負け犬+飼い犬+死神天使=非現実


1 :ヤスフジ タクミ :2007/01/01(月) 02:35:15 ID:m3kntDV4

   2006年・冬 12月31日
 21時45分・冬月 風(ふゆつき かぜ)肉まんを片手に路上で足を止める。
 どこまでも同じ光景が続く木製の壁とコンクリートの道。
ドラエモンによく出てくる道にそっくりだ。いや、むしろ同じといってもいいだろう。
そんな道の中、風は足を止めた。
 顔が半分隠れるまで黒いマフラーを巻き、両手に黒い革手袋をはめて長めの黒コートを纏った黒髪の男。歳は15〜16程。ほとんど少年といっても違和感はない。
その右手には数個の肉まんが入った袋を握っている。
見るものに死神をイメージさせる黒づくめの姿をみごとにその肉まんがぶち壊していた。
午後9時。あたりが見えなくなるには十分なその時間帯に、風はやっかいものをひろってしまった。
「はぁ運がわるいな・・・・俺もお前も」
風はしゃがみこんでそのやっかいものに話しかける。
そのやっかいものはにゃーと返事を返す。
そう、猫である。しかも黒猫だ。
「いや、おまえは運がいいほうか・・・・。なんせ俺に会えたんだからなァ」
そういって左手で黒猫を抱き上げる。
「戌が猫を飼うのも悪くなさそうだ」
そう呟き、風はくっくと笑う。
笑い声は小さく低く、周囲に響くように。
 
お人良しな戌、冬月 風は、1年最後の日に黒い猫を拾った。
この猫が運んでくる不運も知らずに、運の悪い男は不吉は拾った。



     冬月 風
      通称、戌
       好きな色、黒
              職業、高校生


2 :ヤスフジ タクミ :2007/01/04(木) 23:21:16 ID:m3kntDV4

某路地で猫が拾われたのと同時刻、とあるラーメン屋で一人の男がラーメンをすする。
男は黒のライダースーツに解剖時に使うような白の薄いビニール手袋をはめた赤い長髪。しかも
男―といってもせいぜい15〜16歳ほど。少年といってもなんら違いは無かった。しかし、確かに
外見は少年だが、いくつか普通でない点があった。
まず一つがその両目だった。
顔立ちは日本人なのだが、その左目は赤く、逆に右目は白いという日本人らしくないものだった。
「ご馳走様!んじゃぁコレお代ね」
そういってその場にラーメン代580円を置いて店から出ていく少年。
少年が店の扉を開くと、外から冬の冷たい夜風が入り込む。
「さーみー」
そういいながら扉を閉め、店の横に止めておいた黒いバイクにまたがる。
またがると同時に黒バイクは勝手にうなりを上げ、静かなラーメン屋前に騒がしい騒音を立てた。
「よし、年越しラーメンも食ったし、年が明ける前に仕事しますかね」
そうつぶやいて少年は走り出す。
まともではない自分のまともではない居場所へと。

