」

マリアの野性的感。それが、蒼の視線を感知した。蒼は、走っている4人をしっかりと
とらえていた。そして、どうやれば素早く、迅速に、無駄なく4人全員を殺せるか、
構想をねっているのであろう。エクスは、歯を食いしばり、目をカッと開ける。

「・・・・駄目だ、このままじゃヤラれちまう!・・・・このみ、マリアっ!!
 リオーゼをたのむっ!!」

「!?エ、エク兄ちゃん、どうするの!?」

「俺が時間を稼ぐっ!こうなったら、奴と戦うしかねぇえ!!その間に、リオーゼを連れて
 逃げるんだ!行けっ!このみ、マリアっ!!」

「エ、エクス・・・・・マーも・・・・・・戦う・・・・!!」

「駄目だっ!!マリア、たのむ・・・俺の最後の願いかもしれねぇんだ。言うこと、
 聞いてくれねぇか?・・・・・もし、生きて帰ってきたらよぉ・・・・・前言った約束、
 果たそうぜ?」

「・・・・・・エ、エクス・・・・・死んじゃったら・・・・死んじゃったら・・・・
 マー・・・・・泣くからな・・・・・・いっぱい・・・・・いっぱい・・・・・
 泣くからな・・・・!」

「・・・・うれし泣きにしてみせるぜ、マリア・・・!」

エクスはふとリオーゼを見る。リオーゼはくやしそうな顔をして、エクスを見る。
リオーゼは隊長である。こういう役目は、リオーゼの仕事なのだ。だから、それが
できないリオーゼは一番くやしかった。

「エクス・・・・・僕は、君が嫌いだ。だから、死ぬな・・・・なんて言葉は言わない・・・・。
 だから・・・・・・勝て、エクスっ!あいつにおまえの美学・・・・ありったけ、
 ぶつけてこいっ!!」

「・・・・ったりめーよ!このみ、たのんだぜ?このバカ野郎のこと」

「・・・・・絶対、死なないでね・・・・エク兄ちゃん・・・・・死んだら、
 呪っちゃうからねっ!」

「へいへい、死んでから呪っても、意味ねぇけどな。さぁ・・・・・行きな、おめぇら。
 ちょいと・・・・・ネズミ狩りでもしてくるぜっ!!」

そして、3人はエクスの下を離れて、暗闇の中へ走っていく。エクスは一人、取り残された。
闇の中に、ポツンと立たされた。何処から蒼が襲ってくるのかまるでわからない。
汗が、地面にポトリと垂れる。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・(走ってるよりも、息が荒くなる・・・・ここに後1分でも
 正常に立っていられるのだろうか?・・・・・俺、あと1分もしたら・・・・・
 自分が死んでいることさえ、気づいていないんじゃないか・・・・?)」

「・・・・・ヒュゥウ・・・・・」

「ッ!!聞こえたっ!!ふ、伏せるしかない!」

ドガァアアアアアン!!

蒼の波動攻撃の呼吸音を聞き取ったエクス。まさに、間一髪だった。何とか、しゃがんで、
波動攻撃を回避することに成功するエクス。爆発音と、煙が、あたりにたちこめる。
そして、ゆっくりと、一人の女性が出てくる・・・・。

「あら、生贄が用意されてるなんて・・・・・ラッキーだわ。そうね、久しぶりに・・・・
 脳みその解剖でもしましょうかしら・・・・・」

「・・・・・っへ、・・・・何か知らねぇけど・・・・・何か、ムカついてきたぜ・・・・。
 てめぇのために、このエクス・コールドが・・・・・主人公様が、ビビっちまってんのによ!!
 かっこよく・・・・・・キメてやるぜ・・・・・!!」


33 :匿名 :2007/11/25(日) 20:13:43 ID:onQHWiL3

〜 暗き地中の、攻防戦 その4 〜

エクスを残して、出口を探し出した3人。ただ、暗い道を走っていた。マリアとこのみが
一生懸命、リオーゼの肩を抱いて走る。彼らに不安はない。エクスを信じているのだ。
後ろはエクスが守ってくれる、エクスがきっと、自分達を守ってくれると・・・・。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・あ、あとちょっとだからね、リオーゼ・・・・」

「(っく!・・・・自分よりも年下のこのみとマリアに負担をかけてしまっている。
 神というものがいたとしたら、僕に美ある罰を下して欲しいぐらいだ・・・・!)」

「クンクン・・・・・クンクン・・・・・・・緑の匂い・・・・・・このみ・・・・
 リオーゼ・・・・・・外だ・・・・・!」

「ほ、本当!?マリアちゃん」

「ッ!!・・・・こ、このみ・・・・マリア・・・・正面に、光が見える・・・!!」

そう、ついに見つけたのだ。この闇の終わり、そして、光の始まりを。今までいじょうに
力強く走るこのみとマリア。これが、希望。これが、奇跡。これが、光。ただ、今は
それを掴みとりたかった。ついに、3人は光の下へさらされるのだ・・・・。

「や、やったー!!リオーゼ、マリアちゃん!外に出れたよ!また、太陽の光を
 浴びることができたんだよ!」

「・・・・・だが、エクスがいない・・・・・あいつは、どうなっているんだ・・・・・
 くそ、あのバカめ・・・・・本当に、戻ってこないつもりか・・・・・!」

「・・・・・・マー・・・・・・エクス・・・・・・迎えにいく・・・・!」

「ッ!?だ、駄目だよ、マリアちゃん!今いったら、危険だよ!」

「マリアっ!エクスは君に来るなと言ったはずだ!ここでおとなしく、待っているんだ!」

「・・・・・・行く・・・・・・エクス・・・・・・助けにいく・・・・・」

「マリアっ!君にエクスを助けに行く理由があるのか!?」

「・・・・・・愛してる・・・・・・・・エクスのこと・・・・・・・・・
 守る・・・・・・マーが・・・・・エクスを・・・・・・・」

そう言って、マリアは一人、洞窟の中へ、暗闇の中へ戻ってしまう。それをどうすることも
できず、ただ唖然とマリアの後姿しか見れないリオーゼとこのみ。マリアの決意は
本物だった。だからこそ、何もいえなかった。

「・・・・・い、行ってしまった・・・・・・ッフ、負けたよ、マリア・・・・・。
 追うんだ、マリア・・・・・・・あいつのことを、追い続けるんだ・・・・・・」

「マ、マリアちゃん・・・・・大丈夫なの・・・・?」

何を言っても、いなくなったマリアには届かない言葉。しかし、二人はマリアを応援する
しかなかった、伝わらない言葉で。そして、マリアはさきほど来た道をもう一度
走っていた。マリア自身もヘトヘトだった。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・エクス・・・・・・・何処だ・・・・・・」

ドガァアアアアン!!

「ッ!・・・・・・大きい音・・・・・・いる・・・・・エクス・・・・・いる・・・!」

巨大な爆発音に反応するマリア。その音のもとへと、全速力で走る。そのころ、エクスは
最悪の状況にたたされていた。すでに、立っているのがやっとの状態。体はもう動くのを
ゆるさないほど、傷ついていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・(や、やべぇ・・・・こ、こんなに・・・・
 攻撃・・・・喰らっちまった・・・・・次、まともに受けたら・・・・死んじまう・・・)」

「どうしたのかしら?さっきまでの勢いはどうしたの?もっと私を感じさせてちょうだい。
 抵抗しない者の血を眺めたところで、反吐が出るだけだわ」

「あ、安心しろよ・・・・・死ぬまで・・・・・戦ってやるぜ・・・・!!
 来いよ・・・・・・ビ、ビビってんのかぁ・・・・・?」

「・・・・つまらない、プライド。なら、殺しちゃってもいいわね。こんな惨めなあなたの
 姿をいつまでも見たくはないわ。死んで、美を飾ってあげるわっ!」

「(も、もう・・・立ってられねぇ・・・・・体が・・・・・ボロボロ・・・だぜ・・・・・。
 に、逃げられたかなぁ・・・・あいつら・・・・・・に、逃げられたに・・・・・
 決まってるよな・・・・じゃねぇと・・・俺が・・・・死んだ意味・・・・ねぇじゃん・・・)」

「さよなら、坊や・・・・・ヒュゥウウウ・・・・・真空の波動!エア・ウェー・・・」

「・・・・・ゾンちゃん!!」

蒼が波動攻撃を繰り出そうとした瞬間、大量のゾンビが蒼の目の前に這い出てくる。そして、
蒼におおいかぶさって、うめつくそうとする。それを見て、目を丸くして驚くエクス。
そばには、息をきらしたマリアが立っていた。

「マ、マリアっ!お、おまえ・・・・来るなって言っただろ!」

「・・・・・・・エクスを・・・・・・守りたかった・・・・・・・・・
 それだけ・・・・・・・ご・・・・・めん・・・・な・・・さい・・・・・」

「・・・・っへ、へへ・・・・・誰が謝れなんて言ったよ?俺が今から言う言葉は、
 おまえに謝れなんて言わない・・・・・・ありがとう・・・・・マリア。
 それだけ、言わせてくれよ」

「・・・・エ・・・・エクス・・・・・!」

「とりあえず、今は逃げるぞ!マリア!」

「・・・・うん!」

エクスはゾンビに襲われていた蒼を見て、少しばかりなら時間は稼げると思った。だから、
自分の命も守ることを考える余裕ができ、走るという活路も見出せた。ボロ雑巾のような
体で走るエクス。走るたびに、体中からは血がにじみ出てくる。

「エ、エクス・・・・・・血、血が・・・・・出てくる・・・・・・走るな・・・・!
 走ったら・・・・・余計・・・・血・・・出る・・・・・マーに・・・・掴まれ・・・!」

「・・・・・な、何言ってんだよ・・・マリアこそ、体が疲れきってんじゃねぇか・・・。
 屁でもねぇよ、こんな傷・・・・・・ツバでもつけときゃ・・・・治るってんだ・・・・・」

「で、でも・・・・・・・エクス・・・・・・・」

どう見ても、我慢していた。その痛みは、尋常では無いだろう。普段のエクスなら、悲鳴を
上げてもがき苦しんでいただろう。いや、大半の人間が歩くことさえできなほどの傷だろう。
しかし、エクスは走る。自分を迎えに来てくれた、マリアのために・・・・。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・(目の前が・・・・真っ白になってきやがる・・・・。
 頭が・・・・・ボーっとする・・・・・これが、夢か現実かも・・・・わからねぇ・・・・)」

「ッ!・・・・・エクス・・・・・この洞穴・・・・・・崩れるっ!」

「・・・・・な、何・・・・・・!?」

ゴォオオオオオオオ!

雄たけびを上げる洞穴。蒼の波動攻撃によって、洞窟全体の構造が破壊されてしまった
のだ。揺れる洞穴。じょじょに、まわりの岩が崩れ落ちていく。あと数十秒もすれば、
完全に崩壊してしまうだろう。そのころ、蒼は・・・・・。

「あ、あぁ・・・・・・ジョーカー様の拠点が・・・・・ジョーカー様の帰る場所が・・・・
 ジョーカー様との思い出が・・・・・・・崩れていく・・・・・!」

一人、洞穴が崩れるのを悲しそうに見る蒼。後に、蒼は行方不明になる。死んだかどうかは
わからない。ただ、行方不明になったとしかわからない。そのころ、エクスとマリアは
崩れつつある洞穴の出口に向けて、一生懸命走っていた。

「も、もう数十秒も、もたねぇ!この洞窟が崩れちまうぞっ!」

「ッ!!・・・・・・エクス・・・・・出口・・・・見つけた・・・・・っ!」

「・・・・・そうか、出口・・・・・・あった・・・・・か・・・・・」

・・・バタンッ

「!?、エクス!・・・・・・倒れちゃ・・・・・・駄目だ・・・・・・!」

出口を目の前にして、エクスは力尽きる。いや、マリアのためにここまで走ってきたのかも
しれない。体はすでに、動くという判断を許しはしなかった。ただ、そこに倒れる
エクス。しかし、エクスは最後の力を振り絞り、マリアに言う。

「へ・・・・・へ、へ・・・・・もう・・・・駄目みてぇだ・・・・・・。
 マリア・・・・約束・・・・果たせなくて・・・・・ゴメンな・・・・・・」

「・・・・エ、エクス・・・・・」

「・・・・・走れ・・・・マリアっ!・・・・おめぇの背中は・・・・俺が見てる・・・
 安心しろ・・・・・。振りかえんな・・・・・走れ、マリアっ!!」

エクスの必死の叫び。すでに、エクスはこの展開を予想していた。走っていれば、
自分はいつしか必ず、力尽きるだろうと。出口はもう目の前なのだ。光は見えている。
しかし、届かない。わずかに、届かないのだ。そんなエクスを、マリアはじっと見る。

「・・・・・エクスは・・・・・・・死なせない・・・・・!!」

突然、地面からゾンビ達が這い上がってきて、倒れて動けないエクスを出口まで
運ぼうとしている。それに驚くエクス。もう時間がない。あとわずか、もうわずかで
崩壊してしまうのだ。しかし、そこで奇跡はエクスに降りかかったのだ。

「ゾ、ゾンビ・・・!俺を・・・・出口まで運んでくれるのか?・・・・や、やった!!
 マリアっ!おまえも早く、こっちに!!」

「・・・・・・ゾンちゃんを・・・・・動かしてい間は・・・・・マーは・・・動けない・・・」

「ッ!?」

さきほどよりも激しく、荒々しく洞窟が揺れる。そんな中、マリアは一人、エクスを見て、
笑顔を振舞う。マリアはエクスのために、命を投げ出そうとしていた。そんなマリアを
見て、エクスは半泣き状態で、ただ必死になった。

「は、は?・・・・ちょ、ちょっと待ってくれよ・・・・冗談じゃねぇよ!!
 嫌だ、嫌だっ、俺だけなんて、嫌だっ!!マリア、マリア、マリアぁ・・・!!
 お願いだっ、ゾンビを解除してくれっ!たのむ、マリアぁ!!」

「・・・・・・生きて・・・・エクス・・・・・いっぱい・・・・」

「やめてくれっ・・・やめてくれ、マリアぁああ!!おねがいだぁ、ゾンビを解除してくれぇええ!!
 俺を、俺を・・・・・・一人に、しないでくれぇえええ!!」

「・・・・一人じゃない・・・・・いつも・・・・マーがいてやる・・・・・・。
 エクスのそばに・・・・・いるから・・・・・・・」

「マ、マリアぁああああああっ!!」

マリアはそっと微笑む。今にも崩れ落ちそうな洞窟内で。そこだけ、時が止まったかのように。
顔をクシャクシャにして、泣き叫ぶエクス。そんなエクスを天使のような笑みで見守る
マリア。今までにないほどの、最高の笑顔で。

「・・・・・バイバイ・・・・・・・・ア・・・・ナ・・・・タ・・・・」

ドゴォオオオオオン!!

そして、洞穴は倒壊する。間一髪で出口に戻ってこれたエクス。しかし、マリアを犠牲にしてでの
生還。もうあの時には戻れない。マリアを世話して、笑顔でいられたあの時間には、
二度と戻れない。エクスはただ、マリアと一緒にいたかっただけなのだ・・・。それは、
昼の午後、笑いながら、幸せそうに生活しているエクスとマリアがいただけなのだ・・・・・。


洞窟内  マリア  死亡


34 :匿名 :2007/12/02(日) 20:08:12 ID:onQHWiL3

〜 主人公の代償 〜

いつもと変わらぬ日の朝。心地よい風が吹き、太陽が緑を照らし、雲もみじんも
浮かばない。そんな晴天に、活気が満ち、元気よく飛び出す人々。そんな中、チーム
ナポリュートの部屋に、一人の男が現れる。

「久しぶりじゃのぉ!エクス、リオーゼ、このみっ!隊長が、無事に帰ってきたぞぃ!」

「ッ!?隊長っ!」

このみとリオーゼが声を合わせて、隊長のもとへ駆け寄る。隊長こと流厳は、トランプスの
トップ、キングの一人と戦い、重症を負いながらも生還することに成功したのだ。しかし、
リオーゼとこのみは、隊長を見て、驚いた。

「た、隊長・・・・そ、その腕は・・・・・!」

「ん?あぁ、これかぁ。ほっほ、やはり五体満足にはいかなくてのぉ。右腕を持っていかれて
 しまっての。今は義手じゃ」

「ぎ、義手・・・・隊長、僕達のために・・・・あなたは、美の象徴です。
 真に・・・・・申し訳ございませんでした・・・・っ!」

「た、隊長ぉ・・・・私達のために・・・・義手になってまで・・・・・」

「こ、これこれっ!泣き出すんじゃない、このみ。リオーゼも頭を上げんかっ!これが
 ワシの仕事なのじゃ。別におまえらはこれで良いのじゃ。安心せぃ」

隊長の勇気ある行動に、頭を下げるリオーゼと泣き出すこのみ。流厳は、キングと戦い、
右腕を失ってしまった。今は義手となって、生活をしている。けれど、流厳は後悔など
していなかった。それが、彼の隊長としての義務なのだろう。

「む、それよりリオーゼ。エクスはどうしたのじゃ?あやつなら、真っ先に来そうだが・・・・」

「・・・・そ、それが・・・・・あいつは・・・・」

「?」

エクス。その名を聞いた時、リオーゼとこのみは難しい顔になった。エクスは部屋に
いなかった。それを気にかけた流厳。そして、リオーゼは語るのであった。ここ数十日の間の
出来事を。そう、「マリア」という女性がいたことを・・・・。

「・・・・・そうなのか、マリアという子を・・・・・失ったのか・・・・」

「・・・奴は、それ以来、放心状態になってしまって。ここ数日、何も食べていない。
 まるで、魂の抜けた抜け殻状態なんです」

「私がエク兄ちゃんに、甘えてあげようと思っても何の反応もしないし・・・・。
 誰とも口を聞いてくれないし・・・・」

マリアが死んでしまった以来、エクスは崩壊していた。誰とも口をきかず、何も食べず、
ただ動かずに座っていた。そう、場所はとある場所。マリアと「旅」を約束したあの場所に、
座っているのだ。

「・・・・外におるのじゃな?ならば、ワシが話しかけてこよう」

「・・・・おねがします、隊長っ!僕達では、どうにもなりません」

「隊長っ!エク兄ちゃんを、助けてあげて!」

「・・・・まかせるんじゃ、リオーぜ、このみ」

流厳は、エクスがいると思われる場所に向かう。さほど距離はないため、すぐにエクスは
発見できた。エクスは目を真っ白になさせて、ただ呆然と何処かを見ながら、座っていた。
その姿はまるで、死んだ者のようだった。目が生きていないのだ。

「エ、エクス・・・・(あの元気だったエクスが、これほど変わり果てた姿になるとは・・・・。
 それほど、マリアという女性を・・・・・)」

「・・・・・・・」

「エ、エクスっ!ワシじゃぞ、隊長が帰ってきたぞぃ!!今夜は、皆でバーベキューでも
 しようかのぉ。無論、肉食べ放題じゃぞ?ほれ、エクスも食べたいじゃろ?」

「・・・・・・・」

何も反応しないエクス。流厳のことを見向きもしない。いや、流厳がいることさえも
気づいていないのかもしれない。ただ、エクスは何処かを見ている。流厳は、どうすることも
できず、エクスを見下ろした。小さくなった、エクス・コールドを。

「・・・・・・・エクス、覚えているかのぉ。盗賊団と戦いの際、おまえが主人公だと
 言って、トップを倒すと言ったときのことを・・・・」

「・・・・・」

「あの時、ワシはおまえを選んだ。まぁ、他のチームならば、おまえではなく、リオーゼを
 あの時選んでいただろうな。しかし、わしはおまえを選んだ。別に、おまえを主人公と
 思ったわけじゃないんだぞぃ?」

「・・・・・・」

「おまえの目に、火が見えたのじゃ。それは、飢えている目、希望を見出す目、活気をかもし出す
 目だったのじゃ。昔もわしはそうじゃった。そのおまえに、賭けてみたくてのぉ・・・・。
 あの時のエクス・コールドは・・・・わしの憧れじゃった・・・」

「・・・・・・・たい・・・・ちょ・・・う・・・・」

「?」

エクスが初めて口を開いた。マリアが死んで以来、何も喋っていなかったエクスが初めて
口を開いた。それは、隊長の説得のおかげかもしれないし、ただ、エクスが喋りたかった
だけなのかもしれない。

「・・・・み、見える・・・・か?・・・・・ほら・・・・・マリアが・・・・
 蝶々・・・・追いかけてる・・・・ぜ・・・・・」

「エ、エクス・・・・」

「・・・・へ、へ・・・・マリアの奴・・・・・手で・・・掴めないから・・・・・
 噛もうと・・・・してやがる・・・・・・まったく・・・・俺がいねぇと・・・・・
 駄目だな・・・・・・マリアは・・・・・・」

「う・・・うぅ・・・・・エクスっ!!」

流厳は、そのエクスの壊れた状態に、涙し、抱きしめた。ただ、そうするしかなかった。
今のエクスは、ただの人形と同じだった。幻想にすがる人形。エクスの目には、死んだ
マリアしか見えていなかった。そして、流厳は何もできず、部屋に戻ってくる。

「た、隊長っ!ど、どうでしたか?あいつは・・・・」

「・・・・・すまん、ワシでは、どうにもできなかった。あれほど酷い状態になっている
 とはな・・・・」

「隊長っ!わ、私嫌だよっ!エク兄ちゃんがいつまであんなままなんてっ!私・・・・
 いつものエク兄ちゃんに戻ってほしいよ!!」

「・・・・僕もあんなエクス、見たくありません。バカにはバカなりの美学という
 ものがある。しかし、今の奴にはみじんの美も感じません。あれは、人間ではない。
 今のあいつを助けるためなら・・・・・何でもしたいくらいだ・・・・・!」

「・・・・・一つだけ、方法があるかもしれん・・・・・」

「?、ほ、本当ですかっ!隊長!!」

流厳は、ひらめく。ある一つの方法を。それは、エクスにとっては地獄かもしれなかった。
それにリオーゼとこのみは賛成し、流厳と共にもう一度、エクスのもとへ向かう。
リオーゼとこのみは、放心状態となったエクスを見るのは、つらそうだった。

「ワシが、エクスをおぶろう。リオーゼとこのみは、あの場所に着いたら、
 少し・・・・距離を置いてくれんか?」

「・・・・はい、わかりました。このみ、いいな?」

「うん。それで、エク兄ちゃんが元に戻るなら・・・・」

「・・・・・・・」

流厳はエクスを「何処か」に連れていこうとした。それほど遠くはないらしい。何もせず、
何も抵抗しないエクスをただ、おぶる流厳。何か、とてつもない劣等感に襲われる。
しかし、流厳は突き進む。そして、たどり着く。・・・・「あの場所」へ・・・・・。

「う、う・・・・うわぁああああああ!!嫌だっ!!帰せっ!!こ、ここは・・・・
 ここは・・・・!!!・・・・・・・う、うわぁあああ!!」

「エクスっ!!静まるんじゃ!・・・・・・そして、よく見るんじゃ・・・・・。
 ここは、マリアという子が命を落とした場所・・・・・ジョーカーの洞穴じゃ・・・・」

「い、嫌だぁあああ!!見たくないっ!!帰してくれぇえええ!!」

流厳が連れてきたのは、マリアが死んだ場所。蒼と戦った洞穴である。今では、洞穴も
倒壊して見るかげもないが、エクスにとってはそこは恐怖だった。マリアが眠っている
場所。マリアが死んだと、証明された場所なのだ。

「エクスっ!よく見るんじゃ。彼女はここに眠っておる!もう・・・・もうマリアはいないのじゃ!」

「違うっ!!マリアは今も生き続けているっ!!」

「ならば、洞穴をしっかり見るんじゃっ!なんなら・・・・洞穴の残骸を掘り起こして、
 彼女の遺体を確認するか?」

「ッ!!・・・・て、てめぇ・・・・・・もう一回、言ってみやがれぇええ!!」

エクスは、流厳の背中を飛び降り、そして流厳に向かい、戦闘態勢をとった。これは、
最悪の展開だった。錯乱しているエクス。それを冷静な眼差しで見る流厳。今のエクスは、
マリアを侮辱され、キレていた。

「マリアを汚す奴ぁあ・・・・・誰だろうとゆるさねぇえ!!たとえ、アンタだろうがなぁあ!!」

「・・・・・エクス、それで良いのじゃ」

「・・・・!?」

「・・・・・・おまえの正義をもう一度、確認したかった。確かに、おまえは彼女を
 失い、すべてを投げ出していた。しかし、おまえは守った。彼女との愛・・・・
 愛は正義・・・・・そう、おまえの中に眠る、正義を・・・・・・」

「せ、正義・・・・・!?」

「・・・・・エクス、今のおまえなら見れる。正義に満ちたおまえなら、見えるハズじゃ。
 もう一度、洞穴を見てみるんじゃ。・・・・・・今のエクス・コールドなら・・・・・
 真の未来が・・・・見えるハズじゃ・・・・・」

「ッ!!(・・・・真の・・・・・未来・・・・・!?)」

エクスは、ゆっくりと残骸となった洞穴を見つめる。エクスは驚いた。そこには、
マリアが立っていた。エクスは涙した。ただ、大粒の涙を流し、マリアに近づこうと
した。震えて、走ることがうまくできないのだ。

「マ、マリアっ!!い、生きてたのか!?お、俺は・・・・おまえを・・・・・!!」

「・・・・・・」

「マリアっ!!何か、喋ってくれっ!俺は・・・おまえに・・・・・何をしてやれたんだ?
 俺の主人公としての力が・・・・・俺を殺さず、おまえを殺しちまった・・・・・!!
 お、俺はぁ・・・・・・・マリアの・・・・何になれたんだ・・・・・・?
 俺は・・・・・俺はぁあ!!・・・・・マリアを死なすために、俺はマリアに会ったのか!?」

「・・・・・・・」

「たのむ・・・・・マリア・・・・・暴言でも・・・・罵声でも良いんだ・・・・・。
 俺に・・・・・・何か言ってくれ・・・・・・。おまえの・・・・・声が聞きたい・・・・。
 おまえに・・・・・・・・会いたい・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・マ、マリア・・・・・?」

次の瞬間、マリアは消えていた。ただの残像だった。いや、エクスだけの幻想かもしれない。
しかし、エクスは見えた、マリアの姿が。そのエクスの姿を見て、流厳はゆっくりと
近づき、肩を叩く。

「・・・・彼女は・・・・何と言っていたのじゃ?」

「・・・・・・マ、マリア・・・・・あいつ・・・・・笑ってたよ・・・・・。
 俺見て・・・・ニッコリ・・・・笑ってたよ・・・・・・・ハ、ハハ・・・・・
 よかった・・・・・泣いて・・・・・なかったんだ・・・・・・」

「・・・・エクス、彼女は生きておるんじゃな。確かに、おまえの中で・・・・・」

「・・・・た、隊長・・・・・俺・・・・・また、進めるかなぁ・・・・・?
 また、主人公として・・・・・皆・・・・・・守れるかなぁ・・・・・・・・?
 そんな俺を・・・・・マリア・・・・・見てくれるかなぁ・・・・?」

「・・・・・あぁ、きっと、見ておるぞ。今のおまえならな」

「・・・う、う、うわぁあああ!!」

エクスは流厳の胸で泣いた。そして、彼はまた成長するのであった。明日の彼は、
もう元のエクス・コールドに戻っているだろう。そして、彼は皆を守るために戦うだろう。
そう、マリアと一緒に。マリアと共に、戦い続けるのだろう・・・・・。


35 :匿名 :2007/12/09(日) 20:09:29 ID:onQHWiL3

〜 刃を向けし、決戦の刻 〜

目標。挑むてき者、挑戦したい者、それは、自分を成長させる大事なものである。
挑戦することの「勇気」、そして、結果としての「成長」。生き物を進化へと導く、
成長の過程。それを行わなければ、未来はきづけない。未来を信じる意思、それが、
問われることとなるのだ・・・・・。


マリアを失い、放心状態になったエクスも、流厳の説得により無事回復することに
成功した。そして、少し照れたような、赤い顔でゆっくりとナポリュートの部屋へと
入っていく。

「よ、よぉ・・・・このみ、リオーゼ・・・・・」

「ッ!!エク兄ちゃん!元気取り戻したんだねっ!よかったぁ!」

「ッフ・・・・・元々、美しくもないおまえから、元気を取り除いたら、貴様という存在は
 微生物以下になっているだろうからな」

「な、なんだとぉお!!リオーゼっ!!」

「これこれ、とりあえず、エクスが復活したところで本題に入るぞぃ!」

エクスが復帰し、喜ぶこのみ。そして、隠れながらも、本心ではうれしいリオーゼ。
そんな中、流厳はそんなエクス達を現実に引き戻す。そう、彼らは軍人。喜ぶことで
自分達の本当の役目を忘れてしまってはこまるのだ。

「まず、最初に聞かなければならぬことがある・・・・・・エクス、このみ、リオーゼ。
 おまえらには、上を目指す・・・意思があるか?・・・・・・上に辿り着く、勇気があるか?」

「?・・・何言ってんだよ、隊長。一番、てっぺんに辿り着くために、俺様が
 ナポリュートに入ったんだぜ?んなもん、とっくのとうにあるぜっ!」

「質問の意味がまだ、僕の美感覚では理解できないのですが、とりあえず・・・
 十分すぎるほど、あります・・・・・それだけは、確かですね」

「うん!私もそうだよっ!ナポリュートをアカツキ軍のトップにするのが夢だもんっ!」

「・・・うむ、ならば言おう。ワシらが第2部隊、第1位になるチャンスが巡ってきた!!」

「ッ!!?」

驚きを隠せない3人。それはまさに「夢」のような出来事だった。第2部隊、第1位。
つい一週間前、つい二日前、つい5分前までは、それは「夢」の目標だった。しかし、
今ではそれが現実のものとなろうとしているのだ。

「ど、どういうことだよっ!隊長っ!!お、俺達が・・・・1位になれるだって!?」

「うむ、そうじゃ。前の任務で、ターゲットを洞窟から追い払うという任務・・・・。
 洞窟ごと壊してしまったが、とりあえず協議の結果、成功と判断され、ナポリュートは
 6位に浮上じゃ」

「し、しかし隊長!例え、もう一度+Sランクの任務を成功させたところで、1位の
 エントフィートにはまだ到底届かないハズです!・・・・な、なぜ・・・・・?」

「・・・・エントフィートと任務がぶつかったのじゃ。+Aランクの任務がワシら
 ナポリュートと重なった。これは、共同作戦ではない。先に成功させた者が勝者。
 そして、後者は敗者となるのじゃっ!」

「え、え〜!?エントフィートと・・・・任務が同じなのぉ?」

「そ、そうかっ!つまり、僕達がその任務をエントフィートより先に成功させれば・・・・
 奴らは失敗ということになる!そこで、奴らの順位は確実に落ちるっ!・・・・・
 いける・・・・・ナポリュートが・・・・・1位になれるっ!!」

希望。わずかなる希望がナポリュートを活気づける。現第2部隊1位、エントフィート。
全部隊中、ナンバー1の実力を持つとも言われるエントフィートを、ナポリュートが
追い越すチャンスがあらわれたのだ。

「マ、マジかよぉ・・・・・へ、へへ・・・・・こ、興奮して・・・・じっとして
 られねぇぜ!!・・・・・シルヴァの野郎に・・・・・勝てる・・・・!!」

「うむ。思い起こせば・・・・ワシらは、40位という崖っぷちまで落ちこぼれて
 いた・・・・・しかし、ワシらはそれでも戦って、戦って・・・・・そして、1位を
 奪還できるチャンスを獲得できたっ!」

「う、美しい・・・・・まさに、年を追うごとに味が美味するワインの如く・・・・
 僕達は、輝き、光っているっ!・・・・エクスでなくても、体が鼓舞しないわけがない!
 僕らが・・・・1位になれる・・・・!!」

「ほ、本当に・・・・長かったよぉ。36位から抜け出せなくて・・・・そして、
 最下位にまで落っちゃって・・・・で、でも・・・・皆・・・・・皆、頑張って・・・・
 ここまで・・・・・これたんだね・・・・・・」

興奮して、体がうずくのを押さえられない4人。そんな中でも、流厳は冷静に物事を
進めようとする。机においてあった紙を取り出して、それを読む。どうやら、作戦の
内容が記された紙らしい。

「皆、活気立つのも良いが・・・・まず、その作戦を成功させなければ、意味がないのじゃ。
 作戦の詳細を説明するぞぃ」

「よっしゃっ!何でもきやがれってんだ!!」

「ワシらの任務は、ワール島という島に行き、そこの宮殿に眠っていると言われる
 財宝を獲得することが今回の任務じゃ」

「・・・・つまり、隊長。戦争のための資金稼ぎ・・・・と、いうことですか?」

「そうじゃ。トランプスとの戦争はすぐそこまで迫ってきておる。最後に、余分ある資金を
 蓄えておこうというのが、アカツキの考えじゃろう・・・・」

「じゃ、じゃぁ隊長っ!その宮殿って、何か冒険物の映画みたいな、すっごい仕掛けとか
 無いの!?」

「ハッハー!このみは、お子ちゃまだなぁ。んなもんあるワケねぇって!」

「うむ、その通りじゃ、このみ。その宮殿には3つの試練がある」

「って、あんのかよっ!!」

宮殿の財宝を獲得するという今回の任務。しかし、その宮殿には3つの仕掛け、試練が
あるという。その試練の大まかな内容は、紙に記されていた。しかし、それは
あまりにも不十分すぎた。

   1の試練   〜 真実の足跡 〜

   2の試練   〜 英知の証明 〜

   3の試練   〜 覇王との戦 〜

これが、宮殿に待ち受ける3つの試練。その内容を見て、困惑する4人。やはり、
詳しい内容などは記されていなかった。だからこそ、他のチームは不気味がって、挑戦
しないのだ。

「こ、こんだけかよぉ!?隊長っ!」

「うむ。とりあえず・・・・この宮殿に向かい、生きて帰ってこれたチームは今のところ
 おらん」

「ッ!?じゃ、じゃぁ隊長・・・・私達、すっごく危ない気が・・・・・」

「だから、最初に尋ねたのじゃ。上を目指す覚悟あるかどうかを、な・・・・・」

「・・・・・僕は、かまいません。この日をどれだけ待ったことか・・・・・。
 もう自分の美に、嘘はつけない!真実の美を僕が掴んでみせるんだ、1位という・・・・
 栄光を勝ち取って・・・・!!」

「え、栄光・・・・・へ、へへ・・・言うじゃねぇか!リオーゼっ!俺の台詞とりやがって!
 当たり前だぜ!今までだって、死ぬほどの任務こなしてんだ!もう、ビビることなんて
 ないぜ!・・・・・・もう残ってるものなんてねぇ・・・・・後は、勝つしかねぇんだ!!」

「エ、エク兄ちゃん・・・・リオーゼ・・・・・・うん、私もやるっ!私達が
 戦ってきたのは、この時を向かえるためだったもん!私・・・・・戦うっ!」

その言葉を聴いて、安心する流厳。4人の意思が、一致した。そう、エントフィートを
倒そうとする、1位を奪還しようとする意思が。これが、最後のチャンス。もう、これ
以上は巡ってこないとわかっていた。だからこそ、流厳は決意を決める。

「3人の意思、しかと受け取ったぞぃ!・・・・・これが、ナポリュートとしての最後の
 任務となるじゃろう・・・・・栄光を・・・・・1位を・・・・・掴みとるぞぃ!!!」

「おっしゃっ!!燃えてきたぜぇえ!!」

「っフ、久々に熱くなってきた・・・・!」

「頑張ろうね、皆っ!」

活気立つ4人を後目に、王者、エントフィートは冷静だった。いや、逆に言うと、追い詰め
られていたからこそ、冷静でいた。そう、シルヴァ以外の人間は、ナポリュートのことなど
どうとも思っていないのだ。

「・・・・・シルヴァ隊長、どうしたんですか?」

「・・・・・いや・・・・何でもない・・・・」

「シルヴァ隊長、またナポリュートですか?・・・・確かに、彼らはここ最近、急成長を
 遂げています。しかし、我々が彼らより劣る点などまるでありません。勢力・結束力・物資。
 すべてにおいて、我々が上です」

「・・・・・・慢心は、人に影を成すことを忘れさせる・・・・・。覚えておけ・・・・
 夜になれば・・・・その影が、もっとも強大と化す・・・・そう、エントフィートが、
 油断している時にな・・・・・」

「ッ!?・・・・ナポリュートごときが、我々を負かすとでも・・・!?」

「・・・・・いや、それは・・・・無い。・・・・・・このシルヴァがいる限りは・・・・
 何人も・・・・・王者の座は譲らん・・・・・・」

王者、エントフィート。その頂点に立つ男、シルヴァ。彼に、油断や慢心という心は
ない。つねに、相手を警戒し、最善な方法をとる。ナポリュートは、この男を倒すことが
できるのだろうか・・・・・。 


36 :匿名 :2007/12/16(日) 20:32:58 ID:onQHWiL3

〜 激突! エントフィートVSナポリュート その1〜

時満ちる。ついに、どん底だったナポリュートが、王者、エントフィートに挑むときが
来たのだ。この任務を終えれば、残すはトランプスとの「戦争」。これが、最後のチャンス。
最後の栄光への抵抗なのだ。まだ夜更け、ナポリュートは部屋で息をひそめていた。

「いいか、3人共。日が昇ると同時に、作戦決行じゃ。これは、エントフィートも
 同じ。移動手段は歩行、先に着いた方がどんどんと先に進めるんじゃ」

「隊長、エントフィート・・・・いや、シルヴアの奴は、どれくらいの人数で活動する
 と思いますか?」

「うむ・・・・。多めに見て、20人。少なくて10人くらいじゃな。大部隊で行った
 所で、邪魔になるのは目に見えておるしのぉ」

「た、隊長っ!!見ろよっ!もうすぐ日が昇るぜっ!!」

「む、そうか・・・・・では、3人共、出発するぞぃ!!」

日が昇る。それとほぼ同時に、ナポリュートは部屋を出て「宮殿」へと足を進める。
それほど遠くもないため、歩行でも十分移動は可能だった。しかし、森林が多く、足場が
悪かった。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・・あ、暑いし、足は疲れるし・・・・・・
 ったく、やってらんねぇぜ・・・・・・」

「ッ!!うわぁああああ!!」

「ど、どうしたのじゃ!リオーゼ!?」

「あ、あ・・・・あぁ・・・・・僕の輝かしい宝石のような体に・・・・蚊が・・・・
 蚊が、僕の血液を吸いやがったっ!!」

「リ、リオーゼぇ〜・・・・だから私、虫よけの薬使うって聞いたのに」

「ゆ、ゆるさん・・・・・エクスならまだしも、この美の結晶であるリオーゼ・トラフィクトの
 真紅の眩い血液を吸うなど・・・・・万死に値するっ!!」

「どわぁああ!!リ、リオーゼッ!暴れるんじゃねぇえ!!」

2刀の剣を空中に向けてやたらめったら振り回すリオーゼ。その暴走ぶりに、逃げ惑う
しかない3人。彼の美に対する異常な執念。それは時に、いや普段日ごろから皆に迷惑
をかけていた。

「こ、これこれリオーゼ・・・・」

「の、のん気なこと言ってねぇで、隊長もリオーゼ止めんの手伝ってくれよっ!!」

「た、隊長〜っ!リオーゼをなんとかしてぇー!!」

「蚊めっ!!何処に行った!!僕の血液を吸った罪、生涯、孫の代までゆるすわけにはいかぬっ!」

「蚊なんかの血統を呪ってどうすんだっての・・・・」

リオーゼの暴走を必死に止めようとするエクスとこのみ。その風景を暖かい目で見守る流厳。
普通、隊長の流厳が活躍する場なのだが。その時、流厳の目に、何かが見えた。それは、
まぎれもなく・・・・。

「さ、3人共っ!!前を・・・・前を見るんじゃっ!!」

「?・・・どうしたんだよ、隊長。前?・・・・・ッ!!・・・・あ、あれは・・・・・」

「・・・・あれが、宮殿・・・・。僕達が、エントフィートと雌雄を決する場所・・・・。
 隊長っ!急ぎましょう!」

「な、何なんだよ、コイツ。いきなり立ち直りやがって・・・・」

「エクス、その時、その時によって対応をするのが強者だ。その小さい脳みそに焼きつけて
 おくんだな」

「っぐ!!蚊ごときに翻弄されてた奴が言うことかよ・・・!!」

「宮殿」を発見したナポリュート。エントフィートよりも先に来たのか、それとも
遅く到着したのかはわからない。ただ、4人が見える範囲にはエントフィートの姿は
発見できなかった。そして、ナポリュートは宮殿の前まで来る。

「すっごーいっ!!エク兄ちゃん、いかにも神秘って感じするよね!」

「あぁ!記念撮影でもしたかったなぁ、このみ」

「あっ!それ私も思った。カメラ持ってくれば良かったね」

「これこれ、エクス、このみ。修学旅行じゃないのじゃぞ。我々は今、希望を掴むために
 この宮殿の前にいるのじゃ。もう一度思い出すのじゃ、この任務を受けて・・・・・
 成功したチームは、ゼロなのじゃ・・・・それを、肝にそえておくのじゃな」

「・・・・隊長、エントフィートの奴らは、残念ながら先に行ったようですね。足跡を
 消した跡がある。地面の砂をちょっとはらって見たら、数にして・・・・そうですね、
 7〜11人くらいの足跡がありました。・・・・・先を越されましたね、隊長」

「う、む。この任務は危険度は大きい!しかし、それでもエントフィートよりも早く
 成功させなければいかん!準備はいいな?3人とも・・・・・・行くぞぃ!!」

チーム、ナポリュート。宮殿に入る。宮殿はほとんど木々と同化していた。建物自体が
枝や木によってまるで見えないのだ。ただ、大きくて、古ぼけて、立派な門だけが
わずかに残っているだけだった。宮殿の中に入って数分。薄暗い道をただ歩き続ける。

「・・・・隊長。すでに僕達は、第1の試練・・・・奇跡の足跡・・・・というものに、
 踏み込んでいるのでしょうか?」

「恐らくな。門をくぐった時点で、第1の試練が始まっているじゃろう」

「・・・・・・エ、エク兄ちゃん、大丈夫?」

「・・・・・・・・暗い・・・・道だな・・・・・・あん時と・・・・同じくれぇ・・・・」

「!?(そ、そうか・・・・マリアを失ったのも、洞窟。暗く、そして永遠と続く道。
 もしかしたら、またエクスが放心状態になってしまう可能性がある・・・・!!)
 エ、エクス・・・・聞くんだ・・・・・確かに、ここは・・・・」

「わかってんぜ、リオーゼ。・・・・・もう、怖くねぇ。もう、泣かねぇ・・・・・。
 あいつが・・・・マリアがついてるんだ。・・・・・あいつを泣かせねぇためにも、
 俺はぁ・・・・腹くくって、どんな道も渡ってみせるぜ・・・・!!」

「・・・・・・・・ッフ、心配はいらんようだな、エクス・・・」

エクスは克服した。すでに、マリアが死んだという現実から。エクスは、マリアとともに
生きている。だから、進むのだ。もう恐れるものはないのだから。それを見て、安心する3人。
しかし、状況はいたって普通だった。「試練」と思われるものが何もないのだ。

「ねぇ、隊長ぉ。試練って、随分遅いね。もしかして、奇跡の足跡って、ただ歩くだけ
 だったりして・・・・」

「いや、そんなことは無いハズじゃ、このみ。きっと、何かがあるはずなのじゃが・・・・。
 ワシにも、どういうことだがまるでわからん」

ゴォオオオオオオ

「?・・・・何か、音がしませんか?隊長。僕の耳には、地響きのような・・・・何というか、
 地面を伝わって・・・何かが・・・・」

「おいおい、リオーゼ!自分の腹の音でも鳴ってんじゃねぇのか?」

「・・・・・君の悲鳴も鳴かせてやろうか?」

「じょ、冗談だっての。わからねぇー奴」

かすかな音。それを聞き逃さなかったリオーゼ。確かに、地響きのような音はしていた。
それにきづき始めるナポリュート。しかし、その音の原因はまるでわからなかった。それが、
逆に不気味さを増していた。

ゴォオオオオオ

「うむ、リオーゼの言うとおり、音がしているのぉ。それも、じょじょに音が大きくなって
 きておる」

「おい、リオーゼっ!おめぇが、初めに音に気づいたんだから、その原因はわからねぇのかよ!?」

「そんなこと関係あるかっ!・・・・確かに、近づいている!・・・・音が・・・・
 ぼ、僕達に・・・・・近づいている・・・・・!!」

「・・・・・エ、エク兄ちゃん・・・・リ、リオーゼぇ・・・隊長・・・・・
 な、何か・・・・地面が・・・・・ここらへん一帯が、揺れ始めてるよぉ!!」

ゴォオオオオオオオオ!!

