Cross†road(S*E)="GHOST"


1 :コンピュータソーダメロン :2009/02/02(月) 02:31:01 ID:o3teQ7nG






1993年10月31日。
笹原ナオヤは、10歳の少年であった。
その日、父親と釣りに出かけた少年は、偶然、【預言者】と呼ばれる未知の生態兵器と戦闘を繰り広げる絢咲零と出会い、その戦闘に巻き込まれた。
容色麗しい妖艶な美女でありながら人外の悪魔でもある【ヴァンパイア】の絢咲零は、人間が巻き込まれたことなどお構いなしに戦闘を続ける。その結果、笹原ナオヤの父、笹原トウジはアメリカで元特殊火器戦術部隊SWATに所属する警官であり、銀蘭町においてはごく普通の刑事だったが、人知を超えた異形の生命体たちの戦闘の最中、命を落とす。
 そして、笹原ナオヤもまた父を失った直後、自らもその時、【預言者】が手にしていた金属片【ロンギヌスの槍】に貫かれて死亡した。
絢咲零は、不幸にも自らの戦いに巻き込まれて死んでいった人間たちなど、これまで気にも留めたことのない冷酷なエージェントだったが、この時、笹原ナオヤに対しては、その死に自らの責任の一端を感じるのだった。
しかし、数時間後、槍に貫かれて死亡したはずの笹原ナオヤが蘇生し、駆け付けた警察によって保護される。
 この事実に驚愕した絢咲零の所属する組織の支配者、レン=フレイザーは、笹原ナオヤを監視するために絢咲零をその身辺に配置し、監視する任務を与えるのだった。
 前回の任務の残務処理として、自ら【魅了】と呼ばれる能力を駆使し、人間たちの心を操ることで笹原ナオヤの家族になりすまそうとする絢咲零だったが、他の人間はともかく、どういうわけか笹原ナオヤ本人には、その能力は通用しなかった。
しかし、それでも周囲の人間に対して、危害を加えないことを条件に、笹原ナオヤは、絢咲零の侵入、そして自らを監視することを大人しく受け入れたのである。
 最初は冷たく、事務的に家族のフリをしながら、笹原ナオヤを監視し続ける絢咲零だったが、様々な少年との関係の中で、次第に少年に対して愛情と慈しみの心を持つようになっていく。
そしてある時、彼女は、レン=フレイザーの館で、笹原ナオヤの身に危険が及びかけたとき、自ら銃を抜いて支配者であるレンに向けて銃口を向けたのである。辛くも笹原ナオヤの大胆かつ無謀な申し出が、かえってレンの興味を引くこととなり、一触即発の戦闘状態から逃れることに成功するが、状況は確実に悪化していった。
 【アーネンエルベ機関】と呼ばれる謎の組織と関係のあるルーマニア人ヴァンパイア、イオン=スプートニクは、極秘に国内に運び込んだ【預言者】の実戦における実験を行うため、広島のある研究施設から大量のTNT爆薬を強奪し、銀蘭町の中心に位置する【銀蘭聖香学園初等部】を占拠したのである。
日曜日の比較的、校舎内に人間の少ない中ではあったものの、その中に投下された【アーク】から【預言者】は解き放たれ、それによって内部に残っていた人間のほとんどが【感染者】として異形の怪物に変異させられてしまう。
 偶然、その時、校舎内にいた笹原ナオヤ、保坂結衣、黒澤侍錬、安藤清美、霧原勇、そして教師の南遥は、おぞましい化け物の襲来を受け、笹原ナオヤに至っては、かなりの重傷を負いながら決死の覚悟で生き残ろうとする。
しかし、肩に重傷を負い、かなりの高熱に苛まれた笹原ナオヤが、目前に化け物が迫り、今まさに殺されようという直前、警察による包囲網をくぐり抜けた絢咲零によって救出された。
 脱出する直前、ヘリによって離脱を図ろうとするイオン=スプートニクをライフルで攻撃しようとする絢咲零だったが、ナオヤたち人間を先に脱出させ、自らは爆発の渦の中に消え去った。
一か月後、今だ、絢咲零の死のショックから立ち直れないでいたナオヤだったが、レン=フレイザーの計らいで、イギリスで瀕死の重傷を治療していた絢咲零とその後再会を果たす。
ようやく日常を取り戻しかけた笹原ナオヤと絢咲零だったが、その同じころ、父、トウジの師であり、友人だったSWATの教官ジョン=デイビットが同じ空港に到着し、来日していた。トウジの死を悼むために来日したというジョンだったが、その彼を待ち受けていたのはどういうわけかレン=フレイザーである。かつて敵同士の関係のようだった二人だが、この時のレンは、ジョン=デイビットに戦い以外の何かを求めていた。
 再び、何かが始まろうとしている。
さらに、レン=フレイザーの館では、【ロンギヌスの槍】に貫かれ死亡し、復活してからの笹原ナオヤの全記録を調べ、分析していた香川翠が、ある結論を口にする。

「……笹原ナオヤは6年後、死亡する……」

様々な謎、そして、混迷を深めながら物語は深まっていくのだった。





 Cross†road(S×E)="GHOST"
 
