信じてないよ、神様なんて。
だって……
季節は春を過ぎ、夏へとさしかかろうとしていた。
マナは学校へ帰る道を一人で歩いてかえる。学校指定の妙に古臭い茶色のかばんと比較的地味な肩掛けバック。その二つを持って、マナは家路を行く。
この小さな村に引っ越してきて、もう2ヶ月たつ。
コンビニは町よりの村はずれにぽつんとあるだけの、田んぼと畑と、妙に電信柱が目立つ、どこまでも見渡しのいい村。
さぞ、田舎特集の雑誌やテレビ局が喜ぶだろう。そんなことを思っていた4月。
そこにすむことに決まったときは、反対も出来なかった。
そりゃそうだ。
たった4ヶ月前に、マナの両親は死んでしまった。自殺だ。
マナが帰ってくると、二人はもう死んでいた。
小さい頃はよく3人で並んで、川の字に寝たものだが、両親は数字の11のように死んでいた。並んで、仲良く。
そこにどうしてマナを入れてくれなかったのかは分からない。
ただ、残ったマナの行く先は、この村に住んでいる年老いた祖母と祖父の下しかなかったのだった。
そしてここにいる。
別にすごく都会に住んでいたわけではない。
近くには巨大なショッピングモールはない。中学には歩いていけたけど、高校へは3駅ぐらい向こうの街まで行かなければなかったし。
でも、それでもこの村よりは住み心地は良かった。はず。
結局のところ、今は歩いているけれど。これは1時間バスに乗って、そしてやっと村に着いたからだ。バス停からはさらに15分ほど歩かなければ、家には着かない。
一人暮らしをしようとした。
しかし、祖父の猛烈な反対により、この不便な登校が4月から繰り返されるようになったのだった。
そして、現在マナは高校2年生だった。
高校といったら、違う中学からそれぞれ知らない顔、又は見たことある顔が集まり、始めはなれない顔に戸惑いながらも、共通点を見つけながら顔見知りになっていく。そんなとき。それが1年。
そして2年になれば、1年で作り上げた関係は固くなり、他のものを受け付けにくくなる。そんなところにやって来た転校生。
なじめない。
独特な方便が入り、時にそれは強い印象を与える。
何も知らない土地に、何も持たないマナには怖かった。
何もかも。
こうして、結局なじめないままずーるずると4月終了。5月に話しかけられるものの会話が続かず、諦めてしまい終了。そして6月。一人の時間の暇のつぶし方を発見して、この状況。
そして現在。
かばんの中には3冊の図書館の本。
大して広くない図書館に、5月の終わりから1週間に一回のペースで通っている。もしかすると、卒業前までにすべてめぼしい本は読んでしまうかもしれない。
そうなったら、暇のつぶし方が分からない。
マナはとまって、あたりをぐる〜っと見回した。
どこまでも続く田んぼ道。見える人影はなし。
前の街では決してなかった孤独感。それは、心の中に常にあった。が、こうして一人で歩いていると、その感じは現実のものとなってマナを縛り付ける。
私は一人だ。
風が吹き、マナの栗色の髪を吹き抜ける。
「帰ろ」
マナは再び歩き出した。
暗くなる前に。
怖くない。