「?・・・・・おい、皆。なんか・・・・後ろ・・・・・おかしくないか?・・・・
 後ろの影が・・・・動いてるぜ・・・・・?」

宮殿が揺れる。そして、音が増す。そして、後方に何か不審を覚えるエクス。それを
確認する3人。時間が経つごとに、その原因は明らかになっていくのであった。
それはまさに、「奇跡の足跡」、第1の試練の開始であった。

「さ、3人とも逃げるんじゃぁあ!!お、大玉が・・・・こっちに向かって転がって
 くるぞぃいい!!」

「ま、マジかよぉお!!こ、このみっ!!走れ、潰されちまうぞっ!!」

「そ、そんなぁー!大玉なんて・・・・聞いてないよーっ!」

ゴォオオオオオオオオオ!!

後ろから迫ってきたもの、地面を響かせていたもの、音を出していたものの正体は、
巨大な玉だった。その硬く、大きく、早い大玉に踏み潰されれば、完全に地面と一体化
してしまうだろう。必死になって逃げる4人。果たして、4人はこの試練を乗り越えることが
できるのだろうか。


37 :匿名 :2007/12/23(日) 20:01:26 ID:onQHWiL3

〜 激突! エントフィートVSナポリュート その2〜

第1の試練、「奇跡の足跡」。その言葉の意味するものは、今のナポリュートには
どうでも良かった。鳴り響く地響き、揺れる地面。そして、彼らの後方には、自分の
背よりも何倍もある大玉が、迫ってきていた・・・・。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・じょ、冗談じゃねぇえ!!
 こんな大玉に潰されて・・・・干しせんべい状態になって、死んでたまるかぁあ!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・ならば、愚痴をこぼしていないで、走ることに意識を
 集中させろ、エクスっ!・・・・もし、つまづいたり、足がつったりしたりして、
 一瞬でも足を止めたら・・・・その瞬間、僕達の人生は幕を閉じる・・・・!!」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・く、くそったれがよぉ!!」

迫り来る大玉に必死に逃げる4人。リオーゼの言うとおり、一度、1秒でも止まって
しまえば、命は無くなるだろう。それほど、大玉の速さは早く、気をゆるすわけには
いかなかった。すると・・・・。

「あぁ!!・・・・・い、いかん!僕の香水がっ!!」

「こ、これっ!!リオーゼ!走れ、走るんじゃ!止まるんじゃ無い!」

「し、しかし隊長っ!あれは・・・・あれは、僕の鮮麗された体に、磨きをかけるための
 必需品なのです!命よりも、あの香水の方が大事なのです!行かせてください!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・って、言ってもよぉ・・・・・とうの数十秒前に、
 大玉の下敷きになってんぜ?香水がよぉ・・・・」

「なぁあああ!!・・・・・ぼ、僕の・・・・・美が・・・・また一つ、むしり取られた・・・」

香水を落としてしまい、大玉によって粉砕されてしまった。その事態に、動揺を
隠せないリオーゼ。その様子を見て、どうでもよさそうにまた真剣に走り出す3人。
しかし、ここから事態が危険の一歩を歩むことになる・・・・。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・あ・・・・・あ・・・あぁ・・・」

「ッ!!い、いかん!エクス、リオーゼ!!このみが、チアノーゼになりかけておるっ!
 リオーゼ、このみをおぶるんじゃっ!!」

「な、何っ!?・・・こ、このみの顔色が・・・・紫色になっている・・・・マズイ!!
 このみ!僕に掴まれっ!!」

「お、おい、隊長!!どうすんだよ、このみが危ねぇじゃねぇか!」

「・・・・この試練の攻略法がまるで見えてこないのじゃ。しかたない!エクス、リオーゼ!
 ワシら3人でこのみを順番におぶっていく!それで時間を稼ぐしかない・・・・
 おぶっていない者は、この試練の攻略法を考えつつ走るのじゃ!」

酸欠状態になるこのみ。このみの体では、全速力で何キロも走るのは命に
かかわることだった。顔は紫色になり、目もほとんど浮いている状態だった。それを察した
流厳がすかさず、指示を出したのだ。けれどもこれでまた、よりピンチになったのだ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・(く、くそ・・・・やはり、このみをおぶっている分、
 疲労が倍になる!・・・このみをおぶっていない時ですら、息を切らしていたこの僕に・・・・
 このまま・・・・このみをおぶっていられるのだろうか・・・・?)」

「ッ!?リ、リオーゼっ!!このバカ、下がってきてるぞ!俺にこのみを預けろっ!」

「っく・・・・す、すまん・・・・エクス!・・・・このみを、たのむ・・・・」

「(こ、これはマズイことになったぞぃ。このみを交互におぶっていくとは言え、疲労は
 蓄積していく。このままでは、30分と持たずにワシらは壊滅する!・・・・・
 何か、何かこの試練の糸口が掴めれば・・・・!!)」

疲労で、いかにも苦しい表情になるリオーゼ。それは、きっとエクスもなるであろう。
しかし、それでもエクスは走らなければいけない。自分が走れなくなるということは、
自分だけでなく、このみも巻き添えにしてしまうからだ。すると、このみがかすかに喋りだす。

「・・・・エ・・・・エク・・・・兄・・・・ちゃ・・・・ん・・・・」

「こ、このみ!?・・・・意識を保つことができてきたか!・・・・・
 そのまま休んでなっ!・・・・俺達が・・・このみをおぶってってやるからよっ!」

「・・・・・・ご・・・めん・・・・な・・・さい・・・・」

「へ、へ・・・・楽勝だぜ、このみ!(な・・・何言ってんだよ・・・・俺・・・・・。
 も、もう・・・・つらくて・・・死にそうだってのよぉ・・・・・し、心臓が・・・・
 破裂しそうだ・・・・こ、これじゃぁ・・・俺も・・・・チアノーゼになっちまう・・・!)」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・た、隊長!エクスと交代してください!エクスが危険な
 状態に入りつつあります!!」

「わ、わかった!!このみ、ワシの背中にうつるんじゃ!」

エクスから、流厳の背中に移動させられるこのみ。そしてまた、エクスも悲痛の表情に
なるのである。大玉のスピードは依然、変わらない。このみを支えている3人はすでに、
限界など通り越していた。

「た・・・・隊長!!・・・・・い、いつになったら・・・・・ゴールが見えてくんだよっ!!」

「・・・・わ、わからん。走ってから数十分は経っている・・・・しかし、まるで
 ゴールらしきものは見えてこんのじゃ・・・!」

「ッ!!・・・・た、隊長!!・・・・・・・ぼ、僕は・・・・恐ろしい・・・ことに・・・・
 気づいてしまったようです・・・・・」

「・・・ど、・・・・どうしたのじゃ?・・・・リオーゼ・・・」

リオーゼは、走っている途中、何かを見つけた。そして、その何かから、自分達が絶望の淵に
立たされていることを知ることになる。今まで以上に、顔をしかめるリオーゼ。
汗だくになりながら、走り続けるエクスと流厳。

「・・・・壊れた・・・・・香水が・・・・・あったんです・・・・・」

「あぁ!?・・・・そ、それが・・・・どうしたってんだよ!!リオーゼ!」

「っく!!・・・・・僕達は、同じ場所を何度も走っているだけなんだよっ!!僕達が
 今、走っているこの道に・・・・・ゴールは無いんだっ!」

「なっ!・・・・なん・・・だとぉ・・・・・じゃ、じゃぁ・・・・俺達は・・・・・
 血反吐はくまで、走らされたあげく、大玉に踏み潰されて死ぬのが運命だってのかよぉ!!」

それは、驚愕、いや最悪の事実だった。ナポリュートは、ただ同じ道を何度も走っている
だけだった。大玉に追われて。別の道があるとは考えられない。そして、彼らは、
絶望の眼で、ただ走り続ける。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・お、おい・・・・・リオーゼ・・・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」

「おい、リオーゼっ!!隊長と交代しろっ!隊長もそろそろ限界に近づいてんだよっ!」

「・・・・・もう・・・・僕達は・・・・・死中にいる・・・・・変わらないのだよ・・・
 エクス・・・・誰が・・・・誰を助けたところで・・・・・僕達は・・・・死ぬんだ・・・・。
 ならば・・・・・全員・・・・・一緒に・・・・・死のう・・・・エクス・・・それが、美だ」

「っく!!・・・・あ、あきらめてたまるかよぉ!!・・・・んな下らねぇこと、
 考えるだけで、反吐が出そうだぜっ!・・・・・くそ・・・・・くそっ!!・・・・・
 何とかできねぇのかよ!!・・・・・・主人公・・・・・俺はよぉお・・・・!!」

隊長からこのみを預かるリオーゼ。リオーゼにはすでに、さきほどこのみおぶった
疲れがある。それは、回復できずにたまっているものである。そして、「死」という
逃れられない運命から、半ば、自暴自棄になっていた。すると・・・・。

「・・・・・・み・・・・ん・・・・な・・・・・・聞い・・・・て・・・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・?・・・・・ど、どうかしたのか?このみ。話なら、
 僕が聞いているぞ」

「・・・・・・・わた・・・しの・・・・指示・・・・に・・・・・したが・・・って・・・・」

「!?・・・・・た、隊長!エクス!このみが・・・・指示に従えと言っています!」

「ど、どうかしたのじゃ?このみ。何か、策でも見つけることができたのか?」

「・・・・・止ま・・・・って・・・・・・」

このみから発せられた、言葉。それは、すべてをあきらめた言葉。「止まれ」=「死」という
意味だった。その言葉を聞いた時、3人は何とも言えない気持ちになった。このみは
幼いながらも、自分が迷惑をかけているのに気づいているのだろう。

「・・・・・このみ・・・・・いくら、僕が・・・・弱音を吐いたところで・・・・
 まだ走り続ける!・・・・・・たった・・・・・たった数秒かもしれない・・・・・!!
 しかし、僕は・・・・そんなわずかでも、このみに美を見せるのだっ!」

「・・・・・・止まっ・・・・って・・・・・おね・・・・がい・・・・」

「・・・・・・隊長、リオーゼ・・・・・俺、止まるぜ」

「!?、エ、エクス!何を言っておるのじゃ。なぜ、おまえまでもがあきらめるのじゃ!
 いつものおまえならば、どんな状況でも屈指ない・・・・」

「違うっ!・・・・・このみが、逃げ出したことがあるか?・・・・俺達を見捨てて、
 逃げ出したことがあるか!?・・・・・・このみには、何か考えがあるんだっ!・・・
 だから、止まれと言っているハズなんだ・・・・・俺は・・・・このみを信じる・・・・!」

エクスは、「止まる」ことを決意する。そのエクスの言葉を聞いて、笑顔を見せるこのみ。
しかし、それでもまだ、止まる気にはなれないリオーゼと流厳。それはそうだろう。このみは
何か「策」があるとは言っていないのだ。しかし、エクスに対し、「違う」とも言っていない。

「・・・・・・ホッホ・・・・・・若い者には・・・・・・勝てんのぉ・・・・・。
 ワシのちっぽけな命・・・・・・・このみに賭けてみようかのぉ・・・・・」

「ッ!?・・・た、隊長・・・・・・・・・・・わ、わかった・・・・・。
 このみならば、信じられる!!・・・・・・・・このみ、君の美・・・・僕は、信じる・・・!」

「・・・・・皆・・・・・いいな?・・・・・止まるぜっ!!」

ゴォオオオオオオオオ!!
ナポリュート、止まるを選択。しかし、4人が止まったところで、大玉は何も変わりなく、
4人に向かって突進してくる。3人は「このみ」を信じた。迷いは無い。そして、
大玉は、4人に衝突する・・・・・・・・。


38 :匿名 :2007/12/30(日) 20:02:21 ID:onQHWiL3

〜 激突! エントフィートVSナポリュート その3〜

ナポリュートは止まる。当然、止まってしまえば後ろから迫ってくる大玉に踏み潰されて
しまうだろう。しかし、ナポリュートは、3人は、このみを信じた。彼らの結束力は、
すでに硬いものとなっていた。そして・・・・・。

「・・・・?・・・・・お、俺・・・・・死んだ・・・・?」

「・・・い、いや・・・・僕達は・・・・生きているっ!助かったんだ!」

「こ、これはどういうことなのじゃ?確かに、ワシらはこのみの指示通り、止まった。
 つまり、大玉に踏み潰されるという結果しか無いハズじゃが・・・・」

ナポリュートは生きていた。全員、生還していたのだ。周りをみると、さきほどとは
違う場所にいた。何処かに移動したみたいであった。しかし、そんなことよりも、
今の3人は、なぜ「止まった」ことによって「助かった」のかが知りたかった。

「コホンっ!コホォン!・・・・・み、みんなぁ・・・・・」

「あっ!こ、このみ!大丈夫かよ?さっきよりは、随分と顔色も良くなったけど、
 まだ休んでろよ」

「だ、大丈夫だよ・・・・エク兄ちゃん・・・・。み、皆・・・・私達はね・・・・
 ずっと・・・・・答えを走っていたの・・・・・・」

「こ、答え?」

声を合わせて尋ねる3人。このみは、この「奇跡の足跡」の試練の秘密を理解していた。
だからこそ、「止まれ」と命令したのだった。その謎の解き明かしを今から
しようとしているのだ。

「わ、私達はね・・・・・ずっと・・・・同じ道を・・・・走っていて・・・・。
 そのうちにね・・・・この道は・・・・何か・・・・文字になってるって思ったの・・・・」

「も、文字?・・・・あの状況で、よくそれだけのことを理解できたな、このみ。
 僕には到底、不可能だよ」

「つ、つまり、その道になっている文字が・・・・止まれの、止・・・・と、言う
 文字ということなのかなぉ?」

「うん・・・・・だから・・・・私達・・・・・初めっから・・・・走らなくて・・・・
 よかったんだよ・・・・」

「な、なんだよそれぇええ!!じゃ、じゃぁ・・・・俺達の・・・く、苦労は・・・・
 何だったんだよ・・・・」

落ち込むエクス。そう、答えは簡単だった。走っていた道が、「止」という文字だったのだ。
それに気づいたこのみ。このみは走っていなかった。だからこそ、冷静に理解できたのかも
しれない。とりあえず、助かったことに安心するナポリュート。

「まぁ・・・・とりあえず、このみのお陰で僕達もチアノーゼにならずに済んだんだ。
 このみの美のある知識に感謝しなければな。このみ、歩けるか?」

「・・・・・う、うん・・・・・こ、今度は・・・・英知の証明・・・だったよね・・・?」

「そうじゃ。どうやら、場所も移動されているようじゃのぉ。このまま真っ直ぐ
 進んでいけば、次の試練へと辿り着くじゃろう。とりあえず、このみはまだおぶっていこう。
 それでは、出発するぞぃ!」

次の試練、「英知の証明」に挑むために歩き続けるナポリュート。結局、第1の試練、
「奇跡の足跡」は、疲れて走るのをやめれば、クリアできるというものなのだ。
しかし、そんなことも気にせず歩き続けるナポリュート。

「隊長、エントフィートはどうなっていると思いますか?」

「う、む。シルヴァのことじゃ、ある程度は"奇跡の足跡”で走ったとは思うが、すぐに
 解読しているじゃろう。まだ、先行している可能性の方が高いのぉ」

「・・・なぁ、真剣な話しているとこで悪ぃんだけどよぉ。大玉の所で、俺達だけしか
 走ってない所で、すでにシルヴァの野郎から遅れてんじゃねぇのか・・・・・?」

「あっ・・・・・・・っく!!・・・エ、エクスぅう!本当に、美のない男めぇ!!」

「な、何でだよっ!」

未だ、先行しているエントフィート。このままでは、エントフィートに追いつくことなど
極めて難しい。すると、目の前に光が見える。どうやら次の試練、「英知の証明」
の部屋があるらしい。

「おぉ!!光が見えるぜ!」

「どうやら・・・第二の試練・・・・英知の証明の部屋のようですね・・・・・。
 隊長、急ぎましょう!」

「うむ。皆、走るぞぃ!」

光のもとへ走るナポリュート。依然、このみはおんぶをしているもらっている状態では
あるが。部屋の中に入るナポリュート。そして次の瞬間、目を丸くして驚くのであった。
それはまさしく、「英知の証明」。

「な、何だこりゃぁああ!?」

「っく・・・こ、これは・・・・・1〜3のパネルが・・・・敷き詰められている・・・?」

「ほぉ・・・。中々、やっかいそうじゃのぉ。・・・・?・・・・皆、何か書いてあるぞぃ」

そこには、1〜3のパネルが敷き詰められている部屋があった。およそ25メートルぐらい
先に、部屋の出口があり、そのパネルを踏んでいくしか、出口に辿り着く方法は
無い。

      〜  えいちをふめ  〜

「えいちを・・・・ふめ・・・・じゃと?・・・・どういうことじゃ?」

「だぁあああ!!!俺ぁ、こういうの苦手だぜぇ。数字を見るだけで、ジンマシンが出らぁ!」

「うるさいぞ、エクス。英知というぐらいだから・・・・やはり何か、頭脳を使って
 このパネルを進んでいくしかないようですね」

「そうじゃのぉ。適当にパネルを踏んでいくというわけにもいかんしのぉ・・・・」

困惑するナポリュート。さっきとは一転、今度は頭脳戦となったのだ。頭を抱えるエクス。
そして、じっくりと考えるリオーゼと流厳。このみも、じょじょに回復しつつあった。
しばらくすると、エクスが動き出す。

「・・・・・・ちくしょぉおおおお!!」

「わっ!!ビ、ビックリしたぁ・・・エ、エク兄ちゃん。驚かさないでよぉ」

「やってらんねぇ!こんなパネルが何だってんだよ!?こんな所で、石みてーに
 考えてんのが無駄だぜ!俺はぁ、進むぜ!!」

「バ、バカか!エクス!!早まるなっ!」

「っへ!見てろ、リオーゼ!!・・・・ど〜しようかなぁ、最初のパネルは・・・・・
 無論、1だぜぇ!!」

エクス、進む。それは、あまりにも無謀だった。愚かな行為だった。エクスは自身に満ちた
顔で、1のパネルを踏む。すると突然、その1のパネルがエクスの足の重みによって
壊れたのだ。そしてそのまま、暗闇の底へと落ちそうになるエクス。

ドゴォオオッ!!

「わぁああああ!!お、落ちるぅうう!!」

「エ、エクス!!掴まるんじゃ!」

隊長の手に掴まり、間一髪、助かるエクス。あまりにも愚かな行為に頭をかかえるリオーゼと
このみ。間違ったパネルを踏んでしまえば、底も見えぬ、奈落の底へと転落して
しまうのだ。

「ひぃ、ひぃ、ひぃ・・・・な、なんじゃこれぇ・・・・・突然、パネルが壊れやがった・・・」

「(1のパネルがハズレ、か・・・。奇数、偶数で考えると、この初めの段のパネルの当たりは、
 2・・・・。だが、理屈が無い。ならば、奇数、偶数ではない。1から3・・・・
 何か、あるハズだが・・・・)」

「リオーゼ、何かわかるか?」

「・・・いえ、特にわかることはありません。しかし、気になることなるいくつかあります。
 まず、この1から3までしかないということ。つまり、1から3までしか関係しないのです。
 だから、率直に何かの数字的関係では無いと思われます・・・・」

「ふむ・・・・他はあるかのぉ?」

「もう一つは、隊長が見つけたヒントとも思える文字です。えいちをふめ・・・。
 不自然に、ひらがなで記されている。つまり、簡単に漢字で英知を踏め、と解釈する
 わけにはいかないと思われます」

「リオーゼ、すっご〜い!!よくそこまわかったね」

リオーゼは冷静に分析していた。しかし、それでもまだわからなかった。このみはまだ幼い。
エクスには期待しても無駄、流厳もそれほど頭脳がズバ抜けてるとは言い難い。だからこそ、
リオーゼがこういう時、もっとも必要とされるのだ。

「(トランプス、月日、曜日、時間・・・・。あらゆることで、少しでも数字に関係することを
 考えたが、まるでわからない。この1から3という数字を・・・・数字と考えるの
 ではないとしたら・・・・いや、そんなハズがない!・・・・・くそ、まるでわからない)」

「そういえば、なぜエクスは1を選んだのじゃ?」

「ん?・・・・あぁ、えいちをふめ、だろ?・・・だから、A1を踏めっ!・・・・
 って、解釈したんだよ。Aもアルファベットで1番だろ?だから、最初は一番だっ!
 って思ったんだ」

「あっ!私もそう思ったぁ!エク兄ちゃん、私と一緒だね♪」

「だよなっ!さすが、俺とこのみだぜ!」

「(・・・・じゃぁ、2番目からはどうするつもりだったんだ?・・・・・
 まったく、1は良いとして、最初のAは理屈が無さ過ぎるだろう・・・・・・。
 待てよ・・・・・えいちを・・・・・A1と・・・・考える・・・・・?)」

リオーゼは何かひらめいた。エクスとこのみの何気ない会話に、リオーゼの足りなかった
何かが機能しだす。そして、それは「確信」へと変わっていくのであった。
リオーゼは、自身に満ちた顔で、3人に言う。

「・・・・・この試練・・・・・美の如く・・・・・解明した・・・・!」

「っ!?マ、マジかよ!リオーゼ!!」

「あぁ、エクス・・・・・。最初は、3だ・・・・・3で、良いハズだ・・・・!」

「ほ、本当なのかのぉ!?リオーゼ。しかし、もしもそれが間違っておったら・・・・」

「僕が、渡ります。初めは3。次は2。次は1・・・・・これで、合っているハズです。
 僕の美のセンスが正しければ・・・・・・」

そして、リオーゼはゆっくりと前へ出る。最初の段は、エクスが1を踏んで失敗したため、
2と3しか残っていない。リオーゼはその3の文字へと足を運ぶ。周りには、いつでも
リオーゼを助けられるように、3人が見守る。

「(これで・・・・良いハズだ・・・!!・・・・僕は、信じる・・・・!
 自分の美学を・・・・!!・・・・・僕の・・・・魂を・・・・!!)」


39 :匿名 :2008/01/06(日) 20:01:54 ID:onQHWiL3

〜 激突! エントフィートVSナポリュート その4〜

リオーゼは理解した。しかし、それが「真実」と結びつくのかはわからない。
しかし、リオーゼは進む。ただ、自分の信じた、未来を、美学を、証明するためにも。
リオーゼの足が、3のパネルにのしかかる。

「・・・・・・ふ、踏める・・・・・踏めるぞっ!これは当たりだっ!」

リオーゼは真実を掴んだ。そして、続いて、さきほどリオーゼが宣言していた通り、
「2」のパネルを踏もうとする。確かに、1段目はすでに1が無くなり、2分の1の
確立だった。本番は、これから。これさえ合っていれば、もう迷うことは無いだろう。

「(次は2っ!・・・・これさえ正解であれば、僕の考えは正当であることが証明される!
 僕の美学に・・・・・・間違いという文字は・・・・・無いハズだ・・・・!)」

リオーゼ、2を踏もうとする。今度こそ、偶然や奇跡では解決されない。自分の考え、
理屈が通るかどうかの問題である。3人も、ただリオーゼの「考え」が通ることを
祈っていた。そして、リオーゼは2を踏む・・・・。

「・・・・・ふ・・・・踏めたっ!!僕の考えは間違っていなかった!」

「ま、マジかよ!リオーゼ!!な、何でおまえ・・・・・このわけのわかんねぇ数字を
 解き明かしたんだよ!?」

「それは後で話す。それより、皆っ!早く、ここから出ましょう。僕の歩くパネルを
 踏んで行ってくださいっ!」

リオーゼはその後も難なく、パネルの正解を踏み続け、ナポリュートを生還へと導いた。
全員、出口まで辿り着き、一安心する。そこで、エクスは再びリオーゼに尋ねた。
この問題の答えを。

「お、おい、リオーゼ。早くおしえろよ!この英知の証明の、1から3までのパネルの
 答えをっ!」

「まったく、イノシシのようにセッカチな奴だな。率直に言うと、この英知の証明と
 いう名前・・・・これ自体、罠なんだ」

「?・・・・ど、どういうこと?リオーゼ」

「隊長が見つけた"えいちをふめ"という文字・・・・そして、エクス、君が言ったA1を踏め、
 という愚かな解読・・・・これが、ヒントになっていた。・・・・・隊長、何か
 書くものを持っていませんか?」

「ん?・・・・・・ほれ、あるぞぃ」

「すみません・・・・・これが・・・・本当の意味なんです・・・・英知の証明の・・・」

リオーゼは懐から白い紙を出し、流厳からペンを借りると、ある文字を書き始めた。
それこそが、この「英知の証明」の真相だった。そのリオーゼの書いた文字を見て、
驚く3人。

「な、なんじゃこれ・・・・・え、英値を・・・・踏め?・・・・ちょ、ちょっと待てよ!
 リオーゼ。・・・・この英知の知の部分が、値になってるぜ?」

「そう、それが答えなんだ。ひらがなで書かれている時点で、僕は"英知を踏め"と解釈
 するのでは無いと思った・・・・。そして、ひらめいた。英知の知を値にすれば良いとね。
 つもり、その結論は一つ・・・・英の値を踏め・・・・英語の値を踏め・・・・わかるかい?」

「・・・・・あっ!も、もしかして、リオーゼ!それって、画数ってことぉ!?」

「その通り。英語の値、それは画数。Aは3。Bは2。Cは1。Dは2。・・・・・
 そう考えたんだ。まったく、答えさえわかれば、何とも幼稚な問題だ・・・・」

「?・・・・はぁ?英語の画数?・・・・お、おい!リオーゼ、どういうことだよ!
 俺にはぁ、さっぱりわからねぇぞ!!」

「エ、エク兄ちゃん、私がおしえてあげるから・・・・。良い?まず、このAの画数がぁ・・・・」

英知の証明。それは、英値の証明であった。ただ単に、英語のアルファベットの画数を
順に踏んでいけば良いだけのことだったのだ。しかし、それでもリオーゼがいなければ、
誰もわからなかったのだ。そして、残るは最後の一つの試練のみとなった。

「ほれ、エクス。もう終わったことを考えている暇ではないぞぃ。さぁ、次が最後じゃ。
 この一本道の向こうに・・・・・ワシらの希望がある・・・・・・!」

「・・・・覇王との戦・・・・ですよね。覇王、か。嫌な予感がするな」

「覇王でも魔王でも何でも来いってんだ!早く、行こうぜ!俺達の未来をよぉ・・・・
 ナポリュートの栄光を掴むためにもよぉ!!」

「ま、待って!エク兄ちゃん!!」

「エ、エクス!単体で挑むなんて、本当に単細胞な奴だなっ!」

「これこれ!ワシを置いてくでなぁい!!」

走る、ナポリュート。一本道を。それは、ナポリュート、第1位に向けての光。そして、
ドアを見つける。もう、足は止まらない。ただ、全力でわしずかみにしようとしているのだ。
ドアに手をかけて、光さしのべる先を見る・・・・。

「・・・・こ、ここは・・・・・随分、広ぇ部屋に来たなぁ・・・・・・・。
 ッ!!・・・・お、おい!皆、あれ見ろよっ!」

「?・・・・あ、あれはっ!・・・・・・階段の先に、宝箱がある!?」

第3の試練、「覇王との戦」。その部屋に、ナポリュートが求める宝石が入っている
宝箱があった。長々と続く階段の先に、ナポリュートの求める栄光がある。それを見上げ、
興奮をおさえきれない4人。

「た、隊長!まだ、エントフィートは来てないんだよね?・・・・ってことは、
 私達、エントフィートよりも先に来たの!?」

「うむ。周りを見る限り、ここ最近人が来た形跡は無いようじゃ。どうやらワシらは・・・
 エントフィートよりも先行できていたようじゃ!」

「よっしゃ!!なら、早ぇとこ、宝石取っちまおうぜ!!」

「ッ!!・・・・・ま、待て、エクスっ!・・・・・周りから・・・・煙が出てきている!!」

エントフィートよりも先に到着することができたナポリュート。しかし、まだ最後の試練、
「覇王との戦」が残っているのだ。突如として、広い部屋一帯が白い煙に包まれる。
視界をさえぎられたナポリュート。

「な、何なんだよ、これ!煙が充満して、何も見えねぇえ!」

「こ、これが・・・・覇王との戦だと言うのか!?人が戦えない状態を狙ってくるとは・・・・
 美に欠ける行為・・・!!」

「い、いや・・・それは違うぞぃ、リオーゼ!煙が晴れて来ておる!」

煙は晴れてきていた。なぜ、煙が出てきたのか。急いで、ナポリュートは宝箱を確認する。
宝箱は無事である。そうとなると、この煙の原因はエントフィートではないのだ。
そうなると・・・・・。

「煙が晴れてきた・・・。隊長、宝箱は依然変わりはありません。と、なると・・・
 エントフィートの奴らではない・・・・覇王との戦の・・・・序章とでも言いましょうか・・・」

「?・・・・み、皆ぁ・・・・・あそこに・・・・誰かいるよ?」

「ん?・・・・何だ、人か?・・・・シルヴァの野郎じゃねぇ・・・・誰だ?・・・・・」

煙が晴れてきたと同時に、「何者」かがナポリュートと同じ部屋に入ってきていた。
誰かも知れぬ者は、ただ、ボーっと立っていた。そして、煙がほとんど完全に
晴れた。

「・・・・き・・・・綺麗な人ぉ・・・・・・」

「・・・う・・・・美しい・・・・・・」

「(な、何だあの野郎・・・・・男なのに・・・・・わかんねぇけど・・・・・魅力を感じる。
 色気を感じる・・・・・・そして・・・・・邪悪さを感じる・・・・!!)」

「・・・・バ、バカな・・・・・あの男は・・・・・あの男が、こんな所に・・・・
 いるハズなど・・・・・!」

「・・・・・・・・」

そこに現れたのは、金髪の男。無表情で立っている。その男の容姿に、ナポリュートのほぼ
全員が目を奪われた。男とは思えぬ美しさ、色気、魅力、強さ、カリスマを感じた。
しかし、流厳だけは違った。恐怖をかかえこんだ顔で、その男を見る。

「・・・・ッ!!・・・い、いかん・・・この僕が、こともあろうに目を奪われていた・・・。
 た、隊長・・・・どうかしたのですか?」

「・・・・・あ、あやつは・・・・・・・あいつは・・・・・・」

「・・・・エ、エク兄ちゃん・・・・どうしたの?・・・・汗が凄いよ?」

「はぁ、はぁ、はぁ。(あ、あの男・・・・・知らないけど・・・知ってる・・・・!!
 俺の体が・・・・反応している!・・・あいつは・・・・・俺が・・・・・・
 倒すべき相手・・・・・!!)」

「・・・・あやつは・・・・・・・闇の帝王・・・・・ジョーカーじゃっ!!」


40 :匿名 :2008/01/13(日) 20:14:56 ID:onQHWiL3

〜 Shine and Dark, I vs I その1 〜

帝王。その称号がもっとも相応しい男。すべてを支配し、あらゆる物の頂点に立とうと
した男。名を、「ジョーカー」。そのジョーカーが、「覇王」として、第32代目主人公、
エクスの前に現れたのだ。

「・・・・・・・・・・」

「な、何もしてこねぇのか・・・?お、おい隊長っ!どうすんだよ!!」

「・・・む、無理じゃ・・・・もし、あれが本物のジョーカーならば、ワシらに勝てる要素は
 欠片も無いっ!じゃが、しかし・・・・・もし、あれが本物のジョーカーでは無いと
 したならば・・・・」

「・・・・どうします?僕が牽制をかけてみましょうか?」

「いや、うかつな行動は命取りじゃ!・・・・ここは、遠距離攻撃ができるワシが
 攻撃を開始する・・・・。いいか、警戒を怠るのじゃないぞ・・・・・」

ジョーカーは依然と、無表情で一歩も動かずに立っている。まるで、エクス達が来ている
ことなどまるで知らないように。流厳はふところから、小さいナイフを取り出した。
流厳の能力は「膨張」。膨張したナイフは破裂して、相手に大ダメージを与えることができるのだ。

「いいか?ワシが今からナイフを投げる・・・・・よそみすることも、油断することも
 ゆるされんぞ。奴は最強のクラスに位置されている男じゃ・・・・・」

「じゃ、じゃぁ、私が隊長がナイフを投げた後、未来予知をすれば良いんだね!?」

「うむ、たのむぞぃ、このみ。・・・・・・・皆・・・・・投げるぞぃ!!」

流厳、ナイフを投げる。ジョーカーは動かない。ギリギリまで動かないつもりなのだろうか。
しかし、今のナイフの軌道上から逃げても、流厳の膨張の能力があるため、破裂して、
2次被害は避けられない。それでも、ジョーカーはギリギリまで避けない。すると・・・・。

・・・・ヒュッ・・・・・・

「ッ!!ジョ、ジョーカーがいなくなりやがった!!このみっ!未来予知は!?」

「ま、待って!!・・・・な、なにこれ・・・・・未来予知が・・・・阻止されてる!?」

「な、何だと!?未来予知ができない!?バ、バカな・・・・。
 未来をも奴は操ったということなのか・・・!?そんな美学、ありえるわけ・・・!」

「・・・・・・・ホウ・・・・・ジャス・・・・・」

「っ!!い、いかん!リオーゼっ!後ろじゃっ!!」

「何っ!?(そんなバカなっ!奴が移動する気配など、まるで無かったのに・・・!!
 まずい!直撃をくらう!!)」

ジョーカーの能力。それは、最強。この一言でかたずいた。いきなり4人の視界から消えた
ジョーカーは、いつのまにかリオーゼの背後に移動していた。そして、リオーゼを
後ろから回し蹴りをする。

「ぐわぁああああ!!」

「リ、リオーゼっ!!・・・こ、この野郎ぉおお!!!」

「だ、駄目じゃ、エクスっ!!今の奴に攻撃を仕掛けてはいかんっ!」

「・・・・・・プレス・・・・・・ティス・・・・・」

「・・・・エ、エク兄ちゃん!!後ろにいるっ!!」

「な、何だと!!?バカな!!(な、何が起きたんだ!?なんで、こいつ・・・・
 一瞬にして移動できてんだよ!?こいつ・・・・・化け物かよっ!!)」

リオーゼが攻撃され、ただ怒りにまかせジョーカーに挑もうとしたエクス。だが、
ジョーカーは向かってくるエクスに対し、また「能力」を使い、エクスの背後に一瞬で移動する。
そして、リオーゼと同じく、蹴りを喰らわす。

「がぁああああ!!・・・・・・・(な・・・・・なんて・・・・・パワーだ・・・・・・。
 こいつ・・・・・・本当に・・・・・生き物か!?・・・・・・・・どうやったら・・・
 こんな化け物・・・・・倒せるんだよ・・・・・!!)」

「・・・・・・・・」

「た、隊長!!リオーゼとエク兄ちゃんがやられちゃったよ!ど、どうすればいいの!?」

「お、落ち着くのじゃ、このみ。(奴の能力がまるでわからん。瞬間移動という能力
 ならば、このみの未来予知が機能するハズなのじゃ!・・・・ならば、どういう能力なのじゃ?
 まるで検討がつかん・・・・!!)」

一瞬にして、4人いたナポリュートの二人が負けた。ジョーカーはまた、無表情でポツンと
立ち続ける。どうやら、まだ流厳とこのみを襲う気が無いようだ。ジョーカーの蹴りによって
吹き飛んだエクスとリオーゼは一生懸命意識を保とうとしていた。

「どうやら・・・・奴は、攻撃意思がある者に対して、攻撃を仕掛けるようじゃのぉ・・・。
 しかし、こんなことをしていては・・・・・宝箱に到達することはとても無理じゃ・・・・。
 恐らく、宝箱に向けて動いた瞬間、奴は襲ってくる・・・・!!」

「じゃ、じゃぁ、私・・・・リオーゼとエク兄ちゃんのところ見てくるっ!」

「う、うむ。たのむぞぃ、このみ・・・・・・・?・・・・・・・い、いかん!!
 ジョーカーがいなくなっておる!!・・・・・・このみっ!後ろじゃっ!!」

「え・・・・?」

「・・・・・・ホウ・・・・ティス・・・・・」

ジョーカーは、移動したこのみに対して、未だわからない「能力」を使い、このみの
背後に忍び寄った。そして、攻撃された二人と同様に、蹴りをこのみに喰らわす。
地面にうずくまるこのみ。その姿を見て、熱が入るエクスとリオーゼ。

「うっ・・・・・・・あ・・・・・・うぐっ・・・・・・!」

「な・・・・・何やってんだテメぇえええ!!よくもこのみにっ!!」

「っく!!あいつ・・・・・あの野郎っ!!よくもこのみに!!!」

「だ、駄目じゃ!エクス、リオーゼ!!今、動いてはならんっ!」

このみは、比較的二人に比べて、攻撃は軽かった。しかし、それでも子供のこのみにとっては、
エクス達以上のダメージをくらっていることになる。ただ、怒りに任せて
ジョーカーに突っ込むエクスとリオーゼ。

「リオーゼっ!てめぇは右だっ!!挟み撃ちにするぞっ!」

「わかっている!ジョーカーを見失うなよ、エクスっ!!」

「(い、いかん!!このままでは、エクスとリオーゼがジョーカーの謎の能力によって
 倒されるのは目に見えておる!隊長のワシが・・・・・何とかせねば・・・・・!!)」

無謀ながらも、ジョーカーに挑もうとする二人に、流厳は何とかしようと考える。
そして、腰にある拳銃を取り出して、ジョーカーに向けてかまえる。これしか、
二人を救う手立てはないのだ。

「(これしかないのじゃっ!鉄砲ならば、エクス達よりも先にジョーカーに攻撃する
 ことになる!すなわち、ジョーカーの攻撃目標はワシになるっ!!)」

「・・・・・・・・」

「(間に合っておくれよぉ・・・・狙いは・・・・・はずさんっ!!)」

バァアアアアアン!
拳銃の音が、広い部屋に鳴り響く。そして、3人の目の前からジョーカーは消えていなくなる。
そう、誰もがその時、予測した。次のジョーカーの移動先を。拳銃を発砲した者の場所に
移動していると・・・・・。

「た、隊長っ!危ないっ!後ろにジョーカーが・・・・!!」

「・・・・プレス・・・・ジャス・・・・・」

「ホッホ、ジョーカーとやら。ワシも伊達に年はとってなくてのぉ・・・・」

「・・・・・ッ!!」

「こう見えても、ワシはナポリュートの隊長なんでのぉ・・・・。皆を守らなくてはならんのじゃ。
 腹はくくれているか?ジョーカー・・・・・・・お互い、我慢比べといこう・・・・!」

「な、何やってんだよ隊長!!そんな近くでナイフを膨張させたらっ!!」

流厳のわずかな賭け。流厳は、ジョーカーが背後に来るのを悟っていた。だからこそ、
膨張させたナイフをあらかじめ、自分の真上に投げておいたのだ。そして、ナイフは
破裂する。

バァアアアアンッ!!

「うぐっ!!・・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・こ、こいつは、ちと・・・
 マズイかのぉ・・・・・・体に・・・・こたえるわぃ・・・・!!」

「ま、まずいっ!隊長っ!ジョーカーは・・・・ジョーカーは無傷ですっ!
 無傷で、隊長の背後にいますっ!」

「バ、バカなっ!!(や、奴の能力とは・・・・いったい何なのじゃ!?)」

「・・・ホウ・・・・・プレス・・・・・」

「ホッホ・・・・・我慢比べ・・・・・・お主の勝ちのようじゃのぉ・・・・・」

「た、隊長っ!!」

ジョーカーの蹴りをまともに喰らう流厳。そして、壁に衝突する。ジョーカーは、破裂した
ナイフの破片にまったく当たっていなかった。流厳だけしか当たっていなかったのだ。
あらためて、冷静になるエクスとリオーゼ。

「(お、おいおい・・・・・マジかよぉ・・・・・た、隊長がやられちまったじゃねぇか・・・。
 これで、まともに戦えるのは俺とリオーゼだけ・・・・・・くそっ!!・・・・・
 どうやって31代目は・・・・・この化け物と互角に戦えたんだよっ!)」

「(まずい・・・・能力がまるで、解読できない。このままでは、このみや隊長に続き、
 僕とエクスが倒されるのも目に見えている・・・・・・っく!・・・・・・・
 これが・・・・・・最後の試練・・・・・・覇王との戦・・・・・・!!)」

絶望的な状態。まるで、能力が理解できない。ジョーカーはその能力だけでなく、肉弾戦でも
強い、そのことは蹴りを喰らった全員がわかっていた。もう、後にはひけない。
じょじょに、冷や汗が出てくるエクスとリオーゼ。すると・・・・・・・。

・・・・ザッ・・・・・!