  ―交差する秩序の代理人―
 
  コンピュータソーダメロン






■START


6 :コンピュータソーダメロン :2009/02/12(木) 01:11:17 ID:kmnkzAPc







ジョン=デイビットにとって、笹原家の人間を鍛えることになるのは、これが二度目である。
 一度目は、親友だった考古学者、笹原ジンの頼みでその息子、笹原トウジを鍛えた。
トウジは類稀な才能を秘めていた。その行動力、独創性、瞬間的な判断力に状況を冷静に分析する洞察力、すべてにおいて、理想的な兵士になる才能を豊かすぎるほどに備えていたといえる。
いや――、才能が豊かすぎたのだ。
ジョンは、笹原トウジの死を知ったとき、そう悟った。
笹原ジンは優秀な学者だった。同時に世界の裏側を知る数少ない人材でもあった。その上で、笹原トウジを自分に預けたことの意味をジョンはよく理解していた。しかし一方で、トウジをこちら側の世界に引きこむことに躊躇いがあった。
今思えば、その躊躇いが結果として、トウジを死に至らしめたのではないかと悔やんでもいる。
トウジがSWATととしての人生を選んだとき、ジョンは誇らしさを感じた。そして何よりほっとしてもいたのだ。
人類は悪魔になりうる。長年、警官として仕事をしてきたが故の結論であり、エクソシストとして悪魔と闘い続けたが故の経験だ。
だがそれでも本物の悪魔は、それとは比べるべくもない恐ろしい存在だ。
 悪魔のような人間よりも、人間の姿をした悪魔と戦うことのほうが、よほど危険で恐ろしいことなのだ。
少なくとも悪魔のような人間と戦うことを選んだトウジにほっとしていた。
だが、結果として、トウジのありすぎる才能が、その鋭く磨き抜かれた感覚が、【魔】と出会った時に、それを感知することができたとしても、それに対する戦い方、向き合い方が出来ていなかった。
感覚によって【魔】に導かれ、そして滅ぼされてしまった。
その感覚を磨かせたのは、他ならぬ自分なのだ。
 今また、トウジの息子であるナオヤに、自分はこの恐ろしい戦いに巻き込ませようとしている。
だが、それは本当に本当、そうだといえるのだろうか……。
ナオヤを鍛えることを最初は拒絶していたジョンは、それでも結局、この道を選ばざるを得なかったが、今となっては、それさえも迷っていた。
それは、この少年、笹原ナオヤの父以上と思える底知れぬ才能を垣間見れば見るほどに、実はこの少年を巻き込んでいるのではなく、自分こそが、この少年の運命に巻き込まれているだけに過ぎないのではないかと思えてくる。
5年後のジョンは、そう思い始めていた。
しかし、この時点のジョン=デイビットは、今だ、笹原ナオヤの正体も、笹原ナオヤの運命も、まだ何もその本質を知らなかった。
空港でレン=フレイザーに、笹原ナオヤを鍛えるよう依頼されたときは、まずその内容よりも、この希代の化け物が、笹原家の人間と接触しようとしていることに戦慄を覚えた。
 十年以上戦い続けている【ヴァンパイア】組織の首領が、何かの取引かと思いきや、一流の【エクソシスト】に鍛え上げろ、というのである。【聖者】としての特性を備えたこの少年を抹殺しようとしているのなら理解もできるが、なぜ、殺さずにその才能を開花させようとしているのか。
 理由は、すぐに分かった。
少年は数百年ぶりにこの世に降臨した【聖者】で、それまでの【聖者】とは一線を画す卓越した戦闘能力を持っている。
 これまでの【聖者】は、確かに【悪魔】と戦う技術、知識、戦闘能力に長けた者は多くいたが、どちらかといえば実際には、桁はずれのカリスマ性を持って人心を束ねる政治的手腕、あるいは宗教的高位の立場で、人々を導く役割を担った者が多かった。
それゆえに、さまざまな文献、歴史資料などにその名を残している者は多い。
だが、現代に再び現れた【聖者】、笹原ナオヤには、そんな能力よりも彼単体の戦闘能力の高さ、その才能こそが、群を抜いて表出されている。そのうちの一つが、【ヴァンパイア】の魔眼による【魅了】を一切受け付けない体質だといえるだろう。
まさに彼は、【魔】の存在すべてとの戦いのために創りだされた専用兵器といえる。
 かつて、【ロンギヌスの槍】を手に入れたのヒトラーのように人類を導く立場などではなく、ただ、戦争のために産み出された個体だ。それゆえに、この超兵器が敵軍に墜ち、利用されないようにその命を短く設定されているのだとしてもなんら不思議なことではない、と香川翠は考えていた。
 では、何と戦おうとしているのか。
そこが問題だ。おそらく、単純に【魔】を屠ることではないだろう。
そうでなければ、あの日、自分に武器と情報をよこせ、といったナオヤが、代わりに自分たち【ヴァンパイア】を見逃す、などと冗談でもいわないはずだ。
 まして、あの女……。
あの【ヴァンパイア】の女、絢咲零を生かしたままにしておくとは思えない。
だが、そこで疑問が生まれる。
笹原ナオヤはどこまで【聖者】として覚醒しているのか。
恐らく、レンもまたそこに疑問が生まれているのだろう。
それゆえ完全な覚醒を促すために、自分に笹原ナオヤの訓練を依頼したのだ。
最も大きな疑問、『笹原ナオヤは何と戦おうとしているのか』の答えを知るためだ。
笹原ナオヤの敵が、あるいは自分たちの敵にもなりうるのか……。
それは慎重に判断しなければならない。
 しかし、結局のところ、ジョン=デイビットが笹原ナオヤを鍛えようと判断したのは、そこではない。
正直言って、笹原ナオヤの敵が何で、自分たちにとって、その存在が何であろうそんなことはどうでもいい。ただ、この少年はこれから大きな運命を背負っていくことになるのだ。
 それだけは間違いないだろう。
ならば、自分は、かつての友人に教えくれなかったことを教えるのが、自分の務めなのではないか。
ジョンは、そう判断し、覚悟を決めた。


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