異夢想々〜曳かれ者の小唄〜


1 :ARIA :2006/07/26(水) 09:57:46 ID:mcLmukr3

 運命というものは、
つまり、人ではどうする事もできない
何かをいうのではないのだろうか、と思う。
例えば、
時間という束縛。
寿命という終焉。
存在という、事実。
これらは"人が人である限り" 絶対に逆らいようのないものだ。
いわば"流れ"。
意識するかしないかはともかく、
理解するかしないかはともかく、
予想出来なくとも、
人が人である限り、逃れる事のできないもの。
それが、運命。
だからあの時、私は納得していなかったし、
その時、彼は予想出来なかったはずだし、
きっと、彼女は意識すら出来ないのだろう。
それでも、
例え誰であっても、
冷酷に、残忍に、
そして緩く、激しく、
運命はその形を歪め、私達を喰らっていく。

運命について彼女は、
意識出来ない彼女はこう言った。

 「律に逆らう。それは、人としちゃ出過ぎた行為だ。
 その最後の一線を越えたやつは、人とは呼べない。
 そんな、人という定義を越えたモノを、
 人と呼べる筈は無い。」
 「だから私たちは、人じゃあ、ない。」
私がそう言うと、
彼女は「そうだな。」と短く言って、私から目を逸らした。

これから始まる物語は、罪人達の、まるで夢のような物語。


2 :ARIA :2006/07/31(月) 13:09:46 ID:mcLmukr3

〜日常〜

 水曜日の朝。
俺はすがすがしい朝日に目を覚ました。
軽く体を伸ばして窓を開けてみる。
夜中の内に雨が降ったのか、
雲間から差し込む日の光を雨粒が反射して、
きらきらと煌めいていた。
 「…綺麗だな。」
惚けたように呟く俺。
そんな台詞は自分のガラじゃないなぁ、
などと思いつつ着慣れた学生服を手に取った。
平凡なワイシャツに、平凡なズボン。
これに色眼鏡(一谷に言わせてジジ臭い奴)を掛けて、
俺こと竹近 直らしくなるわけだ。
そういえば俺の色眼鏡を
 "それは君のルーツ、つまり原点だね。
 世界を色のついたそのフィルターを通して、
 自分の意志に関係なく…"
…その後なんて言っていたか忘れたけど、とにかくそんなことを言っていたのは誰だったっけ。
忘れたな、同じ学校の生徒の筈だけど…
 「おーい、直ー。起きてるかー。」
思いだそうとしていると、
下の階から父の声がした。
恐らく、朝食が出来たのだろう。
俺の家は一風変わっている。
両親の役割が逆で、
母の宵が働いて、父の数一が家事をこなしている。
まあ、女性だから家事をやれとか言う下らない男女差別をするつもりはないけど。
 俺は適当に返事をして、自室を出た。


3 :ARIA :2006/07/31(月) 14:53:44 ID:mcLmukr3

居間には柔和そうな顔を微笑ませる父と、
朝食を食べ終えたばかりで、
まだ口をもぐもぐしている妹の純がテーブルについていた。
「おはよう、直。朝ご飯、冷めるよ。」
「お兄ちゃん、おはよう。ちょっと遅いかな。」
同時に喋る父と純。
俺はどちらに言葉を返していいか迷って、
「ああ。」と曖昧に頷いて椅子に座る。
「お兄ちゃん、遅刻しちゃうよ?
 ご飯、早く食べて食べて。」
「わかったわかった。」
テーブルに並んでいるのは、白飯、焼き鮭、サラダ、
厚焼き玉子、漬け物、味噌汁。
ふむ、最近父さんは和食に凝ってるな。
しかし、時計を見れば遅刻気味、
悠長に食ってる時間もなさそうだ。
「父さん、食パンあるか?」
「?…ああ、あるよ。」
「一枚くれよ。」
差し出されたパンに食卓に並ぶおかず達を乗せていく。
あれよと言う間に完成。
名付けて、日本人の朝食サンド。
「…お兄ちゃん。そ、それは…ツライよ。
 ちょっぴりゲテモノちっくかな。」
「誰が急げっつったよ。」
「そ、それは…」
うつむく純を見ながら、
日本人の朝食サンドをかじる。
ふむ…かなり味が目まぐるしいが、
これはなかなかにうまい。
もう二度とやりたくないと思うけど。 


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