「・・・・・ほぉ・・・・・・何処かで見たと思えば・・・・・ジョーカー・・・か」

「・・・・・・・ッ!!」

「ッ!!・・・て、てめぇは・・・・テメェはぁっ!!」

そこに現れたのは、エントフィートを引き連れたシルヴァだった。シルヴァの能力、
「レッド・タイム」。この能力は、神の領域に足を踏み入れた能力といっても過言ではない。
これから、頂上決戦が始まろうとしているのだ・・・・。

「シ、シルヴァ!!」

「・・・・ジョーカー、か・・・・・一度、戦ってみたかった・・・・・・。
 アカツキ軍第2部隊エントフィート隊長、シルヴァ・・・・・・任務を開始する・・・・」


41 :匿名 :2008/01/20(日) 20:12:14 ID:onQHWiL3

〜 Shine and Dark, I vs I その2 〜

合間見えるシルヴァとジョーカー。今まで地面しか見ていなかったジョーカーも、ゆっくりと
シルヴァの顔を見上げる。シルヴァの実力を悟ってのことだろう。シルヴァ対ジョーカー。
お互い、持っている能力は最強。赤い瞳で、シルヴァはジョーカーを見る。

「・・・・こいつが、ジョーカー・・・・聞いていたのと違うな・・・。
 まぁ、良い・・・・・・ナポリュート、おまえらは手を出すな・・・・・。
 ここからは・・・・・・・・エントフィートの時間だ・・・・・」

「シ、シルヴァ・・・・!!(シルヴァの能力、レッド・タイムっ!!
 15秒間だけ、半径1km内のすべての自然の摂理を操れる・・・・・!
 ど、どっちが勝つんだよ・・・・・?)」

シルヴァがゆっくりとジョーカーに前進する。今までどおり、すぐに攻撃を仕掛けない
ジョーカー。どうやら、シルヴァを「敵」として認識しているようだ。シルヴァが
現れた時点で。そして、シルヴァの時間が始まる・・・・・。

「・・・・・さて・・・・・俺の時間・・・・・赤い・・・・殺戮の時間を開始する・・・。
 レッド・タイム・・・・世界よ、俺の掌中に入れ・・・!」

「シルヴァが仕掛けた・・・!周りが真っ赤に染まっていく・・・これで2度目だが、
 赤いパールの輝きではなく、血の赤に近い色だな!」

「・・・・・・・・」

無表情で、シルヴァを見るジョーカー。シルヴァの居る地点から半径1km以内の
すべてが赤く染まる。そして、その赤く染まった領域はすべてシルヴァが支配していることと
なるのだ。

「・・・・・小手調べだ・・・・・・砂よ・・・・・巻き起これ・・・・・・
 暴風の如く・・・・・・!」

「じ、地面の砂が・・・・・どんどん、舞い上がってきやがるっ!!
 な、何だこれ・・・・砂が・・・じょじょに、勢いを増してきている!?」

「・・・・・・・・・」

宮殿内の砂という砂が、シルヴァのいる部屋に集まってくる。そして、その砂は
砂嵐ともいうべく、一つの大波と化して、ジョーカーを襲おうとしていた。その光景を
口を開けてみているしかないナポリュート。

「こ、これは・・・・!!砂が、大きな波と化してジョーカーを襲うとしている!?
 これが、シルヴァにとっては・・・小手調べだというのか・・・・!!」

「・・・・・喰らえ・・・・・砂よ・・・・・体液を吸い尽くせ・・・・・・!」

ドバァアアアアアア!!
大波となった砂が、ジョーカーを襲う。一瞬にして、ジョーカーが居た場所は、砂まみれ
と化した。その衝突の威力は、凄まじいものであった。人間一人を押しつぶすには
いとも簡単なほどに・・・・・。

「・・・・・プレス・・・・・ジャスティス・・・・・・・」

「お、おい!!シルヴァ!!後ろだっ!」

「ほぉ・・・・・さすがに・・・・・・噂通り・・・・・いや噂以上と、感じる・・・・」

「・・・・・・ッ!!」

ジョーカーは、砂の大波から謎の能力によって回避して、シルヴァの背後に移動していた。
そして、ナポリュートを壊滅に導いた時と同様に、蹴りを入れた。しかし、その蹴りには、
何も当たっていなかった。

「・・・・・俺が作りだした霧だ・・・・・・俺自身を象ったな・・・・・・・。
 後ろが・・・・・ガラ空きだぞ・・・・・・・・闇の帝王とやら・・・・」

「・・・・・時は・・・・・・進・・・・・む・・・・・・」

「ッ!な、何・・・・!(こいつ、いつの間に俺の真横に・・・!)」

「・・・・・・プレス・・・・・ティス・・・・・!」

「(一撃、まともにもらう・・・・!これで、奴の力量を図るか・・・・・!)」

さらに上を行くジョーカー。シルヴァの霧のダミーを攻撃したかと思うと、
再び一瞬にして本物のシルヴァのもとへ移動する。ジョーカーのパンチが、シルヴァに命中する。
とっさに防御するシルヴァ。けれども、立ったまま後ろに数メートル吹き飛ばされる。
まだ、「レッド・タイム」は
終わっていない。

「っぐ!!・・・・・・・想像以上の・・・・・力だ・・・・・・・・・。
 っフ・・・・・・久々に・・・・・・殺人という行為を・・・・・・楽しめそうだ・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・次、行くぞ・・・・・・ジョーカー・・・・・・・聞きたいが・・・・
 ここは暗くないか・・・・?」

「・・・・・・・・・」

「・・・・俺は暗いと思うのだが・・・・・・・そうだな・・・・光が欲しい・・・・。
 一瞬、一瞬の光でも良いんだ・・・・・ついでに・・・・その光が・・・・・
 貴様を倒してくれそうだ・・・・・・・・・・」

ゴロロロロロロォォオ
宮殿の中から、いや、宮殿の外からなにやら音がする。それは、何処かで聞いた音。
しかし、その音は宮殿の内に響くほどの大きい音だった。それはまさしく、「雷」の
音であった。

「エ、エク兄ちゃん・・・・・こ、この音って・・・・・・!」

「・・・・か、雷だ・・・・!!」

「・・・・・一瞬の光が如く、雷よ・・・・・俺のために、魔物を灰して見せろ・・・・・!」

ドゴォオオオオン!!
雷が、シルヴァのいる部屋に落ちてくる。それも、何回も。まぎれもなく、シルヴァが
操っている雷。自然の天候までも操る能力、「レッド・タイム」。しかし、もう時間が
すぐそこまで迫ってきてもいた。

「わ、わっ!!か、雷が・・・・俺達のいる部屋にだけ、何回も落ってきやがる!?」

「・・・・ホウプレス・ジャスティスと言ったな・・・貴様の能力・・・・・。
 使ってみろ・・・・・俺のレッド・タイムとどちらが強いか・・・・・ハッキリする・・・・」

「・・・・・・・時は・・・・・・進・・・・・む・・・・・」

雷が部屋のあたり一面に落ちていく中で、再度、一瞬でジョーカーは正確にシルヴァの前に現れる。
何処に雷が落ちるからわからない部屋の中で、ジョーカーは一瞬にして、シルヴァの目の前
へと移動できたのだ。

「・・・・・・ホウプレス・・・・・・ジャスティス・・・・・・・」

「・・・・フン・・・・・・やはり、おまえ、ジョーカーでは無いようだな・・・・・・。
 だから、俺が・・・・・・・・こうも簡単に貴様に勝てるわけだ・・・・・」

「・・・・・ッ!!」

「今ごろ気づいたのか?・・・・・・もう遅い・・・・・・。俺がただ単に雷を
 落としているとでも思っているのか・・・・?・・・・・・・そう、俺の周りだけに
 落として・・・・・・俺のいる周りの地面を壊れやすいようにした・・・・・・。
 そして、おまえは・・・・・・・この事態に焦り、砂があることも忘れている・・・・・」

「ッ!!」

シルヴァの策。それは、雷を円形状にシルヴァのいる周りに落とさせて、その周りの
地面を壊して、移動してきたジョーカーと共に底に落ちさせようというものだった。そのことに
気づいたジョーカーに、さらに、さきほど操った砂をジョーカーに浴びせ、身動きを封じる。

「・・・・・・・嫌いじゃないんだろ?・・・・・・奈落の底って奴は・・・・・」

「・・・・・っ!!」

「・・・・・任務終了だ・・・・・ジョーカー・・・・・・」

ドゴォオオオオン!
轟音と共に、シルヴァのいた周りの床が崩れる。シルヴァはそこからジャンプして、
逃れる。しかし、砂に捕らわれたジョーカーは、そうにもいかず、そのまま、
底の見えぬ底へと落ちていく。

「マ、マジかよぉ・・・・シルヴァの野郎・・・・ジョーカーを倒しやがった・・・!!」

「・・・・・・フン・・・・・恐らく・・・・・本物のジョーカーの・・・・・
 10分の1程度の力だろ・・・・・・宮殿の幻想が造ったジョーカーだ・・・・・・。
 強いわけが無い・・・・・・・」

「っく・・・・また、エントフィート・・・・シルヴァに、僕達は助けられて
 しまったのか・・・・・・・。?・・・・・・ッ!!シルヴァっ!!後ろだっ!!」

「・・・・?・・・・ッ!!な、何だと・・・!!」

「・・・・・時は・・・・・戻・・・・った・・・・・・」

ジョーカー、死なず。平然と、シルヴァの背後に立ち尽くすジョーカー。すでに、
シルヴァのレッド・タイムは解けている。今さら、ジョーカーに反撃するすべが無いのだ。
ジョーカーが蹴りをシルヴァに喰らわす。

「ぐぅっ!!(く、くそ・・・・レッド・タイムが・・・・切れてしまった・・・時に・・・)」

「う、嘘だろぉ・・・・シルヴァまでもが、敵わねぇってのか・・・・?
 どうすりゃぁ・・・・・この化け物に・・・・・勝てるってんだよ・・・・・!!
 俺達・・・・・全然・・・・・太刀打ちできねぇじゃねぇか・・・・!!」


42 :匿名 :2008/01/27(日) 20:05:11 ID:onQHWiL3

〜 Shine and Dark, I vs I その3 〜

エクスは考えた。この事態の解決策を。すでに「逃げる」、作戦を「放棄」するという
考えも頭の中にはあった。しかし、なぜかジョーカーを見るたびに、エクスの心は
正義で満ちていた。

「(何か・・・・何かあるはハズだろ!?ジョーカーを倒せる方法が・・・・・!!
 いや・・・・・・・無いハズが無い・・・・・俺は主人公なんだろ?・・・
 ビビんなよ・・・・・道は用意されてる・・・・・渡るかどうかの問題なんだ・・・・!)」

       ・・・・・道は・・・・・・・
               ・・・・・・ある・・・・・・

「!?(な、何だ?・・・・声が・・・・・聞こえる?・・・・いや、幻聴か・・・)」

      ・・・・・・君の・・・・・光を・・・・・・・
         ・・・・奴に・・・・・・ぶつけるんだ・・・・・・・

「(な、何なんだよ、この声っ!!き、気味悪ぃ〜・・・・しかも、この声・・・・・
 ジョーカーから聞こえる・・・・?)」

突然、何か幻聴のような声がエクスの耳に届く。それは、エクスにだけしか聞こえていない
ようだった。それも、ジョーカーの方向から聞こえてくるのだ。すると、ジョーカーに
異変が起きる。

「ッ!!・・・・・・っぐ!・・・・・・グ・・・・クラ・・・・・・レ・・・ト・・・!!」

「(な、何だ?ジョーカーが、何かに苦しんでいる?くやしいが、美の流れが如く、
 僕らを圧倒していたジョーカーが・・・・ここにきて・・・いきなり苦しみはじめた・・・?)」

「(ひ、光!?・・・・光って、何だよ!!今はもう夜だぜっ!?光もクソも
 関係ねぇだろうがよぉ!!)」

     ・・・・・・・君が・・・・・作り出す・・・・光・・・・・・
        ・・・・・それは・・・・涙を・・・・・・伝わらせて・・・・・・

「(な、涙!?・・・・言ってることが、まるでわからねぇよ!!誰なんだよ、アンタ!
 俺に何がしてぇんだよ!?俺は・・・あんた何か、知らねぇ!あんたのいうことも・・・
 聞けねぇよ・・・!!)」

    ・・・・・・君は・・・希望なのだ・・・・主人公・・・なのだ・・・・・・・・・
      ・・・・・光が差し伸べる・・・・そう、君の鼓動を熱くさせて・・・・
            ・・・・・この蒼い空、君と共に・・・・・・・・

そうすると、幻聴は聞こえなくなる。誰の声か、まるでわからない。今まで聞いたことの
無い声だからだ。この声の主がエクスに対し、善意を持っているのか悪意を持っているのかも
わからない。しかし、エクスはその言葉の意味を考えるしかなかった。

「(何なんだよ、チクショウっ!!・・・・・幻聴に惑わされてたまるかよ・・・・!
 ・・・・・・でも、どういうことだ?・・・・・俺が・・・・光を作る・・・・・?
 涙を・・・・・伝わらせて・・・?・・・・これで・・・・勝てるのか・・・?)」

「エ、エク兄ちゃん?・・・・・ど、どうしたの・・・・・・?」

「(・・・・光が・・・・・涙を・・・・伝える・・・・?
 ッ!!わ、わかった!!・・・・・そういう・・・・ことかよぉ・・・・!!!
 礼を言うぜ、わけわかんねー声の奴っ!)」

エクスは突然、ひらめいた。ようやく、謎の声の主の言っていた言葉を理解できたのだ。
それには、ある程度の危険をおかさなければいけなかった。エクスは大声で、離れ離れに
吹き飛んでいるナポリュート、そしてシルヴァに話しかける。

「皆っ!俺の言うことを聞いてくれぇっ!!」

「・・・・ど・・・・どうしたのじゃ・・・・?・・・・・エクス・・・・」

「・・・・・ジョーカーを倒す作戦が見えた。・・・・・武器は揃ってるんだけどよぉ、
 どうしても、集まらねぇもんがあんだ・・・・・勇気・・・・・こいつが、足りねぇ。
 ・・・・・・皆・・・・・奇跡とか、偶然なんて・・・・・いらねぇんだよ・・・・!!
 俺に・・・・・勇気・・・・・分けてくれねぇか!?」

「勇気」とは「覚悟」。それを、今のエクスは欲していた。奇跡や、偶然など必要ではない。
そんなものなど、後付にしかならないからだ。必要なのは、皆の「勇気」。ジョーカーに
挑むという「覚悟」こそ、最も必要だと、エクスはわかっていた。

「・・・・・・・・・・エクス・・・・・・・・君にどんな策があるか、僕は知らない。
 しかし、こういう逆境での君の発想は・・・・・理屈に当てはまらない理不尽なものばかりだ。
 まったく、そんな破天荒な君の策とは、とても信じられんな・・・・・・・・・。
 それで、その勇気とやら・・・どれくらい必要だ?」

「エ、エク兄ちゃん・・・・・・そうだね・・・・・いつも、エク兄ちゃん・・・・
 こういう状況でこそ、逆転してきたよね・・・・・・・私・・・・小さくて、弱いけど・・・・
 エク兄ちゃんにあげるくらいの勇気は・・・・・いっぱいあるよっ!!」

「ワシは、隊長として失格じゃな・・・・・。今のエクスに、頼ろうとしているのじゃからな。
 じゃから・・・・・・その勇気・・・・・・・いや、覚悟をっ!!
 大目に、分けておこうかのぉ・・・・・!」

「へ、へへ・・・・・・・あんがとよ、皆・・・・・。おい、シルヴァっ!!
 この策のキーポイントはテメェなんだ!!・・・・・・・てめぇの覚悟は・・・・本物かよ?」

「・・・・・・ナポリュート・・・・・エクス・コールド・・・・・俺は誰か・・・・・
 知っているか・・・・・?」

「あ、あぁ?」

「・・・・アカツキ軍第2部隊第1位エントフィート隊長シルヴァ・・・・・・っ!!
 王者は・・・・・背を向けん・・・・・!」

5人の「勇気」が揃った。そして、狙うはジョーカーただ一人のみ。ジョーカーは苦しみから
開放されて、さきほどと同じく無表情に戻っていた。エクスは、「作戦」の全貌を皆に
明らかにする。

「よし・・・・とりあえず、俺とシルヴァ以外はここから脱出してくれ・・・・・・。
 ちっと・・・・・危険だからな」

「ッ!!・・・や、嫌だよ!エク兄ちゃんを残して、私・・・・・いけないよっ!!
 覚えてるでしょ!?前のこと!!・・・・前は、マリアちゃんがエク兄ちゃんを
 助けてくれた・・・・・けど、今度は・・・・・もう、誰も助けに来れないんだよ!?」

「・・・・このみ・・・・・・もう、マリアはいねぇ・・・・・マリアは、天使になっち
 まったんだ・・・・・。だからよぉ・・・・・その天使に・・・・成長した俺をよぉ・・・・
 見せなきゃいけねぇだろ?・・・・・協力、してくれよ?・・・・・これが・・・・・
 せめてもの・・・・・プロポーズって奴なんだ・・・・・マリアに対しての・・・・・」

「・・・・エ、エク・・・・兄・・・ちゃん・・・・・・!」

「・・・・・シルヴァっ!!3人の逃走経路を確保するために、ジョーカーの気を引くしかねぇ!
 突っ込むぞ・・・・ジョーカーに!!・・・・・お楽しみは・・・・その後だ!!」

「・・・・・・フン・・・・精々、死なない程度に・・・・・・ジョーカーに
 しがみついているんだな・・・・・・エクス・コールド・・・・・」

エクスの策に、ナポリュートの3人はこの部屋にいてはいけなかった。だからこそ、
3人を宮殿の外に移動させるしかなかった。そのために、ジョーカーの気を引くこととなる
エクスとシルヴァ。

「エクスっ!!貴様・・・・・戻ってこいよ・・・・必ず・・・・・・!!
 戻ってきたら、貴様の醜態的部分を、少しでも僕が美に変えてやるんだからなぁ・・・!」

「エク兄ちゃん!絶対、戻ってきてね!もう・・・・もう、自分が死ぬことを考えちゃ
 いけないんだからねっ!」

「エクス!・・・・・今度帰ってきたら・・・・前やれなかった・・・・バーベキュー
 をしよう・・・・・・・待っておるぞい・・・・エクス・・・・ずっとな・・・・・!」

「・・・・・・またな・・・・・皆っ!!・・・シルヴァっ!!突っ込むぞっ!!」

エクスとシルヴァはジョーカーに向かって突撃する。それと同時に、ナポリュートの
メンバー3人は、入ってきた入り口からこの部屋を立ち去る。ジョーカーを押さえている間、
エクスとシルヴァは、ジョーカーの攻撃を受け続けていた。

「ぐっ!!・・・・シ、シルヴァ、も、もう・・・・・あいつら・・・・行ったか?」

「・・・・・行った、な・・・・・・離れるぞ、エクス・コールド・・・・!」

ジョーカーの攻撃に耐えたエクスとシルヴァ。ジョーカーは能力を使わなかった。
二人が、攻撃意思を持っていないのを悟っていたからだろう。そして、ここから、エクスの
作戦は始まるのだ。

「シルヴァ、聞け・・・・!!俺が、光になる・・・・だから、おまえは、
 涙を作れっ!!」

「・・・・・・・言っている意味が理解できん・・・・・・標準語に直せ・・・・・」

「・・・・・へ、へ・・・・・おめぇが、大雨降らして、俺があの野郎に、感電
 させるってんだよっ!!」

「・・・・・・・・・そうなれば・・・・・俺も貴様も・・・・・・ただでは済まんな・・・・」

「・・・・そうだな。だけどよぉ・・・・生き抜いて見せるぜ・・・・生き抜いて、
 てめぇらを・・・・・エントフィートを・・・・・追い抜いてみせんだっ!!」

「・・・・・・・・っフ・・・・・王朝・・・・・エントフィートを抜けると思っているのか。
 奴を倒したら・・・・・俺達は敵同士だ・・・・・・早い者勝ちだ・・・・宝箱は・・・・」

「上等だぜぇ!・・・・・・ハ、ハハ・・・・・ハハハッハ・・・・・」

「何が・・・・おかしい・・・・・?」

「そういや・・・・俺達って・・・・・敵同士か・・・・・忘れてたよ・・・・・・・。
 シルヴァ・・・・・・おめぇーが、1位で・・・・・・良かったよ・・・・・」

エクスの突然の発言に、少々驚くシルヴァ。そう、彼らは「宝石」を奪う目的でこの
宮殿に入り、そしてジョーカーに出くわしたのだ。彼らは敵同士。それに今、気づかされた
エクスは、おかしくなったのだ。

「・・・・・・・シルヴァ・・・・・てめぇのレッド・タイム・・・・・・最強だろ?」

「・・・・・あぁ・・・・・。こいつを倒せばな・・・・・。協力しろ、エクス・コールド・・・。
 世界に・・・・・最強が誰か・・・・・・見せ付けてやる・・・・・!」

「・・・・・へへ・・・・言うじゃねぇか。なら俺は・・・・・!
 誰もがビビっちまうほど・・・・最高の生き様、見せつけてやんぜ!!」


43 :匿名 :2008/02/03(日) 20:07:45 ID:onQHWiL3

〜 Shine and Dark, I vs I その4 〜

エクスの作戦。それは、単純なものだった。シルヴァがレッド・タイムで雨を降らし、
ジョーカーや周りを濡らして、その間に、エクスが電気と同化してジョーカーを感電させる
というものだった。これならば、いくらジョーカーでも回避できないと考えた。

「・・・・エクス・コールド・・・・・始めるぞ・・・・・準備はいいな・・・?」

「おうよぉ!・・・・あのクソったれ野郎に・・・ぶちかましてやろうぜっ!」

「レッド・タイム・・・・!!世界よ、俺のために動け・・・・・!」

そして、半径1km以内の範囲のものはすべて赤く染まる。すべてがシルヴァの
権利のものとなるのだ。そして、シルヴァは作戦通り、大雨を降らそうとする。そんな
二人をジョーカーは無表情で見る。

「吹き荒れろ・・・・雨よ・・・・人の存在をモミ消すかの如く・・・!」

「・・・・・・・ッ!」

「雨が・・・・降ってきやがった!」

さきほどの雷の攻撃によって、天井からは外が丸見えであった。そのため、雨も簡単に
部屋に入ってきていた。ジョーカーは何も知らずに、ただ雨に当たり続ける。
その様子を見て、覚悟を決めるエクス。そして、懐からライトを取り出す。

「・・・・シルヴァ・・・・・わかってんよなぁ?」

「・・・・・・あぁ・・・・・・貴様が放電すれば・・・俺も・・・ダメージを喰らう。
 そして・・・・・貴様もな・・・」

「・・・・・なら、もう覚悟はできてんだろうな?意地、見せろよぉ!シルヴァっ!!
 電気と同化っ!!」

「・・・・・・・ッ!!」

「・・・・ジョーカー!!・・・・覚悟しやがれっ!!」

エクスが、放電を開始する。電気と同化し、その電力を一気に外へ解き放つ。その放電は、
ジョーカーにも、シルヴァにも、そして、エクスにも危害を加えていた。いや、危害が
一番大きいのはエクスかもしれない。

「うぉおおおおお!!(ま、まだだっ!!まだこれぐらいじゃ、あの化け物はくたばらねぇ!!
 けど・・・けどよぉ・・・・・あと・・・・・数十秒も続けてたら・・・・・・・
 俺も・・・・・電力が上がりすぎて・・・・・・消滅しちまうっ!!!)」

「ぐぅ!!っく・・・・!!(あいつ、やはり能力者か・・・!!
 それにしても・・・・・これは・・・・・少々・・・・・・キツイ、な・・・・・!!)」

「・・・・ッ!!!」

ジョーカーも確実にダメージを受けていた。やはり、ジョーカーの未知の能力もこの攻撃には
太刀打ちできなかったようだ。感電し、苦しんでいる。しかし、それはエクスもシルヴァも
同様。ほとんど、我慢比べである。

「うあぁああああああ!!(や、やべぇえ!!・・・・も、もう・・・・・・・
 俺の・・・・体が・・・・・耐えられなく・・・・・・なってきてやがる・・・・!!
 体が・・・・・熱いぃい!!!)」

「ぐぅぁあ!!(意識を・・・・・保つことすら・・・・・難しく・・・・・
 なってきた・・・・・・・俺は・・・・・エントフィート・・・・・隊長・・・・・・
 王者・・・・・・シルヴァだ・・・・負けるわけ・・・・には・・・・いかん・・・!)」

「・・・・・・・・・・が・・・・う・・・・・ッ!」

「ッ!!はぁ、はぁ、はぁ・・・・・ジョ、ジョーカーの野郎の・・・・・動きが・・・・
 止まっ・・・・た・・・・・・」

ついに、二人の努力が実る。ジョーカーの動きが止まる。いや、正確に言えば、意識を
失ったのである。チャンスはこれしかない。この機に宝箱を奪わなければ、
2度と、チャンスは巡ってこないだろう。しかし・・・・・。

「く、くそったれがぁあ!!・・・・・あ、足が・・・・・・体が・・・・・・
 言うこと・・・・・・きかねぇ・・・・・!!せっかく・・・・・せっかく・・・・
 ジョーカーを・・・・・足止め・・・・・・したってのに・・・・・!!
 もう・・・目の前には・・・・・栄光しか・・・・・見えてねぇってのによぉお!!!」

「・・・・・・・ざ、残念・・・・・だった・・・・な・・・・・。
 王者は・・・・・・エントフィートだ・・・・!!
 ・・・・・それは、絶対なのだ・・・・・勝者は・・・・・・・・俺だっ!」

「っく!!(シ、シルヴァの野郎が・・・・動き・・・・出し・・・・た・・・・。
 ・・・・・・・皆・・・・ごめん、な・・・・・・1位っつう夢・・・・・・
 果たせそうに・・・ねぇや・・・・・・・・・・・・・)」

・・・・・・・・・ヒュゥ・・・

「(?・・・・・・・風が・・・・・吹いている・・・・?)」

動いたのは、シルヴァ。エクスは、放電するのに力を使い果たし、すでに力尽きていた。
しかし、シルヴァはそれでも意地を見せ、ボロボロになりながらもゆっくりと
階段を上っていく。そして、ついに宝箱の目の前まで来る。

「・・・・ついに・・・・・・来た・・・・・・・・。これで・・・・すべてが・・・・
 終わる・・・・・・・残念だった・・・な・・・・・ナポリュート・・・・・」

・・・ヒュゥウ・・・・

「・・・・・良い風、感じたかよ?シルヴァ・・・・!!」

「ッ!!な、何っ!!(こいつ、いつのまに俺の真後ろに・・・・!!)」

「風との同化だぁあ!!シルヴァ!てめぇにだけは・・・・・おまえぇにだけは・・・・・
 負けられねぇんだ!!・・・・・一位になって・・・・・生きて帰るんだっ!!
 皆の元に!!」

「・・・・・・ッフ・・・・・・・最後まで・・・・・あっぱれな奴だ・・・・」

・・・ゴソッ

「・・・ホウ・・・・・・ティス・・・・」

「ッ!!エクスっ!!後方にジョーカーが・・・・!!」

「な、何だとっ!?バ、バカなっ!!もう・・・・目覚めやがったのか!!」

すでに、意識を取り戻し、エクスの真後ろに接近していたジョーカー。しかし、宝箱は
シルヴァの目の前。ここで、シルヴァがエクスを生贄にすれば、必然的にシルヴァは
宝石を奪還できる。

「(マ、マズい!!・・・・・シルヴァの野郎に・・・・・宝石を・・・・・ 
 とら・・・・れる・・・・!!)」

「・・・・・・プレス・・・・・ティス・・・・!!」

「う、うわぁああああ!!(し、死んじまうっ!!)」

「・・・・・・・・・王者は・・・・負けることなどゆるされん・・・!!」

「ッ!?シ、シルヴァ!?」

シルヴァは、ジョーカーに突っ込んだ。そして、ジョーカーと共に、階段を転がり落ちる。
そう、シルヴァは自分のプライドを選んだのだ。エクスを守り、宝石を犠牲にしてまでも、
シルヴァは自分の「最強」という誇りを守ることを選んだ。

「シ、シルヴァっ!!て、てめぇ・・・・何やってんだ!!何で・・・俺を助けたっ!?」

「・・・・・俺は・・・・・エントフィート隊長・・・・・シルヴァだ・・・・・!!
 王者は・・・・・王者のままでいなければ・・・・・ならんのだ・・・・・!
 これが・・・・・・・俺の・・・・・誇りだ・・・・・・!!」

「・・・シ、シルヴァ・・・・・・!!」

「・・・・・最・・・後の・・・・・力を・・・・・絞り・・・・出す・・・・!!
 レッド・タイムっ!!・・・・・・・世界よ・・・・俺の・・・・命令に従えっ!!」

再び、「レッド・タイム」によって半径1km以内のものはすべて真っ赤に染まる。
ほとんど、間髪いれずにレッド・タイムを使った。傷ついたシルヴァの体には、
負担が大きすぎた。

ゴォオオオオオオオ!!

「な、何だ!?・・・・・宮殿が・・・・崩れる・・・・・!?」

「ッ!!・・・・エクス!!・・・・・ジョーカーが・・・・!!」

・・・ザッ・・・!

「・・・・・ジャスティス・・・・!!」

「!?(いつのまに・・・・俺の目の前に・・・!!)
 うぐぅううっ!!」

ジョーカーのパンチが、エクスの腹部に当たる。その場で、意識を失うエクス。この土壇場に
来て、エクスは力尽きる。その瞬間、ナポリュートの栄光も消えるのであった。しかし、
シルヴァはあきらめなかった。

「・・・・・渦となり、砂よ・・・・・標的は3つっ!・・・・・ジョーカー・・・・・・
 エクス・・・・そして、宝だ・・・・!!」

「・・・・・・ッ!!」

「・・・・・・意識を失ったのか・・・・エクス・コールド・・・・・・・・
 砂よ・・・・・・エクスと宝を・・・・・・外に運べ・・・・・!!」

すると、シルヴァが操る砂がジョーカーの身動きを封じ、エクスと宝箱を天井の穴が開いた
部分から外へと運んだ。そして、残ったのはシルヴァとジョーカー。崩れ行く宮殿の中で、
残された二人。
ゴォオオオオオオオオ!!

「・・・・・宮殿が・・・・・崩れる・・・・・か・・・・・・・・・。
 任務・・・・・完了・・・・・・・だ・・・・・・・」

ドゴォオオオオオオオン!!
こうして、宮殿は崩れた。シルヴァ、そして宮殿が作ったジョーカーと共に。宝石と
エクスは無事に脱出できた。シルヴァによって。この任務の勝者は誰なのだろうか?
エントフィートなのか?ナポリュートなのか?それは、どちらでも良かった・・・・・。


そのころ、アカツキ軍本部では、重大なことが話されていた。そう、もう残っていない。
これ以外は、残っていないのだ。アカツキは一人、自分の部屋でその時を待つ。
そして、決断を決めるのであった・・・・・。

「・・・・・トランプスとの戦争の・・・・・開幕、だな・・・・・・!」


44 :匿名 :2008/02/10(日) 20:11:49 ID:onQHWiL3

〜 静寂の彼方の、熱き殺意  〜



時は満ちた。ついに、開戦するアカツキ軍対トランプス。過去に一度、アカツキは反旗を
起こし、トランプスを後一歩の所まで追い詰めた。その経験を踏まえ、今回の戦争へと
すべてを賭けてきたアカツキ。エクス・コールド主人公の最終章。主人公は主人公の役目を
遂げることができるのだろうか・・・・?


ここは、アカツキ軍の本部。今、重要な会議が開かれている。周りに各部隊のトップの
隊長が並び、その最善席にアカツキが堂々と座っている。今から、おおよその戦争の
説明をするようだ。

「全員、集まったな。VeryGood!・・・・さぁ、本題に入ろうか。トランプスとの
 最終戦争について・・・・・」

「質問があります」

「・・・何かな、第7部隊隊長さん?」

「・・・・皆も知りたがっています。第2部隊エントフィートのシルヴァはどうなって
 いるのですか?報告によれば、+Aランクの任務後、隊員を残していなくなったとか・・・・。
 彼は全部隊中、もっとも権力を握っている。戦争を前に逃走など考えられませんが・・・」

「・・・・・彼は任務を自分の命と共に成功させた。俺の所にもまだ詳しい内容は
 伝えられていないが、確か・・・・他のチームのメンバーを助けたとか・・・・・
 About・・・・だけど、俺はそう聞いている」

「あのシルヴァが・・・・他のチームを助けた?フン、バカな」

「それでは、本題に入るぞ?まず、おおまかな説明から入る・・・・・」

この本部で話されたことは、数時間後、書類となって各部隊の各チームに配布された。
それは当然、「ナポリュート」のところにも。今、ナポリュートはとても危険な状況に
陥っていた。それは・・・・。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・エク兄ちゃん・・・・・・起きないね・・・・・。あの時、シルヴァさんの
 砂に運ばれて以来・・・・・目をつぶったままだね・・・・・・」

「・・・・あぁ。このみ、そろそろ休め。さきほどからエクスの看病をしているだろう?
 このみは内面も美だが、外面も美にならなければいけない。だから、少し休むんだ」

「だ、だって!リオーゼ、一睡もしないでエク兄ちゃんの看病してたんでしょ!?
 リオーゼこそ休まなきゃ駄目だよ」

エクスは、ジョーカーの一撃によって、意識を回復できずにいた。今日で、4日目。
いくら気絶にしても、時間がかかり過ぎだ。もしかしたら、何らかの障害を持って起きる
かもしれない。その時、部屋に流厳が訪れる。

「あっ!・・・・隊長、おかえりっ!」

「うむ。・・・・・今、アカツキ軍の本部から、全チームに極秘書類が配られた・・・・。
 その意味が、わかるの?このみ、リオーゼ」

「・・・・当然、美の如く理解できます・・・・・戦争ですね・・・トランプスとの」

「そうじゃ。それより・・・・・エクスの容態はどうなんじゃ?」

「・・・・駄目なの。まだ、全然起きる気配もないの・・・・・」

「そう、か・・・・。これで、ワシらが12位に降格したのを知ったら、また気絶して
 しまうかもしれんのぉ」

結果、ナポリュートは任務に失敗した。シルヴァの操る砂と共に救出されたエクスと宝箱。
しかし、流厳はそれを自分の手柄にすることは無かった。シルヴァの命をかけた任務の
執着心に、敬意を表していた。だから、エントフィートに成功を譲ったのだ。

「とにかく、全面戦争でのワシら、ナポリュートの役割を説明するぞぃ。ワシらは
 第二派陸上突撃部隊に参加することになっておる。第一派が出撃したのを見計らって、
 ワシらは出撃する・・・・・」

「第二派、ですか・・・・・。しかし、アカツキ軍の劣勢はやはり隠せませんね。
 恐らく、第二派で終わりですね、アカツキ軍は。各地に広がっているアカツキ軍の兵を
 集めても・・・・・トランプスという巨大組織の・・・・まだ、20分の1程度か・・・・」

「じゃが、ワシらは勝たなければいかんのじゃ!ワシらは、この時のためにアカツキ軍に
 入った。これを成功させなければ・・・・・これを達成しなければ、ワシらのやってきた
 ことに意味はないのじゃ!・・・・・覚悟はできておるの?二人共」

「・・・・できています、と、言いたい所ですが・・・・・っく、エクスめ・・・・。
 こんな肝心な時に・・・・!!」

「・・・・・・・・・」

「エク兄ちゃん・・・・・おねがいだから・・・・・目を覚めて・・・・・」

ナポリュートは陸上部隊に参加となった。つまり、最前線で戦うこととなるのだ。当然、
死亡する確率は高い。けれども、逃げ出すわけにはいかなかった。3人とも、無理にでも
覚悟をするしかなかったのだ。

そのころ、トランプスはどうなっているかと言うと・・・・。トランプスのキング達は
ハートの本城へと集結していた。ハート、アレキサンダー。スペード、ダビデ。
クラブ、カール。ダイヤ、カエサル。4人全員が集合したのだ。

「ダビデ、カール、カエサル。この度は、ハートの領地へようこそ・・・・・・。
 と、まぁ・・・・そんな下らない話は良しとして・・・・・それぞれの国の対処法を
 お聞かせ願おうか?・・・・・アカツキ軍との戦争についての・・・・」

「ではまず、スペードから。とりあえず、我々は昔、アカツキに痛い目を見た前例がある。
 今回は俺からも全面支援する。スペードのほぼ全勢力を注ぎ込もう」

「じゃぁ、僕の番。ダイヤはねぇー。うーん、と・・・・・。前、ジョーカーのことで、
 色々とモメただろ?僕んとこの国民がそれで面倒なことになってるんだよぉ。
 ジョーカーの次はアカツキかっ!・・・って。だから、半分くらいしか送れないなぁ」

「ク、クラブの、た、対応はぁ・・・。え、えぇ〜とですねぇ・・・・・。
 と、とりあえず・・・・全面支援という形でですねぇ・・・・お、応援、しようかなぁって」

「良し、決まったな。それでは、スペードとクラブはすぐに勢力をハートに集結
 させるように。ダイヤは多少、遅れてもいいが、戦争には間に合わせてくれ。
 無論・・・・・各国のトランプス幹部は・・・・・集結させるようにね・・・・・」

そのアレキサンダーの一言には大きな意味があった。「幹部」を集結させる。すでに、
この時点で油断は一切ないのだ。それどころか、アカツキ軍の残党も残さずに消滅
させる気なのだ。トランプスの準備は万全。アカツキ軍は本当に勝てるのだろうか・・・?

