街角、『もりくま書店』


1 :久万 :2007/09/26(水) 18:22:00 ID:o3teQGkH

 明るい声が、室内に響きます。

「市葉、天(イチハ ソラ)です!本大好きです!あいうえお順で、好きな作者言えます!勿論、作品名も言えます!特技です!結構力もあるので、重い物とか運べます!役に立ちます!どうですか?」

 面接の基本。はっきりと話しましょう。
 座る時は足を閉じましょう。
 視線は面接官のネクタイの結び目あたりを。
 そして、あなたの誠意をたっぷりと話しちゃおうゼ、ベイベー☆ 
 亜月美香著 『THE!面接 面接官のハートを握っちゃおう』より、抜粋。

「本を愛する、この気持ちだけは……狩沢さんにも負けません!」

「や、狩沢って誰だよ……」
 思わず突っ込む、ギャラリーの店員一人。
「狩沢さんはあたしの師匠とも、戦友とも呼べるお方です!二次元に住んでおります!」
 天はその店員を見て答える。
「あ〜……知ってる。本に埋もれて……」
「死にたいです!」
 天に反応するのは、面接官でもある、店長。

 ここは、ある本屋の休憩部屋だ。現在は『面接部屋』と、手書きの紙がドアに貼られている。そして、閉店後の暗い店で、唯一電気がついているこの部屋に、店員、そして店長。そいでもって、アルバイト希望者がいるわけだった。
 狭い部屋にパイプ椅子が二つ、向かい合うように並べられている。机は端に避けられ、その上には物が高く積まれている。
 壁という壁には色々なポスターが貼られているが、グラビア物だったり、アニメ物だったり、カレンダーだったり動物物だったり宣伝用だったり……統一感は全く無い。
 そして大量のダンボールが縛られておいてあるため、部屋全体はかなり狭苦しい雰囲気になってしまっている。元から狭いけど、と言う発言はおいといて。
 
 現在は、向かい合わせのパイプ椅子に、店長とアルバイト希望者。そしてギャラリーには現在店員の二人が存在している。
 すでに、面接が始まって、天の自己紹介まで終わって十分ぐらいたっている。
 自己紹介以外が、ほとんど店長と天の雑談で進んでいる。

「あの……店長ー……」

 たまりかねたのか、一人の店員がスッと手を挙げた。
「ん?」
 店長が振り向く。
「いつ、終わるんスかコレ」
「……あ〜……ホントだ。何話してたっけ?っていうか、何してたっけ」
「面接」
「お、そうだった。じゃあ、」
 店長は天の方に振り返る。
「君、明日からよろしくね」
 即答。
「はい!っていうか合格ッスか!あたし合格?!」
「………早」
「本を愛していれば、どんな子だって合格だよ。本を愛している子に……悪い子はいない!そうでしょ?」
 店長断言。しかし最後は同意を求める。
「勿論です!」
 天は店長の手を握る。
「じゃあ、本当に明日からよろしくね」
 
 こうして、これからお話は始まっていきます。
 ここは、何処にでもありそうな本屋、『もりくま書店』。
 店員は、アルバイト、店長を含めて4人。
 どこにでもある、誰にでもあり得る日常なお話……です。


2 :九凪 :2007/10/05(金) 20:40:13 ID:o3teQ4uc

初日

 そして、とうとうアルバイト初日がやってきた。

「よろしくお願いします!」
 天はぺこりと頭を下げる。現在、休憩室にいるのは緑川という店員だ。
「はいはい、よろしく」
 緑川は天の方を見ずに、休憩室の机の上から紙を何枚か選ぶ。
「あの」
 天は思わず声をかけた。
「ん?」
「他の人は……」
「仕事」
「そスか」
 そして無言の時間が経過。
 天はチラリと緑川を見る。
 
 正直に言おう。
 緑川さんは……かなり格好いい人です。背も高く、(天の身長は145p)顔も整っているし、髪も黒くって……セクシーなんです。
 でも、かなり無愛想でした。

 天は、はぁと息を吐く。かなり苦手なタイプだ。

「市葉」
「はい!」

 突然よばれて、返事をする。反射的に姿勢も正す。
「コレ、やっとけ」


 天は、倉庫に放り込まれた。
 目の前には大量の本が。そしてダンボールが。

「あの」
「それ、返却する本だから綺麗に整とんして入れとけ。しっかり分類しておけよ」
「ぶ……ぶん?」

 がちゃん

 そして、一人のこされました。


3 :九凪 :2007/10/17(水) 14:46:16 ID:o3teQ4uc

「……すっげ」

 天はその光景を見て溜息をつく。
 大量の本が、かなり無差別に並べられていたり積まれていたり。

「……どうやればいいのやら……」

 その場にぺたりと座って、とりあえず手ごろな本を一冊手に取る。

「『ぼけない壁』……あたしの中でも未開発な知識だ……」

 そして、ダンボールを組み立てる。とりあえずその中にその一冊を入れ、そして手が止まる。
「で、どーしろと」


「きゅーけー入りまーす」
「あいあい〜、竜次君ついでにトイレットペーパー補充しといて〜」
「ほーい」

 滝沢竜次は、だるそうにぽっけに手を突っ込み、関係者以外立ち入り遠慮と書かれた紙が貼ってある扉を開け、そのまま真っ直ぐ歩く。
 突き当たりにあるトイレに入り、掃除用具入れからトイレットペーパーを一つ出してセットしておく。

「……だるい……眠たい……」

 竜次は小さな声でそうぼやくと、体が自然と傾き、そしてそのままドアに体を預けて動かなくなった。

 そして、1分ほど経ったその時、鍵をかけていなかったドアがいきなり開き、竜次はそのまま外に倒れ込む。

「うひょ!あ、緑川さんじゃない方の店員さん!」

 天は竜次を支え、その顔を確認した。
 その反動で竜次は目を開く。

「あ、新人アルヴァイト」
「わ、妙に発音が良い。っていうか、寝てました?」
「……ピンクの世界に行っていた。別に人体に害はないよ」
「……そですか」

 竜次は自分の足でしっかり立ち上がり、そして天の方を見る。性格には、天の名札を見る。しばらく考えて一言。

「いちは……てん」
「あ、そらです。天って書いてそら」
「てんでいいか」
「……ですか。えっと、滝沢……竜次さんですか」

 天も負けじと竜次の名前を見る。

「うん。でも、竜次と書いてコンソメパンチと呼ぶ」
「ええ!?」
「ウソ」
「うそ……。あ、えっと、あたし今日からです!よろしくお願いします」

 気を取り直して天は挨拶をする。
 すると、竜次は少しだけ首をひねって言う。

「てんちゃんって、小学生?」
「や!高校生ッス!ばりばりの女子高生です!青春映画真っ盛りです。学園キノと同い年です」
「あ、じゃあ俺より年上なんだ」

 そう言うと竜次はすたすたと歩いていく。
 天はしばらく固まり、そして「え!?」っと言うと、竜次の前に立つ。

「りゅ、竜次……さんって、何歳ッスか?」
「ん?俺は中3だよ〜ん。受験生だよ」

 微妙にピースをしながら答える、身長推定178の竜次。それに固まるm身長推定145弱の天。天の周りに冷たい風が吹き荒れる。


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