裏社会の狗は1年最後の日に黒いバイクにのって駆け出した。
その二色の瞳に映るのは暗い死の喜びのみだった。



       ?
    通称、狗
     好きな色、銀
    職業、悪魔の手下兼高校生   


3 :ヤスフジ タクミ :2007/01/06(土) 22:49:59 ID:m3kntDV4

序章一歩手前

誰もいない質素な部屋の中で一台の通信機が音を響かせる。
部屋の中には誰もおらず、家具らしい家具は通信機の乗った一台の一本足の丸テーブルのみ。
そのほかに部屋の中にものは無く、どこからどうみても質素な部屋としかいえなかった。
《・・・あ―ア―いやいヤこの通信ヲきイてるアナタはなんともラッキーだヨ?なぜなら今この1年最後の瞬間から我々観客ノ仲間となれるノダから》
通信機から流れてくる一人の声。その声はまるでその場にいるだれかに話しかけるかのように陽気に喋る。しかし実際には部屋の中には誰もおらず、ただただその声がむなしく響き渡るだけである。
《いやいヤ実に人間というのハ面白い。二人の負け犬と飼い犬は同じ年、同じ学校、同じ人種でありながらモ一度も話したことがナク、ましてや顔ヲあわせたことさえない二人の少年。片方は
その目に闇を宿した自分を表の世界の人間だと思いこみ、もう片方は暗い光りを目に宿した自分の立ち位置をはっきりと見極めた少年。二人の運命はまるで何本も張りめぐらされた蜘蛛の糸のようにからみ、水の様に混じり、再び鎖のように張り巡らされた氷の階段。一度通った道から消えていく後戻りのできない氷の階段。いやいヤ、ソレデハ我々と共にこの者たちの全てを見届け様ではナいか。二人のいぬに引き寄せられたネジの外れたものたちの全てを》
そこまでいうと通信機からは何の音も聞こえなくなり、かわりに何処かで開幕のベルが鳴り響いた。非現実という名の現実が今、新しい年となって幕をあけたのであった。


4 :多樹 :2007/11/29(木) 19:27:19 ID:m3kntDV4

序章1・砂神 潤

 どこか遠くで響く鐘の音を聞きながら、冬月は目の前の黒猫に名前を与えた。
「・・・よし!お前の名前は“わだつみ”だ!」
?という感じで鳴く黒猫に、わだつみという名前をボールペンで紙に書いて見せる。
  “海神”
それを冬月は黒猫に近づけると、猫は即座に猫パンチをくりだしてそれを拒否。
「・・いやか?」
「にゃー」
いやだといっているかのような声に、冬月は首を傾げつつも、部屋の壁に貼りつけた。
決定。海神。
しばらくそれを猫、海神は恨めしげに見つめていたが、ジャンプしたところで届かない位置に貼ってあるため、無意味だ。でも、ジャンプ。落下。
その様子をみながら、冬月は静かに微笑んだ。



どこか遠くで響く鐘の音を聞きながら、少年は銃の引き金をひいた。
命乞いをしていた男の眉間に弾丸は命中し、男は絶命する。
目の前で人が死んだにもかかわらず、少年は無表情だ。
その背後から、拍手が響く。
振り向くと、少女がいた。神の長い金髪の綺麗な少女だ。
「お仕事達成おめでとー。よかったね?まだ日の出前だよ」
少女は邪気の無い笑顔を少年に向けており、少年はそれを無表情で見返している。
左目が赤く、右目が白い少年と金髪の綺麗な少女。
「リタ・・・、何しにきやがった」
少年の呟きの直後、リタと呼ばれた少女は少年の目の前―それこそ互いの吐息すらかかりそうなほど―に顔を出して立っていた。
ちなみに先ほどリタがいた位置と少年がいた位置は少なくても三メートルは離れていただろう。
だが、一瞬にしてリタは少年の目の前にいた。下から覗きこむような感じになっている少女は、そのままの位置で呟く。
「また感情をとめてる。よくないなぁそーいうの。他者の死を楽しまなきゃ」
「流石は悪魔様だな?俺みたいな普通の奴に殺しを楽しめと?」
「つまんないなぁ。きみ一応思春期なんだからさ、ボクに対してなにか思わないの?」
「思わないために感情をストップさせてんだけど」
「えー?あ、もしかして今日は一日中それやってたの?」
そこまでいってリタは体勢を元に戻した。
「いい加減立ち位置見極めたほうが良いよ?砂神 潤(すながみ じゅん)君」
「・・・・」
自身の主人である“悪魔”に砂神はなにもいわない。
その様子をみながらリタは明るい笑顔で砂神の手を引いた。
「帰ろ?」
ただ純粋な悪魔は純粋に笑う。
それはあまりに美しく、それ故に恐ろしく・・・。


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