そのころアカツキ軍では、放送により、アカツキの宣戦布告がされようとしていた。
各チームに配給されたラジオに耳を傾ける。その中にはナポリュートも無論、存在していた。
静かに放送を聴く3人。

「な、なんか、ワクワクするね!隊長、リオーゼ!!」

「い、いや、このみ・・・・興奮する場面を間違えているぞ。ただ、アカツキから
 戦争の宣言を聞くだけだ」

「じゃが、その宣言で、やる気を起こさなければ意味がないんじゃがな」

「ピーガガ・・・・・聞こえているでしょうか?こちら、アカツキ軍、総大将、アカツキ。
 もうトランプスにも知られているとは思うが、今はまだ極秘なので、皆でガヤガヤ集まって
 宣言することはできないことをまず、お詫びする・・・・・」

「ッ!!放送が始まったぞぃ!このみ、リオーゼ!」

アカツキが流す放送が始まる。それは、この戦争の意気込み、宣戦布告、演説、すべての
意味が含まれていた。皆、アカツキを信じて、この軍に所属してきた。そのアカツキが、
声でも皆の前に出すのは珍しいことなのだ。

「・・・・皆もご存知の通り、戦争が始まる。ハッキリ言うと、劣勢だ。トランプス
 の奴らが10だとすると、もう俺達は存在しないだろうな・・・・・・。
 ならば、戦う意味があるのか?・・・・そうだ、あきらめよう・・・・・・・。
 そう思う決断が、10年後の我々の子供達に、夢を、希望を奪いとるのである!」

「・・・・・ほぉ」

「戦う時は、いつだって今なのであるっ!数が多ければ、俺達は劣勢なのか?いや、違う!
 それは、俺達は数などでは勝負していなからであるっ!俺達は、戦う!一人、一人が
 戦士であり、勇者である!・・・・・何処に、劣勢の点がある?俺には、優勢という文字しか
 見えてこないのであるっ!!」

「・・・・(これが、アカツキ・・・・。声ですら、初めて聞く。これほど、情熱的に
 美の炎を燃やす男だったとはな・・・・・)」

「皆、立つのだっ!剣を振るのだっ!俺達に、用意された明日は無いっ!!
 明日の朝日、明日の月を奴らから奪いとるのだっ!俺達は、すべてをトランプスから
 勝ち取ってみせる!・・・・奴らを裁くのは、我々であるっ!!
 皆・・・・・反旗を胸誓えっ!・・・・・自身の正義を・・・・自身の血で勝ち取るのである!」

アカツキの宣戦布告の宣言。それは、アカツキ軍全体に響き渡った。アカツキ軍の
兵、一人、一人の心に。そう、もう戦うしかないのである。「勝利」以外は、必要とされて
いない。そして、放送は終わる・・・・。

「・・・・う、む。やはり、頭という地位に就く者は、こういうところで観衆を
 掴まなければいけないのじゃのぉ」

「・・・・・・中々の演説でした。彼の心に美を感じました。しかし、本当に美を感じさせて
 やりたい奴には・・・・・届いていないようですが・・・・・」

「・・・・エク兄ちゃん・・・・・もう・・・・戦争、始まっちゃうよ?
 エク兄ちゃんには死んで欲しくないけど・・・・・一緒に・・・・戦って・・・・・
 勝ちたかったよ・・・・・・」

「・・・このみ、エクスは起きる。必ず、起きるさ。あのバカが・・・・・
 起きないハズがない・・・・・。そう、絶対・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

前夜が終わる。それは、ほぼ戦争の開戦を意味していた。いつでも、戦争の準備は
できている。アカツキの思想には、トランプスが勢力を結成する前に仕留めたいという
気持ちがあった。果たしてエクスは、目を覚ますことができるのだろうか・・・・。


45 :匿名 :2008/02/17(日) 20:11:50 ID:onQHWiL3

〜 終焉の開始、始まりの刻に  〜

戦争の準備は整った。後は、トランプスに挑むだけ。距離的に、攻め立てる国は
「ハート」と決まっていた。だからこそ、ハートのアレキサンダーも各国に自国に集まれと
言ったのである。しかし、そんな中でも、エクスは一向に目覚める気配は無かった・・・・。

コンコンッ

「ん?こんな夜に誰じゃ?このみ、ちょいと見に行ってくれんかのぉ」

「うん、わかった。じゃぁ、隊長。エク兄ちゃんの様子見ててね」

「うむ、わかったぞぃ」

アカツキの宣言が終わり、数時間後。もう、ナポリュートも就寝に入ろうとしているのだが、
誰も寝ようとしなかった。それも、これもエクスのためである。いち早く、エクスに復帰
して欲しいという一心で、3人は寝る間もおしんで、エクスの看病をする。

「はいは〜い。誰ですかぁ〜?」

「・・・・すまないね。こんなDarkな夜にお邪魔してしまって。紹介がまだだったね、
 俺の名はアカツキ。ちょっと用があって、ここにきたのだが・・・・」

「え!?あ、えーと、その、う〜んと・・・・・・・た、隊長っ!!は、早く来てっ!!
 ア、ア、アカ・・・・アカツキさんが来てるのっ!!」

「ホッホッホ、このみ。総大将のアカツキがこんなチッポケなところに来るわけが
 無いじゃろう。そもそも、今は作戦などで忙しい・・・・・・・な、なんじゃぁとぉお!!
 ア、アカツキさん!!」

突然の来訪者、それは、アカツキ軍のトップ、アカツキだった。赤い髪をたなびかせて、
隊長とこのみに軽い礼をすると、すんなりと部屋に入ってきた。驚きで、呆然とその場に
立ち尽くす流厳とこのみ。

「へぇ、チームの部屋とはこういう構造になっているのか・・・・・。
 長年、軍の頭をやっているが・・・・じっくり観察するのは初めてだよ・・・・・。
 まぁ、あまりBeautifulとは言いにくいけど・・・」

「あ、あ、あの〜。アカツキさんが、ナポリュートに何の用件があるんですかのぉ?」

「あぁ、そうか。言って無かったね。エクス・コールドの様子を見に来た。彼は今、
 何処にいるんだい?」

「・・・・そ、それが・・・・・」

流厳が言いにくそうな顔をして、アカツキから顔をそむける。アカツキは不審に思った。
するとその時、ドアからリオーゼが入ってきた。どうやら、さっきまでの会話は
すべて聞いていたらしい。

「エクスは意識を失っています。ジョーカーに攻撃をくらい、今だに意識を回復できずに
 いるんです」

「ほぉ・・・・。確か、君はリオーゼ・トラフィクト君。君達が知っているかどうか、
 知らないけど、とりあえず言っておこう。エクス・コールドは32代目の主人公だ」

「ッ!!(や、やっぱり・・・・・・エク兄ちゃんは・・・・・・・)」

「君達に預けたのは失敗だったのかな。途中までは、正解だと思っていたのだがね・・・・。
 彼にはあまり危険にさらしたく無かった、だから君達のチームに預けた。
 こうなるなら・・・・初めから、エントフィートにでも預けていれば良かったのかな」

「そ、そんなっ!・・・・エ、エク兄ちゃんが・・・・私達の所に・・・・・・
 いちゃいけないって・・・・・・・」

「俺は重要な要素を二つも失った。まず、主人公、エクス・コールド。そして、エントフィート
 隊長、シルヴァだ。どれも、君達が関わっている・・・・・・。別に、罰を与える
 わけじゃないけど・・・・・反省はしてもらいたいかな」

アカツキの言葉に、戸惑いを隠せない3人。確かに、エクスを重症にいたらしめたのも、
シルヴァを失ったのも、元をたどれば、自分達の至らない点が多かった。アカツキはそれを
見抜いて、3人にキツく言った。そして、部屋から出ようとする。

「エクス・コールドを戦争までには間に合わせてくれよ・・・・。主人公がいなければ、
 圧倒的不利は隠せない」

「・・・・フフ・・・・・ハハハッハッハッハ!!」

「リ、リオーゼ?・・・ど、どうしたの?」

「・・・何が・・・可笑しいんだい?・・・リオーゼ・トラフィクト君」

「エクスが居ないと勝てない?シルヴァがいなくなったら不利?まったく、笑わせてくれますね、
 アカツキ。僕達は、エクスの主人公の力に頼ってここまで来たんじゃない!!
 エクスがいて、このみがいて、隊長がいて、初めてナポリュートは強くなるっ!」

「・・・・・それが・・・・どうしたんだい?」

「エクスを戦争のために、あなたのために利用などさせないっ!エクスは、あなただけの
 主人公じゃないんだ。この世界の人々のための主人公なんだ!そんなエクスを、
 汚れた戦争などで、血まみれにすることなど無いっ!」

「・・・そ、そうだよっ!私達がエク兄ちゃんと過ごした日々は、意味があるもん!
 皆で笑い合って、戦って、くやしがって・・・・。いっぱい、いっぱい思い出が詰まってる
 んだもん!エク兄ちゃんがここに来たのは・・・・・間違いなんかじゃないもん!!」

いつの間にか、涙を流しているこのみ。リオーゼは「アカツキ」にたてついた。それは
恐ろしいことであった。それを知っていながらも、リオーゼは黙ることができなかった。
それを聞いていた流厳も黙っているわけにはいかなかった。

「・・・と、いうわけじゃ、アカツキさん。確かに、エクスやシルヴァはワシらのせいで
 失ったかもしれん。しかしのぉ・・・・・二人の意思は、ワシらが受け継いでおる!!
 戦争も、きっと正しい者が勝つのじゃ。力が真実に到達することは、無いのじゃよ」

「・・・・・・・言ってくれるね、ナポリュート諸君。その言動、戦争の時に、
 存分に証明してくれると良いね。それじゃぁ・・・・・Seeyou・・・・」

そう言うと、アカツキはナポリュートの部屋から去っていく。アカツキ自ら、各部隊の
トップチーム以外の、それも隊長以外の兵士と直接会うことなどまず不可能なのだ。
それでも、3人は、そのアカツキの言動に意を反した。

「・・・・・やはり・・・・エクスは・・・・主人・・・」

「リオーゼっ!・・・・それ以上、言っちゃ駄目。エク兄ちゃんは、
 エク兄ちゃんだもん。だって・・・・それ以上言ったら・・・・なんか・・・・・
 エク兄ちゃんが・・・・遠い存在に思えちゃうよ・・・・・・」

「・・・・そういえば、エクスは・・・。何かと、誰かを守ろうとしていたな・・・・。
 最初の任務の時、皆が反対している中でも、自分が主人公だから皆を守ると主張し・・・。
 ナポリュートに+Sランクの任務が入ってきた時も、無関係な人々を守るためにと、賛成した」

「今思えば・・・・不思議な存在じゃったのぉ。突然、現れて・・・・ホッホ・・・・
 エクスに巻き込まれて、ワシらも勢いづいてしまったんじゃのぉ・・・・・。
 ナポリュートは・・・・・4人で初めてナポリュートじゃったんじゃなぁ・・・・・」

「エクス・コールド」。彼は、確かに「主人公」であることを責任と感じていたが、
決して自慢や慢心に溺れることは無かった。ただ、彼は、「主人公」の意味を、人々を守る
ためと純粋に思い、今という現状にいたってしまったのである。

・・・そして・・・・・・・

そして、時は過ぎる。まだ、日は昇らない。しかし、そんな光の当たらない大地を
動めく存在が。それはまぎれもなく、人の波。人の大地。人の揺らめき。誰にも気づかれない
ように、ひっそりと巨大な塊が動く。その時、ナポリュートは未だ、アカツキ軍の内部にいた。

「えぇ〜!!こんな鎧着るのぉ!?」

「すまんのぉ、このみ。このみ用のサイズが用意されてないのじゃ。我慢しとくれ。
 リオーゼ、準備はいいかのぉ?」

「はい、準備はできています。もう第一派は出撃したようですね。もう後、2、3分も
 すれば僕達も集合をかけられますね・・・・・・。それより・・・・・・
 どうしますか?エクス・・・・・」

「う、む。結局・・・・戦争まで、目覚めることが無かったのぉ。ここにそっと寝かして
 おくのが一番じゃろう」

戦争が始まる。ついに、その時が来たのだ。皆、配給された鎧を装着して、戦に出陣できる
用意をする。しかし、結局、エクスは目覚めなかった。今もまだ、意識を失ったままである。
そんなエクスを残して、出撃しようとするナポリュート。

「よし、行くぞぃ!!このみ、リオーゼっ!!」

「ちょ、ちょっと待って!!隊長。エク兄ちゃんに・・・・エク兄ちゃんに、挨拶
 してくる!」

「・・・・このみ、僕からも・・・・・寝すぎだ、バカめ・・・・と、言っておいてくれ」

「うん!!」

このみは一人、エクスの部屋に入る。エクスは依然、変わらずに眠った状態である。
生きてはいるのである。別に死んでいるわけではない。そんなエクスの隣に来て、
エクスを見つめるこのみ。

「エク兄ちゃん・・・・・戦争がね、始まっちゃうんだ。私達ね、第2派なんだよ!
 最初の人達が行った後に、行くんだよ!・・・・・・・・エク兄ちゃん・・・・・・
 安心して・・・・・怖くないよ・・・・私・・・・・。・・・・嘘、怖いの・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「また・・・・必ず・・・・戻ってくるからね。・・・・・その時は・・・・・
 もう一回・・・このみと・・・・ハハッ・・・・・隊長に隠れて・・・・お菓子、食べようね。
 ・・・・・・・・・・バイバイ・・・・エク兄ちゃん・・・・・・・ちゅっ」

このみは、エクスのおでこにキスをするとその場から去る。エクスは起きない。
そして、始まるのだ。トランプス対アカツキ軍の全面戦争が。アカツキ軍、攻める。
果たして、トランプスはどうなっているのだろうか・・・・。

「・・・・フフ・・・・・Great!!・・・・・今日は最高の日だ・・・・・。
 さぁ・・・・トランプス・・・・・・戦争の始まりだぜっ!!」
 


46 :匿名 :2008/02/24(日) 20:07:43 ID:onQHWiL3

〜 開戦、第二次トランプス戦争 その1  〜

戦争開幕。アカツキ軍、第一派、トランプス「ハート」の本城を目指して進行中。
恐らく、トランプスもその動きについては情報が届いているだろう。遅れて第二派、
進行中。未だ日は昇らず、しかし、日が昇らないまま戦いは始まるだろうと思われた。


そして、アカツキ軍第一派、作戦予定地に到着。ハートの本城は、目に見えてる場所に
ある。アカツキ軍第一派は、綺麗に並んで指示を待つ。手には剣、盾、拳銃、斧、など
様々なものを所持していた。そして、馬に乗ったアカツキがその列の先頭に移動する。

「皆ぁー!!見えるかっ!?・・・・おまえらには、あの城が見えるか!?・・・・
 あれが、俺達の未来だっ!!あれが朽ち行く時、世界は初めて成すべき動きを開始するの
 であるっ!!」

「うぉおおおおおおお!!」

「・・・・・そう、偉人はいつも言う!命はたった一つ、それを守りぬけと!!・・・・
 だが、俺はあえて言おう!!・・・・・死ぬのが一回なのだっ!ならば、その生命とやらを、
 一回きりの死という奴に、思い切りぶつけてやろうじゃないかっ!!」

「うぉおおおおお!!!」

「道は見えているっ!!後は、渇き声を上げ、血を流し、泥に塗れ、そして・・・・・
 勝利を掴み取るだけだっ!!・・・・さぁ・・・・・時は満ちたっ!!・・・・
 裁きを下すぞ、トランプスにっ!!全軍・・・・突撃ぃいい!!!」

「おぉおおおおおおおお!!!!」

アカツキ軍、第一派、トランプス「ハート」の本城に向かい、攻撃開始。アカツキは
それを後方で見守る。激しい地鳴りと、砂埃が、あたりを一蹴する。静けさなど、まるで
感じられない。ただ、戦う者達の熱意しか飛び交っていなかった・・・・。


そのころ、トランプスのハートの本城では。すでに、兵隊を用意できていた。その数は、
アカツキ軍の約20倍。普通の兵隊で、20倍なのだ。これに、能力を備えたトランプス幹部が
加われば、もう鬼に金棒状態である。

「ついに・・・・来たか・・・!!ダビデ!カール!カエサル!!そちらの方の軍の
 準備はいいな!!」

「スペード、ダビデ。特に問題無し。だが・・・何処の国も、トランプスの幹部はいまだ
 一人も到着していない。皆、任務を真っ当しているところだ。来るとすれば、中盤
 ごろになるぞ!!」

「かまわん!!数では勝っている!第一派をクラブとダイヤの陣営とする!第二派を
 ハートの軍、第3派をスペードとする!!第一派、位置に着けぇ!!」

トランプスの兵の数はまさに地面すら見えないほどの大波。クラブとダイヤの
兵士達が、攻めて来るアカツキ軍を迎え撃とうと待機する。目の前にはすでに、
雄叫びを上げて攻めてくるアカツキ軍が見えている。

「フフッ・・・・アカツキ・・・・もうおまえには主人公の力が残っていないという
 ことを思い知らせてやるわ・・・・・」

「アレキサンダー!僕の方、つまりダイヤの兵隊の数なんだけどさぁ!予定のまだ3分の2ぐらい
 しか到着していないっ!第一派だと、今、こっちに来ているアカツキ軍の兵士より
 少ない!」

「第二派はすぐに出撃させるっ!!準備を整えておけ!他に、何か言うことはは
 無いな!?クラブ!」

「え!?・・・・と、とりあえず・・・・何も・・な、無いかな・・・・・
 そ、その・・・・・幹部が・・・・来ていない・・・・だけで・・・・・・・」

「良しっ!もう、アカツキ軍が目の前か・・・・・。弓矢部隊、構えろっ!!・・・・・
 さぁ・・・・・開戦よ・・・・アカツキ・・・!!・・・・放てぇーーーー!!!」

こうして、この日。トランプス対アカツキ。第2次トランプス戦争が始まったのである。
空一面に弓矢が舞う。そして、飛ぶ力を失くした弓達は、一斉に下を動めくアカツキ軍に
向けて急降下するのである。

「弓が来るぞぉーーー!!盾を構えろーー!!」

「うぐっ!!」

「っく!!」

「うわぁああああ!!!」

大量の弓矢がアカツキ軍の兵士達の命を奪っていく。しかし、それでもアカツキ軍は
進みのを止めない。ハートの本城へとかまわず、前進していく。それを見たアレキサンダーも
次の対応を取る。

「弓矢部隊、下がって良い!!・・・・これからは、泥沼戦だ・・・・・・・!!
 皆、武器を持てっ!!迎え撃つぞぉおーーーー!!」

「うぉおおおおお!!!」

その圧倒的な数に、アカツキ軍の兵士達も、一瞬顔色をにごす。しかし、彼らの決意は
硬かった。本城から出てくる何十万ものトランプス兵士達。そして、来る者と、守る者とが
お互い、衝突する。

「Good!!・・・・・いよいよ、衝突か・・・・!!」

「フフ・・・・・激突するわ・・・・!!」

「うぉおおおおおおおお!!勝利は、アカツキ軍だぁあああ!!」

「おぉおおおお!!蹴散らすぞ、俺達はトランプス軍だぁあ!!」

衝突。アカツキ軍とトランプス軍の第一派が衝突する。お互いの正義を信じ、剣をぶつける両者。
怒涛の如く、歓声と血が飛び交う。まさに、波と波がぶつかるような衝撃音をかもしだす
ように。それを後方から見守る、第二派突撃部隊こと、ナポリュート。

「どうやら、第一派がトランプスと戦闘を開始したようじゃのぉ。ワシらの番が
 回ってくるのも時間の問題じゃな」

「・・・・・隊長!やはり、今からでも遅くはありません!このみだけでも、
 逃がすことはできないのでしょうか!?これは、美のある判断ではありません!」

「・・・・ううん!リオーゼ、私、戦うの!・・・・これまでだって、一緒に戦ってきた。
 大丈夫だよ・・・・隊長がいて、リオーゼがいて・・・・そして、エク兄ちゃんがいて、
 マリアちゃんもいる・・・・・・私、皆のしてきたこと・・・・信じたいの!」

「・・・・こ、このみ・・・・・・。僕にはそれが、美の求める正解か、醜態がさらす、
 不正解なのか判断できない。けれど、このみ・・・・君がもし、それを信じているのなら、
 それは、真実だ。正解ではないけれど、真実ではある。・・・・・わかったよ、このみ」

「第二派ぁーーー!!!戦闘の準備をしろぉーーー!!」

号令がかかる。第二派は、第一派のおよそ3分の2程度。しかし、それでも見る限りでは
それなりの数はいた。そして、ついにナポリュートも戦争に参加するときがきたのだ。
剣を持ち、前を見つめる。

「・・・・・・リオーゼ、このみ・・・・ワシは・・・・・駄目な隊長じゃったのかもしれん。
 しかしのぉ・・・・そんな駄目な隊長の最後の命令・・・・・聞いてくれんかのぉ」

「だ、駄目だなんて・・・。あなたがいなければ、僕達はここには存在していませんでした。
 あなたに何度命を助けられたことか・・・・・」

「そうだよっ!隊長は、サイコーの隊長だよっ!!」

「・・・・すまんの・・・・・皆・・・・。最後の命令じゃ・・・・・・・・。
 この戦争に勝った晩は・・・・・皆、強制的にパーティに参加じゃ!!・・・わかったかのぉ?」

「・・・・・・あなたの部下で良かった、隊長・・・・・・・。
 命令・・・・・・必ず果たして見せます・・・・・・!!」

「・・・・う・・・うぅ・・・・・な、涙・・・・出ちゃうよ・・・・隊長・・・・。
 う、うん!!・・・・・・絶対・・・・・出席するからねっ!」

「第二派、突撃開始ぃいいーーーーーー!!!」

「行くぞぃ!!このみ、リオーゼっ!!」

そして、何万という人々の群れに紛れて、ナポリュートもまた第二派として戦争という
大きな渦に巻き込まれていく。そのころ、トランプスのキング達は、悠々と本城の
ベランダから戦争の様子を見ていた。

「アレキサンダー。アカツキ軍が第二派をもう投入してきたぞ。こちらも応戦しなければ、
 押し負けるぞ!」

「そうね・・・・。けれど、もう少し、もう少しよ・・・・。まだ、第二派を出す
 のは早いわ。情報によれば・・・・アカツキ軍には、主人公がいるみたいじゃない。
 もしかすると・・・・初代主人公アカツキ。行方不明の31代目の主人公、今だ
 詳細不明の32代目主人公・・・・・この3人がいる危険性があるわ」

「っ!!・・・・しゅ、主人公が・・・・3人だと!?バカな、もし、現実に
 そんなことがあれば・・・・・。アレキサンダー、我々は・・・・堕ちるぞ・・・・!」

「心配ないわ、ダビデ。そのための、私達・・・・キング4人が集結しているのよ・・・・。
 主人公の最大の敵は、ジョーカーでもなく、トランプス・・・・トランプスのキングなのよ。
 そのキングクラスが早々と負けるわけなど・・・・運命がゆるすはずないわ」

「・・・・・だと良いがな。・・・・・時に運命は、気まぐれをおこす・・・・・。
 運命とやらは・・・・・・99%のどん底を与え・・・・そして、1%の勝利をもたらす・・・」

数では優勢。しかし、やはりトランプスも「主人公」の存在を考えると焦らずには
いられなかった。主人公3人、アカツキ、東城・怜、エクス・コールド。果たして、この3人が
トランプスキングの4人の目の前に現れることはあるのだろうか・・・。


47 :匿名 :2008/03/02(日) 20:17:22 ID:onQHWiL3

〜 開戦、第二次トランプス戦争 その2  〜

戦争、開戦。ナポリュートは戦う。されど、エクスは昏睡状態。すでに、アカツキ軍はほぼ
全勢力を導入していた。けれども、トランプスは未だに第一派で押さえているのだ。
もし、この状態で、第二派、第三派、そして・・・トランプスの能力者、幹部達が来れば・・・。


そのころ、ナポリュートはアカツキ軍の一兵士として、トランプスの兵士達と戦っていた。
倒しても、倒しても、次から次へと敵は現れる。ナポリュートのメンバーは、意識して
あまり離れていなかった。

「おらぁああああああああ!!」

「美しく・・・・散れぇえ!!・・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・。
 このみ!!いるかっ!?」

「だ、大丈夫だよ、リオーゼっ!」

「3分に一度、声を出すんだっ!!これだけ乱戦していれば、誰が味方か、誰が敵か・・・。
 誰が死人かもわからない!未来予知をフルに活用させるんだ!このみっ!!」

「わ、わかった!リオーゼっ!!」

リオーゼと流厳はほとんど最前線で戦っていた。その周りをチョコマカと移動している
このみ。このみは主に、戦闘しなかった。倒れている味方の治療などをしていたのだ。
だからこそ、狙われる確立も高くなってくるのだ。

「隊長っ!!いったい・・・・いったい奴らは、どれほどの数がいるのですか!?
 斬っても、斬っても・・・・・・まるで、数が減らないっ!!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・リオーゼ、ふんばるのじゃ!!奴らはまだ・・・・
 第二派を出しておらん!!・・・・まだ、奴らにとっては序章程度なのじゃ!この展開は!」

「・・・っく!!・・・・バ、バカな・・・・・。(この数で、まだ第一派だと!?
 実力では、十分に僕や隊長が奴ら一人、一人より上だっ!しかし・・・・・・
 第三派が来るときまでに・・・・剣を振れる腕があるのかどうか・・・保障できない!)」

あらためて、戦争で戦い、その恐怖を実感するリオーゼ。そう、これは戦争なのだ。
一人の実力が例え、トビ抜けて強いとしても、「スタミナ」や「集中力」などの消費は
どうしても逃れることはできないのだ。

「リオーゼ、なるべく始めは押さえ気味に戦うのじゃ!!さもなくば、序盤で体が
 ボロボロになってしまうぞぃ!!」

「りょ、了解しましたっ!(戦争というものは・・・・。異様な緊張感、恐怖心、
 そして殺意・・・・すべて入り混じっている・・・・・・くそっ、聞くのとやるのでは、
 まるでケタが違うっ!)」

リオーゼと流厳は体力を温存しつつ、戦うことを強いられた。けれども実際に、
アカツキ軍は優勢であった。このままいけば、本城には後数十分もすればたどりつける
という所まできていたのだ。

そのころ、その様子を見ていたトランプスは、ようやく重い腰を上げる。ほとんど、
戦争の指示的立場にいるのはアレキサンダーとダビデである。カールとカエサルはただ
それを見ているだけであった。

「そろそろ、第二派を出す時が来たようね、ダビデ」

「あぁ。すぐに出した方が良い!外を見る限り、アカツキの姿がまるで見えないっ!
 何を考えているんだ、アカツキ・・・・!主人公勢で、単体でここに乗り込んでくる可能性も
 ある!だから、なるべく早く、戦の方を優勢に進めるべきだ!」

「わかったわ。第二派!!武器を持てぇえ!!出撃準備だぁ!」

トランプス、第二派出撃を選択。これにより、アカツキ軍が数では劣ることとなる。
しかし、とりあえず今のところはアカツキ軍が優勢。勢いというものに、乗れるか
乗れないかの問題もあるのだ。アレキサンダーが大声で、指示をする。

「第二派・・・・・突撃ぃいいーーーー!!」

そして、トランプス第二派が戦地に赴く。すでにアカツキ軍は全勢力を導入しているため、
もうつぎ込む戦力はない。これは、端から見れば、誰もが失策だと思われるが・・・・。
そんな時、アカツキはどうしているのだろうか・・・・。


そのころ、アカツキは本陣で戦況をじっとうかがっていた。アカツキ自身は、戦おうと
しなかった。自分の力を温存しておこうという考えもあるが、トランプスのキングに
見られたくないということもあった。

「た、大変ですっ!!」

「?・・・・どうした?戦況がChangeしたのか?」

「トランプス軍が、第二派を投入してきましたっ!数では、圧倒的に我が軍が負けています!
 やはり・・・・第二派投入は早すぎたのではないでしょうか・・・!?」

「いいや・・・・。これで良いのさ。戦いは始まったばかりさ・・・・まだ、何が
 起こるかわからない」

「し、しかし!!情報によりますと、奴らは第三派か、第四派まで兵を貯めているとの
 情報です!その時は・・・・・我々の・・・・・・・!」

「No problem・・・・・・数が敵じゃない、質の良さが敵なのさ・・・・・」

アカツキは、ひっそりと戦況を見極める。しかし、アカツキ軍は窮地に立たされている
ことには変わりないのだ。アカツキ自らも、予想していた展開であろう。だからこそ、
何か「策」があるのかもしれない・・・。


一方、戦地で戦いを続けている兵士達、その中のナポリュートは、さきほどよりも
また酷い状況に、困惑していた。敵の勢力が、さきほどの倍以上にもなっているのだ。
焦りがナポリュートを破滅へと導いていく・・・・。

「た、隊長っ!!敵の・・・・敵の数が尋常ではありませんっ!このままでは、5分と
 経たずに僕達は、押し切られてしまいます!!」

「た、耐えるんじゃリオーゼっ!!全神経を戦いに集中させるのじゃ!体が悲鳴を上げても、
 口から血反吐が出ようとも、剣を振ることだけはあきらめてはいかんっ!!」

「し・・・しかし!!あまりにも・・・・あまりにも、数に違いがありすぎるっ!!
 それに、敵を倒せば倒すほど、僕らは目立ち、よけに狙われやすくなっているんです!」

「まさか・・・・・第二派の数は、第一派よりも多いというのか!?リオーゼっ!!
 下がり気味に戦うのじゃ!アカツキ軍全体が後退しつつある!!」

「(き、斬っても・・・・斬っても・・・・・奴らは、死なないっ!!・・・・・
 数が・・・・減らないっ!!・・・・このままでは・・・・負ける・・・・・・!?)」

「リ、リオーゼっ!だ、駄目だよぉ!ケガ人が多すぎて、誰を治療していいかわからないよぉ!」

ナポリュートの3人は未だ、健在していた。しかし、危険であることは確かだった。
また、「絶望」という言葉にとらわれるリオーゼ。本当に、数は減らなかった。斬っても、
前には無限とも思える数ほどの兵士達が待っているのだから。

「(このままではマズぃ!!リオーゼも体力が限界に近づいておる!何とかして、この
 状況を打破しなければ・・・・!!)・・・・・・しかたない、リオーゼっ!!
 ワシの能力を使うっ!離れるんじゃ!!」

「!?隊長・・・・の、能力を使う?・・・・膨張の能力を使うのですね!?
 しかし、いくら剣を膨張させて破裂させたところで・・・・敵も甲冑を身にまとって
 います!」

「ホッホ、リオーゼ。そこが、良いのじゃよ。甲冑を身にまとって、さらに数が多い
 というのがさらに抜群じゃ。・・・・・若いもんに・・・・負けるわけにはいかんのでなぁ!」

「ッ!!?・・・・石を・・・・・空中に・・・・・放り投げた・・・・?」

流厳は、地面から石を拾うと、敵の兵隊達の上空に投げつけた。そう、これこそ
流厳の持つべき「膨張」の能力の最大の武器。石は、膨張し、巨大な大石となって、
トランプスの兵達の真上から落ちる。

ドスゥウウウウウン!!!

「うわぁああああああ!!」

「ぐ、ぐるしぃいいいいい!!」

「こ、これは・・・・・膨張させて大きくなった石が・・・・奴らの真上に落下した・・・。
 ・・・・ッフ、さすが隊長。これを続けられれば、戦況は我々に傾きます!隊長っ!!」

「・・・じゃ、じゃがな・・・。間髪いれずにこの能力を使うことはできんのじゃ。
 ある程度の時間が経たなければ。じゃから、それまでは自身の剣技で対応してくれ!」

「了解しましたっ!!」

わずかな希望。流厳の膨張という能力がもたらした勇気。流厳の石の膨張落下作戦によって、
20〜30人の兵はまとめて倒すことはできた。しかし、連続で使うことができないと
いうのが、痛かった。

「っく!!た、隊長!!まだ・・・・まだですか!?能力が使えるまで!!」

「まだ・・・あと、あと少しじゃ!!もう少し、耐えるのじゃリオーゼっ!!」

「(た、耐えられるか・・・!?こ、こんな所で・・・・美とは正反対の死に方なんて・・・
 嫌だ・・・!!)も、もう・・・・もちそうにありません!!」

「リ、リオーゼっ!!剣を振るのじゃ、戦うのじゃぁあ!!」

「(も、もう・・・・駄目、か・・・・!!)」

ドガァアアアアアアアン!!
その時、大きい爆発音が鳴り響く。その爆発音に、あれほど騒がしかった戦地が、一瞬
静まり返る。そして、その音の先を、全員が見つめる。そして、その目線の先にいた
ものとは・・・・・。

「・・・・・楽しいことやってんじゃねぇか、俺様も混ぜてくんねぇーか?
 ・・・・・・へへ・・・・・・伊集院・薫盗賊団・・・・登場だぜっ!!」


48 :匿名 :2008/03/09(日) 20:04:27 ID:onQHWiL3

〜 開戦、第二次トランプス戦争 その3  〜

突然の来訪者。それは、伊集院・薫、および、盗賊団だった。その数はざっと、5千程度。
しかし、伊集院はまぎれもなく「能力者」。味方となれば、心強いハズなのだが。敵と
なれば、最悪の展開である。

「団長!どちらに味方するんですかい?」

「んなもん、決まってんだろ。俺様がどれくれー、トランプスのクソったれ野郎に
 煮え湯を飲まされたか・・・・・。それに、ハートのキングにゃぁ、まだ借りがあんでなぁ。
 おめぇら!!アカツキ軍と共同戦線しやがれっ!!」

「おぉおおおおおお!!」

伊集院・薫盗賊団は、アカツキ軍に味方した。それを見て、驚くアカツキ軍の兵士達。
しかし、これは好機であることは確かだった。あの名だたる盗賊団、「伊集院・薫」が
協力をしてくれているのだから。その様子を見て、目を丸くするナポリュート。

「た、隊長・・・・。彼らは確か、伊集院・薫が率いる盗賊団・・・・・。
 な、なぜ、戦争に参加などしているんですか・・・?」

「わからんが、戦争となれば、ドサクサに紛れて金品など奪える絶好の場じゃからのぉ。
 それを狙っているのかもしれんし・・・・・」

「で、でもっ!!これで、アカツキ軍がちょっと優勢に立ってきたよね!?
 リオーゼ、隊長!」

「そうじゃっ!!いや、これはちょっとばかりではない・・・・恐らく、伊集院の
 加入によってアカツキ軍、全体に活気がついたハズじゃ!」

実際に、伊集院も馬鹿ではない。流厳の考えは正解だった。伊集院は、確かにトランプスに
憎しみの心があったが、それ以上に、戦争は儲かると知っているのだ。おおよそ、勝った
時には、アカツキに莫大な奨励金を要求するのだろう。


その事態は、トランプスのキングの耳にも届いた。トランプスにとっても、伊集院・薫
の出現は、まるで想定外のことなのだ。それに、ハートのアレキサンダーは、伊集院・薫の
力量を知っていた。

「ほ、報告しますっ!!伊集院・薫盗賊団が、アカツキ軍の援護についたとの情報です!
 それともう一つ、戦っている兵士の話では、大岩が上空から降ってくるとの噂が・・・!!」

「何っ!!くそ、これもアカツキの思惑通りだというのか!?・・・・アレキサンダー!!
 君はこの状況、どう思う!?」

「・・・・伊集院・薫・・・・・。懐かしいわね、彼は能力者よ、それにジョーカーと
 戦って生きている。要注意人物ね。それに、その大岩が上空から降ってくるというのも・・・
 能力者っぽいわ」

「!?・・・・アレキサンダーっ!!聞いていないぞ、能力者がアカツキ軍に、アカツキ以外に
 二人も味方しているだと!?早く、トランプスの幹部をここに来させなければ、
 ただの兵士だけでは、抑えきれない!」

「・・・・・情報員、戦況はどちらが有利だ・・・・?」

ここにきて、トランプスはアカツキ軍に「西城・流厳」という能力者がいることに気づく。
だが、それ以上にアレキサンダーは「伊集院・薫」を脅威としていた。一人の能力者が
いれば、十分、戦況が傾く可能性があるからだ。

「そ、それは・・・・・。第二派出陣当時は、圧倒的我々の有利だったのですが・・・・。
 その、伊集院盗賊団や、謎の現象などによって、兵士達が困惑している模様でして・・・・
 恐らく・・・・流れは・・・・・アカツキ軍だと・・・・・・・」

「・・・・アレキサンダー、どうするつもりだ?まだ、アカツキも戦地に出ていないのだぞ?
 ・・・・・・・・恐らく、このまま第三派を出したところで、ただの人間の兵士だ。
 負けるぞ・・・・・・・」

「・・・・・カール、何か手は打っているのでしょう?」

「ハハハ・・・・アレキサンダーには隠せない、か」

「?・・・カ、カール!おまえ、何か策を練ったのか!?」

「心配ないよ、ダビデ。僕も馬鹿じゃない。トランプスのキングとして・・・・・
 やるべきことはやったつもりだよ。・・・・・ま、見ててよ」

カールの不気味な表情。形勢はアカツキ軍が未だ不利なのだが、流れはトランプスの不利。
しかし、それでもカールにはまだ余裕があった。果たして、その余裕の正体とは
いったい何なのだろうか・・・・。


一方、流れを掴んだアカツキ軍、および伊集院盗賊団の連合軍は劣勢ながらも押していた。
能力を使い、相手を四方八方に倒す伊集院・薫。そして、流厳の大石落下作戦によって、
トランプスの兵達の士気は低下していた。

「おいっ!!おめぇら、アカツキの野郎にたっぷり恩を貸しておくんだっ!
 そのために、死ぬほど戦いやがれっ!!」

「おっすっ!!!」

「・・・・た、隊長・・・・本当に、彼は味方なのでしょうか・・・・・?
 な、なぜか・・・・・不安になってきました・・・・・」

「う、うむ。まぁ、とりあえず今は奴がいなければ、ワシ達は朽ちていた。それを
 考えれば、ある程度のことは目をつむるしかないのぉ・・・・」

「皆さーんっ!怪我をしている人は声を出してくださーい!ただちにこのみが向かえに
 行きまーすっ!」

「こ、このみ・・・・。介抱するのは美だが、大声を出すとその美を無駄にするが如く、
 敵に狙われてしまうぞ」

伊集院・薫の参戦は大きかった。ある程度の余裕ができてきたアカツキ軍。これに
よって、トランプスも第三派を出さざるをえなかった。その状況を静かに見つめる
アカツキ。

「・・・・・おい、あいつ・・・・・何ていったけ?・・・・あの白い髪のBoyだ」

「はい。あれは、伊集院盗賊団です。どうやら、見ての通り、我々に参戦してくれている
 模様です。とりあえず、戦争中では、害は無いと思われます・・・・」

「あぁ、伊集院・薫か。・・・・・・うーん・・・・・」

「どうしたのですか?確かに、数では劣勢ですが、流れは圧倒的に我々にあります。
 このままなら、トランプスと五分に戦えると思いますが・・・・?」

「・・・・焦っていないのだよ」

「?・・・・焦る・・・?」

「トランプスの奴らも、流れがこちらにあることは理解している。ならば、なぜ第三派を
 出さない?・・・・・それに、第一派、第二派と兵の数に差がありすぎるのもおかしい。
 ・・・・・・キングの奴らめ・・・・・何を考えている・・・・・・」

冷静にこの事態を分析するアカツキ。トランプスが、この事態に何の策も練ってこない
ことに不信感を覚えているのだ。それが正解であるか、不正解であるかはのちに
わかることである・・・・。

「隊長っ!!この流れ・・・・・いける、いけますっ!!」

「うむ、リオーゼっ!!アカツキ軍全体の士気が上昇しておるっ!これを第三派投入後までに
 続いていれば・・・・・ワシらは・・・・勝てるっ!!」

「(か、勝てるっ!!一時は、どうなるかと醜態の如くあきらめかけていたが・・・・。
 今のアカツキ軍は、雲一つない空のように美しく、活気に満ちている!・・・・・
 エクス・・・・待っていろっ!・・・・勝利を・・・・届けてやる・・・!!)」

「ッ!!!・・・・・こ、これって・・・・・・」

「?・・・・どうしたのじゃ?このみ」

「な、なんか・・・・・わからないけど・・・・未来予知で・・・・た、大変なことが・・・
 起きるって・・・・・・!!」

アカツキ軍の優勢に、ナポリュートも強気になる。しかし、突然、このみがおびえる。
「未来予知」をして、何か不吉な未来を読み取ったのだ。詳しくはわからない、しかし、
何かが起こるのだ。そして、それは現実となる・・・・・・。

「た、大変だぁーーーーー!!!アカツキ軍本部が襲われているぞぉーーーー!!」

奇襲。そう、これだった。カールの策略は、これだったのだ。
アカツキ軍本部の後方に、わずかながらにしろ、自軍の兵を送り
こませていたのだ。事態は、急激な展開を見せる。

「ッ!!?・・・・た、隊長!!こ、これは・・・!!」

「い、いかんっ!!トランプスの奴らめ、後方から忍び寄っていたのじゃっ!!
 このままでは・・・・・エクスが・・・・・!!」

「リ、リオーゼっ!隊長っ!・・・・な、何か・・・・トランプスの城の方がおかしいよ!」

挟み打ちの状態となったアカツキ軍。だが、まだ絶望は
終わらない。さらなる不安を呼び起こすこのみ。
それもまた、現実の時となる。

「フフッ・・・・・さすがね、カール」

「どういたしまして」

「・・・・さぁ・・・・泣きっ面に蜂と行きましょうか・・・・・・・。
 第三派、突撃ぃいいーーーー!!!」

「うぉおおおおおおおお!!」

アカツキ軍、奈落の底へ。後方からの襲撃に加え、
それと重ねるかのように、第3派の出陣。
全ての光が閉ざされ、絶望への歩みが始まる瞬間だった。

「このタイミングでトランプスの第三派が投入された!?・・・・
 た、隊長・・・・ま、まずい・・・・・・ど、どうすればいいのですか!?」

「お、落ち着くのじゃ、リオーゼっ!!前からも、後ろからも攻められておる・・・・!!
 さ、最大の・・・・ピンチじゃ・・・・・!!」

「た、隊長ぉ!・・・・じゃぁ・・・・私達・・・・退路が・・・・・・
 無くなっちゃった・・・・ってこと・・・・・?」

「・・・・・・・・いかん・・・・・・・ワシらは・・・・踊らされていた・・・・・。
 トランプスは、初めからこれを狙っておったのじゃ・・・・・・・・・。
 アカツキ軍が・・・・・・敗北する・・・・・・・っ!」

アカツキ軍、敗北。流厳は予想した。後方で戦況をじっと見つめ、体力を温存していた
アカツキもこの事態には焦るしかなかった。必死に、残っている本部に残っている
兵力で何とかしようとする。

「っく!!・・・・これが貴様らの戦い方か・・・・・キング・・・・・!!
 本部に残っている兵士は、誰かまわずに、トランプスの退治に向かえっ!!
 さもなければ・・・・・我々は、負けるぞっ!!」

「りょ、了解っ!!」

「(くそっ!!・・・・・後方から、本部を狙ってくるとは・・・・・!!
 そして、それと同時に第三派を戦地に導入する!・・・・・してやられたか・・・!!)」

・・・・・ザッ・・・・

「・・・・・随分・・・・・・焦ってるみてぇじゃねぇか・・・・」

「!?」

これほど「絶望」という言葉が示せる場面もないだろう。
悪夢のような事態に困惑するアカツキを前にして、
最高にして最悪のタイミングで現れた、一人の復讐鬼。

「・・・・・VeryBad・・・・・・・まさか・・・・このタイミングで・・・・
 君と再会するとはね・・・・・・・ゼン・・・・・ッ!!」

「・・・・ようやく会えたな・・・・アカツキ・・・・・・。
 待っていた・・・・・・何百年間も・・・・・・おまえを惨殺する日を・・・・・
 夢に見ながらな・・・・・!!・・・・・・さぁ・・・・・この世とお別れだ、アカツキ・・・」

まさに、泥沼。奈落の底の、底に突き落とされたアカツキ軍。さらに、追い討ちに
復讐鬼、「ゼン」がアカツキの前に立ちふさがる。果たして、この現状をアカツキ軍は
乗り越えることができるのだろうか・・・・?


49 :匿名 :2008/03/16(日) 20:05:02 ID:onQHWiL3

〜 開戦、第二次トランプス戦争 その4  〜

ここは、すべての意思が集まる所。そこには、かつての地位にも関係なく、誰もがそこに
平等に意思をつどらせる。暗く、死にたいほどの暗闇。しかし、意思は、赤い、美しい光
を放っている。けれども、一つだけ、違う炎の色をしたものがあった・・・・。

     ・・・・・・・ここ・・・・・何処だろう・・・・・・・・・
          ・・・・・・俺・・・・・誰だっけ・・・・・・・・・・・

「君、誰?」

     ・・・・・・わかんねぇ・・・・・・けど・・・・・・・・
        ・・・・ここ・・・・・気持ち良いぜ・・・・・・・・・・・

「君は、違う色をしている。君は違う。ここの色じゃない。ここの意思じゃない」

     ・・・・・・そうかもしれない・・・・・・けど・・・・・
       ・・・・俺がわからねぇ・・・・・・いや・・・・知りたくねぇ・・・・・

「ここは皆同じ色。君だけは違う。知らないんじゃない。知れないだけ」

     ・・・・・・・怖い・・・・・・俺を知るのが・・・・・・・・・
       ・・・・・・死ぬ思いしか・・・・・・してなかったから・・・・・

意思の一つが、皆とは別の色をしている光に話しかける。しかし、別の色をした光は
ただ呆然と答えるだけであった。自分が何であったか、自分が何であるかを、まるで
知ろうとしない。

「君は知らない。僕も知れない。ただ、僕は言える」

     ・・・・・・・知れない・・・・・・知らない・・・・・・・・
        ・・・・・・言うな・・・・・・・それを・・・言ったら・・・・

「君はここにいてはいけない。僕は君を知らない。だから、言える。だから、言わなきゃ
 いけない。君が良い奴でも、悪い奴でも」

     ・・・・・・・悪い・・・・・奴・・・・・?・・・・・・

「君の光は希望。君の意思は勇気。そして、君が与える輝きは、笑顔。ここじゃない。
 君のその力を使う場所はここじゃない。それだけは、知っている」

     ・・・・・希望・・・・?・・・・・勇気・・・?・・・笑顔・・・・?

「そう。それだけは、知れる。君は、知ることができる。怯えないで、知ることを。
 怖がらないで、戦うことを」

     ・・・・・・・・違う・・・・俺は・・・・・違う・・・・!・・・・

異色の光は、ただ拒み続ける。同じ光の一つの言葉に対して。ただ、自分を知りたくない。
自分を認めたくない。自分を信じたくないないのだ。異色の光、皆と別の意思は、
悩み続ける。死にたいほどの、暗闇の中で・・・・。


そのころ、アカツキ軍は最悪の中の最悪の状況に陥っていた。後方からアカツキ軍本部を襲撃され、
それと同時にに第三派を投入され、なおかつ、アカツキの目の前には復讐鬼、「ゼン」が
現れる。そんな、ドン底の事態に、ナポリュートは・・・・。

「あ、あぁ・・・!!隊長っ!!み、みるみるうちに・・・・・
 み、味方が・・・・仲間達が、やられていきますっ!!アカツキ軍が全滅するのも、
 時間の問題ですっ!!」

「リオーゼっ!前を見るのじゃ!!今のワシらには、戦うことしか残されていないのじゃ!!
 剣を・・・・剣を振るのじゃ、リオーゼっ!!」

「し、しかし・・・・!!も、もう・・・・我々には、希望すら残されていません!
 目の前には敵、後方にも敵・・・・僕らの道には、敵しか・・・死しか選択できないのです!」

「言うな、リオーゼっ!!それを言ってしまったら・・・・アカツキ軍の勝利を祈って
 死んで行った仲間達に、何と言えばいいのじゃ・・・・・!!」

戦況は圧倒的トランプスの有利。さきほどまでのアカツキ軍優勢の流れがまるで嘘だったの
かのように。必死に戦うリオーゼと流厳。しかし、その目にはもう、「勝利」という
希望は消えていた。

「リオーゼっ!聞くのじゃ。今のワシらができること・・・それは、未来に希望を
 託すことじゃ!!・・・・意味が・・・・わかるの・・・・?」

「・・・・未来に・・・希望を・・・託す・・・・・。・・・・・わかりました、隊長。
 ・・・・・・・・・・・このみ、逃げろ」

「え・・・。ちょ、ちょっと待ってよ!リオーゼ、隊長!私は、ナポリュートの一員だよ!
 死ぬときも・・・・皆と一緒だよ!!」

「・・・・そうじゃのぉ、このみ。隊長としてではなく、西城・流厳として聞いてもらいたい
 ことがある・・・・・ワシとリオーゼの墓を・・・・作ってくれんかのぉ?」

「ッ!!?・・・・い、嫌・・・・そんなの・・・・嫌だよぉお!!」

「・・・・このみ、僕からもたのむ。とびっきりに、美しい墓を建ててくれたまえよ。
 ・・・・・・これで・・・・・いつでも4人は一緒にいられる・・・・・」

流厳とリオーゼは、もう数分ももたないと言うとことを理解していた。だからこそ、
幼い「このみ」にすべてを託そうとした。元々、このみだけは逃がす予定だったのかもしれない。
涙をながしながら、必死にリオーゼと流厳を説得しようとするこのみ。

「リオーゼ。どれくらい力が残っておる?」

「そうですね、数十秒くらいはまだすべての攻撃に対応できる力はあります」

「・・・・すまんのぉ、リオーゼ。こんな・・・・駄目な隊長で・・・・・・・・。
 最後まで・・・・付き合ってくれ・・・・・リオーゼ・・・・!」

「・・・・・喜んで、お付き合いさせていただきます・・・・そう、美の如くです・・・・」

「・・・・・・このみ、ワシらが時間を稼ぐ。逃げるんじゃ」

「・・・い、嫌っ!!逃げるなんて・・・・このみも・・・・ここで皆と一緒にいる・・・!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・リオーゼっ!!突貫するぞぃ!!」

「了解しましたっ!!」

「だ、駄目ぇーー!!」

このみの言葉も聞かずに、何万という敵の中に突貫する二人の戦士。このみは、涙で
クシャクシャになった顔をこすりながら、ゆっくりと、歩き出した。振り返ることはなかった。
このみは、二人の意思を継ごうとしているのだと理解しているからだ。

「う、うぅ・・・・・ひっく・・・・・ひっく・・・・・あ、あぁ・・・・・・・。
 リ、リオーゼ・・・・・・た、隊長ぉ・・・・・・・・・っ!!
 そうだ・・・・・まだ・・・・・・希望は・・・・・残ってる・・・・・!!」

このみは駆け出す。とある所へ。迷いは無かった。ただ、走ることに、自分の辿り着く
真実を信じて、ただ走り出した。ボロボロになった体で、辿り着く場所。そこは・・・・。
そのころ、トランプスのハートの本城では。

「終わってみると、あっけない幕切れだったわね。途中、ちょっと危険だったけど、
 今では良い思い出になったわね。幹部を出すまでも無かった・・・・・・。
 ダビデ、どれくらいで終わると思う?」

「・・・・そうだな、長くみても20分もないだろう。今回はカールに救われたな。
 まったく、一時はどうなるかと思ったぞ」

「ハハっ!!やっぱ僕って、頭良い〜♪」

「それよりアレキサンダー。今回の戦争でのこちらの被害もそう軽くはないぞ。
 それに、また戦争をしたことで治安が悪くなる。今からそれについての対応を
 話し合う。集まれ」

「・・・・わかったわ、ダビデ」

すでに、勝利を確信したトランプスのキング。いや、トランプスにとっては、すでに
勝ったことすら過去のことなのだ。確かに、どう見ても、ここからの逆転などありえる
わけがなかった。一方、このみは、アカツキ軍本部、ナポリュートの部屋へと来ていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・やっと・・・・着いた・・・・・。
 ナポリュートの・・・・部屋・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「エク兄ちゃん!!リオーゼと隊長が大変なのっ!!起きて、エク兄ちゃんしか、二人を
 救えないんだよ!!・・・・二人を・・・・・皆を・・・・・救えないんだよ!!
 おねがい・・・・・皆を助けて、エク兄ちゃん!!」

「・・・・・・・」

このみは必死に、意識を失っているエクスに訴える。無論、返事が返ってくることなど
無いとは知っている。けれども、言うことに意味があるのだ。それだけを信じて、
このみは叫び続ける。そして、場面は再び、暗闇へと戻る。

    ・・・・・・・声が・・・・・・する・・・・・・・・
      ・・・・まただ・・・・・また・・・・声が・・・する・・・・・・

「声?君には聞こえるの。僕には聞こえない」

   ・・・・・・何で・・・・・苦しそうなんだ・・・・・・・
     ・・・・・・・何で・・・・・俺に聞こえるんだ・・・・・・

「・・・・あなたは知れた。今、あなたは知ることができた」

    ・・・・・・・?・・・・・・・

「あなたは聞こえた。あなたを呼ぶ声を。あなたを求める声を。そして、あなた知ったの。
 自分が誰かを。自分がいるべき場所を。自分のすべてを」

    ・・・・・・・俺は・・・・・知った・・・・・?・・・・

「あなたを助ける者がいる。あなたが助ける者がいる。あなたは一人じゃない。
 おねがい、信じて。あなたの意思は、あなたのもの。あなたの光は、皆のもの」

    ・・・・・・・・俺は・・・・・知った・・・・・・・・・・
      ・・・・・そうだ・・・・俺は・・・・・知った・・・・・!!・・・・

「そう、あなたは知った。さぁ、駆けて。この暗闇を。あなたの足跡は、光の道となる」

    ・・・・・・光・・・・・そう・・・・・光・・・・・!!・・・

「・・・・あなたは希望。あなたは主人公、名をエクス・コールド。世界に笑みをバラまく者」

そして、場面は再びエクスの寝ている部屋へと移る。意思は、光を備えた。そして、
光は、意思を導いた。もう、次の行動は決まっていた。泣き叫ぶ者、それは自分を求める
者。自分が笑みをもたらしたい者。

「エク兄ちゃん・・・・・もう・・・・・駄目みたいだね・・・・・・・。
 大丈夫だよ・・・・ずっと・・・・このみがいてあげるからね・・・・・・・。
 ずっと・・・・・・ずーとっ・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・駄目じゃねぇ」

「・・・・・エク兄ちゃんの声・・・・・聞こえる・・・・・私の・・・頭から・・・・。
 夢の中で・・・・・もう一回聞けるかな・・・・・・」

「・・・・・あぁ、その通り。ここは夢の中だぜ。このみ」

「?・・・・はは・・・・エク兄ちゃんが・・・・起きてる・・・・本当に・・・夢だ・・・」

「・・・・へへ・・・・・・平和っつう・・・・でっけぇ夢・・・・・
 見させてやんぜ、このみっ!!エクス・コールド、第32代目主人公、
 地獄の底から、戻ってきたぜっ!!」

「あ・・・・あぁ・・・・・エ、エク兄ちゃぁあああああん!!!」

それは、光が満ちた瞬間だった。「エクス・コールド」、完全復活。そして、再び
世界に希望の渦が巻き起こる。エクス、彼の渡るべき道は見えている。後は渡るだけ。
エクスの力は、アカツキ軍を救うことができるだろうか・・・・。
 
 


50 :匿名 :2008/03/24(月) 21:50:41 ID:onQHWiL3

〜 開戦、第二次トランプス戦争 その5  〜

エクスが目覚めた。しかし、それでもアカツキ軍は劣勢に立たされていた。もう、誰もが
敗北を認めたのかも知れない。けれども、戦士達は戦うのをやめない。ただ、戦うことでしか
自分を見出せないからである。そこには、必死になっている伊集院、ナポリュートの姿もあった。

「くそっ!!おい、てめぇーら、根性出しやがれッ!!ここを乗り切れば、栄光が
 掴めるんだぞっ!!伊集院盗賊団の意地、見せやがれっ!」

「おぉおおおおお!!」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・た、隊長・・・・・このみは・・・・・・
 逃げられたのでしょうか・・・・・・」

「・・・・だと、良いんじゃがな・・・・・。もう・・・・数分も・・・・
 もちそうにないのぉ・・・・・リオーゼ・・・・・・」

「・・・・・・守りたい女性を男が守る・・・・・・これぞ、美です・・・・・・。
 僕は・・・・・その美を・・・・・光栄に思います・・・・・」

伊集院は、あきらめない。しかし、心のどこかではあきらめているのかもしれない。
ナポリュートは完全にあきらめていた。そして、残るアカツキ軍兵士達も、ほとんど
戦意喪失気味に戦っていた。と、その時・・・・・。

「?・・・・・た、大変だぁーーー!!皆、避けろぉおーーーーー!!
 後ろから、車が突っ込んでくるぞぉーーー!!」

「!?・・・・た、隊長!!後ろから、車が・・・・・!?」

「い、いったい・・・・何なのじゃ!?」

ブォオオオオオオン!
それは、突然のことだった。いきなり、アカツキ軍の領地の後方から車が戦地を走り
出してきているのだ。それを、必死に避けるアカツキ軍兵士。誰もが、その光景に目を疑う。
そして、ちょうどトランプスとアカツキ軍の戦っている中間部分で止まる。一同、静まりかえる。

「・・・・と、止まった・・・・・何なんだ・・・・あの車は・・・・・」

「リオーゼ、中から誰かが出てくるぞぃ」

車に乗っていた男は、車から降りると、颯爽と車の上によじのぼる。そして、
驚きのあまり動けないトランプス軍を前にして、堂々たる顔で、見渡す。その男の
姿を見て、驚くリオーゼと流厳。

「!?・・・バ、バカ・・・・な・・・・・なんで・・・・あいつが・・・・!!」

「・・・・・・ゆ、夢・・・・なのかのぉ?・・・・あの男が・・・・・!!」

「ふぅー。・・・・・聞けぇえ!!トランプスどもっ!!俺の名前はエクス・コールド!!
 第32代目主人公!・・・・・てめぇらに・・・・あらためて宣戦布告しに来たぜっ!」

「な、何だ・・・あいつ・・・・」

「・・・・・・・・俺達にはなぁ、例え何十万だろうが、何億人敵がいようと
 戦わなきゃいけねぇ理由があるんだよ!そうだ、確かに他人から見れば、アホの生き方かも
 しれねぇ。けどよぉ、これが俺達の生き方なんだ!戦うことが、俺達のすべてを
 スマートにすんだよ!こうなったら・・・・・・戦うしかねぇだろぉおお!!」

「・・・お・・・・・・うおぉおおおおおおおお!!!」

エクスの一言。それは、アカツキ軍の皆、聞こえた。自分達は真実、「正義」のために
戦っている。だから、決して負けることはない。だから、最後まで自分の正義のために
戦うのである。アカツキ軍はまた、活気づく。車の上から降りるエクスに彼らが待ち受ける。

「エクスっ!!!」

「ん?・・・・よぉ、リオーゼ、隊長。元気してたかよ?」

「こ・・・・・このバカめっ!!・・・・ぼ、僕が・・・・・僕らが・・・・
 どれほど、しんぱ・・・・・ど、どれほど迷惑かけたと思っているんだ!!
 この醜態顔っ!!」

「エクス!!・・・・も、もう大丈夫なのじゃな?・・・・もう、ちゃんと意識を
 取り戻せたのじゃな?・・・・・・・よ・・・良かった・・・・・・」

「っへ、相変わらずだな。俺も、おちおち寝てられねぇんでな!よっしゃ、俺が来たんだ!
 百人力だろ。このみも、安全な場所にいろって言っといた。もう心配はねぇ、突っこむぜ!!」

「い、いかん!!エクス、ハッキリ言うて、おまえ一人が来たところで、この最悪の状況は
 なにも変化せん!闇雲に突撃したら、早々と天国に突っ込むだけじゃ!」

「っく!・・・・・どうにかならねぇのかよぉ・・・・!!」

エクスが来た。一時、いや一瞬かもしれない。エクスの宣言により、わずかに活気を取り戻した
アカツキ軍。しかし、やはり数では圧倒的にトランプス有利。流れも。主人公が一人来たところで、
どうにかなる問題ではなかったのだ。その時・・・・。

「・・・?・・・・・隊長、あれは何ですか・・・?」

「ん?・・・・」

「・・・・・ふぅ・・・・少し、遅れてしまいましたね。それでは、僕達も参戦と行きましょうか。
 岩木財閥、特殊戦闘チーム、砲撃開始っ!!」

「了解っ!!」

そこに現れたのは、「岩木半蔵」であった。アカツキは密かに巨大な権力を握る「岩木半蔵」
こと岩木財閥と提携を結んでいた。これが、アカツキが本来予定していた即戦力の
作戦だった。
ドガァアアアアアアアン!!

「うわぁあああああああ!!」

「こ、これは・・・・・!隊長っ!どうやら、あの謎の集団、アカツキ軍の味方のようです!
 それに、あの大きい鉄砲のようなもの・・・・見たことがない」

「どっちにしろ、こっちにまた流れが戻ってきてるんだろ!?だったら、この勢いに乗るぜ!
 リオーゼ、突っ走るぞ!!」

「・・・・・っフ、遅れるなよ、エクスっ!!」

「(・・・あれは、岩木財閥のマークじゃ。そうか、アカツキは岩木財閥と手を組んで
 おったのか。これならば・・・・・いけるかもしれん!岩木財閥という大きな後ろ盾が
 おれば、何とかなるかもしれん!!)」

岩木半蔵の参入によってまたも、戦地は急変する。またも、アカツキ軍に流れが
戻ったのだ。それを知ったトランプスは、どうすることもできず、ただ焦った。
さきほどまでの余裕が嘘だったかのように・・・。

「ほ、報告しますっ!!岩木財閥が、我々を裏切り、アカツキ軍の味方についています!!」

「・・・・バ、バカな・・・・。ア、アレキサンダー!!どうするつもりだ!?
 岩木半蔵が我々を裏切っただと・・・!!それに、さきほど外から見たろっ!!
 ・・・・・主人公が・・・・・出現したぞ・・・・!!」

「っく、黙りなさい、ダビデっ!!・・・・・どういうこと・・・・?
 一転して・・・・・我々が窮地になった・・・?・・・・岩木・半蔵の裏切り・・・・
 主人公の出現・・・・・!!・・・・何が・・・起こってるの・・・!?」

戸惑いを隠せないトランプスのキング。もう、兵は出し切った。そして、アカツキ軍本部を
襲撃することにも成功した。しかし、それをも覆された。エクス、岩木財閥の登場により、
一気に形勢逆転してしまったのだ。

「まだアカツキ軍本部を襲撃した部隊からの連絡も届いていない・・・・!!
 ただの兵隊では、アカツキは倒せん!・・・・・・アレキサンダー・・・・・・・
 これは、総力戦になった・・・・・・。我々も、戦うしかない・・・・!!」

「・・・・待ってよ、ダビデ。まだ、僕らが焦る必要は無いんじゃない・・・?」

「・・・・カール、おまえにはまだ策があるのか!?」

「・・・・・フフ・・・・・策はないけど、必然された作はあるけどね・・・・」

カールの不気味な笑い。そう、カールは知っていた。次の展開を。だからこそ、冷静で
いられた。ハッキリ言うと、トランプスのキングも相当追い詰められていた。身体的にも、
精神的にも・・・・。


そのころ、戦場はアカツキ軍が完全に流れを掴んでいた。伊集院・主人公・岩木財閥。
この3つの要素が、すべてのアカツキ軍兵士の心の支えとなり、正義を奮い立たせて
いた。

「?、お、おいおい!!リオーゼっ!よく見りぁ、伊集院・薫が何でいるんだよ!?
 あいつは敵だろっ!」

「それには色々と事情が・・・・無いか。とにかく、一緒に戦っていてくれるだから、
 文句は言えまい。それより・・・・エクス、寝起きのせいで、体が鈍っているのか?
 いつものように・・・・美の無い戦い方をしてみせろっ!」

「っく!言ってくれるじゃねぇか、リオーゼっ!!そのムカツクくらいの口の聞き方・・・・
 くやしいが、懐かしいぜ。・・・・・・・俺はなぁ、おめーと違って・・・・」

「敵兵を殺していない、だろう?・・・・・っフ、僕と隊長も、戦争が始まって以来、
 一人たりとも殺してはいない!・・・・・・・それが、主人公・・・・・
 いや、おまえの・・・・・夢なんだろ・・・?」

「・・・・・・へ、へへ・・・・・・どうやら・・・・俺の夢・・・・パクられたようだなぁ。
 おらぁあ!!前を見やがれ、リオーゼっ!!流れを離すんじゃねぇぞ!」

「ッフ・・・・美の完全体、リオーゼ・トラフィクトに命令するとはな・・・・・。
 僕の美の鮮麗、目に焼き付けておけっ!!」

エクスとリオーゼ。もっとも、対照的である二人の性格は、その紙一重のところで
噛みあっている。それが、ナポリュート全体を良くしているのだ。だが、そんな好調の
アカツキ軍に、またもや、最大の危機が訪れるのであった・・・・。

「・・・・どうやら、ギリギリ間に合ったようですね」

ザワッ・・・

「・・・?・・・・おい、隊長、リオーゼ。あそこに・・・・何かいるぜ・・・・・・」

「?・・・・複数のようですね、隊長。恐らく、岩木財閥の増援部隊かと・・・・」

「・・・・ち、違うっ!!エクス、リオーゼ!よく見るんじゃっ!!・・・あれは・・・・
 あれは・・・・・!!」

流厳は驚いた。そして、後にエクスとリオーゼも驚くこととなる。いや、絶句することになる。
それは、アカツキ軍の最大の危機ともいえるかもしれない。複数の集団は、光の中に
姿をさらす。

「・・・あれは・・・・・トランプス、幹部じゃ!!」
 


51 :匿名 :2008/03/30(日) 19:59:23 ID:onQHWiL3

〜 開戦、第二次トランプス戦争 その6  〜

トランプス、幹部登場。それは、アカツキ軍の「敗北」を意味していた。トランプス幹部、
一人、一人が絶大な力を持つ能力者。例え、伊集院・流厳・エクスの3人の能力者がいたと
しても、集団の幹部には到底勝てるハズがない。

「・・・・ま、まじかよ・・・・トランプスの・・・・・幹部・・・・・。
 じゃ、じゃぁ・・・・各国の、1〜12までの能力者が、あそこにいるってのかよ!?」

「・・・・・そうじゃ。ワシとエクス・・・・伊集院が必死に応戦した所で・・・・・
 計48人の幹部・・・能力者に・・・・・太刀打ちできる術は・・・・・無い・・・・」

「っく!!・・・・トランプスの下位クラスでさえ・・・・アカツキ軍の兵士が何十人も
 投入されるというのに・・・・・それが・・・・48人も・・・・!?」

トランプスの幹部はつねに入れ替わる。だから、死んでもすぐに代わりはいるのだ。
だからこそ、トランプス幹部はつねに恐れられている。殺人専門のプロ集団。
その脅威を、誰もが知っていた。すると、他のアカツキ軍兵士も、そのことに気づく。

「・・・お、おい!あれを見ろぉお!!トランプスの幹部だぁあ!!」

「ま、マジかよぉお!!せっかくここまで流れを掴んだのに!!」

「ト、トランプスの・・・幹部・・・・う、うわぁあああああ!!」

誰もが、動揺を隠せなかった。そして、誰もが恐怖した。アカツキ軍は本来、トランプスの
幹部を倒すことを中心にしている。だからこそ、その強さ、恐怖に敏感だった。その
幹部が計48人。それはまさしく、地獄の絵図だった。

「ど、どうすりぁ良いんだよ・・・・・・・・くそっ!!俺達はぁ、何回もトランプスの
 幹部相手にしてきただろっ!!今さら、ビビることはぁ無ねぇよ!」

「バ、バカを言うな、エクスっ!・・・・貴様を含め、僕達のチームには能力者が3人!
 ・・・・この意味が、わかるか?・・・・トランプス幹部一人に、我々が3人の能力者を
 ぶつけなければ、通用しないんだ!」

「ッ!!!・・・・・・・・じゃ、じゃぁよ・・・・どうすんだよっ!!!
 このままじゃ・・・・・・俺達はぁ、負けちまうじゃねぇか!!」

混乱するエクス。いや、エクスだけではない。すべてのアカツキ軍が困惑し、恐怖する。
その様子を悠々見下すトランプスの幹部達。幹部はただ立っているだけでも、
威圧感は抜群であった。誰もが、戦意喪失するような・・・・。


そのころ、その様子を目にしたトランプスのキングはさっきとは打って変わって、
落ち着いた態度をとっていた。カールが言っていたことは、まさにこのことであった。
これをカールは初めから狙っていたのだ。

「フフ・・・・・やってくれるわね、カール。そう、幹部のことを忘れていたわ。
 もうこれで・・・・私達トランプスが負ける要素はみじんも無くなったのね」

「・・・ふぅ。まったく、疲れる一日だ。こんなに疲れたのは久しぶりだ。
 だが、良い運動にはなったかもしれんな。それにしても、カール。幹部のことを
 初めから言えばいいものを・・・・」

「ごっめ〜ん。なんか、慌ててるアレキサンダーとダビデの顔を見たくてさっ♪」

「・・・・まったく。幹部以外の兵士はもう、半分は下がっても良いだろう。後は、
 彼らが始末してくれる」

トランプスは、今度こそ「勝利」を確信した。それはそうだろう、例え主人公だろうと、
幹部48人を相手にできるわけがないのだ。そんな、強大な能力を持っているわけが無いと
思っていた。


一方、最悪の状況を再び迎えたアカツキ軍。アカツキ軍兵士は、ほとんどが戦う意欲を
なくし、そこに突っ立っていた。それを見て、襲う気すら起きないトランプス兵士。
その中に、ナポリュートの姿もあった。

「・・・・ち・・・ちくしょう・・・・!!何とか・・・・できねぇのかよ・・・!!
 こうなったら、俺が戦うしかねぇえ!!それで何とか、皆の活気を取り戻すしかねぇえ!!」

「やめるんじゃ、エクスっ!!・・・・おまえの能力は、まだよくわからんが・・・・・
 あの大勢の幹部達を、一斉できるほどの力は無いハズじゃ・・・・・・」

「・・・だ、だからってよぉ・・・・!!ここで・・・・ここで終わるのか!?
 俺が信じた世界ってのはぁ・・・・・・こんな結末で終わるのか・・・・・!?」

「・・・・くそっ!・・・・あの幹部達を・・・・倒せるような・・・・奇跡・・・・
 いや、必然!・・・・・・それが・・・・起きれば・・・・!!」

誰もが、願うしかなかった。その「奇跡」いや、「必然」に。だが、それは根拠のない
願い。誰もが、そんな無知なことを信じているわけがなかった。けれども心の中では
それにすがるしかなかった。

「(く、くそが・・・!!俺様が・・・・・伊集院・薫様が・・・・こんな・・・・・
 こんなチッポケな戦で、泥を被るってのかよ・・・・!)」

「(まずいですね・・・・。いくら、最新兵器を駆使したところで、トランプスの幹部、
 しかも数にして、48人・・・・・能力と呼ばれるものに、兵器では太刀打ちできないですね。
 岩木財閥・・・崩壊の危機ですかね・・・・)」

アカツキ軍に援護をした、「伊集院盗賊団」と「岩木財閥」。この二つの勢力も、
ほとんど戦意喪失していた。誰もが、この世界中の誰もがトランプスの強さを知っている
からこそ、わかるのだ。この恐怖が。

「・・・・さて、そろそろ行動を開始するか。アレキサンダー様、ダビデ様、カール様、
 カエサル様に報いるためにも・・・」

ついに、トランプスの幹部が動く。ゆっくりと、アカツキ軍の兵士達に近づいていく。
誰もが、動けない。動いたところで、逃げられないとわかっているからだ。そんな中でも、
エクスは最後まであきらめなかった。

「嫌だ・・・・こんな・・・こんな所で・・・・平和を・・・握りつぶされてたまるかっ!!
 俺は戦うっ!!」

「や、やめろっ!エクス!さきほどの隊長の話を聞いていなかったのか!?
 もう・・・・終わったんだ・・・・・」

「終わらせるかっ!!無駄だってわかってる!けど・・・・戦うことに意味があるんだ!!」

「エクスっ!!・・・もう良いんだ・・・・美しく、散ることはできないかもしれない・・・。
 けれど、僕達は生きた・・・・・美しいと思う、人生を・・・・・!」

「でも・・・・・でも・・・・・・・・・それでも俺は・・・・・主人公なんだっ!!
 戦わなきゃ・・・・・駄目なんだよ・・・・!!」

エクスは必死に訴える。それを食い止めるリオーゼ。エクスが突っこめば、負ける。いや、死ぬ。
これは、誰もがわかりきったことだった。もう、奇跡は起きない。起きるのは、必然された
死のみであった。

「くそ、くそ、くそっ!!・・・・・こいつらを・・・・ブッ倒すくれぇのこと・・・・
 起きたって・・・・・・何の・・・・罪もねぇじゃねぇか・・・・!!」

「(もう、希望は無い。僕は、それを受け止めるしかない、死という現実を。
 トランプスの幹部を止めることは・・・・・トランプスの幹部をも超越した力を持つ者にしか
 できない・・・・そんな者がいるわけなど・・・・・・・)」

「・・・・・さぁ、幹部の諸君。駆除を開始するぞ・・・・!」

「(ち、ちきしょう!!・・・・・俺は・・・・ここで・・・・終わっちまうのか!?)」

トランプスの幹部が、攻撃態勢をとる。誰が、どんな能力を使うのかもわからない。
ただ、怯えたまま、死ぬことしかゆるされないのだ。48人の能力者が、一斉にアカツキ軍兵士の
「駆除」を開始する。と、その時・・・・・・。

「(や、やられるっ!!)」


・・・・・・・・・・・・


「(・・・・・・・・・・・・・・・・?・・・・・・
 こ、攻撃が・・・・・・来ない・・・・・・?)」

「な、何だこれは・・・・・何が起こっているんだ!」

「どういうこと!?こ、これは・・・・!!!」

「(な、何だ?・・・・トランプスの幹部達の・・・・・驚きの声が聞こえる・・・・・)」

「・・・・・フン・・・・・・トランプス幹部程度が集まったところで・・・・・・
 所詮、クズの集まり・・・・・・・イキがるなよ、トランプス・・・・・」

「(・・・・こ、この声は・・・・・!!)」

その声には、聞き覚えがあった。エクスは目を閉じていた。「恐怖」を抑えるために。
それは、他のアカツキ軍兵士も同じだった。しかし、いつまでたっても、幹部達は襲ってこない。
逆に、声からして、トランプスの幹部達が怯えていた。

「(この声・・・・聞いたことがある・・・・!!そう・・・・あいつだ・・・・
 あいつの声と・・・・同じだ・・・・・!!)」

「・・・・・・・赤い殺戮の時間・・・・・・レッド・タイムの始まりだ・・・・・
 トランプス・・・・・・!」

「エ、エントフィート・・・・・隊長・・・・・シルヴァ!!」


52 :匿名 :2008/04/06(日) 20:56:30 ID:onQHWiL3

〜 開戦、第二次トランプス戦争 その7  〜

「シ、シルヴァっ!!」

男は、蘇った。地獄の底から。男の名は「シルヴァ」。まさに、トランプス幹部達を
一網打尽できるほどの能力を持った男。シルヴァの「レッド・タイム」によって、半径
1km以内の範囲は、15秒間だけ赤く染まる、

「シルヴァっ!てめぇ、何で生きてるんだよ!」

「・・・・・・生きていたという過程は、どうでもいい・・・・・俺はただ・・・・・
 勝ったという結果を欲するだけだ・・・・・・・」

「た、隊長っ!!生きてなさったのですね!!」

「・・・・・おまえら・・・・」

そこに現れたのは、エントフィートの隊員達。エントフィートだけでも、かなりの数の
隊員がいる。そのすべては、シルヴァの強大さに惹かれて入ったのである。しばし続く
「赤い世界」に戸惑うトランプス幹部達。

「・・・・・王者、エントフィートが・・・・・何たるザマだ・・・・・」

「・・・も、申し訳ございません・・・」

「・・・・謝る時間が、俺達には必要なのか?・・・・無様に不平しきっている姿が、王者に
 必要なのか?・・・・・・必要なのは、王者であるエントフィートの誇りだ・・・・。
 ・・・・・・・・戦うぞ、おまえら・・・・・・!」

「はいっ!!」

シルヴァの出現に、トランプス以外にもアカツキ軍全体に影響を及ぼした。元来、
「エントフィート」と「シルヴァ」という言葉は、アカツキ軍では、アカツキ並に有名で
あった。そのため、アカツキ軍の兵士達はそのシルヴァの出現を見て、勇気を取り戻した。

「お、おい。あれ・・・・エントフィートの隊長じゃねぇか」

「まじかよ。確か、シルヴァだろ?・・・・も、もしかしたら・・・・」

「もしかしたら、まだいけるかもしれねぇ!」

「み、皆、戦うぞっ!!」

「おぉおおおおおおおお!!!」

アカツキ軍に、活気が戻る。シルヴァの登場によって。すでに、「レッド・タイム」の
時間は過ぎていた。しかし、そんなことを忘れるかのごとく、アカツキ軍の雄たけびが、
戦場を奮い立たせていた。

「お、おいおい・・・・・シルヴァが来たとたん、これかよぉ・・・・・。
 俺が来た時だって、こんなに盛り上がらなかったぜぇ?」

「これが・・・・・シルヴァという男のカリスマか・・・・。エクスっ!!僕達も、
 この勢いに遅れるわけにはいかないぞ!行くぞ、エクスっ!」

「わぁーってるよっ!!」

「(シルヴァ・・・・・お主は、やはり変わっておらんのぉ。あの時から・・・・・
 ずっと・・・・)」

アカツキ軍、完全復活。シルヴァという、最強の能力者が登場し、トランプスの幹部達も
一掃。そう、トランプス幹部をも超える力を持つもの、それこそ、「シルヴァ」なの
である。それを見たトランプスのキング達は・・・・。

「ア、アレキサンダー・・・・・な、何者だ・・・・・あの男は・・・・!!
 幹部達が、圧倒的にやられているぞっ!!」

「バ、バカなっ!!トランプスの幹部、48人・・・・殺人のプロ集団を・・・・・
 たった一人の能力者が、圧倒しているというの!?」

「・・・・ア、アレキサンダー・・・・・ダビデ・・・・・・こ、こんなこと・・・・
 聞いてないよ、僕っ!!・・・・何なんだよ、あいつ!!」

「ま、まずいですね・・・・。こ、このままだと・・・・も、もしかして・・・・
 危ない・・・・かも・・・・?」

「どうするんだ・・・・アレキサンダー・・・!!もう、兵も出し切って・・・・
 そして、幹部も投入させたぞ・・・・・なのに・・・・状況は、最悪の一歩手前まで
 来てるぞっ!」

これまでない動揺の様子を見せるトランプスのキング。それもそうだろう。これほど、
形勢が逆転した戦争も数少ない。勝つと思えば、負け。負けと思えば勝つ。その繰り返し
なのだ。ついに、トランプス達も万策尽きたのであった・・・。


そのころ、もう一方の戦争。トランプス対アカツキ軍とは別の戦争が、行われている。
そう、アカツキ対ゼンである。彼らは二つで一つの命。運命共同体である。光と闇の
魔人を持つ彼らは、それを駆使して、戦う。

「GO!!Light Ghost!!」

「貫け・・・・俺の影よっ!!」

光の魔人と、闇の魔人がぶつかる。魔人を動かしている間は、滅多なことには、アカツキと
ゼンは動かない。神経を集中させているのだ。人型の魔人は、格闘と格闘で応戦する。
どちらも、引けをとらない。

「ゼン・・・・・まったく、しつこい奴だよ・・・・・おまえって奴は・・・・!!
 この200年間・・・・・ずっとアカツキ軍を・・・・一人で襲撃してくるのだからなぁ・・!」

「それが・・・・・どうした・・・・・!!そんなもんで・・・・・・
 俺の憎しみが・・・・・満たされるとでも思っているのか・・・・アカツキっ!!」

「憎しみ?・・・・・憎しみと言ったか・・・・・ゼン・・・・・・」

「・・・・・あぁ・・・・言ったとも・・・・憎悪だけで、俺は生きてきたのだからなっ!!」

「ハハ・・・・・・ハーハハハッハッハッハッハハハ!!」

突然、アカツキは大笑いをはじめる。すると、アカツキの魔人「ライト・ゴースト」の
動きも止まる。それを見て、自分の魔人も動きを止め、にらむようにアカツキを
見るゼン。

「・・・・・何が・・・・・おかしい・・・・・アカツキ・・・・・!!」

「ハハ・・・・憎悪、か・・・・・。ゼン・・・・・おまえ・・・・・俺が・・・・
 何も知らないとでも思ったか・・・・?」

「・・・?」

「・・・・そうだ・・・・あの夜・・・・・ルーは・・・・俺ではなく・・・・・
 おまえを選んだっ!!・・・・俺が・・・・知らないとでも思っているのかっ!!」

「ッ!!」

ゼンはその事実をはじめて知った。アカツキはあの場面を見ていた。求婚を申し込んだ
ルーという女性に、裏切られ、ゼンに奪われたという事実を。アカツキはその日、すべてを
失ったのかもしれない。

「憎しみ?憎悪だと?・・・・・それを最初に、俺に根付かせたのは・・・・・
 貴様だろっ!!ゼンっ!!!」

「・・・・貴様が・・・・・てめぇが・・・・・ルーの名を口にするなぁああ!!!!」

勢いを増すアカツキとゼンの魔人同士の戦い。お互い、「ルー」という一人の女性の
ために戦っている。お互いの真実のために。お互いの正義のために。アカツキとゼンは、
本気でぶつかり合う。

「くだらねぇ、寝言抜かしやがって!!・・・・そんなエゴで・・・・・
 そんな・・・・そんなチッポケなエゴで・・・・・ルーを殺したのかっ!!」

「俺はすべてを失ったんだぞっ!!・・・・俺は・・・・もう2度と・・・・・・
 笑顔で、空を見上げることなんて・・・できなくなっちまったんだぞっ!!」

「・・・・もう・・・・・救えねぇ・・・・。今すぐ・・・・ルーのもとへ・・・・
 送ってやる・・・!!・・・・・地獄で・・・・天国にいるルーに・・・・
 土下座してきなっ!!」

ゼンとアカツキ。片方が死ねば、もう片方も死ぬ。そのことは、十分承知している。
それを踏まえて、ゼンはそう言った。そう、自分もろとも「地獄」に落ちるのだ。
そして、アカツキと共に、ルーに土下座をするのかもしれない・・・・。


53 :匿名 :2008/04/13(日) 20:16:33 ID:onQHWiL3

〜 開戦、第二次トランプス戦争 その8  〜

ゼンとアカツキの一進一退の攻防の中、アカツキ軍対トランプスは終わりの無い戦いを
繰り返していた。シルヴァの登場により、活気を取り戻したアカツキ軍。しかし、それでも
肝心のトランプスのキングにはまるで近づいていないのだ。

「(・・・・いかんな・・・・確かに、アカツキ軍が再び流れを呼び戻したが・・・・・
 キングにはまだ到底遠い・・・・俺が、幹部を抑えていても・・・・・らちがあかない・・)」

「エ、エク兄ちゃん!リオーゼ、隊長っ!!」

「!?・・・・こ、このみ!!何でここに来てるんだよ。安全な場所にいろって
 言っただろ?」

「で、でも・・・・私、逃げない。私だけ・・・・・嘘をつくことなんてできないよ!」

「こ、このみ・・・・」

このみが、再び戦地に戻ってきた。このみは主に戦わず、怪我をして倒れている者の
介抱をしていた。しかし、それでも危険だということは本人も十分に承知だった。
こうして、ナポリュートが4人全員、揃ったのである。

「わかったぜ、このみ!おまえの勇気、俺が受け取ったぜ!一緒に・・・・・
 戦おうぜ、このみ!」

「うんっ!」

「このみっ!いつのまに、合流していたのか・・・・。それにしても、このまま戦を
 続けていたところで・・・・美とはほど遠い、消耗戦へとなってしまう。そうなれば、
 僕達は不利になる・・・・!」

「何か、何かキッカケがあれば良いのじゃ・・・・!!トランプスのキングがいる
 本城へ突入できるキッカケが・・・・!!」

「・・・・・・・・・おい・・・・・ナポリュート・・・・」

「?・・・な、何だよ、シルヴァ!」

シルヴァが、ナポリュートの様子見る。そして、話しかけた。何か、決意を決めたかのように。
シルヴァの「レッド・タイム」も間髪いれずには使えない。だからこそ、そこを幹部達に
狙われれば、危うくなることを知っていた。

「・・・・・質問する。・・・・・川に恋人と、恋人を突き落とした男が溺れている・・・・
 おまえは・・・・・・どちらを助ける・・・?」

「な、なんでいきなり、んな質問を・・・・」

「・・・・いいから答えろ」

「・・・・・んなもん、決まってんだろ。助けんだよ、二人共」

「・・・・・バカが・・・・・どちらか片方だけだ・・・・・・」

「だからよぉ、そん時は俺が死ぬだけだし。ま、それでも助けられなかったら・・・・
 悪ぃけど、一緒にお陀仏してもらうしかねぇけどな・・・・!」

「・・・・・助けるのか?・・・・・悪も・・・・・」

「・・・・な〜に言ってんだよ、バーカっ!正義っつうのはよぉ、何処にでもあんだよ・・・。
 悪党だってよぉ、ちゃんと・・・・人を殺さないように、車道を走ってるんだぜ?」

「・・・・・・・・・・・」

シルヴァは黙った。エクスの単純な答え。エクスは「正義」を信じていた。しかし、その
「正義」は「悪」とは正反対という意味ではなかった。誰もが心に留める「正義」をエクスは
言っているのだ。シルヴァは、少し笑みを浮かべると思うと、また冷静な顔つきになる。

「・・・・・・ナポリュート・・・・・後は・・・・たのんだぞ・・・・・」

「へ?」

「皆、聞けっ!!これより、アカツキ軍の希望を、トランプスを踏み台に作り出すっ!
 ・・・・・・ナポリュートを・・・・・本城へ送り込む・・・・・!!
 全部隊、力を貸せっ!!」

「ッ!!!」

驚くナポリュート。いや、それ以上に驚いたのはアカツキ軍の兵士達かもしれない。
ある意味、有名なナポリュート。それは悪い意味で。しかし、シルヴァは信じた。
ナポリュートに賭けるしかないと直感したのだ。

「お、おいおい。聞いたかよ、あのナポリュートが本城に・・・・?」

「いくら、シルヴァの命令だからってよぉ、あのナポリュートになぁ・・・・」

「どん底だったチームに、アカツキ軍の未来が託せるのかよ」

例え、シルヴァの命令であっても、アカツキ軍の人間達はやはり「ナポリュート」を
快く思っていなかった。あたりに、不穏な空気が流れる。そして、それを見た
ナポリュートは動揺を隠せない。

「お、おい!!シルヴァっ!!ふざけんなよ!別に俺達はぁ、本城に乗り込みたい
 なんて一言も・・・・!」

「・・・・・・俺が決めた・・・・・・意義はあるまい・・・・・」

「で、でもよぉ・・・・俺だって・・・・・わかってんだ・・・・・・・・。
 皆が・・・・・俺達なんかに・・・・命、賭けてくれるわけ・・・・・・・」

エクスはあきらめる。確かに、エクスの言うことは正論かもしれない。本城に乗り込む
と言えば、それはほとんど「シルヴァ」のような強者、絶対者が行うことなのだ。
エクスを含め、ナポリュートは後ろめがたい気持ちで、黙りこくるが・・・・・・。

「よっしゃっ!!いっちょ、たのんだぞっ!ナポリュートっ!!」

「シルヴァ隊長の命令だっ!死ぬ気でやれよ、ナポリュート!!」

「おめーらにアカツキ軍の命運かかってんだ、勝たなかったらゆるさねぇからな!!」

「ッ!!!・・・・・み、みんな・・・・・・・・」

その大声援。「ナポリュート」コールに戸惑いを隠せないナポリュートメンバー。
シルヴァの命令だからという理由が多いが、ナポリュートの急激な成長を見てきた者達もいる。
アカツキ軍全体が、ナポリュートを後押しする。

「こ、この声援・・・・!
 ぼ、僕達・・・・・ナポリュートが・・・・これほどまでに・・・・!!
 ・・・・う、美しい・・・・・・」

「す、す、す、すっごーい!!アカツキ軍、全体が・・・・私達を応援してくれてるっ!」

「こ、これは驚いたわぃ・・・・・まさか・・・・・こんなにも大勢が・・・・
 ワシらを信用してくれるとはのぉ・・・・・」

「・・・・・シ、シルヴァ・・・・お、おまえ・・・・!!」

「・・・・・・ッフ、死ぬ程度に・・・・・・頑張ることだな・・・・・・・。
 よし、アカツキ軍全部隊に告ぐ、これより、ナポリュートに本城へ向けて、道を示す!!
 各自・・・・・己の信じる正義の道を作れっ!!」

「うぉおおおおおおおおお!!!」

アカツキ軍、ナポリュートのために、必死にトランプス達を押しのけ、本城への
一本道を作ろうとする。それを見て、伊集院盗賊団と、岩木財閥特殊戦闘チームも
一度、手を止める。

「お、おいおい・・・・ナポリュートって、あのエクスって奴がいる所かよぉ・・・・。
 こりゃぁ、絶好のチャンスだぜっ!!あいつにも恩着せて、もう一回リベンジして、
 血祭りにしてやるぜ!伊集院盗賊団、ナポリュートってチームの道を作れぇえ!!」

「これは・・・・。おやおや、たった一つのチームに賭けるつもりですが・・・・。
 まぁ、ここまで来たら、それも有りでしょう。岩木財閥特殊戦闘チームに命令します、
 ナポリュートを援護っ!!」

「・・・・さぁ・・・俺も・・・・・手を加えるとするか・・・・・・・。
 レッド・タイム!!・・・・・世界よ、俺のために動け・・・・・!!」

伊集院、岩木・半蔵、そしてシルヴァも「ナポリュート」のために、「道」を作る。
ナポリュートに示された道。それは、真実をたどるためのか弱い道。しかし、その意思は、
天をも陵駕する如くの勇気で溢れた道なのだ。

「・・・・・皆の意思、無駄にするわけにはいかんっ!!エクス、リオーゼ、このみ。
 準備はいいの?・・・・これが、ワシらの花道じゃ・・・・・・・。
 これが、ナポリュートの・・・・し、真の・・・・・・・!」

「・・・・隊長、鮮やかに潤い透き通った涙が・・・・垂れていますよ?」

「・・・す、すまんのぉ・・・・。こういうのは・・・・苦手でのぉ・・・・・」

「隊長っ!大丈夫だよ。一人じゃ、私も泣いちゃうかもしれないけど・・・・・・・
 皆がいる。泣きそうになっても、背中をさすってくれる仲間がいるもん!・・・・
 もう・・・・・泣くわけにはいかないよ・・・・・!」

「・・・・これが、俺達の信じてきた道なんだぜ、隊長っ!!最初は、暗ぇ、真っ暗な
 道だった。けど、今ではもう、こんなに光が道を照らしてくれるんだぜ!?
 ・・・・・さぁ・・・・行こうぜっ!!まだ道の向こうには・・・・着いてねぇんだからな!」

「・・・・・うむ。希望は一つじゃ。道は、一つじゃ!もう、ワシらに迷いは無い。
 行くぞぃ!!ナポリュート、最後の任務じゃ!!」

「はいっ!!!」

ナポリュート、皆の「勇気」で作られた道を全速力で駆け抜ける。終着点、トランプスの
本城へと。こうして、エクス、いやナポリュートは、最終決戦・・・・トランプス、キングとの
決戦を迎えるだけとなったのだ。


54 :匿名 :2008/04/20(日) 20:48:35 ID:onQHWiL3

〜 開戦、第二次トランプス戦争 その9  〜

ナポリュート、本城へ突入。皆の声援を受けて、皆の勇気を受けて、正義の名の元に、
キングを倒すために本城へと乗り込むのだ。しかし、それは多くの犠牲もともなっていた。
ナポリュートを助けるために・・・・。

「ぐわぁああ!!」

「ッ!だ、大丈夫か!?」

「・・・・あ・・・あぁ・・・・・・ナ、ナポリュー・・・トは・・・・
 行け・・・たの・・・か・・・・」

「あぁ、もう行ったぞっ!俺達は、アカツキ軍のために、道を作れたんだっ!
 ほ、ほら・・・・まだ、作るだけじゃない・・・・俺達も・・・渡ろうぜ・・・?」

「・・・ハ、ハハ・・・・・・よ、良かった・・・・・。お、俺・・・も・・・・
 渡れ・・・・る・・・かな・・・・・・。も、もう・・・・足が・・・・片方・・・
 足りない・・・・けど・・・・・」

「・・・・・・・・渡れるとも・・・・。俺が肩を貸してやる。
 な、だから・・・・・生きようぜ?・・・・・息をするんだ・・・・頑張れ・・・・!」

「・・・・・・・・・・・お、・・・・俺・・・・も・・・・・・・・・
 しゅじ・・・・・ん・・・こう・・・・・・・・・だった・・・・の・・・か・・・な・・・・」

「・・・・う、うぅうう!!!・・・・・あぁ、主人公だとも。皆、皆、主人公だとも・・・!」

アカツキ軍の、兵士の会話。アカツキ軍、いやトランプス達一人、一人にも様々な
ドラマがある。ナポリュートのために道を作るためだけにも、何百という兵士が死に、
血を流す。その重さを、戦っている者達は、嫌でも知ることになるのだ。


そのころ、本城に突入することに成功したナポリュートは、慎重に、城の周りを警戒
しながら近づく。4人は、自分達の背負った重さは十分わかっていた。だからこそ、
普段の何倍も慎重になった。

「・・・・隊長、本城がまるで手薄ですね。これを罠だと見るか、それとも本当に
 トランプスはアカツキ軍に苦戦して、ほぼ全勢力を投入せざるを得なかったのか・・・。
 どちらだとお思いですか?」

「・・・どちらも考えられるが、ワシは後者だと信じたいのぉ。さすがに、奴らも
 本城までワシらが来るとは思ってないじゃろう。それほどの慢心が、奴らにはあるハズじゃ」

「・・・なら、早ぇとこ行こうぜっ!俺達がくすぶってる間にも、アカツキ軍の皆は
 必死に頑張ってんだ!」

「そうじゃな。結局は、退路無しじゃ!それでは、行くぞぃ!!・・・・・・・ん?
 どうしたのじゃ?このみ」

「・・・・う、うん・・・・」

3人は、自分達を命がけで送ってくれたアカツキ軍の仲間にいち早く答えたかったのだ。
だからこそ、熱気に燃えていた。しかし、このみは違った。一人、どんよりと
暗い顔をしていた。

「・・・・本当に・・・・皆・・・・・また無事に・・・・会えるのかな・・・・」

「っ!!!・・・・こ、このみ・・・・お主、そこまでワシらのことを・・・」

「だって、だって!!私、誰にも死なれたく無いもん!誰にもいなくなって欲しくないもん!
 私達、ずっと一緒だよね!?・・・トランプスの・・・・キ、キングと戦っても・・・・・
 みんな・・・・・また、笑顔で会えるよね・・・・?」

このみの問いに、3人は黙った。そう、彼らは「キング」と戦う。この世界で、もっとも
強いとされるキングの四人衆と戦うこととなるのだ。当然、死ぬ確立の方が圧倒的に高いのである。
そう、戦場で戦っているよりも。

「・・・・・おいおい、このみ。そりゃぁ、無ぇよ・・・・。笑顔で会えるだぁ?
 冗談よせよ」

「・・・・その通りだ、このみ。それは、不可能だ。美の如くな」

「そ、そんなぁ・・・・エク兄ちゃん・・・リオーゼ・・・・!!」

「・・・・笑顔で会うなんてのはぁ、予定に無ぇぜ?このみ。俺はなぁ!!この戦争が
 終わって、隊長のおごりでパーティする時に、とびっきりの笑顔になってやんだよっ!!」

「ッフ、そういうことだ、このみ。それまで、笑顔はお預けだ。パーティには強制参加。
 誰も、死なない。そうですよね、隊長?」

「うむ、そうじゃ!!このみ、安心せぇ。ナポリュートは・・・・いつも四人は、一緒じゃ!」

「・・・・・・隊長・・・・。すまねぇけど・・・・四人は・・・やめてくれねぇか。
 5人って言ってくれねぇか?・・・・あいつを・・・・・マリアを・・・・・
 ナポリュートからはずすことなんて・・・・・ありえねぇんだ」

エクスは少し、シリアスな顔をして流厳に言う。そう、ナポリュートは「四人」じゃない、
「5人」なのだ。死んだマリアも、ナポリュートの中では生きている。エクスは
それを伝えたかった。

「・・・・そうじゃな。5人、じゃったな・・・・。マリアという子の分まで、
 戦うんじゃ、エクス。・・・・・・・用意は、良いの?皆・・・・・」

「はいっ!隊長。美の輝きはいつでも健在です」

「うん!このみもいいよっ!」

「当然だぜっ!!後は、キングの奴らを倒すしかねぇんだからなっ!!」

「よし・・・・・それでは、トランプス本城へ乗り込むぞぃ!!」

こうして、ナポリュートはトランプス本城へと侵入する。中は、ほとんど手薄で、兵も
ボチボチいる程度だった。しかも、どの兵も慌しく動いているのだ。侵入するには、
絶好の場だった。

「・・・・こうも簡単に内部まで来れてしまうと・・・・やはり、疑わざるをえなくなる・・・。
 キングの奴らは、何か罠を仕掛けているのか・・・・?」

「小せぇこと言ってんじゃねぇよ、リオーゼ。男なら、そこに罠があったとしても、
 突き進むのみだろ」

「・・・・それは、男ではなく、野人の発想だということを胸にしまっておけ、エクス。
 隊長、どう思われますか?」

「・・・・・じゃが、何の動きも見られん。このままならば、無事に辿りつけそうじゃが・・・」

「・・・?た、大変だぁーーーー!!!侵入者がいるぞぉおー=−!!!」

「い、いかんっ!!見つかった!」

最高の展開に待ち受けるは、最悪の展開。兵士の一人に、気づかれてしまうナポリュート。
その声に反応する兵士達。兵士達は急いで、戦地で戦っている兵達にそのことを
伝えにいく。

「お、おい!!どうすんだよ、隊長っ!!バレちまったぞ!」

「っく!・・・ま、まずいことになった。外では、何十万というトランプスの兵が戦っている。
 たった数千の兵でもこちらに来られれば、僕達は負けるっ!!」

「・・・・ッ!!・・・あ、あと・・・・もうすぐっ!!何百・・・・違う、何千という
 トランプスの兵が、こっちに向かってくる!ど、どうしよう・・・・・皆ぁ!」

「何っ!このみの未来予知が、トランプスの兵を感じたのか!?・・・・
 くそっ!ここまで来て・・・・僕達は、何の役にも立たなかったということか・・・!?」

このみの未来予知によって、何千というトランプスの兵がこちらに攻めてくるのを
知ったナポリュート。たった四人で、何千という敵を相手にすることなど到底不可能。
確実に、負けることは見えているのだ。

 ゥォォォォォォオオオ!!!

「た、隊長っ!!もう、トランプスの兵の雄たけびが、すぐ目の前まで迫って
 きてるぜ!?どうすんだよ・・・俺達、ここで終わっちまうのかよ!?」

「・・・・しかたない、エクスっ!僕達で、何とかするしかない!全精力を
 出し切れ、エクスっ!!」

「わ、わかってらぁあ!!何百だろうが・・・・何千だろうが・・・・来てみやがれ・・・・!!
 アカツキ軍の皆から貰った勇気は・・・・絶対に無駄にはできねぇんだ・・・!!」

戦闘の構えをとるエクスとリオーゼ。迫りくる、何千という敵兵。正直なところ、
エクスとリオーゼも勝てるとは思っていなかった。わずかに震える二人の肩。その後ろで、
心配そうに見つめるこのみ。すると・・・・・・。

「・・・・・これこれ、エクス、リオーゼ。何をしとるんじゃ?」

「ッ!た、隊長!・・・・僕達が、時間を稼ぎます!このチームの中で、スタミナのある
 僕とエクスが、こらえて見せます!」

「隊長、あんたにすべてをまかしたぜ!ついでに、このみの命もなっ!!」

「・・・・これは、イカんのぉ・・・・・。二人共、ちょいと、どいてくれんかのぉ・・・・。
 これからは、ワシの見せ場じゃ」

「ッ!!」

流厳の言葉に驚く二人。流厳がやろうとしていることは、すぐにわかった。だからこそ、
二人は驚き、どうしようもなく、流厳を見た。流厳はいつもと同じように、やさしい顔で、
二人を見る。

「ホッホ・・・・・ちょいと、死ぬかもしれんが・・・・・任せてくれんかのぉ?・・・・。
 若い二人にばかり、カッコつけさせてばかりじゃ、イカんのでなぁ・・・」

「な、何を言っているのですか、隊長っ!!相手は、何千という兵隊ですよ!?もしかしたら、
 幹部も混ざっているかもしれない。それを・・・・あなた一人で何とかすると
 言うのですか!?」

「ふざけんなよ隊長っ!!あんた、死ぬ気なのかよ!言っただろ、皆で生還するんだっ!!
 誰一人、死なせちゃ言けねぇんだ!」

「・・・・・約束する・・・・・また必ず・・・・おまえらに会う・・・・・!
 必ずじゃ・・・!!だから・・・・心配なんて、せんでいい・・・・・・・・・・
 ワシは・・・・・・おまえらの・・・・隊長じゃ」

「た、隊長・・・・!!」

二人は、流厳の姿を目に焼き付ける。流厳の覚悟は本物だった。エクスとリオーゼは
未だ、戸惑いを隠せない表情で、その場に立ち尽くす。このみも、何が起こっているのか
わからずに、心配そうに見つめる。

「ほれ、何をしてるんじゃ!・・・・行くんじゃ、エクス、リオーゼっ!!
 皆の未来を・・・・・・・守るんじゃぞ・・・・・・!」

「た、隊長・・・・あ、あんた・・・・!!」

「・・・・・っく!!エクス、行くぞっ!!」

「・・・・ぜ、絶対だからな・・・・・絶対、また会うんだからなっ!!約束破ったら、
 口聞いてやらねーからなっ!!」

「・・・・ホッホ・・・・それは、怖いことじゃ・・・・・・・・・・。
 (そうとも・・・・また会える・・・・・3人共な・・・・・・・・・・・。
 夢の中で・・・・・・また・・・・・会える日まで・・・・・・・)」

そして、エクスとリオーゼはこのみの所まで行き、急いで城の奥へと移動しようとする。
このみは、何が起きたのかわからずに必死にリオーゼやエクスに尋ねる。なぜ、
隊長が残っているのかと。

「エ、エク兄ちゃん!!リオーゼっ!!ま、まだ・・・・まだ隊長が残ってるよ!!
 隊長が・・・・・隊長が・・・・・・死んじゃうよっ!」

「・・・・・このみっ!聞くんだ。隊長は、死なない!僕達と、必ずまた会うと約束もした。
 し、心配なんて何もないだろ?だって・・・・僕達の隊長なんだぞ、このみ?」

「・・・・・・う・・・・うぅ・・・・!!」

「・・・・・リ、リオーゼっ!!このみっ!!行くぞっ!も、もう、時間がねぇえ!!」

ほとんど涙目のエクスとリオーゼ。しかし、彼らは泣く事はなかった。このみの前
だからだ。3人は、本城の置くへと進む。流厳を残して。迫り来る何千の敵が、
肉眼でもハッキリと見える。流厳は、静かに微笑む。

「ウォオオオオオオオオ!!!」

「(・・・・・ようやく・・・・・行ったのぉ・・・・・・みんな・・・・・・・。
 ・・・・なんて・・・・・綺麗な空じゃぁ・・・・・こんな・・・・・・・
 こんな状況でも・・・・・・空は・・・・・・青いのじゃなぁ・・・・・・・・。
 さぁ、行こうか・・・・西城流厳・・・・・
 ・・・・・ナポリュート隊長として、皆を守り抜く・・・・・!」
 


55 :匿名 :2008/04/27(日) 20:11:04 ID:onQHWiL3

〜 Beautiful... その1  〜

流厳は、隊長としての背中をエクス達に最後まで、堂々と見せ、光の中へ消えていった・・・。
エクス達は、流厳の断固たる決意と覚悟に報いるために、必死にキング達のいる場所へと
走った。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・いったい、何処にキングの奴らはいやがるんだっ!
 進んでも、進んでも、まるで何も無ぇじゃねぇか!!」

「いや、エクス!僕達はどんどん近づいてきているハズだ!感じる・・・・・
 何か、冷ややかな寒気が・・・・美とは正反対の、胸をざわつかせる暗闇をっ!」

「あっ!エク兄ちゃん、リオーゼっ!前に、大きな扉があるよ!」

3人は、大きな扉の前まで辿り着いた。そこでいったん、足を止めて息を整える。
この先が、キングのいる場所かもしれない。そうだとしたら、緊張せずには
いられなかったのだ。

「こ、ここが・・・・キングのいる部屋だってのか!?」

「・・・・断言はできないが、その可能性は低くない。僕達はずっと走ってきた。
 そろそろ着いてもいいころなんだ。・・・・・この扉の向こうに、キングの四人が
 いるかもしれない・・・・」

「こ、このみ・・・・・おまえは・・・・・」

「私、絶対についていくからねっ!隊長も命がけて、戦ってるんだもん!私だけ、
 皆を見守るなんてできないよ」

「・・・・・へへ、わかってんよ・・・・。開けるぜ、扉・・・・・・・。
 待ってやがれ・・・・・キング・・・・・!!」

ギィイイイイ
3人は、一斉に大きな扉を開ける。鍵などはかかっていなく、すんなりと開いた。
初めは光で部屋の中に何がいるかまるでわからなかった。そして、そのすぐ数秒後、
部屋の中に誰がいるのかがわかった。

「・・・・こ、こいつらは・・・・・!」

「・・・・こいつが、主人公らしいね。キャリー・クインシー。どうも、僕の想像とは
 ちょっと違うイメージだったという不に落ちない結果だったかな。君はどうだい?
 キャリー・クインシー」

「そうね、クロフォード。私もお世辞にも、違うと否定することはできないわ。
 けれども、油断するという行為はしない。いや、させないわ。彼らには、一度、
 痛い目に会っているのですからね・・・・」

「(こ、こいつら・・・・一体、何者なんだ!?)」

戸惑う3人。そう、彼らは「クロフォード」と「キャリー・クインシー」。この二人は、
間接的にはナポリュートと一度、対戦しているのだ。しかし、お互い顔を見なかったので、
彼らが何者かはナポリュートはわからなかった。

「おやおや、キャリー・クインシー。どうやら、彼らはおこまりのようだ。僕達のことを
 まるで覚えていないようだ。気づかせてやってもいいかい?キャリー・クインシー」

「そうね、クロフォード。私達が一方的に覚えているというのも、何故か敗北感が
 感じられるわ。一番わかりやすい方法・・・・やってみなさい、クロフォード」

「了解だ、キャリー・クインシー。・・・・・ブルー・エア・・・・!!」

すると、部屋の中に大量の魚達が出現し、部屋の中を悠然と泳ぎだす。その光景
を見て、3人は直感する。そう、ようやく気づいたのだ。彼ら二人のことについて。
彼らと戦ったのは、車の上で・・・・・。

「リ、リオーゼ・・・・周りに、魚達がうようよ、泳いでいやがるっ!!・・・・
 こ、これってよぉ・・・・・まさか・・・・!!」

「・・・・トランプス・・・・スペードの11と、12っ!!僕達の任務を邪魔しに
 来た者達かっ!」

「え、え、えっ!!?スペードの11と12って・・・・あの、ウォーライズに手紙を
 届けるっていう任務の時、私達を襲撃した・・・・・・・あのバイクの二人組み!?」

「・・・・ようやく、気づいてもらえたようだね、キャリー・クインシー。
 彼らが、僕の能力を見ただけで、思い出せてもらって、何か勝ち誇った気分になったよ」

「そうね、クロフォード。私達は彼らに苦い思いを味あわさせられた・・・。
 トップ2の二人が、任務を失敗という恥をね。ここで、恨みを晴らさないわけにはいかないわ」

ジャックこと「クロフォード」、クイーンこと「キャリー・クインシー」。トランプスの
幹部で最上級クラスの11と12が、ナポリュートの前に立ちはだかったのである。
焦る、3人。

「お、おい!リオーゼっ!どうすんだよ、11と12って・・・・・・
 こ、こんな・・・・・こんな時に・・・・・何で・・・・・!!」

「焦るな、エクス!最善の策を今、考えているところだ!」

「で、でもリオーゼっ!私達がここで戦ってたら、いつまでたってもキング所へは行けないよぉ!
 それに、外の皆も、もう限界かもしれないし!」

「(っく!ど、どうすれば良いんだ・・・・。トランプスの11と12!この二人と
 戦って勝ったとしても、その分、時間と体力をかなり消耗してしまう!・・・・
 何とか・・・・時間をかけず・・・・さらに、体力を消耗させない策があれば・・・・!!)」

どうすればいいか迷うリオーゼ。流厳がいない今、エクスとこのみはリオーゼに頼る
しかないのだ。リオーゼもそのことを十分承知しているからこそ、余計に焦った。
その様子を、微笑しながら観察するクロフォードとキャリー・クインシー。

「フフ・・・・焦ってる、焦ってるね、キャリー・クインシー。ようやく、何か
 僕の心の中にしめついていた黒い物が取れた感じがするよ。彼らの今にも、泣き出しそうな
 表情・・・・見たかい?キャリー・クインイシー」

「そうね、クロフォード。視力がよほど悪いない以上、嫌でも彼らの焦る表情は伺えるわ、
 クロフォード。さて、ここから彼らがどういう判断をするのが、見ものよ」

余裕のクロフォードとキャリー・クインシー。彼らは、戦争には参加せず、じっとこの時を
待っていたのだ。もしかしたら、これはキングの命令なのかもしれないが・・・・。
すると、リオーゼが何かに気づいたように顔を上げる。

「(ッ!!・・・・こ、これしかない・・・・・美を最大限に生かすためには・・・・
 これを実行するしかない!)」

「?・・・ど、どうしたんだよ、リオーゼ。何か、良い案でも浮かんだのかよ!?」

「・・・・あぁ、とても良い作戦を思いついた。エクス、このみ、あの扉が見えるか・・・?」

「?・・・と、扉って、あの二人の後ろにある扉のこと?リオーゼ」

「そうだ。そこに向かって、全速力で走るんだ、エクス、このみ」

「ッ!!」

リオーゼの突然の発言に少々、驚く二人。まだ、二人はリオーゼが何を考えているか
まるでわからなかった。しかし、リオーゼはそんな二人の表情も気にせず、自分の作戦を
実行しようとしていた。

「ちょ、ちょっと待てよっ!俺とこのみはその扉で進むってことで良いけどよぉ・・・・
 おまえは・・・・・・どうすんだよ・・・・・?」

「・・・・え?・・・ま、まさか・・・・・リオーゼ・・・・・!」

「・・・・・安心しろ。少し、ここに残るだけだ。すぐに後を追う」

「ッ!!!・・・・な、何言ってんだよ、リオーゼっ!!!」

エクスは怒りをあらわにして、リオーゼの胸グラを掴む。リオーゼはまるで抵抗しなかった。
自分の言っている言葉によって、エクスが怒ることなど、わかりきっているからだ。
そして、このみが悲しむことも。

「てめぇ、ふざけんなよっ!!おまえ程度が、あの二人に勝てると思ってんのか!?
 ふざけんな!調子に乗るのも良い加減にしろよ!」

「そうだよ、リオーゼっ!リオーゼは能力も持ってないんだよ?相手は幹部の11と12で、
 能力者なんだよ?リオーゼ、死んじゃうんだよ!?」

「(・・・・・・・・・・そう・・・・・わかっていたことだ・・・・・・。
 エクス、おまえが怒ることも・・・・・・このみ、君が悲しむことも・・・・・。
 すべて・・・・・・・わかっていたことだった・・・・・・・)」

「おいっ!リオーゼっ!てめぇの美はこんなもんなのか!?カッコつけて、死ぬことが
 てめぇの美なのかよ!?おい、答えろ・・・・・答えろよぉ、リオーゼっ!!」

「・・・・・・・・フン・・・この単細胞め・・・・・誰が死ぬと言った?
 バカな・・・・この美の集大成、リオーゼ・トラフィクトが、こんな汚い場所で
 命という可憐な花を散らすというのか?・・・・・・冗談は顔だけにしろ、エクス・・・」

リオーゼの発言に再び驚くエクスとこのみ。決して、リオーゼは命を捨てて、エクスとこのみ
をキングの所に向かわせるのではない。リオーゼは、ただ、作戦上、この方法がもっとも
良いと理解したからこそ、実行しようとしたまでなのだ。

「リ、リオーゼ・・・・・て、てめぇ・・・・・・」

「・・・・早く、行けっ!エクス、このみ!僕が・・・・あの二人を押さえる。
 そのうちに、キングのもとへ行け・・・・・!」

「リ、リオーゼぇ・・・・・リオーゼも、死なないよね?絶対、絶対、死んじゃわないよね?」

「・・・・っフ・・・・そうだな、このみ・・・・・。あの鏡・・・・まだ使っているのか?
 まったく、僕は変えろと言っているのに・・・・・・・・。けれど、その優しさが・・・・・
 美だということには変わりはないがね。・・・・・僕は、生きる。美の如く・・・・ね?」

「・・・・・おい、リオーゼ・・・・・」

「・・・・エクス・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・リオーゼ・・・・・・・ちっと我慢しやがれっ!!」

「ん?・・・・ぐぅうう!!」

エクスは、リオーゼに向かって思い切り右の拳で、殴った。顔を真横に揺らすリオーゼ。
殴られた左頬は、赤くはれている。そのリオーゼの姿を見て、真剣な顔で、エクスは
言う。

「・・・・・一発、てめぇーを殴った。・・・・・ムカツクなら、殴り返してみろ・・・・!
 この戦争が・・・・・終わった時によぉ・・・・!!」

「・・・・・・ッフ・・・・・エクス・・・・・君らしいな・・・・・。
 けれど・・・・・殴るのが駄目ならば・・・・・・・・・・蹴りを入れるまでさっ!!」

「ぐはっ!!・・・・て、てめぇえ!!やってやろうじゃねぇえか!!」

「フン、来てみろ、エクスっ!」

しばし、乱闘が続く。お互い、喧嘩になってしまう両者。そう、二人が話せば、必ず
噛み違いが起きて、言い争いになる。それが、エクスとリオーゼ。それが、二人の仲なのだ。
それは、誰もが知っていた。

「エ、エク兄ちゃん・・・・・リオーゼ・・・・か、顔が・・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・ップ、ワハッハッハッハハハハッハハ!!
 リオーゼっ!顔、最高だぜっ!かっこよすぎだぜ、その腫れ具合が!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・フフ・・・・・ハハハッハハハーッ!!・・・・
 君こそ、内なる野人の魂が、ついには顔にまで表現されたぞ!」

「あんだとっ!!」

「何か文句があるのか!?」

「も、もうやめてぇーー!!二人共!」

このみが急いで二人を止める。これから戦うというのに、喧嘩を始めてしまう二人に、
どうすることもできないこのみ。そんな3人を、不思議そうに見るクロフォードと
キャリー・クインシー。そして、エクスはこのみの手を取る。

「・・・・っけ!・・・・このみ、さっさと行こうぜ。もう、こんな奴の顔なんて、
 見たくもねぇ」

「・・・・それは光栄だな、エクス・コールド。・・・・その醜態顔、僕の前に二度と
 見せるなよ」

「ふ、二人ともぉ・・・・・・」

「?・・・キャリー・クインシー。僕にはまるで理解不能だよ。彼らは、世間に言う、
 喧嘩というものをやっていたのかい?こんな事態に」

「そうね、クロフォード。弱者の心理状況なんて考えるだけ、無駄で無意味だけど、
 ただ言えることは、馬鹿ってことだけね」

エクスは、このみを連れて、扉まで進もうとする。リオーゼもエクスも、お互い、
最後の挨拶になってしまうかもしれないのに、何も言おうとしない。ある意味、
最悪の展開になってしまった。

「ちょ、ちょっと待って!エク兄ちゃん!これで、良いの?本当に、こんな仲が悪い
 雰囲気で・・・・も、もしかしたら・・・・・最後かもしれないんだよ!?
 リオーゼと会えるの!!」

「・・・・・・・それが、どうしたんだよ・・・・・あんな奴・・・・どうでも良いし・・・・」

「そ、そんな・・・・・エク兄ちゃん・・・・・」

こうして、エクスとこのみはリオーゼから距離を置く。扉にすぐにでも入れるように。
それを見たクロフォードとキャリー・クインシーはそれとなく、ナポリュートが考えている
ことを理解した。

「おやおや、キャリー・クインシー。どうやら、二人と一人で別れて別々に行動するようだね。
 どうやら・・・・・僕達の相手が、あのただの人間というのが気に食わないけど・・・・
 君はどうだい?キャリー・クインイシー」

「そうね、クロフォード。今は彼らの策に合わせるわ。あの人間を瞬殺してから、先に行った
 主人公と女を追いかける。これで、良いわ」

キャリー・クインシーとクロフォードはいとも簡単に、エクス達を通す。そして、エクスは
慎重に、このみを連れて扉まで辿り着く。結局、エクスとリオーゼは、最悪の仲のまま
分かれることとなった・・・・。

「エク兄ちゃん!何か、相手の二人共、私達の所を全然気にしてないよっ!」

「・・・・・どうやら、俺達を素通りさせてくれるようだな・・・・・ったく・・・」

「・・・・・エ、エク兄ちゃん・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・っち!!」

エクスは、振り向く。リオーゼの方を。リオーゼはいつもと変わらぬ顔で、移動する
二人を見守っていた。エクスは、そんなリオーゼの目をじっと見る。リオーゼも
真剣な顔で、エクスを見る。

「・・・・・おーいっ!!リオーゼっ!!・・・・パーティーの時、肉よこせよっ!!」

「・・・・・・・・・ッフ・・・・・・死んでもやらねぇよ・・・・・バーカ・・・・」

「・・・へ、へへ・・・」

「・・・・・ッフ・・・フフ・・・」

お互い、理解しあった瞬間。いや、始めから二人は言葉など交わす必要など無かった。
もう、喧嘩で殴り合っている時に、何百という会話をしていたのだ。エクスとリオーゼだけは、
すべてを理解していた。

「「 またなっ!! 」」

こうして、エクスとこのみはキングの部屋に向けて扉から出る。そして、残された
リオーゼは、クラブの11と12、クロフォードとキャリー・クインシーに、一人で
戦うこととなる。


56 :匿名 :2008/05/04(日) 20:00:22 ID:onQHWiL3

〜 Beautiful... その2  〜

リオーゼは一人、トランプスの幹部、スペードの11と12の目の前に立つ。その顔に、
迷いは無い。ただ、目の前にいる二人をただじっと、睨みつける。そのリオーゼの姿を見て、
笑みがこぼれる二人。

「ッフ。キャリー・クインシー。どうやら、行ったみたいだね、主人公が。
 早くこの人間を殺して、主人公を追わないと、キングの所に辿り着くかもしれないという
 不安感を消すためにも、早急に奴を始末したいという考え・・・・どう思う?」

「そうね、クロフォード。私達が、あのバイクでの追跡任務に失敗した時の恨みも
 込めて、彼を殺せたら最高でしょうね。やってくれるかしら、クロフォード」

「文句は無いよ。率先して、あいつを殺そう。さぁ、行くよ。ブルー・エアっ!」

空を泳ぐ魚達の中の数匹が、リオーゼの方を見る。それは、さきほどとはあきらかに
違う目つきをしていた。その目は、獲物を狙う目。食料を欲するときの目であった。
それを見て、リオーゼはゆっくりと2刀の剣を取り出し、構える。

「・・・・おしえてやろう、クロフォードとやら・・・・。なぜ、サメなどの魚が、
 恐れらているのか・・・・・・。そう、それは・・・・・・水中という、人間の身動きが
 不十分な状態だからこそ、恐れられているのだ・・・・・・・」

「?・・・・何を言っているんだ、あいつは。フン、関係ないとしよう。サメよ・・・。
 獲物をかじれ・・・・!」

「・・・・・・ッフ・・・・・愚かな・・・・・・。このリオーゼ・トラフィクトの・・・・
 美の舞を・・・・・お見せしよう・・・・!」

3匹のサメが、リオーゼに向かって突進してくる。それを真剣な表情で、見るリオーゼ。
次の瞬間、3匹のサメはリオーゼの2刀の剣によって頭を真っ二つにされていた。
それを見て、驚くクロフォード。

「ッ!!・・・・さ、3匹のサメが・・・・一瞬にして・・・・やられた・・・?
 フフッ、おもしろい人間だね、キャリー・クインイシー。どうやら、ちょっとは楽しめそうだよ」

「そうね、クロフォード。だけれど、卑屈な悪党は、そういう台詞を発しながら、息絶えるのが
 セオリーよ。あなたはそうならなければ良いけれどね」

「・・・・・・言っただろう。地上では、僕も完全に動ける・・・・・!!
 何匹サメが来ようと、鮮血の美・・・・・散らして見せましょう・・・・・・・!」

「フンっ!・・・・なめた口を聞く、人間だ。ジャッククラスに対してな」

リオーゼは、サメ攻撃を圧倒した。それはある意味、クロフォードの攻撃対処法を
見事に攻略したかのように思えた。しかし、リオーゼが気になるのは、未だ能力が
明かされていない、キャリー・クインシーの方だった。

「(僕の予想だと、クロフォードは、前のように大ダコの足の攻撃はしないハズだ・・・!
 ここはトランプスの本城!大ダコの足が数本、この部屋まで伸びればこの城もタダでは
 済まされないハズだ!・・・・・この状況・・・・僕に有利・・・・・!!)」

「ッチ、あいつ・・・・僕の弱点、見抜いているようだな。腹立たしいよ、あの歩兵程度が
 僕の能力を攻略するなんて!・・・何か、すでに負けた気分だ!」

「そうね、クロフォード。やはり、この場所ではあなたは不利。じゃぁ、私が手を貸す
 しかないようね。けれど、私が手を貸すことによってあなたは、ある意味、負けたことになるわ。
 それでも、良いのかしら・・・・?」

「良いよ!完全に負けるよりは、不完全に負けた方が、言い訳がきく!」

「そうね、クロフォード。じゃぁ、連携プレーといきましょう・・・!」

「了解、キャリー・クインシー!・・・・ピラニアっ!あいつを引きちぎれっ!!」

クロフォードがしかたなく、キャリー・クインシーの力を頼ることとなる。そうとは知らず、
リオーゼは、大量に襲ってくるピラニアを対処する。リオーゼは大量のピラニアにも
引けをとらず、一撃も攻撃をゆるさない。

「(今度はピラニアっ!やはり、大きさが小さいためか、サメの何十倍も操作ができているっ!
 だが、数が多くても、所詮ピラニア程度っ!僕の敵じゃない!)」

リオーゼは何の迷いもなく、ピラニアを斬り続ける。2刀の剣を巧みに使い、一匹、
一匹に神経を集中させて斬る。だからこそ、リオーゼはあることに気づいてはいなかった。
何かが忍び寄っていることに・・・・。

「(っく!やはり、数が多いとスタミナの消費が激しくなる!だが、しかし!あの二人に
 接近して戦う体力を残しておかなければいけない・・・・・・!)」

・・・スッ・・・

「・・・・良い腕をしているわ。鍛錬された右腕。毎日、剣を振り続けなければ、
 ここまで傷つき、筋肉が付くわけがないわ・・・」

「何っ!!(いつのまに、僕の真横にっ!!)・・・・っく!!離れろぉお!!」

「あらら・・・・・危ない、危ない。もう少しで、当たる所だったわ・・・」

いつのまに、リオーゼの真横に移動して、リオーゼの右腕に触れていたキャリー・クインイシー。
その気配をまったく悟れなかったリオーゼ。それもしかたないだろう。目の前の大量に
迫ってくるピラニアに対処していたのだから。

「(い、いったい何をされたんだ!?とりあえず、今のところ、何も痛みは感じない・・・。
 ただ、奴に右腕を触れられた・・・・・。これは、意図的なものなのか?・・・
 それとも、偶然に触っただけなのか・・・・?)」

「・・・・やったわよ、クロフォード。そうね・・・・もう片方は・・・・・・
 クロフォード、あれはどうかしら?」

「ん・・・・ピアノ、か。良いんじゃないか。やってみてくれよ、キャリー・クインイシー」

「(?・・・・何を言っているんだ、あの二人は・・・・・)」

キャリー・クインシーは近くにあったピアノに近づく。そして、そのピアノにわずかに
触れる。その不思議な行動に、戸惑うリオーゼ。しかし、その謎の真相はすぐに
解明されることなるのだ。

「・・・・さぁ、ピアノよ・・・・あなたの引力・・・・引き付けてちょうだい・・・」

ゴゴゴゴゴゴッ・・・

「!?・・・・な、何だ・・・・ピアノが・・・・わずかならが・・・動いている・・・!?」

ドゴォオオオオオンっ!!

「ッ!!(バ、バカなっ!!ピアノが・・・・僕に向かって、もの凄い勢いで、突進してくる!?
 マズイ!!避けきれない!!)」

ズゴオォオオオオオン!!
ピアノは、リオーゼに向かって突然、突進してきた。その動く早さと、急な動きに対して、
リオーゼは逃げることができなかった。そして、壁にピアノごと叩きつけられたリオーゼ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。(な、何とか・・・・体は・・・・・
 巻き込まれずにすんだが・・・・・・・み、右腕が・・・・・・・・・・・!!
 押しつぶされて・・・・・しまった・・・・・!!)」

「ハッハッハッハハ!心から大笑いできるよ、キャリー・クインシー!見ろよ、奴の右腕。
 あれは、もう2度と使い物にならないな。それに、身動きも取れないとなると・・・・
 笑いが・・・・絶えないよ・・・・キャリー・クインイシー・・・・・!!」

「そうね、クロフォード。とどめは、あなた。過程は私。この流れを守ることも、
 重要よ。仕留めなさい、クロフォード」

「了解しましたよ、キャリー・クインシー!」

リオーゼの右腕が、逃げ切れずピアノの衝突に巻き込まれ、使用不能となってしまう。
こうして、リオーゼは5体満足に戦うことはできなくなってしまったのだ。しかも、
さらに追い討ちをかけるかのように、クロフォードの攻撃が続く。

「(っく!!マ、マズイ!!・・・・右腕が、ピアノに押しつぶされて、逃げられないっ!!
 な、何とかしなければ・・・・僕は、ここで死んでしまうっ!!)」

「さぁ・・・・・ブルー・エアの本領発揮さぁ・・・・・サメよ、獲物を喰らえっ!!」

「(こ、こんな所で・・・・終わるわけにはいかないっ!!)」

襲い来るサメの集団。しかし、ピアノにまきこまれた右腕のせいで、動けないリオーゼ。
リオーゼは決意する。そして、振るえる左手で握り締めた剣を持ち、とある行動をとる。
これは、まさに最後の手段。

「ぐぅうっ!!!・・・・・っぐ!!・・・・・くぅ・・・・・・」

「っ!!!・・・・ハ、ハハ、ハ・・・・み、見たかい?キャリー・クインシー。
 あ、あいつ・・・・自ら、右腕を切り落としやがったよ!!」

「そうね、クロフォード。彼は、最悪の手段で、最高の選択をしたということね」

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・!!(ま、まさか・・・・・
 自分の・・・・右腕を・・・・切り落とすなんてな・・・・・考えも・・・・・・
 し、しなかった・・・・・・・・・!)」

「・・・・・・聞いてやるよ。歩兵。おまえのその馬鹿な行動・・・・僕にはまるで
 不思議だ。聞いてみて納得するかもしれないから、博打程度の気分で、聞くよ。
 なんでおまえは、そこまでして戦おうとする・・・・?」

クロフォードは、リオーゼに尋ねる。確かに、トランプスの11と12と戦う時点で
かなり不利な状況なのに、リオーゼは、右腕を失ってまでも戦おうとする。その
「希望」が何処から生まれるのか、クロフォードは知りたかった。

「・・・・ハ、ハハハ・・・・・・馬鹿な・・・・行動・・・・か・・・・・。
 だが、僕は・・・・・そんな馬鹿な行動に・・・・・美を感じ・・・・・・・
 そんな自分自身を・・・・・美しいと思う・・・・・!!」

「・・・・・・美しいだとぉ?何が、美しいだよ。おまえだってわかってるだろ?
 ジャックとクイーンクラスに、歩兵一人が勝てることなど、未来はゆるすわけがない」

「・・・・・・・・そう・・・かもな・・・・。だが、・・・・ただ一つ・・・・
 僕は・・・・ただ一つ・・・・!!・・・・やらなければ・・・・・いけない・・・
 ことがある・・・・!!」

「・・・・・聞いてやるよ、今度は僕が。言ってみな、歩兵」

「・・・・・・・・明日の・・・朝日という・・・・輝き・・・・・!!
 おまえらに・・・・・見せるわけにはいかないのさっ・・・・!!」

「っ!!・・・・・な、何だとぉ・・・・僕達を、殺すつもりだと言うのかぁ?
 そんな怪我をして、こんな状況で、僕達を殺すというのか、歩兵っ!!」

「今こそ、自分が信じた美を咲かせる時・・・・・!!今こそ、未来を切り拓く時・・・・!!」

リオーゼは片腕で戦う。迫り来るサメに対し、血の出血が止まらない右腕部分の痛みを
必死にこらえながら、リオーゼは戦う。その姿に、さきほどまでの余裕の表情はない
クロフォードとキャリー・クインイシー。

「イ、イカれているのか・・・?キャ、キャリー・クインシー!ぼ、僕は・・・・
 奴にとどめを刺す!今後一切、文句は無いな!?」

「そうね、クロフォード。今の奴なら・・・・簡単にとどめをさせそうね。けれど、
 最後まで気をゆるめず、最後まで誇りを忘れずにね、クロフォード」

「わかっているよ、キャリー・クインイシー!行けぇ!サメ共っ!!」

「(か、片腕で・・・・満足に・・・戦えるワケなど・・・・・無い・・・・・・・。
 けれど・・・・戦うことに、意味がある・・・・・!・・・・そう、言ってたな・・・・。
 ッフ・・・・・・馬鹿が・・・・うつっちまったよ・・・・・・。さぁ・・・・・
 行こうか・・・・・リオーゼ・・・!!美しく・・・・・舞ってみようぜ・・・・!)」


57 :匿名 :2008/05/11(日) 20:12:27 ID:onQHWiL3

〜 Beautiful... その3  〜

右腕を失ってもなお、戦うことをやめないリオーゼ。ただ、勝ちたい。ただ、戦いたい。
ただ、美しくなりたい。その一心で、リオーゼは戦い続ける。そんなリオーゼを
踏みにじるかのように、クロフォードの「ブルー・エア」は襲いかかる。

「(左にサメが1匹、右にサメが2匹っ!!挟み撃ちか!?くそ、どちらが早いか
 計算して、武器が持てる左腕を有効に使わなければっ!!)」

「な、なんでだよ・・・・。お、おかしいよ、キャリー・クインシーっ!何で、
 あの状態で、あいつは戦えるんだよ!?大量出血で死んでもおかしくないだろう!?」

「そうね、クロフォード。私からは、その台詞。私に助けてもらいたいと言っている
 ようにしか聞こえないわ。どう?ハッキリ言いなさい。助けてもらいたいか、
 もらわなくていいのか?」

「・・・・・・助けてくれよ、キャリー・・・・クインシー!!」

「そうね、クロフォード。・・・・それで、良いのよ」

リオーゼはもう、全神経をフルに活動させて戦うしかなかった。自分を見ている
クロフォードとキャリー・クインシーなどにはかまっていられなかった。もう、さきほど
まで余裕で倒せていたサメが、今では恐ろしい強敵となっているのだ。

「(く、くそっ!・・・・い、意識が・・・・朦朧としてきた・・・・・・!!
 出血が、激しい!・・・・・このままでは・・・・何もできずに、倒れてしまう!)」

「あら、ワリと良い顔してるじゃない。敵じゃなかったら、お付き合いを申しこんでいたかも」

「!?き、貴様・・・・近寄るなっ!!」

「あらら・・・・振られちゃったわね。けど、これでもうあなたは・・・・お終いよ」

再び、リオーゼの所まで忍び寄っていたキャリー・クインシー。未だに、リオーゼは
さきほどの「ピアノ」の衝突の原因がわからなかった。だからこそ、よけいに
焦った。

「(ま、まずい・・・・今度は、顔を触られた・・・・!!奴の能力が解読できない!
 しかし、このままでは・・・・腕と同じように・・・・・僕の顔も・・・・・
 押しつぶされてしまうような気がする・・・・!!)」

「このまま何も知らないあなたにトドメを刺すというのは、クイーンのやることではないわ。
 だから、正々堂々と戦った証として、私の能力をおしえてあげる」

「な、何だと・・・・・!!」

「私の能力は、マグネット・ラブ。右手に触れたものは+極になり、左手に触れたものは−極に
 なる。簡単な能力でしょう?」

「(そ、そうかっ!それならば、説明がつく!僕の右腕に触れ、+極にして、そして、
 ピアノを−極にすれば・・・・それは、強力な磁場で引き合うっ!!・・・・・
 つ、つまり・・・・・そ、それは・・・・・!!)」

「そうよ。あなたの顔をマイナス極にした。もう・・・・お終いでしょ?あなたの人生」

キャリー・クインシーの能力、「マグネット・ラブ」の能力を知ったリオーゼ。
しかし、それでもどうすることもできないことはわかっていた。すでに、顔をマイナス極に
されてしまったリオーゼ。最大のピンチだったのだ。

「(ど、どうすれば良いんだ・・・・・。今度、奴がナイフにでも、プラス極にしたら・・・
 それでも、僕は死んでしまうっ!!・・・・このサメを相手にするだけでも、精一杯なのに、
 磁場で引っ張られる物にかまっている余裕など無いっ!)」

「くやしいけど、君の方がやはり上のようだね、キャリー・クインシー。
 この場は、君の判断が正しいと認めるしかないよ」

「そうね、クロフォード。それが、ジャッククラスの成すべき言動よ。覚えておくことね」

「(だ、駄目、か・・・・・・。すみません・・・・・皆・・・・・・・。
 僕は・・・・・もう・・・・・駄目のようです・・・・・・)」

リオーゼの目から光が失われる。今度こそ、もう駄目だ。そう思った瞬間、何もかも、
絶えてきているものが噴出しそうになった。リオーゼの体ももう限界。死ぬのも一つの、
快楽だと思ってきたのだ。

「(・・・・ッ!!!・・・・・ぼ、僕は・・・・・何を言っているんだ・・・・?
 こ、この醜態めっ!!そうだ、僕はどうかしていた!・・・・アカツキ軍の皆が、
 ナポリュートのために血を流し・・・隊長が僕らのために、命を投げ出している・・・!!)」

「?・・・・あの歩兵、目が・・・・・」

「(そうだ、僕は・・・・この戦争中、何度もあきらめた・・・・・・。
 何度も、駄目だと思い、何度も、死ぬことを覚悟した・・・・・!!
 ・・・・なんて・・・・なんて汚いんだっ!・・・・そのヤワな精神、僕は自分を恥じるっ!)」

「そうね、クロフォード。目が・・・・・生きてきたわ」

「(もう、あきらめないっ!僕は、戦うんだっ!本当の、真実の美を輝かせるためにも!
 僕は・・・・・・今、戦うしかないっ!)」

「・・・・な、なんか知らないけど・・・・キャリー・クインシー!!早く、トドメを
 刺した方が良い!あの歩兵、何か嫌な気分だっ!」

「(この戦いに勝てるなら・・・・・・明日、心臓が動いていなくてもいいっ!!)」

リオーゼは、意を決したようにクロフォードとキャリー・クインシーに向けて、猛ダッシュする。
不意をつかれて、慌ててサメを操ろうとするクロフォード。その様子をただ、余裕の表情で
観察するキャリー・クインシー。

「何っ!?あの歩兵、僕達に向かって突進してきた!?・・・は、速いっ!!」

「そうね、クロフォード。けれど、トップ2ともあろう者が、この程度で
 焦っては駄目よ」

「(流れを奪いとるためには・・・・・あの女を倒すしかないっ!!)」

「ッ!?キャ、キャリー・クインシー!!狙いは君だっ!僕のサメが間に合わないっ!
 ガードしろっ!!」

「そうね、クロフォード。けれど、その必要はないわ・・・・。左手を出すだけで・・・・
 すべてが解決するわ」

力を振り絞り、キャリー・クインシーに向かって突進するリオーゼ。しかし、
キャリー・クインシーは焦ることもなく、リオーゼに向けて左手一本伸ばしているだけだった。
そして、ついにリオーゼがキャリー・クインシーの目の前まで来たが・・・・。

「(間合い、取ったっ!!・・・・・・・っぐ!!?)」

「甘いわね。良い?あなたの顔はマイナス極になっている。つまり、私があなたの顔に
 向けて、左手のマイナス極を差し出せば・・・・・・」

「(は、反発、するっ!!・・・・ひ、引き離されるっ!!!)」

「さ・よ・な・ら。美を愛する毒者よ」

「うわぁああああああ!!」

リオーゼは、吹き飛ばされてしまった。リオーゼの顔はマイナス。そして、
キャリー・クインシーの左手もマイナス。当然、反発するのはワケがない。壁に激突して、
倒れこむリオーゼ。

「ハ、ハハ・・・・。心配する必要は無かったね、キャリー・クインシー。やっぱり、
 クイーンであることだけはあるね」

「そうね、クロフォード。さぁ、倒れている彼に、トドメを刺すことね、クロフォード」

「了解、キャリー・クインシー」

キャリー・クインシーは余裕の表情で、クロフォードに命じる。確かに、もうすでに
リオーゼは戦える状態ではない。右腕部分の出血が酷いのだ。このままでは、命に
関わってきてしまうのだ。しかし、リオーゼはゆっくりと立ち上がる。

「ッ!!・・・・キャ、キャリー・・・クインシー・・・・あの歩兵・・・・
 まだこちらに向かってくるぞっ!!」

「そうね、クロフォード。だったら、また私が吹き飛ばしてあげるわ。問題ないでしょ?
 あなたが問題を作らないかぎりね」

「わ、わかってるよ。キャリー・クインシー。手を出さなければ良いんだろう」

「はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・。
 (チャンスは・・・・ある・・・・・。僕は・・・・可能性を・・・・残してきた・・・・!
 見せて・・・・やるよ・・・・トランプス!!・・・・これが・・・・僕の・・・・・
 リオーゼ・トラフィクトの・・・・・美だっ!!)」

リオーゼはゆっくりと近づく。その近づくわけには、理由があった。それをまだ、
彼らは知らない。いや、知るはずがない。クロフォードはキャリー・クインシーに
まかせて、すべてを見ようとしていた。

「(フンっ!バカな歩兵め・・・・。どうせ近づいても、反発されて終わりだと
 言うのに・・・・。待てよ・・・・ならなんで、近づく必要があるんだ・・・・?
 それなら、僕を狙った方がまだ勝機はあるのに・・・・)」

「さぁ、来なさい。天国まで吹き飛ばしてあげるわ」

「(お、おかしいぞっ!!な、何かおかしいぞっ!あの男の目、何かを狙っている感じがする!
 あいつは、あきらめてキャリー・クインシーに近づいたんじゃない!何か・・・・
 罠があるんだっ!)」

クロフォードは何かに気づく。しかし、その「何か」を理解することはなかった。
リオーゼはただ、ゆっくりと近づく。キャリー・クインシーに向かって。キャリー・クインシーは
さきほどと同じように、左手を差し出して、リオーゼが来るのを待つ。

「はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・・・」

「おやすみの時間よ。リオーゼ・トラフィクトさん?人間にしては、頑張ったと褒めてあげるのが
 礼儀だわ。強者には、礼を。基本だわ」

「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・。か、感謝・・・・するよ・・・・・。
 キャ、キャリー・・・クインシー・・・とやら・・・・。褒めて・・・頂き・・・・・・。
 しかも・・・・・・命まで・・・・・・献上して・・・・・くれるのですから・・・・・!」

「な、何ですって・・・・!!」

「キャ、キャリー・クインシーっ!!は、離れろっ!!何か、マズイ気がする!!
 離れるんだ、キャリー・クインシーっ!!」

「(バ、バカなっ!こんなフラフラの人間程度に、トランプス幹部、最高上位、クイーンが
 危うくなるなんて有り得ないわっ!!)・・・・・吹き飛びなさい、リオーゼっ!!」

「・・・・・さぁ・・・・・美しく・・・・・お仕置きしようじゃないか・・・・」

キャリー・クインシーがリオーゼに向けて、左手のマイナス極の引力を発動させる。
リオーゼ、密かに微笑む。そして、クロフォードは何か焦る。これこそまさに、
リオーゼの美しくも可憐な、「罠」だった。

グシャァアアアアア!!

「っ!!キャ、キャァアアーーー!!!け、剣が・・・・剣がぁ、私の手に貫通してる!!?」

「バ、バカなっ!!あの歩兵は、剣を振る素振りなどしていなかったぞっ!!・・・・
 ま、待てよ・・・・剣?・・・剣だとぉ!?・・・・あいつは・・・あの歩いていた時から・・・
 剣を持っていなかった!?」

「ッフ・・・・・どうやら、僕の方が一枚上手のようでしたね・・・・・・。
 あなたに初めて飛ばされた時・・・・・ちょっと、違う所で頑張ってましてね・・・・。
 あなたの余っている右手に・・・・少し、剣を触れさせるようにね・・・・・!」

「な、何ですって・・・・!!」

「それによって、僕の剣はプラス極となった。そして・・・・今、あなたは最大の過ちを
 犯した。・・・・・剣があなたの目の前に落ちている状態で・・・・・・
 マイナス極を極限まで発動させた・・・・・・・・」

「ま、まずい・・・・キャリー・クインシーがやられるっ!!サメ共っ!!早く、
 あの男を襲えっ!!」

「あ・・・・・・あぁ・・・・・・・!!」

「・・・・・・安心しろ・・・・・・リオーゼ・トラフィクトによって・・・・・・
 美しい死を遂げられることだけは・・・・・保障してやるのだからな・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・散れ・・・・・・・!」

そして、リオーゼは素早く剣を拾い上げ、キャリー・クインシーの首を切断する。
その光景を目の当たりにするクロフォード。リオーゼは、倒した。トランプスの幹部、
12、クイーンを。残りはあと一人。果たして、倒せるのだろうか・・・・。


58 :匿名 :2008/05/18(日) 20:08:52 ID:onQHWiL3

〜 Beautiful... その4  〜

リオーゼ、キャリー・クインシーを倒すことに成功。その光景に、ショックを隠せない
クロフォード。急いで、死んだキャリー・クインシーの頭を抱えて泣きじゃくる。
その姿を、朦朧とする意識の中で見るリオーゼ。

「キャ、キャリー・クインシー!!お、起きてくれよっ!君なら、頭だけになっても
 平気だろ!?・・・・またどうせ、下らない文句をつけて、僕をケナすんだろ?
 おい!キャリー・クインシー!誇りあるスペードのクイーンが、何寝てるんだよっ!」

「はぁ・・・・はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・。
 (い、いけな・・・い・・・・。見える・・・・もの・・・すべ、てが・・・・・・
 ボヤけて・・・・・見えて・・・・くる・・・・・・)」

リオーゼは、すでに限界を突破していた。立てているのが不思議な状態。リオーゼは
主人公ではない。奇跡や偶然ではなく、「実力」でここまで戦っている。しかも、
能力も無い、ただの人間が。それだけでも、リオーゼは称えられても良かった。だが・・・。

「・・・・・・・・ハ、ハハハ・・・・・・ハッハハハハハッハハハッハ!!」

「・・・・・?」

「キャ、キャリー・クインシーが・・・・・喋らなくなった・・・・・・。
 こ、これでもう・・・・・僕は・・・・・・誰にも・・・・虐められないんだ・・・・・!
 そうさっ・・・・・感謝するよ・・・・歩兵・・・・・・うれしいんだ・・・・
 殺してやりたいくらいになぁあっ!!」

「(く、来る・・・!?)」

「サメ共っ!!あいつの原型が変化するまで喰い殺せっ!!!」

サメが、今までに無いほどのスピードとパワーでリオーゼに向かって突進してくる。
リオーゼにはもう、力はほとんどない。ただ、残されているかすかな「勇気」によって、
戦うしかなかった。

「キシャァアアアアアア!!」

「ぐぅっ!!!(ひ、左肩・・・・・右太もも・・・・・・右わき腹・・・・・・
 つ、次々と・・・・・・・く、喰われて・・・・・いく・・・・・・・・)」

「ハハハッハハハッハ!!死ね、死んじまえよっ!!歩兵っ!」

「ぐぅうっ!!・・・・・っぐ!!・・・・・ぐぁあああ!!!」

リオーゼの悲痛だけが、その部屋を支配する。しかし、リオーゼは一向に倒れない。
どんなに、傷ついても。どんなに血まみれになっても。リオーゼの体は、赤一色に染まった。
もう、人間ではいられないほど、傷ついて・・・・。

「・・・・・ぐはぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・あ・・・・あぁ・・・・・」

「な、何だよ・・・・・何なんだよ、おまえっ!!何で、立ってるんだよ!
 もう、血塗れだろ!?もう、骨だってほとんど見えている状態じゃないかっ!!
 ・・・・・なんで・・・・・・なんで立つんだよ!!」

「立って・・・・いれ・・・・・ば・・・・・。
 け・・・剣が・・・・・振れ・・・れば・・・・・・・か、勝てる・・・・か、も・・・
 し、・・・しれな・・い・・・・・・。
 ・・・い、今は・・・・・・
 ・・・・・それが、・・・・・もっとも、美しい・・・・・・」

「く、下らない・・・・!!キャリー・クインシーが味わった痛み・・・・・
 存分に味あわせてやるっ!!」

そして、必要以上に続くクロフォードのサメを操った攻撃。リオーゼはそれでも、
何とか耐え、急所だけは攻撃されないように、剣でガードする。もう、リオーゼは
いつ「死んでも」おかしくなかった・・・。

「(こ、このままでは・・・・・・いずれ・・・・急所を・・・・攻撃される・・・・!
 狙うなら・・・・・・今しかない・・・・・!!)」

「っ!?・・・・また、その目。・・・・何か、狙っているな、歩兵っ!!」

「(・・・・・エ、エクス・・・・・・このみ・・・・・隊長・・・・・・・
 マリア・・・・・エル・・・・・皆・・・・・皆っ!!・・・・・・・
 僕に・・・・・・・美しさを、分けてくれっ!!)」

「な、何っ!!こいつ・・・・自分の剣を投げるつもりかっ!!」

リオーゼの最後の手段。それは、簡単なことだった。無防備なクロフォードに向かって、
剣を投げる。当たれば、勝利。しかし、はずれれば、敗北。簡単すぎる攻撃方法に合う、
簡単な結果の出し方。リオーゼは渾身の力を込めて、剣を投げる。

「う、うぉおおおおおおお!!!(剣よ・・・奴を・・・・貫けぇえええ!!!)」

「・・・・・フン、馬鹿じゃないのか」

「ッ!!」

「キシャァアアアアアアア!!」

キィイイン!

それは、必然されたこと。誰もがわかっていたことかもしれない。リオーゼの剣は、無常にも、
クロフォードの操るサメによって、阻止され、剣はリオーゼの近くの地面に突き刺さる。
それを見て、あざ笑うクロフォード。

「フフ・・・・ハハッハハハッハッハ!バーカっ!そんな奇跡みてぇなこと起きるかよ!」

「(サ、サメに・・・・ガード・・・されて・・・・・剣は・・・・・・
 ぼ、僕の・・・・・・・目の前・・・・・に・・・・・・突き刺さって・・・・いる・・)」

「・・・・さぁ〜て。もう良い。サメ共。奴は何も武器を持っていない。後は、
 僕の拳で、あいつの息の根を断ち切るっ!!」

「(・・・・・・・ま・・・・まずい・・・・な・・・・・)」

無常にも自分の近くに突き刺さる剣を見つめて、リオーゼは肩を落とす。ゆっくりと、
リオーゼに向かって近づくクロフォード。もう、今度こそ終わりだった。リオーゼは
武器は何も持っていない。すべてが、終わりを告げる。

「・・・・・歩兵・・・・・殴り殺しにしてやるよぉ・・・・・!!」

「・・・・・・・美化される、準備は・・・・整ったかい・・・・・・?
 さぁ・・・・・・最後の・・・・・美は・・・・・・・開花・・・・・・する・・・・・!!」

「あぁ〜ん?何を言って・・・・・・・」

リオーゼは、わずかに動く。目の前には、クロフォード。そのすぐ真横に移動する。
倒れこむように。すると、クロフォードは動かなくなる。何が起こったのか、まるで
わからないクロフォード。

「・・・・・な・・・・何でだよ・・・・・。こ、こいつ・・・・・・・
 ちょっと・・・・・俺の・・・・・横に・・・・・動いた・・・・だけじゃん・・・・・。
 な、何で・・・・・・俺・・・・・・死んで・・・・んの・・・・?」

「・・・・君は・・・・・・知らない・・・・。剣の・・・・先に・・・・・
 ピアノ線を・・・・くくりつけたことを・・・・・・。そして・・・・ピアノ線の・・・・
 もう端っこは・・・・・僕の・・・手に・・・・・・。わかる・・・だろう?・・・」

「・・・・・・・・・・ハ、ハハ・・・・・・・また・・・・・・
 虐めろよ・・・・・・キャ・・・・・キャリー・・・・・クイ・・・・・・シー・・・・・・」

クロフォードの顔は、真っ二つになる。リオーゼの完全なる作戦勝ちの瞬間であった。
ピアノ線を剣の先、そして自分の左手に持って、移動してきたクロフォードに、無理やり
引っ掛けたのである。リオーゼは、静かに倒れる。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・。
 (た、倒せた・・・・・・よう・・・・・だな・・・・・・・。あぁ・・・・・・
 僕・・・・・・死ぬようだな・・・・・・・・・・・)」

リオーゼは勝った。たった一人で、トランプスのジャックとクイーンに勝ったのだ。
持ち前の頭脳と、剣の腕のみで。リオーゼは天井を見上げる。何を思うのだろうか。
何を思い出すのだろうか。

「・・・・・・・・・か・・・悲しみの・・・・・涙は・・・・・いらない・・・・・。
 ただ・・・・・・・・僕は・・・・・・それ以上に・・・・・美しく・・・・・
 気高く生きたことに・・・・・・・誇りを・・・・・・持っている・・・・・・・・・」

      ・・・・・・・リオーゼ・・・・・・・おかえり・・・・・・

「・・・・・・・・・・ただいま・・・・・・・・エル・・・・・・・・・。
 ・・・・・・美の鮮麗を・・・・・・・・・・・・我が生涯・・・・・・・・・
 この世でもっとも・・・・・・・大切な・・・・・・・ナポリュートに・・・・・・・・。
 ・・・・・何と・・・・・美しい・・・・・我が人生であったか・・・・・・・・・・・・」

ハート本城  リオーゼ・トラフィクト 死亡


59 :匿名 :2008/05/25(日) 20:40:23 ID:onQHWiL3

〜 Last Stage その1  〜

リオーゼが自分の命を犠牲にしてまで、トランプス最高幹部のジャックとクイーンに
一人で勝った、そのころ、エクスとこのみは未だにハートの本城内を走っていた。まるで、
キングのいる部屋に辿り着かないのだ。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・い、一向に辿り着かねぇな、このみ」

「そ、そうだね。エク兄ちゃん。それに・・・・・リオーゼも・・・・来ないね・・・・」

「・・・・へへっ!心配すんな、このみ。あのバカ野郎が、そう簡単に死ぬわけねぇだろ?
 それに、あの野郎との喧嘩は終わってないからなっ!」

「ハ、ハハッ!・・・・そうだよね、エク兄ちゃん!」

リオーゼの死を知らず、走り続けるエクスとこのみ。しかし、そんな二人にも、ようやく
終焉は現れる。突如として現れる巨大な門。いや、扉。その威容な威圧感。二人は、
心の中で理解できた。

「エ、エク兄ちゃん・・・・・こ、この扉・・・・・・!」

「あぁ、このみ・・・・。この扉、今までとは全然雰囲気が違うっ!・・・・・
 この扉の先に・・・・・・・キングの奴らがいる・・・・!!」

「・・・・・・・エク兄ちゃん・・・・・・手・・・・・繋いで良い・・・・?」

「・・・・・あぁ」

「・・・・・・・これで、怖くないね・・・・・・二人だもんね・・・・・」

「(この扉の先・・・・・・過去の主人公達が、夢見て朽ちて行った場所に・・・・・
 俺は辿りついたっ!!・・・・・・・行こうぜ、エクス・・・・・すべては・・・・・・・
 この一瞬のために・・・・・!!)・・・・・開けるぜ・・・・このみっ!!」

エクスは扉を開ける。このみと繋いでいる手を、より強く握り締める。エクスは到達する。
32代にもわたる主人公達がたどり着くことの無かった場所へと、足を踏み入れる。
光が、エクス達を包む。その先に待ち受けるのは・・・・・!

「・・・・フフッ、おめでとう。32代目主人公君。私達の前に現れた主人公は、
 アカツキ以来、あなたが初めて・・・・。あらためて、自己紹介をさせてもらうわ。
 ハートのキング、アレキサンダー」

「・・・・おまえ、何処かで見た記憶が・・・・。まぁ、良い。そんな過去のことを
 気にする必要もない。今から、おまえを殺すのだからな。名乗らせてもらおう、
 スペードのキング、ダビデだ」

「へぇー・・・・。こいつが、主人公って奴かぁ。アカツキ以来の来訪者だから、
 興奮が止まらないやぁ・・・・・!!初めまして、僕はダイヤのキング、カエサル」

「え、えぇ〜と・・・・・そ、そのですね・・・・・じ、自分はぁ・・・・・
 ク、クラブのキング・・・・・カ、カールです・・・・・」

「(こ、こいつらが・・・・・トランプス、キングっ!!
 俺の・・・・・主人公の・・・・・果たすべき、宿命の相手・・・・・!!
 こいつを・・・・・倒せれば・・・・・っ!!)」

ついに姿を現すトランプスのキング達。エクスは、今までにないくらいに緊張していた。
ここが最終地点。アカツキ、アッガー、東城・怜、彼らもこの「キング」を倒すために
主人公となった。しかし、誰も果たすことができなかった。会えることすらできなかった。

「・・・・・・・このみ・・・・・下がってろ・・・・・」

「え!?だ、だって!私、戦うって・・・・!!」

「・・・・・わかるだろ?・・・・・俺でも勝てるかどうか・・・・わかんねぇんだ・・・・」

「で、でもっ!!二人なら、まだ勝てる確立が上がるかもしれないし・・・」

「・・・・・すまねぇな、このみ。ここからは・・・・・エクス・コールドだけの問題
 じゃねぇ。・・・・・主人公としての、問題なんだ・・・・・・・!
 おまえを巻き込むわけには、いかねぇよ」

「エ、エク兄ちゃん!!」

エクスは、このみの手を離し、ゆっくりとキングの所へと歩み寄る。ついに、時満ちる。
主人公対キング。エクスは今、全主人公の代表として、キングの前に立ちふさがる。
世界のために、平和のために、正義のために。エクスは、立ち向かう。

「おやおや、主人公。あの少女に助けてもらわなくていいのかしら?ハートのキングとして、
 あなたに忠告するわ・・・・・。ここからは、主人公の起こす奇跡とやらに頼らない
 方が身のためよ・・・?」

「・・・・・・・へへっ!・・・・・ずっと・・・・待ってたぜ・・・・この時を・・・!!
 奇跡?奇跡だとぉ?・・・・・バカ言ってんじゃねぇよ、俺がやってきた道のりに、
 奇跡なんかで乗り越えた形跡なんて一つもねぇ!!」

「ハッハー!!ねぇ、聞いたっ!?皆!・・・・こいつ、自分の立場を知らないのかぁー?
 おまえが主人公の力で生かされていたのも同然だろぉ?だったら、君みたいな奴が、
 僕らキングの前に現れることなど、永久に不可能なんだから」

「違うっ!!俺達がやってきたことは、奇跡っつう、わずかな可能性にすがることなんか
 じゃねぇんだ!・・・・・俺達はいつも、必然の中で戦ってきた・・・・!!
 そうじゃなきゃ、皆を・・・・世界を助けることなんて、できねぇんだ!!」

「これは、こまったことだ。世界を救う、か。このダビデ、真に不愉快だな。
 貴様の言うことは矛盾している・・・・・。おまえは、主人公ではない」

「な、何だとっ!!」

ダビデは、エクスに言う。「主人公」では無いと。それを聞いて、エクスはどうすることも
できなかった。確かに、言葉で反論しようとしているが、エクスは心の底から反論する
ことはできなかった。

「おまえは、人々によって作られた主人公だ。誰かに言われたから、誰かに任されたから・・・・。
 自分になってしまったから、自分だけにしかできないから・・・・・そういう責任感で、
 君は主人公をやっている。フン・・・・とんだ道化だな、主人公・・・・・」

「ど、道化・・・・だと・・・・!」

「世界によって操られている、無様な道化だと言うのだよ。おまえは、自分の意思では
 戦っていない!自分の意思で、平和を勝ち取ろうとなど、みじんも感じてはいないっ!」

「ッ!!!」

エクスは何も言い返せない。それは、当たっていたこともしれない。エクスはただ、
呆然とそこに立ち尽くす。今まで、言われたことのない言葉に、動揺を隠せない。
キングの四人は、余裕の表情で、堕ちていくエクスを眺める。

「(ち、違う・・・・!!お、俺は・・・・・責任だけで・・・・・・・
 戦った・・・・ハズじゃない・・・・。お、俺は・・・・・!!
 じ、自分の・・・・・意思で・・・・・・!)」

「・・・・・エク兄ちゃん、良いんだよ。それで・・・・・・・良いんだよ・・・・」

「ッ!?・・・・・こ、このみ・・・・・?」

「・・・・エク兄ちゃん、別にいいよ。世界に操られても、責任のために戦っても・・・・。
 それでも、私はそんなエク兄ちゃんが・・・・・とっても、カッコイイんだから・・・・・・。
 誰も、責めない・・・・・誰も、虐めない・・・・・だけどね、エク兄ちゃん・・・」

「・・・・・?」

「・・・・・おねがい・・・・・エク兄ちゃん・・・・・・・・。
 責任でも、何でも良いの・・・・・・。皆のために・・・・世界のために・・・・・
 希望を・・・・未来を守って・・・・・!戦って・・・・・エク兄ちゃん・・・・!!」

「ッ!!」

このみが、どうしようもなく立ち尽くしているエクスに後ろから抱きつく。エクスは、
何かに気づく。そして、すべてを思い出す。自分がやってきたことを。自分が信じた、
道のりを。

「・・・・・ありがとな、このみ・・・・・。へへっ・・・・勇気、分けてもらっちまったな。
 ・・・・・・・このみっ!!安心して、見てなっ!!
 主人公、エクス・コールドの・・・・・カッコイイとこ・・・・存分に堪能しなっ!!」

「・・・・・・うんっ!!!」

「ッチ、あのまま壊れれば良かったものの。アレキサンダー、カール、カエサル。
 しかたない・・・戦うしかない。準備をしたまえ」

「了解だわ、ダビデ」

「あーぁ、面倒くさいなぁ〜。でも、しかたないっか。久々に、本気出しちゃおうかなぁ〜!」

「は、はい。わ、わかりました」

こうして、エクスは再び、自分のやるべきこと、自分が誰であるかを再確認する。それを
見たキング達は、戦闘態勢を取る。ようやく、始まる主人公対キング。この物語の、
すべて決着を着けるために。

「・・・・行くぜ・・・・トランプス・・・・キングっ!!!」


60 :匿名 :2008/06/01(日) 21:11:53 ID:onQHWiL3

〜 Last Stage その2  〜

ついに始まる最終決戦。エクス対キング。この戦争を終わらせるためにも、この世界に
自由と平和を取り戻すためにも、エクスはようやくこの時を迎える。キングに向けて、
突進するエクス。

「うぉおおおおお!!(キングの能力はまるでわからねぇ!!けど、ここまで来たんだ・・・・
 一秒でも早く、奴らを倒して戦争を終わらせてやるっ!)」

「ここまでの責任は私にあるわ。それに、この国もハートの領地ではあるし・・・・。
 それでは、お決まりといきましょうか。ハートのキング、アレキサンダー、参ります・・・!」

「(来るっ!!最初は、ハートのキングかっ!!)」

エクスがこちらに向かってくるのを確認して、アレキサンダーが一人、前に出る。
どうやら、四人一斉に相手にすることは無いようだ。これもまた、エクスを甘くみている
のだろう。

「ぶつけてやる・・・・!!アレキサンダー・・・!!ハートのキングっ!!!」

「来なさい・・・・エクス・コールド。32代目主人公・・・・ようやくキングの前に
 現れた希望の勇者よ・・・・!!」

エクスは、止まらない。ただ無謀に、標的のアレキサンダーに向かって突進するだけだった。
その姿をあざ笑うかのように、見るアレキサンダー。確かに、どう見てもエクスの
行動は不可解だった。

「・・・・ただ突っ込んでくるだけなんて・・・・本当に主人公かしらねぇ・・・・。
 蹴り・・・・入れてあげましょうか・・・・」

「エ、エク兄ちゃんっ!!だ、駄目だよ!カウンター・・・・もらっちゃう!!」

「いいや、これで乗り切るっ!!このままのスピードで行くっ!!このまま・・・・
 風に乗って、乗り越えてやるぜ、アレキサンダーっ!!」

「フンっ!・・・・愚かね、主人公っ!蹴りを一撃・・・・あなたに与えてあげるわっ!!」

エクス、アレキサンダーの攻撃範囲内に入る。当然、突っ込んでくるエクスの方が
先制攻撃をあびる可能性が高い。リーチの長さにしても、圧倒的にアレキサンダーの
方が有利なのだ。そして、アレキサンダーの蹴りが、エクスに直撃する・・・・。

・・・スカッ・・・

「・・・・・・ヒュゥ・・・・・・良い風・・・・・感じたかよ・・・?」

「ッ!!!(主人公の体が・・・・透き通る!?)」

「これが、正義の一撃だっ!!歯ぁ、食いしばれよっ!!」

「っく!!・・・・愚かな・・・・主人公・・・・!!」

「な、何っ!!」

アレキサンダーの蹴りは、成功した。しかし、風と同化したエクスには無力だった。
これを狙っていたエクスは、そのままアレキサンダーにパンチをしようとするが、
簡単に避けられてしまう。

「(は、はずれた!?・・・あ、あんな至近距離で・・・俺の・・・拳が・・・・・!!
 ど、どういう反射神経してんだよ・・・・あいつ・・・・!!)」

「・・・・そうね、おしえてあげないといけないのね、主人公。我々、キングの能力を」

「の、能力だと・・・・!!」

「そう、我々、キングの能力は・・・・・・・・存在しない」

「ッ!!!」

その言葉に驚きを隠せないエクス。エクスは、キングの「能力」こそが、このトランプス
という世界で最も最強と思っていた。しかし、それはまるで違っていた。そもそも、
キングには「能力」が無いと言うのだ。

「バ、バカな・・・・・。テメェらには、能力が無ぇだと!?そ、そんなこと、あるワケ
 ねぇじゃねぇか!!」

「我々は、最強だった。あらゆる格闘術や武術において、右に出る者はいなかった。
 逆に言えば、我々は世界が生んだ過ちなの。だから、簡単にこの世界を支配することは
 できても、私達にとって兵はノミ程度でしかなかった・・・・・」

「ま、まさか・・・・・!!」

「だから、幹部と呼ばれる能力者を作り、少しでも我々に匹敵する力を持てるようにしたの。
 わかる?・・・・我々、キングには能力など必要ないの・・・・・・・。
 すでに、無くても最強であるからこそ、キングと呼ばれるのよ・・・・・」

「(ど・・・・どういうことだよ・・・・。じゃ、じゃぁ・・・・俺の・・・能力も・・・・。
 こいつらに、わずかでも匹敵するように作られた能力だってのか!?
 俺とキングはすでに・・・・・こんなにも差が出ていたということなのか!?)」

エクスはこの事実を知って、絶望する。シルヴァも流厳も、伊集院も、キングには
まるで及ばないからこそ、キングが自分達にわずかでも匹敵するように作った能力者なのだ。
すべてが、キングによって支配されていたのだ。

「・・・・・・・・んなこと・・・・あるかよ・・・・・・・・。
 それを認めちまったら・・・・外で戦っている皆は、おまえらのおこぼれをもらって、
 戦ってるってなっちまうじゃねぇか!!」

「そうよ。所詮、能力者なんて、私達にとっては雑魚同然なの。そして、あなたの能力も・・・・
 私達、キングの前では無力だと言うことを・・・・・思い知らせてあげるわっ!!」

「ッ!!(く、来るっ!?)」

エクスは風の同化を解いていた。そのままにしていると、誰かの動く時にできるわずかな
風にでも反応して、吹き飛ばされてしまうからだ。いつのまにか、アレキサンダーは
エクスの前に現れる。

「(は、速いっ!!こいつ、いつのまに俺の前に・・・・・!!)」

「キングというものは・・・・。走れば、疾風の如く・・・・・殴れば、鋼鉄の如く・・・・
 守れば、ダイヤの如く・・・・・覚えておきなさい、主人公・・・・・!」

「(やべぇ、まともにもらっちまう!!)
 
エクスは、防御をする。しかし、それを見据えて、アレキサンダーは拳の連打をする。
そのうちに、エクスは防御ができなくなってきてしまう。アレキサンダーの連打のパンチは、
まるで、見えないのだ。

「(な、何だ!?こ、この拳の嵐はよぉお!!・・・・ガ、ガードが・・・・
 耐え切れねぇ!!・・・・う、嘘だろ・・・・こ、このパンチを・・・・マトモに
 喰らったら・・・・・・・・一発であの世行きじゃねぇか・・・!!)」

「フフフッ・・・・腕の血が死んできたわね。そろそろ、ガードをはずさないと、
 手が使い物にならなくなっちゃうわよ?」

「(う、腕が・・・・も、もう、もたねぇえ!!・・・・ガードが・・・はずれる!!)」

「っ!!・・・待っていたわ、この時を・・・・!!」

エクスは、大量の拳の連打を浴びる。いや、拳だけではない、蹴りも入っているだろう。
エクスはボコボコに集中連打されていた。アレキサンダーは、攻撃するのをやめない。
ただ、殴られるがままのエクスを見て、楽しんでいた。

グシャァアアア!!

「ぐはぁっ!!ぐっ!!・・・がぁ・・・・!!」

「フフッ・・・・・この格闘技術、見事でしょ?じっくりと体で堪能してね、主人公」

「(お・・・・おい・・・・おい・・・・・・。い、いつまで・・・・続く・・・・
 んだよ・・・・・こ、この・・・・・・攻撃・・・・はよぉ・・・・・・)」

そして、ようやくアレキサンダーの攻撃は止まる。吹き飛ぶエクス。そして、壁に衝突する。
エクスは、すでに最悪の状況を迎えた。血反吐を吐きながら、目を白くして、必死に
意識を保とうとしている。

「ガハッ!・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・・う・・・・うあぁあ・・・・・。
 (・・・・・・お、俺・・・・・・・・生き・・・て・・・・・んのか・・・・・・。
 か・・・体が・・・・・・・無ぇ・・・・・みてぇ・・・・だ・・・・・)」

「言ったでしょ?速さは、風の如くと。・・・・でも、この拳のラッシュには、
 殺傷能力は無いわ。だから・・・・・・一撃で・・・・すべてを貫く拳とやらを・・・・
 体験させてあげるわ・・・・・!」

「(・・・・・ハ・・・・・ハハ・・・・・・・こ・・これ・・・・で・・・・・・
 殺傷・・・・・能力・・・・・なし・・・・かよぉ・・・・・・・・・。
 今にでも・・・・・・死に・・・そう・・・・・だって・・・・のによぉ・・・・)」

「・・・・・けれ、ど。ダビデ、カール、カエサル。今度は、あなた達も一緒に
 主人公を痛めつけない?殺す直前までは、可愛がってあげてもいいわ。
 無論、殺すのは私の役目だけど」

「(えっ!?そ、そんなこと・・・・!!アレキサンダーでさえ、もうエク兄ちゃん、
 死んじゃいそうなのに、今度、他のキングの3人が相手なんて・・・・・!!)」

すでに、廃人のようなエクスに迫り来る3人のキング。キングにしても、主人公には
積年の恨みはある。主人公のせいで、日々、恐怖を感じているのだ。3人のキングにとって、
今のエクスをいたぶることに、何の戸惑いも無かった。

「ッフ。味なことをするな、アレキサンダー。了解だ、死ぬ限界まで・・・・・
 タップリと可愛がってやるとするか・・・・・・なぁ、カール、カエサル」

「へっへ♪・・・・ずっとこの時を待ってたんだぁ。主人公をタコ殴りにできる日をさぁ。
 ・・・・・血反吐吐かすだけじゃ・・・・・済まさないからね・・・・・」

「み、みんな・・・。や、やる気、満々ですね・・・・。じゃ、じゃあ、僕も・・・・。
 好き放題・・・・・・しちゃおうかな・・・・・・」

「い、いや・・・・・・やめてぇーーーーーー!!!」

「・・・・・へ、へへ・・・・・・・・・・こいつぁ・・・・・・・まじぃな・・・・・」

エクスの前に立ちふさがる3人のキング。もう、奇跡は起きなかった。希望は、残され
なかった。エクスは次の瞬間、3人のキングによって、四方八方から殴り、蹴られた。
死なない程度に。精神が、崩壊しない程度に。生きる希望が、無くなる程度に。


61 :匿名 :2008/06/08(日) 20:35:10 ID:onQHWiL3

〜 Last Stage その3  〜


そして、時間が過ぎた・・・・・・。エクスの姿は、見るも無残になっていた。
回りには、エクスが吐いた血が充満している。顔は、紫色に腫れ上がり、体はもう
ガラクタ同然の如く、動かなくなっていた。エクスの目に、もう生きる光は無かった。

「フゥ・・・・・このくらいで、良いかな。おーい、アレキサンダー。丁度良い具合に
 できあがったぞ。もう、こいつは廃人だ。生きる目をしていない」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・あら、良くやってくれたじゃない。これ、本当に生きてるの・・・?
 ・・・・・・あ、息をかすかにしてたわね。良いわ、3人共、下がって。
 トドメは、私の役目よ」

「い、嫌・・・・・エク兄ちゃんが・・・・・・・エク兄ちゃんが・・・・・!!
 ・・・・・・壊れちゃった・・・・・・・・!」

エクスは、ただ呆然と白い目で、何処かを見つめる。今のエクスは、生かされている。
息はしているが、意識があるかどうかわからない。アレキサンダーが、ゆっくりと
エクスに近づく。もう、壊れてしまったエクスに。

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・意識はあるのかしらねぇ?ちょっと、壊しすぎちゃったのかしら。
 もぉ、やりすぎね、3人共。まぁ、良いわ・・・・・生きているだけ・・・・・・。
 さぁ・・・・・最後のトドメを・・・・・刺すわ・・・・・・!!」

アレキサンダーは、エクスの前に立ち止まり、拳を振り上げる。一撃で、すべてを
終わらせるつもりなのだ。それを見て、どうすることもできないこのみ。これで、
エクスのすべてが終わる。

「・・・・・・・・・・・・」

「我が人生に舞い降りた堕天使よっ!これで、サラバよっ!!」

「だ、ダメぇーーーーーーーー!!!!」

「ッ!!?こ、この娘っ!!!」

エクスのトドメに殴りかかるアレキサンダーの前に、突如として
現れたこのみ。そして、勢いを止められずに、アレキサンダーは、そのまま、
このみの胸を貫通させる。

ドスッ!!

「うぐっ!!!」

「っち!!・・・・わ、私としたことが・・・・・!!抵抗しない者を殺してしまった・・・。
 っち・・・・まぁ、良いわ。どうせこの子にも、死と同じ罰を与えるつもりだったから」

「あ・・・・・・あぁ・・・・・・(わ、私の・・・・・・む、胸が・・・・・・・
 カラッポ・・・・に・・・・・なっちゃ・・・・・た・・・・・・・・)」

エクスを抱きかかえるように、倒れるこのみ。エクスは依然、意識があるのかどうか
わからない状態。このみは、エクスをかばった。その事実をまだ、エクスは知れないのだろうか。
口から血を吐きながら、このみは、エクスに何かを語ろうとする。

「・・・・・ぐふっ・・・・・・・エ・・・エク・・・兄・・・・ちゃん・・・・・・・。
 も、もう・・・・私達・・・・・一緒に・・・・手・・・・・繋げないん・・・だね・・・・。
 ・・・・けど・・・・・・もう・・・・・一人ぼっちじゃ・・・ないん・・・だね・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・し、死んじゃうのかなぁ・・・・・?・・・・このみ・・・・・。
 パ、パーティーに・・・・・・い・・・・行きたかった・・・・なぁ・・・・・・・・。
 ねぇ・・・・・・エク・・・・兄・・・・・ちゃん・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・だ・・・・・・・・・・・・・だぁい・・・・・好き・・・・・・」

ハートキング王室 このみ・ナガイ 死亡

このみが死んだ。エクスを守って、エクスを覆いかぶさって。エクスはどうしているのだろう。
アレキサンダーからは、エクスの目が見れなかった。ただ、目を真っ黒にさせて、抜け殻と
なったこのみしか、見えなかった。

「死んだ、ようね。これも、主人公をわずかでも生き延びさせようとする、主人公の
 奇跡とやらなのかしら。まぁ、どうでもいいわ。邪魔よ、女っ!」

・・・・・・・ザッ・・・・

「・・・・・・・・おい、何汚ぇ手でこのみを触ってんだ・・・」

「ッ!!!バ、バカなっ!いつのまにっ!!」

「どけぇええええええ!!!」

「ぐぅうっ!!!」

エクスは、いつのまにか意識を取り戻していた。もはや、戦えないと思っていた体に
ムチを打ち、動いたのだ。そして、アレキサンダーに一発、殴り返すことに成功する。
しかし、エクスはそんなことをまるで気にしていなかった。静かに、このみを抱きかかえる。

「(バ、バカなっ!!・・・・こ、このキングである私が・・・・・・
 一撃・・・・・喰らった・・・・・!?)」

「・・・・・・このみ・・・・・・疲れたろ?・・・・・もう・・・・寝て良いんだぜ・・・・。
 ぐっすり・・・・眠りな・・・・・・。お、おや・・・・すみ・・・・・このみ・・・・」

「フ・・・・フフフ・・・・・ハハハッハハハハ!!やはり、あなたは主人公のようねっ!
 あなたが怒ることによって、普通では有り得ない力が発動して、我々は殺される・・・・。
 それが、レトロな物語の流れでしょうね・・・・けれど、私達は違うっ!」

「・・・・何が・・・・・何が違うってんだ・・・・・・。人殺して・・・・・・
 堂々と・・・・自分の弁解してんじゃねぇよ・・・・・・・・。それが・・・・・
 おまえらの、正義かよぉお!!!」

「正義!?正義ですって?笑わせてくれるわね、主人公!あなたの正義とは何?
 人を助けて、優越を感じること?悪と呼ばれる者を殺すこと?そんな、チッポケな
 自己満足のために、あなたは正義を語るというの!?」

「それをやるために、俺はここに来たっ!!今は、それだけしか考えられねぇ!!」

エクスはアレキサンダーに向かって、またも無謀に突っ込む。キシむ体を耐えながら、
全速力で走り出す。砂埃が、あたりに吹き荒れる。エクスは走る。自分の信じた道を、
駆け抜けるために。

「無知、あまりにも無知だわ、主人公!あなたには、世界を救う資格も、正義を語る
 資格も無いわっ!」

「資格!?違う、そうじゃない!!俺は、資格などいらない!ただ、対応者でありたいだけだ!!」

「それを無知だと言うのよ、主人公っ!!」

「ぶっ飛ばしてやるぜ、アレキサンダーっ!!」

「フンっ!さきほどと同じ展開にしてあげるわ!蹴り・・・・受け止めてみなさいっ!」

アレキサンダーが、エクスに向けて蹴りを喰らわす。さきほどと同じ展開。
さきほどは、エクスが上を行った。今度は、どうなるのだろうか。もう、風との同化は
アレキサンダーには通用しないだろう。すると・・・・・。

・・・・・スッ・・・

「ッ!!?・・・・主人公の体が、崩れた!?」

「バァーカッ!!砂との同化ってんだよっ!!」

「(ッチ!また、一撃まともに喰らうっ!)」

「せっかく砂との同化してんだぁ、砂で生き埋めにしてやるぜっ!!」

「!?(ま、まずい・・・・!!)」

エクスはアレキサンダーに抱きつき、自分から出る砂と共に、生き埋めにしようとしていた。
アレキサンダーは動けなかった。確かに、これがただ単に抱きついているだけならば、
解決法は山ほどあるが、プラス砂の重みが、アレキサンダーを苦しめていた。

「い、いかんっ!カール、カエサルっ!アレキサンダーが危険だ!行くぞっ!」

「まったく、何やってんだよ、アレキサンダーはぁ・・・!」

「・・・・・?・・・・あ、あれ・・・・み、みなさん・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・主人公が・・・・・・消えてます、けど・・・」

「?・・・なんだと?・・・・・。ま、まずい、防御しろ!カエサル、カールっ!!」

・・・・・ヒュゥウ・・・・

「風に乗って、参上っ!!この至近距離・・・・回避できるかよぉおお!!」

エクスは素早く、アレキサンダーから離れて、風と同化し、他のキングを襲撃する。
その行動の早さに戸惑い、エクスの攻撃をマトモに喰らうダビデ、カール、カエサル。
そして、その場で倒れる。

「っく!!(バ、バカな!アレキサンダーだけでなく、俺達も奴の手玉にとられた!?
 い、いや違う!これは、油断だ。俺達は、アレキサンダーが危険に陥ったのを知り、
 焦ったのが原因で、こうなったのだ。普段なら、決して無い!!)」

「っく・・・・こ、この主人公如きがぁ・・・・よくも・・・・僕を蹴りやがって・・・!!」

「・・い・・・・痛い・・・・ですね・・・・・」

「・・・・・・来なよ、キング・・・・・。これからはぁ、俺の一人舞台だぜっ!!
 主人公の力・・・・存分に味わうんだなぁあ!!」


62 :匿名 :2008/06/15(日) 19:48:18 ID:onQHWiL3

〜 Last Stage その4  〜

エクス、怒涛の反撃が始まる。主人公の力をフルに活用させ、エクスは翔ぶ。今、
エクスは一つの光となる。自分と主人公が、随一になっている。シンクロしている。
今のエクスに負ける気など微塵もしなかった。

「こ、こんなバカげた展開、僕はゆるさないっ!あそこまで弱っていた主人公に、
 まだ流れが行っている!?・・・・こんな・・・・こんな漫画みたいなこと・・・・!!
 現実にありえるわけがないんだぁあ!!」

「ッ!!?カ、カールっ!不用意だぞっ!」

「黙っていろよ、ダビデっ!!僕が、この世界の法則を正してみせるんだ!
 強者が弱者に勝つこの法則・・・・主人公だなんていうよそ者に、邪魔されてたまるかぁあ!!」

カールは遮二無二、エクスに突っ込む。ダビデはそれを見て、どうすることもできずに
ただ唖然と立ち尽くす。エクスは、突っ込んでくるカールに対して、冷静に対処する。
そんなエクスを、カールはゆるせなかった。

「・・・・へぇ・・・・強者、か・・・・。おまえの言う、強者ってのは何だよ・・・?」

「何だとぉ!?・・・・そんなこと・・・・貴様に答える意味など無いっ!!」

「強者・・・そう、本当の強さは、力か?権力か?・・・違う、勇気だっ!!」

「ッ!!・・・・こ、このぉ・・・・主人公面するなぁああ!!!」

「・・・・勇気・・・・燃やすぜっ、真っ赤にっ!!」

「ッ!?(今、主人公の奴、何かを捨てた?俺の目からは確認できない。いや、至近距離でいる
 カールでさえも、錯乱していて確認できていない!何だ、いったい奴は、何を捨てたんだ!?)」

突っ込んでくるカールに対し、エクスは何かを捨てた。しかし、それ以降、エクスは
まったく動こうとしなかった。いや、もしかすると、動くことができなかったのかもしれない。
カールは、風の如く、エクスに接近する。

「(ッチ!やっぱり、キング!スピードが、半端じゃねぇえ!!)」

「ノロイんだよ、主人公っ!!」

「・・・・・蹴ってみな・・・・・・キングさんよぉ・・・・・!」

「ッ!!!?・・・・あ、熱ぃいいい!!あ、足がぁあ!!足が溶けるぅうーーーー!!!」

エクスに蹴りを仕掛けたカールが、いきなり倒れる。エクスの顔寸前、そこまで
蹴りは成功していた。しかし、突然「熱い」と言い出し、その場に顔を悶絶させて
倒れこむ。その言葉どおり、カールの右足は溶け出していた。

「うえあぁあああああ!!!ダ、ダビデぇえ!!足が・・・・足が無くなっちゃうよぉお!!」

「ど、どういうことだ!?主人公は何も攻撃などしていないぞ?だが、しかし、
 カールは攻撃を受けている・・・・・まさか、こいつ・・・・・!!」

「マッチ一本、火事の元・・・だぜ?キングさんよぉ。まぁ、そのマッチって奴はぁ、
 溶岩並に危険だけどなぁ・・・・。けど、炎との同化ってのは、こっちにも負担かかるけどよ」

ダビデは急いで、足を大怪我しているカールをこちらへと引き戻す。叫び続ける
カール。その姿に、すでに「キング」の面影はなかった。今のエクスに、キングは
どうすることもできなかった。エクスは、それほど波にのっていた。

「(ま、まさか・・・・こんなバカな事態が起きるとは・・・・・・・。
 主人公一人に・・・・・アレキサンダーが気絶し、カールが重症を負っている・・・・。
 バカな・・・・あれほどまでに・・・・追い詰めていたのに・・・・!!)」

「・・・・よぉ、お二人さん。後はあんたら二人だけだぜ?」

「・・・・ッフ、主人公。このみとやらが、死んだことによって、自分の主人公としての
 力を開花させたようだなぁ。その怒りが、力へと変わったということか・・・・」

「・・・・・・違う。怒りや、憎しみからじゃ、何も生まれねぇし、変わらねぇんだ!
 俺は、このみのために、生き抜くっ!!このみは、俺に未来を見せてくれたっ!
 俺は・・・・・それに、俺なりの答えを貫いているだけだっ!」

「それは、残酷だなぁ、主人公。何かを失うことでしか、何かを得られない奴だなんてな。
 結局、君は主人公でも何でもなく・・・・ただ、世界を腐食に導く、張本人なのだよ」

「・・・・そうだ・・・・確かに、何かを得るためには、何かを失うかもしれねぇ!
 それでも、失っちゃいけないもんがある!!」

エクスは、ダビデの言葉に反応する。ダビデも相当焦っていた。さきほどまでは、
完全にエクスはキングの四人に圧倒されていた。そして、精神も体もボロボロにされた。
しかし、それでもエクスはここまできた。ただ、「未来」のために・・・・。

「ほぉ、失ってはいけないものか。それは、気になるなぁ。言えよ、主人公」

「・・・・・力は失ってもいい・・・・金も失ってもいい・・・・・・!!
 けど・・・・・勇気を失ったら、すべてが失われちまうんだっ!」

「下らん戯言ぉ!カエサルっ!二人で仕留めるぞっ!」

「は、はいぃ・・・!」

「(っく!?こ、今度は二人同時・・・・!?)」

今度は、ダビデとカエサルが同時にエクスに襲い掛かる。ここまで、「同化」の能力を
駆使して、アレキサンダーとカールを圧倒したエクス。しかし、二人同時となると、
そうもいかなかった。

「(ど、どうする!?左にダビデっ!右にカエサルっ!どちらを攻撃する!?
 同化の能力も、同じ同化を二人同時に使うわけにはいかない!完全に、攻略される!
 いったい・・・・何を同化をすりぁ、いいんだ!?)」

「(迷っている!!主人公の奴は、戸惑いを隠せない!奴の能力は未だに未知数!
 だが、二人同時攻撃ならば奴の能力も意味を持たないっ!)」

・・・・フッ・・・

「・・・・・・・せ、背中・・・・・ガラ空き・・・・ですね・・・・・主人公・・・・」

「!?は、速いっ!!」

「でかした、カエサルっ!!一撃、入れろぉお!!」

「(ま、間にあわねぇ!蹴りを一撃、喰らうっ!!)」

瞬時に、エクスの背後に回りこむカエサル。これが、キングの力。肉体術では、エクスは
到底かなうハズのない相手なのだ。カエサルはそのまま、蹴りを一撃、エクスに
浴びせる。

バキィイ!!

「ぐぅっ!!(な、なんで・・・・・・ぼ、僕の・・・・あ、足がぁあ・・・・!!)」

「バ〜カッ!石との同化だぁ。どうだよ?石を思いっきり蹴った感想はよぉ・・・・!」

「少々・・・・調子に乗りすぎね、主人公」

「(!?・・・こ、この声は・・・・アレキサンダーっ!!復活しやがったのか!?)」

カエサルに、罠を仕込んだエクス。落ちていた石と同化して、カエサルの蹴りに備えたのだ。
その作戦に見事はまったカエサル。しかし、エクスの反撃はここまでだった。
周りを見ると・・・・・・。

「っぐ!・・・・よくも、僕の足をこんな風にしてくれたなぁ・・・・・!!
 主人公・・・・・!!!」

「・・・・そろそろ、頭に血が上った程度じゃ、済まされないわね。主人公。
 私達、キングの力・・・・今一度、肌で確かめさせてあげるわ」

「い、痛かった・・・・・あ、足が・・・・ど、どうやら・・・・・骨折・・・・・
 した・・・・みたいですね・・・・・・・・・こ、殺し・・・ますか・・・・」

「・・・ッフ。さぁ、諸君。行こうではないか。ラスト・ハンティングだ・・・・・!」

「(っぐ!!・・・・くそっ!ここに来て、トランプスのキング四人が全員、復活しやがった!
 ・・・・・・ど、どうすりゃぁ・・・・良いんだ・・・・・・・!!
 もう、奴らは絶対に、単体では挑んでこない!・・・ってことはぁ・・・もう・・・・・!!)」

もう、勝ち目は無くなった。エクスの本気とも思われているものは、筋違いだった。
キングがただ単に、「単体」でエクスに挑んだため、未知のエクスの能力に翻弄され、
敗北していったのだ。しかし、その可能性も無くなった。

「(や、やべぇ・・・・・・四人一気に来るっ!!・・・・・・・・・・
 俺は・・・・・俺は・・・・・・ここで終わるのか!?)」

バリィイン!!

「ッ!?・・・な、何なの!?」

突然、窓ガラスが割れる。何の前触れもなく。キングの四人、そしてエクスもその割れた
窓を見る。そこには、誰もいなかった。そう、もういなかった。それは、すでに、
エクスの隣に来ていた。

「窓ガラスが割れている・・・・!アレキサンダーっ!辺りを警戒しろっ!
 何かが潜んでいるかもしれない!」

「・・・・・やれやれ・・・・・・Veryに・・・・遅くなってしまったね・・・・」

「?・・・・あ、あんたは・・・・・・!!」

「・・・・・・・久しぶりだな、エクス・コールド・・・・・・・・。
 そして、ようやく・・・・・また会えたな・・・・・・トランプス・・・キング・・・!!」

「・・・・フフッ、これで役者はそろったわけね。・・・・・アカツキっ!!」


63 :匿名 :2008/06/22(日) 19:44:55 ID:onQHWiL3

〜 Last Stage その5  〜

エクスのピンチに現れたのは、初代主人公にして、軍の最高司令官、「アカツキ」であった。
アカツキは頭から血を流しながら、キングを睨む。その光景に、動揺を隠せない
トランプスのキング達。

「お、おいっ!アカツキ!て、てめぇ・・・・そのケガはどうしたんだよ!?
 頭から血が出てんぞ!」

「・・・・No prblem・・・・問題ないよ、エクス・・・・・・。
 それより、体が興奮しちゃってね・・・・・・・Very Exciting・・・
 今日は、思い人と、よく会う・・・・・。それも、憎悪を抱いた奴とね・・・・」

「な、なんだか知らねぇけど、アカツキっ!やっぱし、キングは強ぇ!
 俺が出会ってきた奴でも、特に強ぇえ!!・・・・・二人でも・・・・勝てるかどうか・・・」

「・・・・・All Right・・・・その通り、けどね・・・・・。
 俺達は、主人公、だぜ?・・・・・・・・・カッコよく、キメようぜ」

「ッ!!!」

アカツキは、傷つき、もう精神もほとんどダウンしかけているエクスを励ます。
エクスにとっては、今は心の支えが必要だった。このみが死に、孤独の中で戦ってきた
エクス。一人では、例え主人公でも戦えないのだ。すると、アカツキはキングを再び見る。

「・・・・さて、と。ようやく・・・・会えたな、キング四人衆よ・・・・・。
 何年ぶりだっけなぁ・・・・。200年くらいかなぁ・・・。俺も君達も、よくここまで
 生き延びられたもんだね」

「・・・・・200年、そう、200年もの間、あなたは我々トランプスに抵抗し続けた。
 一度は、我々をあと一歩まで追い詰めたことが・・・・・自信過剰へとあなたを
 導いたようね」

「・・・・アレキサンダー・・・・少し、付け足さないといけないことがあるな・・・・。
 憎悪を抱いた奴と会うと言ったが・・・・・俺もまた、憎悪を抱いた奴に憎悪を抱いている男で
 あることを・・・・・・」

「その目・・・・・あの日と変わらないわね、アカツキ。我々があなたに
 敗北した、あの日と・・・・・・」

「!?は、敗北!?・・・お、おい!どういうことだよ、アカツキっ!!おまえ・・・・
 あいつらに勝ったのか?じゃ、じゃぁ、何で・・・・今、こんな風になってんだよ!?」

「・・・・そ、それは・・・・・」

「いいわ、32代目。私がおしえてあげる・・・・。200年前、何があったか・・・・」

200年前、アカツキはキングの四人に勝った。しかし、結果的には負けたのだ。
その時、何が起こったのか。アカツキに、何が起きたのか。アレキサンダーは、
ゆっくりと語る。

「覚えているわ、あの日。私達は、ミスを起こした。アカツキには何らかの能力を
 持っているかと思って、攻略法を練っていたけど・・・・アカツキには能力ではなく、
 魔物が取り付いていた」

「ま、まもの?・・・・」

「・・・・それを知らず、我々は誤認した解釈を持ったまま戦い、敗北した。
 思い出すわ・・・・・あの時のアカツキは、強かったわ・・・・・・。
 まるで、何処かの物語の主人公のように・・・・・・」

「そ、それで・・・・なんで、アカツキが負けてんだよっ!!」

「・・・・・アカツキは、我々を倒すことが目的じゃなかったの」

「ッ!!!(ア、アカツキの野郎・・・・トランプスを倒すのが・・・・・・
 平和を守るのが・・・・・目的じゃなかったってのか・・・・・!?)」

衝撃の事実に、エクスは驚くしかなかった。アカツキは何もいわず、ただ、何処かを
見つめる。何か、悲しそうな目をして、何かくやしそうな、愛おしそうな目をして。
アレキサンダーは語る。

「アカツキは、ある言い伝えを信じていた。そのころ、キングの四人には、何でも願いが
 叶えられるとという言い伝えをね・・・・」

「な、何だと・・・・そ、それが何だってんだよ!」

「確か・・・・・なんて言ったかしら・・・・そう、確か、ルーって言ったかしら・・・。
 一人の女性の命を蘇らせるために、アカツキは我々を襲撃した。何万という部隊を率いて・・」

「ッ!!!・・・・・一人の・・・・女性を・・・・蘇らせる・・・ために・・・・!?」

「当然、そんな力なんてあるわけがないわ。だから、巧みに言葉を使って、アカツキが
 油断したところを襲った・・・・って、所かしら。それに関しては、我々も
 キングであるまじき行為をしたと認めるわ。しかし、それしか助かる方法が無かったわ」

エクスは、開いた口が塞がらなかった。アカツキは「ルー」という女性を助けるために、
何万という兵をかき集め、一人で、必死にトランプスと戦ったのだ。その真実を知って、
エクスは、アカツキに尋ねられないわけにはいかなかった。

「お、おい!アカツキっ!!今の、本当かよ!?おまえ・・・・・本当に・・・・・
 一人の女のために、戦争までして、キングを追い詰めたってのかよ!?」

「・・・・・・・・女じゃない・・・・・ルーだ・・・・・・。彼女は、俺が殺した。
 けど・・・・・・・・それには、策があった。キングの願いで、彼女を復活させれば、
 それですべてが丸くおさまると信じていた・・・・・」

「そ、そんな・・・・・!!」

「・・・・・・・蘇らなかった・・・・・・彼女は・・・・・死んだままだった・・・・。
 放浪した67年4ヶ月・・・・・そして、俺は答えを導きだした・・・・・・。
 俺を・・・・騙した・・・・あいつらを・・・・ゆるさないと・・・・!!」

そして、アカツキの目は再び、戻る。あのころに、キングを倒すことに、すべてを
賭けていたあのころに。アカツキは、天国にいるルーにも、現実にいるゼンにも、ゆるされようとは
思わなかった。だから、償いに、世界を平和にできればと考えていたのだ。

「本当に・・・・・下らない人生を生きるのね、アカツキ・・・・・・。
 200年もの間、あなたは私達を倒すことしか考えていない・・・・・・。
 本当に、つまらない人生ね、アカツキ・・・・!」

「・・・・この道以外、俺を生かす道は無い。故に、この道を進むのみ・・・・!」

「ッ!!・・・ア、アカツキ・・・・てめぇ・・・・・」

「エクスっ!聞け。俺は、奴を倒す者じゃない!俺は、復讐のために戦っている!
 けれど、おまえは違う!おまえは、未来のために、平和のために戦っている!
 おまえが、トドメを刺せ!・・・・・いいな?」

「・・・わ、わかってらぁ!!けど、アカツキッ!・・・・・おまえの目・・・・・
 平和が嫌いそうな・・・・・目じゃねぇけどなぁ・・・・・・!」

「・・・・・ッフ、神様が・・・・俺に平和をゆるしてくれるかが、問題だけどね・・・・」

エクスとアカツキがタッグでキングの四人に挑む。キングは二人の姿を見て、初めて
恐怖を感じる。初代主人公、かつて自分達を倒した相手、アカツキ。そして現主人公、
エクス。恐れないはずが、なかった。

「・・・・厄介なことになったわね、ダビデ。本当に、200年前の再現だわ・・・・。
 私とあなたはアカツキ、カールとカエサルは32代目よ!」

「・・・了解した、アレキサンダー。もう、我々は過ちを犯さない。アカツキを殺し、
 32代目も殺し。真の・・・・・最強の王朝、トランプス13、キングに返り咲くぞ!」

「殺してやるぅ、主人共ぉ・・・。僕に、泥を塗りやがって・・・・・!
 僕は、トランプスキング、カール様だぁ!主人公なんかに、邪魔されてたまるかぁあ!!」

「・・・・い、いよいよ・・・・・ほ、本番・・・・ですね・・・・・・。
 ・・・・・壊れる・・・・まで・・・・・な、殴って・・・・・良いんですね・・・・・」

「・・・・・エクス、決戦だ。俺が死んでも、気にするな。おまえなら、まだ可能性がある。
 例え、アカツキ軍が負けても・・・・おまえだけは、可能性がある・・・・・。
 世界が壊れても・・・・すべて失われようとも・・・・・まだ未来が残ってる・・・・」

「・・・・・・・へへっ、そりゃぁ・・・・どーも。けどよぉ・・・・・
 俺は、32代目、主人公だぜ?・・・・・・誰も、もう・・・・死なせるわけにはいかねぇんだ!
 これ以上、憎悪を増やしちゃいけねぇ!俺は、死んでも戦うっ!!それが・・・・・
 俺が信じてきた、道なんだっ!俺が、信じた未来なんだっ!!」

そして、再び、開戦する。エクス&アカツキ対キング。劣勢は隠せない。しかし、
それでも戦う。未来を信じて。未来に生きる「正義」と「平和」を信じて。勇気を胸に、
二人は駆け出す・・・・・。
 


64 :匿名 :2008/06/29(日) 20:52:42 ID:onQHWiL3

〜 Last Stage その5  〜

アカツキとエクス、そしてキングの四人。それぞれの「道」。そこには、間違いなど無い。
ただ、その道を肯定するか否かは、第3者の判断に委ねられる。様々な意思が交差する。
そして、勝った者だけが「肯定」される。アカツキとエクスは分かれて、キングの相手をする。

「来やがれ、カエサル、カールっ!!エクス・コールドが直々に相手をしてやるぜっ!」

「なめた口を叩きやがって・・・・たかが数ヶ月前まで、平民だったおまえに・・・
 僕らの・・・何がわかるっていうんだっ!!」

「カ、カール・・・・仕掛けます・・・・!」

カールとカエサルの同時攻撃。それを、エクスはどう対処するのだろうか。すると、
エクスは地面にある砂を拾い上げて、カールとカエサルに投げつけた。その無謀たる
攻撃に、二人は・・・・。

「おらぁあ!!砂かけだっ!」

「っく!幼稚な真似を・・・!そんな目潰しで、僕らが止められると思っているのか!?」

「ち、違う・・・・カ、カール!・・・・こ、これは・・・・アレキサンダーの時と同じ・・・!」

「ッ!!(こいつ、俺の能力を悟ってやがる!?)」

「そういうことか、ナイスだ、カエサルっ!!ハハッ!・・・残念だったな、主人公っ!
 弱点、しっているぞ!おまえは砂になれるんだよなぁ!?なら、風を起こせば、おまえは
 吹き飛ぶってことさぁあ!!」

「(なにっ!?)」

カールとカエサルは、エクスの直前で止まって、自分達の蹴りで、風を作ってみせた。
その風をモロに浴びるエクス。当然、砂と同化したエクスならば、風に吹かれて、
吹き飛ばされてお終いだろう。しかし・・・・。

「・・・・・よぉ、顔面がカラ空きだぜぇ?お二人さんよぉ」

「(!?こ、こいつ・・・・・砂と同化していない!?僕を騙しやがった!!)」

「い、いけない・・・・・カ、カール!防御・・・・・・!」

「これは、憎しみの拳じゃない!未来を築くための拳だっ!俺の、生きてきた証の拳だっ!
 この一撃・・・・・脳裏に叩き込みやがれぇええ!!!」

エクスは、安心しきっていたカールとカエサルに向かって颯爽と近づき、二人に
一発ずつ、顔面にパンチする。余裕を見せ、足を怪我しているカール、自分の言動に
間違いが無いと信じるあまり、油断したカエサルの完璧なる敗北だった。

「っぐ!!・・・・・・・い、痛くなんか・・・・・あるもんかぁ・・・・・・。
 ぼ、僕は・・・・・キングだっ!・・・・足が・・・・片方、使えなくたって・・・・
 この程度じゃ、僕は倒されるわけが無いんだよぉ!!」

「・・・・い、痛い・・・ですね・・・・・・。け、けれど・・・・・・
 こ、これぐらいじゃ・・・・・・たとえ・・・・・何億発と殴られても・・・・
 へ、平気・・・・ですけど・・・・・」

「・・・・なら、何億発でもブン殴ってやるぜ!
 何億発ブン殴ってみんなが笑顔になれるなら、
 骨が砕けるまで殴り続けてやらぁああーーーーっ!!」

そのころ、アカツキは「ライト・ゴースト」を巧みに使って、
アレキサンダーとダビデの両方を相手していた。
無論、アカツキ自身も剣で戦っている。

「そう、これよ、アカツキっ!200年前と変わらない戦い方・・・・!!
 200年前は我々が負けた、けれど、未来はつねに進化し続けるということを
 おしえてあげるわっ!」

「っく!・・・・・そうだな、進化し続ける未来・・・・Futureに・・・・
 君達が必要無いだと、世界が気づくまでここまでかかってしまったがね・・・・!!」

「ほぉ、アカツキっ!君は、神様とやらにでも聞いたのかい?どうせなら、我々が
 神の代わりをしてやろうか・・・・・アカツキぃい・・・・!!」

アカツキは、アレキサンダーとダビデと戦う。200年前の決着をつけるために。
お互い、一歩も譲らない。しかし、そんな状況を見て、エクスは不安になってきていた。
それを見て、カールとカエサルは余計に腹を濁すのであった。

「おいっ!!主人公、おまえの相手は僕らだろっ!余所見をするなっ!!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・。
(俺は正しい・・・・・間違ってねぇ・・・・。
 ・・・・くそっ、なんだ?・・・・俺、何か・・・・・違う、気がする・・・・・・。
 俺、これで正しいのか?・・・・俺、これで間違ってないか?
 ・・・・本当に・・・自信を持って・・・・正しいと言えるのだろうか・・・・)」

「・・・・・カ、カール・・・・・チャ、チャンスです・・・・・主人公・・・・
 な、何か・・・・迷ってます・・・・・い、今なら・・・・いけます・・・・!」

「・・・・・・・・・・・ッち!!!そんなこと、僕がゆるさない!!キングの
 プライドがゆるさない!!」

「!?・・・な、何を・・・・・カ、カール・・・・!!」

「(?・・・・何やってんだ・・・こいつら・・・・)」

カエサルの言葉に、怒りをあらわにするカール。カエサルの言うとおり、今のエクスは
油断しきっていた。恐らく、一瞬さえあれば、二人同時攻撃で勝てただろう。しかし、
それをカールを否定した。

「僕達は、キングのハズだっ!!何で、何でこんな汚いことをして勝たなくちゃいけないんだよ!?
 もう・・・・もうコリゴリなんだっ!!キングの誇りを捨てるのはっ!!」

「・・・・カ、カール・・・・・」

「200年前から・・・・アカツキを、あんな風に不意打ちして倒した時から、僕達、キングは
 キングで無くなったっ!だから、これが僕達にとっても、正義の戦いなんだっ!!
 正々堂々と戦って、主人公を倒して、世界にキングの強さを知らしめてやるんだっ!」

「ッ!!!(・・・・・・せ、正義・・・・・!?)」

「・・・・・わ、わかったよ・・・・カ、カール・・・・・。
 え、えーと・・・・・しゅ、主人公・・・・・・。ちゃ、ちゃんと集中してくれ・・・・・。
 じゃないと・・・・・・・キングのプライドがゆるさない・・・・・・」

「・・・・ごめん、カエサル。僕の下らない卑屈に付き合ってもらっちゃって・・・・。
 行こう、カエサル!あの主人公に、キングの強さを思い知らせてやろうぜっ!!
 さぁ・・・・・行くぜ、主人公っ!!」

カールの説得によって、カエサルも、キングの誇りある戦いをすることを誓う。その姿を見て、
エクスの「何か」が目覚める。そして、エクスは自分の不安、それに向き合うことができた。
エクスは、微笑む。

「?・・・・何笑ってんだよ、主人公っ!!僕らが何かおかしいのか!?」

「・・・・・・・ありがとよ・・・・・おめぇーら」

「?・・・・な、何を・・・・言っているんですか・・・・・?」

「・・・・・俺、気づいた。違う、これじゃなかった。俺が信じた未来は、これじゃなかった。
 ・・・・・・ナポリュートが・・・・・アカツキ軍の望んだ未来は・・・・・・
 これじゃなかった・・・・・・・・」

「だ、だから・・・・・それが何だというんだよ!主人公っ!!」

「・・・・・正義は、誰の心にもある。勇気は、誰でも出せる。希望は、誰でも掴める。
 未来も・・・・平和も・・・・・誰もが、手に入れることができる。なのに・・・・・
 なんで俺達は・・・・それを、自分の物にしようと、争ってんだ・・・?」

「・・・・・・な、何を・・・・!」

「・・・・・へへっ・・・・・皆、ちょっと欲張りすぎただけさ・・・・・。
 だからよぉ、ちっと大人になってみねぇか?・・・・・俺、気づいたんだ。
 ・・・・・・・これが、正義。これが、勇気。そう、和解こそ、本当の道なんだってよぉ」

エクスの言葉に、衝撃を受けるカールとカエサル。エクスは、戦って、戦って、戦った末に
「和解」の道を選択した。それは、無謀な試みだった。けれどもエクスはそれで満足だった。
これこそが、エクス・コールドの、「主人公」としての務めだと思っていたからだ。


65 :匿名 :2008/07/06(日) 20:45:33 ID:onQHWiL3

〜 Last Stage その6  〜

エクスの言葉は、ある意味では、すべての終わりを告げていた。動揺を隠し切れない
カールとカエサル。しかし、エクスの顔は真剣であった。汚れの無い瞳に、何も
偽りは無かった。

「俺、嘘ついてたんだっ・・・・口では、正義とか平和のためだとか言って・・・・
 すべて、主人公のせいにして・・・・・いつも、いつも・・・・戦ってた・・・・!
 違う、これじゃないっ!!・・・・戦うことが、争うことが、平和に結びつくことなんて、
 ありえるわけがないんだっ!!」

「・・・・な、何を言っているんだよ、主人公っ!!今さら、和解だとぉ!?
 僕達を愚弄しているのか!?」

「・・・・・・俺は、主人公なんだっ!一人じゃない、世界のための主人公なんだっ!!
 戦っちゃいけない!俺は・・・・・・・平和を戦いで、汚すことなんてあっちゃいけねぇんだ!
 ・・・・・たのむ、キングっ!!・・・・・平和を、守らせてくれっ!!」

「ッ!!?・・・・な・・・き、貴様っ!何を言っているかわかっているのか!?
 君と僕は敵だっ!そ、そんなこと・・・・!!」

「それを気づかせてくれたのは、おまえだ。正義は、誰の心にもある。例え、悪って
 呼ばれてる奴にも、涙を流す正義をよぉ・・・・・・ゆるさねぇわけにはいかないんだ。
 ・・・・・俺は、戦わないっ!!・・・・おまえの正義を・・・・見せろ、カールっ!!」

エクスの説得に、カールは何をすればいいのかまるでわからなかった。それは、カエサル同様。
少し離れているアレキサンダーとダビデは、何も知らずに戦っている。そして、外で
戦っている者達も。

「・・・ふ、ふざけるな・・・・・そんなこと・・・・僕が・・・・・
 ゆるすわけないだろぉおーーーー!!!」

「(っく!!・・・・リオーゼっ!このみっ!隊長っ!マリアっ!・・・・俺、
 死ぬかもしれねぇ!!・・・・けど・・・・俺は間違っていなかった・・・・・。
 それだけは・・・・・信じさせてくれ・・・・・!!)」

「死ねぇええ!!主人公っ!!!」

「(っぐっ!!!)」

突っ込んでくるカールに、攻撃を一切しようとしないエクス。ただ、無防備に立っているのみ。
カールは、振りかざした拳を、エクスに向けて振り切ろうとする。エクスはこらえる。
その痛みを、こらえるために・・・・。

「(・・・・・・・・・・・・・・・ん?・・・・こ、来ない・・・・?)」

「・・・・くそが。言っただろ・・・・僕らは、キングだ・・・・・・。
 戦わない者に・・・・・手は出さない・・・・・!!」

「・・・・カ、カール・・・・・おまえ・・・・」

「・・・・・・・・・・・僕が・・・・・平和を・・・・望んでいないとでも思っているのか?
 ・・・・・・・・・・・・やってみせろよ・・・・・・・・主人公っ!!」

「ッ!!!・・・・・・・サンキュー、カールっ!!」

エクスは、走り出す。攻撃を寸止めしたカールに敬意を表しながら。その姿を見て、
カエサルは、そっとカールの肩に手をなでおろす。カールは、ただなにも言わず、
動けずにいた。

「・・・・カ、カール・・・・・・」

「・・・・・何も・・・・・言わないでくれ・・・・・カエサル・・・・・・・。
 僕も・・・・・・キングなんだ・・・・・・何万という人間の頂点に立っている者なんだ・・・。
 何が正しいとかは・・・・・・わかっているんだ・・・・・・!」

「・・・・・・カ、カールの判断・・・・・・・い、良いと・・・・思いますよ・・・・・」

「・・・・・・・ありがとう・・・・・カエサル・・・・・」

ほんの一時の安らぎ。それが、カールのせめてもの癒しとなった。そして、エクスは走る。
戦っているアカツキとダビデ、アレキサンダーのもとへ。自分の「正義」を伝えるために。
誰もが持っている「勇気」を呼び起こすために。

「やめろぉおおーーーーー!!!」

「!?・・・・・エ、エクス・・・・・どうした?まだ、カールとカエサルは生きているぞ?」

「っち!・・・・何をやっているの、あの二人は。まぁ、いいわ。私は32代目を相手する。
 あなたはアカツキよ、ダビデ」

「了解した、アレキサンダー!」

「・・・・戦いは・・・・もう終わったんだっ!!・・・・・もう・・・戦わなくていいんだ!!
 ・・・・・おまえらのキングの誇り・・・・・・その正義を・・・・・・!!
 和解へと、結びつけてくれ!アレキサンダー、ダビデっ!!」

「ッ!!!」

その言葉に、驚くダビデ、アレキサンダー。そして、アカツキ。やはり、もっとも
驚いたのはアカツキであろう。主人公とキング。それは、断ち切れぬ縁なのだ。戦うために、
両者は存在しているともいえる。それを、エクスは全面否定したのだ。

「な、何を言っているんだ、エクス!外では、何万という大群が戦っている!
 どれほどの死人が出た思う?・・・・その戦死した者達に、俺達は平和を与えられて、
 それでゆるされると思っているのか!?」

「違う、アカツキっ!!戦って死んだいった者達は、平和を願って死んでいったんだ!!
 誰も、戦いを望んで死んでいったワケじゃない!!」

「ッ!!・・・・エ、エクス・・・・・君は・・・・・!!」

「ハ、ハハハ・・・・・ハハハッハハハハッハ!!ここまできて・・・・ここまできて、
 平和だとか、和解とか、協定だと言うの!?32代目!私達は、もう戻れないのよ!
 血を見ているのよ!?誰も、そんなことゆるしわしないわっ!」

「・・・・・・アレキサンダー・・・・・もう、そんな時代じゃねぇんだ・・・・・。
 戦って、勝者がすべてを手に入れるって時代はな・・・・・もう、とっくのとうに過ぎたんだ。
 ・・・・・・俺達は、その間・・・・ずっと成長してねぇのか?・・・・・・・」

「・・・バ、バカなっ!アレキサンダーの言うとおりだ、和平だと!?
 貴様らが劣勢になったから、そんな切り口をして、助かろうとしているだけだろう!
 騙されんぞ、32代目っ!!」

「・・・・・・ダビデ・・・・・今、俺が嘘ついてどうなるんだよ・・・・・。
 今俺が嘘ついた所で・・・・・・死んだ奴は・・・・・喜ぶのかよ・・・・・・。
 勇ましく、俺らのエゴのために戦っている兵士達は、喜ぶのかよぉおお!!」

エクスの必死の訴えに、それは「偽り」ではないと確信できたアカツキ、そしてダビデ、
アレキサンダー。しかし、いきなり「和平」と言われて、はい、そうですか、という
わけにはいかなかった。それまでの過程が、あまりにも酷いのだから。

「・・・・ち、違う。和平なんて、ありえないわっ!我々は、戦うことでしか
 何も見出せないのよ!それが、人間なのよ、主人公っ!何処でも、人間は、戦って、
 そして勝たなければならない!それが・・・・・この世界のルールなのよ、主人公っ!」

「・・・・・・・じゃぁよ、俺が・・・・そのルールってやつに・・・・・
 意義申し立てれば良いんだな?・・・・・・・なぁ、アレキサンダー・・・・・。
 笑ってる子供は・・・・・・好きかよ?」

「!?・・・・な、何を・・・・・!!」

「・・・・・・おまえも、おまえの国の民のために戦ってる。そして、俺達も、
 俺達の自由のために戦ってる。・・・・・・なんで、戦ってるんだろうな・・・・?
 ・・・・まるで・・・・・俺達・・・・・異性人同士戦ってるみてぇだ・・・・」

「っ!!・・・・・」

「・・・・・・・俺達の未来はよぉ、今も必死に生きている子供のためにあるんじゃねぇのか?
 なんで、良い年した大人がよぉ、自分の欲求のために戦ってんだよ・・・・・!!
 ・・・・いつになったら・・・・・子供達の友達をよぉ・・・・・増やせるんだよ・・・?
 子供達の笑顔を・・・・・見れるんだよ・・・?・・・・なぁ、アレキサンダー・・・・」

エクスの問いに、アレキサンダーは何も答えることができなかった。それを見たダビデは、
何かを言おうとしたが、それでもいえなかった。そう、もうダビデはわかっていたのかも
しれない。次の展開について・・・・・。

「・・・・ッフ。そうかもしれないな、エクス・・・・・・・。
 俺も・・・・・ちょっと・・・・・・・急ぎすぎていたかもしれない・・・・・・・・。
 ちょっと・・・・・道を・・・・・間違えていたかもしれない・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・ルーは・・・・・・・いつでも・・・・・俺を見てくれてたのにな・・・・」

「ア、アカツキ・・・・・・。アレキサンダー、ダビデ。もう、俺達は戦わない。
 戦うことで、平和はつかめない。未来は、存在しない。・・・・・背中を攻撃するなら、
 勝手にしな・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

エクスとアカツキは、ダビデとアレキサンダーに背を向ける。そして、この部屋から
出ようとする。それを見て、アレキサンダーは動かずにはいられなかった。キングとしての
誇りが、彼女を動かせた。

「戦いは・・・・・終わっていないわ、32代目、アカツキっ!!!」

「!?ア、アレキサンダー!!や、やめるんだ!!」

「!?(や、やべぇ・・・・・!!)」

アレキサンダーは、去っていくエクスとアカツキに向かって突進する。そう、風の如く。
当然、エクスもアカツキも完全無防備。やられるがままである。そのままアレキサンダーは、
二人に近づき・・・・・。

「・・・・・・戦いは、終わっていないわ!・・・・逃げ出すつもり?・・・・。
 言論という戦いは、終わらないわ。・・・・・・・・さぁ・・・・こっちに来なさい・・・・。
 ・・・・・・・・・・話し合うわよ・・・・・・・・・未来の・・・・ために・・・・!」

「っ!!!・・・・・ア、アレキサンダー・・・・・おまえ・・・・!!」

「・・・・・・それで、良いのかもしれないな、アレキサンダー。俺は、その行動が
 間違いか正解かなど決められない。ただ、トランプスのキングとして・・・・・・・
 その行為・・・・・・敬意を表する・・・・・・」

そして、この瞬間、戦争は終わりを迎えるのであった。話し合いを理解したキング四人。
その架け橋となった「エクス」。これこそが、彼の求めた、「主人公」であるべき
姿なのかもしれない。エクスは、空を見上げる。

「(・・・・・・・よぉ・・・・・皆・・・・・・元気に、してるか・・・・?
 戦争、終わったんだぜ・・・・・・・・。し、信じられるか・・・・・・・・・・?
 和解、できたんだぜ?・・・・・・・・・・・なぁ、皆・・・・・・・・
 後は・・・・・・パーティーだけだぜ・・・・・・・全員・・・・参加・・・・・だぜ・・・)」
 
 


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
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